Skybound Ace 【Redux】   作:心ここにあらず

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9.

2回戦を危なげなく快勝した俺たちであったが準々決勝でぶつかった千鳥山中学とは千鳥山にうちの弱点やオフェンス面での対策を予めされていたお陰で辛勝も良いところであった。

 

少し整理しよう…

 

うちの弱点としてはやはり守備面…ただでさえ佐藤くん以外はアンダーサーブですらセッターの上まで運んでくることが厳しい中…強豪校の連中はそこからさらに両サイドや前後に打ち込んでくる

 

上がったとしても体勢が整っていないトスでは翔陽に上がることも難しく翔陽自身も何度も無理矢理体勢を作ってたりフェイントで誤魔化していたらしたがそろそろ限界も近づいてきていた

 

逆にこちらが通用する武器は俺と翔陽のサーブ…それに俺のスパイクと場合によっては翔陽との攻撃も機能はするだろう…

 

 

 

が…それも相手が普通の強豪かや中堅校ならの話であった

 

 

何より来週の準決勝の相手は…【白鳥沢学園中等部】

 

現在高校バレー"最強"を自他共に認める大エースの【牛島若利】を排出した名門も名門…北川第一を差し置いて優勝候補"筆頭"の県内最強の中学校である

 

チームカラーとしてはこちらも千鳥山と違いエースと言う強力な矛を主軸に得点を稼いでいく、かと言って他の個々の実力も完全に北川第一や千鳥山を凌いでいる。

そして何より千鳥山がしたようにここまでのデータを踏まえてこちら側は丸裸の状態で奴らと向き合わなければならない。

 

 

「さてさてさぁて…どうしたもんかね…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●白鳥沢学園中等部

 

 

 

 

 

白鳥沢のバレー部部室では部員全員とマネージャー…それにコーチと監督全員がモニターに映った映像を凝視していた。

モニターには第一戦…北川第一と雪ヶ丘の試合…

 

 

「「「…」」」

 

 

「監督…コイツが例の…」

 

 

「あぁ…初心者チームを準決勝のこの舞台まで引き上げてきた立役者の1人だな…観客の間では既に個人としては宮城No. 1を推す声も少なくない。…1番…神凪リオ…左打ちのオールラウンダーだがおそらくは本職はスパイカーだろう…チームの関係上セッターもやっているが明らかにスパイカーとしての実力が頭抜けているからな」

 

 

「…」

 

 

「正直に言わせてもらう…いくらウチでも今の状態では2枚ブロック…いや3枚きっちり揃ってても止めることは不可能かも知れない」

 

 

「「「!?」」」

 

 

「…そこまで…ですか?」

 

 

「あぁ…聞けば奴は既にウチの高等部や青葉城西からも特待を貰ってるらしい。上も奴をSランクと認めたと言うことだ…この中にウチの高等部から直接打診された者は"五色"以外にいるか?…彼はそれ程の選手という話だ…がそれと勝敗が結びつくかは別の話だ」

 

 

「俺の方が強いです!!」「はいはい。今はいいから工」

 

 

 

 

 

監督の言葉に反応し勢いよく立ち上がったのは前髪が特徴的な少年。この少年こそ白鳥沢が誇る牛島以来のエース"五色工"である。牛島がサウスポーでコースなどお構いなしに圧倒的な打点とパワーで打ち砕くスタイルなのに対し、五色のスタイルは右利きであり、牛島のような大柄ではない体格を目一杯活かしてコースを選択し得点を重ねるスタイルである。特にポールとブロッカーの隙間を通し打ち抜くストレートに関しては牛島ですら舌を巻くレベルである。

 

 

 

 

「工の話は置いておいて監督。…どいうことですか?」「え!?」

 

 

「お前たちに足りないものは"慣れ"ということだ。お前たちは十分基礎は備わっている。あとはそれに慣れるだけ…そして」

 

 

 

ーーガチャーー

 

 

入り口のドアから2人の人物が入ってくる

 

 

「「「!?」」」

 

 

1人は小柄な老人…身長はおそらく170もない…がここにいるものなら誰もが知っている大物人物… "鷲匠鍛治"

何を隠そう白鳥沢学園高等部の監督でありバレー部の総責任者である。そしてここ数年宮城県の覇者として君臨する白鳥沢学園の礎を築いた名将中の名将である。

 

 

そしてその後ろから来た人物…背丈は190近く有るだろうか…オフの時間帯だと言うのにその強者特有のオーラが滲み出るほどのバレー狂…名実ともに"最強"を体現する男…現白鳥沢学園高等部エースの"牛島若利"である

 

 

「「「牛島さん!」」」「牛島さん!!」

 

「まじか生ウシワカ!」「ヤッベェ!」「なんで!なんでいんの!」

 

「こらこら落ち着きなさい!」

 

「はっはっはっ、元気が有り余っているようだな…今日中等部の方にお邪魔させて頂いたのは君たちのとある練習をサポートさせてもらうためだ」

 

「とある練習?」

 

「あぁ…君たちが次当たる中学に最早説明すら要らない天才…とでも言うのか…まぁそう言う類の選手がいるだろう?その選手を止めるのに随分苦労すると言うことをそちらの監督さんからお伺いしてね…今日からウチの牛島を3日間貸し出すことにしたのだよ」

 

「牛島さんを!?」「まじで!?」「いいんですか!?」

 

「あぁ…雪ヶ丘の1番…神凪くんのプレースタイルは牛島と同じ…何より同じ利き腕というのも大きいはずだ。それに背丈…パワー…跳躍力…どれをとってもこれ以上ない最適の相手な筈だ。十二分に揉まれてきなさい」

 

「「「はい!」」」

 

「よし…これからすぐアップから始める…準備しろ」

 

「「「お願いします!」」」

 

 

 

 

 

そう言い残し牛島と中等部の生徒たちが退出し残ったのは鷲匠と中等部監督のみになる

 

 

 

 

 

「…つかぬことをお聞きしますが…本音のところは何故牛島くんを練習台としてお貸しになられたので?」

 

「…相手の1番…」

 

「…神凪…くん…ですか」

 

「あぁ…奴は紛れもない未完の大器だ…バレーにおいて1番大事なものは何だと思うかね?」

 

「…それは…やはり努力…とかでしょうか」

 

「…そんな生ぬるい世界じゃありゃせんわ…バレーにおいて1番大事なのはフィジカルだ…まぁバレーに限らずこの世は"デカいモノが勝つ"それが自然の摂理だわ」

 

「…それは」

 

「勿論…ただデカいだけじゃそれはただの木偶の坊だわ…だが奴は…中学生離れしたフィジカルに加え…あの才覚…そして何より奴の父親…誰か知っているか?」

 

「父親…ですか?…神凪…そんな選手プロにいましたっけ?」

 

「…奴はイタリア人と日本人の間に生まれた子だ…父親の名前はレオナルド・アバニシア…イタリアの名門リーグ「セリエA」で長年活躍したイタリアの英雄とまで言われている男だ…」

 

「レオ!?…あのレオなんですか!?」

 

「…あぁ間違いない…東京にいる連れに確認したからな…そして奴はその才覚とフィジカルを見事に受け継ぎ…さらには幼少期からバレーの英才教育まで施されたと来たもんだ…久しぶりに鳥肌がたったわい…ありゃ若利以上のバケモンだわ」

 

「…それほどまでに…いや…でもそれと今回の件がどういうお繋がりに?」

 

「そりゃあ…他のとこに取られんために決まってるだろう…県内で負ければ、まず他の県の連中に知られることはない…それに負けたことで新たに成長の糧にすらしてしまうかも知れん。なにより…奴がウチ以外に行くことはなるべく阻止しておきたいからな…」

 

「…」

 

 

 

中等部の監督はあの名将…鷲匠がここまで一選手…それも中学生相手に発する言葉や評価とは思えない言動に驚愕と共に神凪に畏怖の念を抱き始めていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●準決勝 当日 白鳥沢学園中等部

 

 

 

 

「うぉぉっしゃぁ!今日も勝つぞ!みんな!」

 

「相変わらず元気だね翔ちゃん」

 

「こんな奴が他校から警戒されてるってんだからほんと世の中わからねぇな」

 

「翔陽!やる前からそんな元気出して疲れんなよ?てかトイレ行ったか…?つきあうぜ?」

 

「うっせぇ!俺は小学生か!?」

 

「「「ははは!」」」

 

 

 

 

いつも通り緩やかなそして和やかな雰囲気を醸し出している雪ヶ丘とは対照的に白鳥沢の方はどこか殺伐とした重苦しい雰囲気に包まれていた

 

 

「いいか…初めが肝心だぞ?ここを一本で切れば相手に少しでも動揺が走る…それがこの試合のキーポイントになるかも知れないからな」

 

「「「はい!」」」

 

 

 

 

 

ーーピィィィィィィィィ!!ーー

 

 

 

「集合してください!」

 

 

 

互いのチームが列になり集合する

 

 

 

 

 

「只今より準決勝…白鳥沢学園中等部と雪ヶ丘中学校の試合を始めます…礼!」

 

 

「「「「「お願いします!!」」」」」

 

 

 

『さあ!始まりました!宮城県・中学総合バレーボール全中予選準決勝を本日はお届けさせていただきます!実況の木下と解説担当の山下で本日は宜しくお願いいたします!』

 

『『よろしくお願いしまーす!!』』

 

『さ、本日準決勝から解説付きでお届けしますこの全中予選なんですが今大会は異常な盛り上がりを見せていますねぇ!山下さん!』

 

『ええ!何と言っても優勝候補と言われていたシードの北川第一を完封…そして毎年4強に食い込んでくる千鳥山を倒してきたダークホースの雪ヶ丘の存在ですよねぇ!』

 

『そうですねぇ〜前情報が何もないバレー部としては真新しい学校な筈なんですが2人の入部者がきっかけで大化けし今大会でも既に大注目を浴びています。まずは3年・MBの日向翔陽くんです!身長160センチのMBとしては体格には劣るもののそれをもろともしない素晴らしい跳躍力とバレースキルを擁しています!』

 

「そうですねぇ〜往年のバレーファンの中にはあの【小さな巨人】の再来だという声も段々増えてきましたからねぇ」

 

「はい!そして何と言っても雪ヶ丘を語る上で外せないのがこの人…1番の神凪リオ君ですよね!」

 

「ええ!まずは何と言ってもあのスパイクサーブ!おそらく中学生であの域に達している選手はこの年代ではいないでしょうね〜!」

 

「そうなんです!それに180センチをゆうに超える上背とフィジカルを持ちながら日向君にも負けない跳躍力で最高到達点は何と!340センチを超えてくるそうです!これはファンや観客が世代最強と呼ぶ理由も分かりますよねぇ〜!」

 

「ええ!そしてこの世代最強選手擁する雪ヶ丘に対峙するのがコチラは超名門…今大会も優勝候補筆頭!一度も苦戦することなく勝ち上がってきており…中・高と宮城県を席巻しています白鳥沢学園中等部です!」

 

 

「白鳥沢は個々でみるとエースの五色君を除いて雪ヶ丘の2人ほど個性はないんですが何よりも全ての選手がいい選手なんですよねぇ〜なんかこう〜全員が強豪校にすすんでも恥ずかしくない力量を有していると言いますか〜」

 

「そうなんです!今試合注目されているのがチームとしては未だ疎ら…初参戦の新参者にしてダークホースの雪ヶ丘対名門中の超名門!中学バレーを語る上で外せない白鳥沢の一線になります!」

 

 

 

 

ーーピィィィィィィ!!ーー

 

 

 

 

『まずはサーブは雪ヶ丘…2番からになります!ここは要注目です!』

 

 

 

ーーダン、ダン、ダンーー

 

 

 

「…ふぅ」

 

 

 

リオは目を瞑りながら3回ほどボールを下に突いた後胸の前までボールを持っていき大きく息を吐く

 

 

「…っし」

 

そして目を大きく開いた後ボールを高高く舞い上げ助走を始める

 

 

ーーフワッーーダンッ!ダンッ!ダダンッ!ーー

 

 

定位置で全開で跳躍し全身を弓のように大きくしならせる…そして左腕を大きく振りかぶりその獲物に向かって

 

 

ーードパァァァァァァァァァァァァァァン!ーー

 

 

振り下ろされた

 

白鳥沢陣営はかつて無いほどの警戒体制を敷き4人を守備におく布陣を固めた

 

それでも轟音と同時に飛び出したボールの行方は

 

 

「アウッ」

 

「!?」

 

ーーピィィィィ!ーー

 

コート右端最奥のライン上に着弾した

 

審判がinの旗をあげコールされると同時に会場内が爆発したかのような大声援に溢れる

 

『ノータッチエェェェス!』

 

「「「「うぉぉぉぉぉ!!!」」」」

 

「やべぇやべぇ!まじバケモンだわ!」「白鳥沢が4人体制で触ることすらできないなんて」「いやでもあのコースはたまたまなんじゃないの?」「いやあいつのことだからわからねぇぞ?」

 

 

白鳥沢陣営は

 

 

 

「クソッ!ここまでしても取れねぇのかよ!」

 

「落ち着くんだ!今のはおそらくたまたまだ!」

 

「工!?」

 

「散々ビデオで見た感じ1番のパワーとスキルはスゲェけどあそこまでギチギチに決めるほどのコントロールは無い筈…だ…次は必ず上げれるさ!」

 

「お、おう?まかせろ!」

 

 

 

雪ヶ丘陣営は

 

 

「やっぱスゲェェェェリオ!狙ったのか!」

 

「落ち着けよ翔陽!…正直マグレに近いな…」

 

「意外だね…リオにもそんな運要素あったんだ…」

 

「それな!てっきり狙ってやってんのかと」

 

「いやいや…流石に"まだ"あそこまでギリギリに撃ち込む技術は無いって!」

 

(ま、いずれは手に入れてやろうかと思ってるけど…てかパパならあれ以上の威力であのコースに狙って決めるんだからこの程度出来なきゃ"上"にはいけない)

 

 

 

 

 

『いやぁ〜驚きましたねぇ〜今のサーブ!どうでしたか?』

 

『いやもう笑うしか無いって感じですよね。コースはおそらく偶々なのかも知れないですけどあの威力を中学生が放つっていうこと自体おかしいことに皆さん気づいてくださいよ!高校生でも中々居ませんからね!』

 

『そうですねぇ〜ささ!その1番のサーブが始まります!』

 

 

 

 

 

ーードパァァァァァァァァン!ーー

 

 

「クソッ!流れた!」

 

「頼む!」

 

「任せろ!」

 

 

ーーギュルン!ーー

 

 

「ぐっ!悪りぃ!頼む!」

 

「ナイスナイス!上出来だ!」

 

 

リオの放ったサーブは少しコントロールが乱れリベロ右横へ…しかしコントロールが乱れたとしても左特有の回転も威力で幾度となく正面からでも得点をもぎ取ってきたサーブが

 

白鳥沢の前では

 

2本目から上げられてしまったのだった

 

 

「「「上がったぁぁぁぁ!」」」

 

 

「工!」「こい!」

 

 

そして上がったボールをセッターが綺麗にトスをあげ走り込んでくる五色が体勢を整える

 

それを見たリオと日向は

 

 

「翔陽!合わせろ!」

 

「おう!」

 

「行くぞ!…せぇの!」

 

 

ーードンッ!ーー

 

 

「くっ!」

 

 

 

相手スパイカーが放ったスパイクは俺の掌に当たり後方へ飛んでいく

 

 

「ワンタッチィィ!」

 

「佐藤君!」

 

「お願いします!」

 

 

それを佐藤くんが追いかけ拾い上げ俺がセットポジションに着く

そして軽く白鳥沢の位置を確認…正面に2枚…翔陽に1枚!

 

「いけ!」

 

「もってこぉぉぉぉい!」

 

 

俺があげたセットを左端にいる翔陽が打ち切る

 

 

ーーがーー

 

 

「!?」

 

 

ーードシャッ!!ーー

 

 

「なに!?」

 

 

俺の近くに居た1人のブロッカーが翔陽のブロックに参加し2枚ブロックで翔陽のスパイクを叩き落としたのだった

 

 

『雪ヶ丘の2番のスパイクを止めるどころかドシャットしちゃうなんて初めて見る光景ですね!』

 

『ええ!それに雪ヶ丘はスパイカーが1番と2番しか居ないと常々言われていたことが影響しているのでしょう。先ほどのブロック…1枚は元々1番についていた筈ですがトスと分かるや否や迷わず2番の彼がいる方に走りましたからね!』

 

『なるほど〜それにしても素晴らしい攻防が続いています!』

 

 

《雪ヶ丘1:白鳥沢1》

 

 

 

 

序盤からどちらも譲らぬ展開が続きコチラがリオのサーブで得点したかと思えば向こうは経験と対策で翔陽のスパイクをシャットダウンする事に成功したのだった。

 

「くっそぉぉぉ!」

 

「落ち着いて翔ちゃん!」

 

「いやでもあそこまで綺麗に止められた翔陽なんて初めてみたな…」

 

「…」

 

「どうしたの?そんな考え込んで」

 

「…いや」

 

(いくらなんでも俺のサーブを2回目で上げることもそうだが翔陽のスパイクを一度目であそこまで完璧に止めるなんてことあり得るのか…)

 

 

 

 

 

 

 

 

『さぁて!次はコチラ白鳥沢学園のサーブから始まります!』

 

『白鳥沢にもジャンプサーブやフローターサーブを打つ選手がいますからねぇ!両校共に強力なサーバーを有しております!』

 

 

相手の3番…エースの五色がサーブを放つ体勢に入る…雪ヶ丘は普段から俺や翔陽のスパイクサーブを見ているとはいえ敵として相対したのは影山のみ…

 

そしてこれが雪ヶ丘にとって2度目の強力なサーバーとの会合であった

 

 

 

(負けられない…同じエースとして!!)

 

 

 

 

 

ーードォン!ーー

 

 

 

 

「イズミン!」

 

 

 

 

ーードシッ!ーー

 

 

 

 

「ぐぉ!」

 

「くそっ!」

 

ジャンプサーブから放たれたボールはコート右端にいたイズミンの正面に…イズミンは懸命にボールを上げようとするが素人同然であるイズミンが上がることは厳しくボールは弾かれそのままコート外へ…佐藤くんも懸命に追ったが得点は白鳥沢へ上がってしまった

 

 

 

 

 

《2:1白鳥沢リード》

 

 

 

 

 

『サービスエェェェス!!エースの五色が躍動します!』

 

「「「うぉぉぉぉ!!」」」

 

「やり返したぞ!」「名門の意地だな!」「中学でジャンサーするやつ多すぎだろ」

 

 

 

 

 

 

「ごめん!みんな!」

 

「謝らなくていい!あれは向こうを褒めようぜ!」

 

「うん…リオ」

 

「そうそう!俺が取り返してやんよ!」

 

「ありがと翔ちゃん!」

 

 

 

 

 

「もう一本頼むぞ工」

 

 

「任せろ!!」

 

 

 

 

『そして白鳥沢2番の2球目のサーブが放たれます!』

 

 

 

 

ーードォン!!ーー

 

 

 

 

「くそ!また!」

 

 

 

「イズミンいったぞ!」

 

 

 

 

ーードシッ!ーー

 

 

「翔陽頼む!」

 

 

「んのやろっ!」

 

 

先ほどと同じようにイズミンの腕にあたりコート外に弾かれ地面に着きそうな状況で素早く翔陽が飛び込みギリギリで上げる

 

 

「任せろ!」

 

 

そしてさらにギリギリ浮いたボールをリオが滑り込み相手コートに打ち返す

 

 

「チャンスボール!」

 

 

白鳥沢はそこからセッターが俺と翔陽が飛び込んだ右端から最も遠い左端側へトスをあげスパイクを打ち切るのだった

 

《3:1白鳥沢リード》

 

 

『なんとなんと!白鳥沢2番のサーブから攻撃まで雪ヶ丘を翻弄し圧倒しています!』

 

『雪ヶ丘もいい粘りを見せているんですけどねぇ〜なにぶん守備の穴が両サイドと言うのは大きすぎますよねぇ』

 

『それではねぇ〜いくら1番と2番の子達が凄くても限界がありますからねぇ』

 

 

 

その後も2番のサーブで雪ヶ丘は翻弄されつづけ…サーブの威力を弱めてでも白鳥沢はコート両端のイズミンかコージを狙い続けた

 

そして気づけば

 

《8:1白鳥沢リード》

 

『誰がこのような結果を予想したでしょうか!雪ヶ丘と白鳥沢…前半戦早くも点差が開いてきております!』

 

『雪ヶ丘からしたらかなりしんどい状況ですねぇ』

 

 

 

ーーピィィィィィィ!!ーー

 

「タイムアウト!!」

 

主審が両手を“Tの字” にして雪ヶ丘側のタイムアウトを宣告する

 

 

「「ご、m」」

 

「はいはい、謝罪はお腹いっぱいだからね!過ぎてしまったことよりも次どうするか!今考えたからそれ伝えるね!」

 

「「…」」

 

「お!なんかあんの!」

 

「君はずっと元気だね翔陽くん…」

 

「まぁな!」

 

「…まぁいいや…とりあえず守備陣系を変えよう。現状は4枚の守備陣系で間に佐藤くんと中村くん(一年生)を入れていたけどこれを3枚に減らす。」

 

「変更するのはイズミンと中村くん(一年生)だ…理由はこの2人を捨てたんじゃなくてコージを選んだ。」

 

「俺!?」

 

「あぁ…レシーブ力は3人とも変わらないけどコージはサッカー部に所属していたから足が器用でいざという時に足を出すことができるからね。練習でも何回か見たし」

 

「お、おう!」

 

「そんで…コージ、佐藤くんともう1人は…俺が入ることにする」

 

「「「!?」」」

 

「いやいや!リオが入ったらセッターどんすんだよ!俺がやんのか?」

 

「まぁ落ち着けよ翔陽…とりあえず守備陣系は端にコージと佐藤くんで間に俺が入りサポートする。そして俺がファーストタッチの場合は翔陽かイズミンがセットし俺か残った誰かが打つ。そんで俺以外がファーストタッチなら今まで通りって訳だ。」

 

「俺にトスなんてあげれんのかな…」

 

「心配すんな!多少乱れても俺と翔陽なら気にしねぇよ!」

 

「そんで翔陽!お前のスパイクの時だけどな…あれやってみ?」

 

「うぉ!あれか!あれやんのか!」

 

「「「あれ?」」」

 

 

 

 

 

 

『さぁ!タイムアウトも終了致しまして試合が続行されます!雪ヶ丘は守備陣系を変えてきたようですねぇ』

 

『そうですねぇ〜セッターの彼を守備において1人減らしましたね!これがどのように影響するのか実物です!』

 

 

 

ーードォン!ーー

 

 

「シッ!」

 

 

「ナイスレシーブ!」

 

 

 

相手の放ったジャンプサーブは左端にいたコージのところへ…それをいち早く察知俺が間に入り正面でレシーブすることに成功したのだった

 

 

「翔陽!」

 

 

「おう!」

 

 

翔陽が俺があげたボールをセットしそれに合わせて俺も跳躍する

 

正面見渡せばブロック3枚きっちり揃っていやがる

 

 

「上等!」

 

 

「「「せーの!!」」」

 

 

 

3枚ブロックだろうがなんだろうがここは必ず決めきるという気持ちがあった俺は3枚ブロックに正面からぶつかる事にしたのだった

 

 

ーーバギャァァァァァァン!ーー

 

 

「グッ!」

 

 

俺が放ったスパイクは3枚ブロックの1番右端の右手に衝突しそのままコート外へと吹き飛ばしたのだった

 

《2:8白鳥沢リード》

「ナイスキー!リオ!」

 

「ナイスリオ!」「凄いよやっぱり!」

 

 

『ここは素晴らしいスパイク雪ヶ丘1番です!よくぞ決め切りました!』

 

『そうですね!体勢も不十分の中3枚ブロックがきっちり揃ってたんですけどね!まだ足らなかったみたいですね!』

 

 

「くそ!化け物め!」

 

「次だ次!奴を止めれなくても作戦は機能してるからのこの得点差だ!」

 

「…だといいけどな」

 

先ほど片手を吹き飛ばされた選手にはこの得点差があってもあの男がいる限り得点差なんてあってないようなものなのではないか…そう思えるほどこの男を止めるイメージがつかなかった

 

 

「次お前からだぞ翔陽!」

 

「おう!俺もぜってぇ負けねぇ!」

 

「気負うなよ!」

 

 

そう言い残しながら翔陽はサーブラインまで下がっていったのだった

 

 

《さぁ雪ヶ丘のサーバーはこの人!雪ヶ丘が誇るビッグサーバーの1人…事サーブという点においては1番の神凪くんにスタッツは劣っていますがそれでも他の中学生と比べれば圧倒的な成績を保持しています2番の日向くんです!》

 

《彼は本当に体からは想像も出来ないほどパワフルな選手ですよね!》

 

《そうですね〜力士に例えるとまるで小兵にも関わらず幕内では横綱のような相撲を取りますからねぇ〜非常に楽しみな選手です》

 

 

 

翔陽はいつものサーブルーティーンをした後…ボールを高高く舞い上げ小柄な体を目一杯捻りスパイクサーブを打ち込んだ

 

 

ーードパァァァァァァン!ーー

 

 

こちらも破裂音のような音から放たれたサーブの行方は

 

 

「クソッ鬼サーブ!」

 

 

ーーバシン!!ーー

 

 

「くそっ!」

 

 

 

翔陽のサーブはコートの右端最奥に着弾するかと思われたが流石に4枚ブロックの中ノーターチエースを取ることはそう簡単なことではなくギリギリのところで触れられてしまったが触れたボールはそのまま右の壁まで吹き飛ばされてしまった

 

《3:8 白鳥沢リード》

 

 

『サービスエェェェス!ここで魅せてくれました!雪ヶ丘2番日向翔陽!』

 

『素晴らしい威力にドライブ…中学生でここまでとはいやはや本当に末恐ろしいですねぇ』

 

 

「もう一本頼むなぁ翔陽!」

 

「任せなさいっての!」

 

 

そして翔陽の2度目のサーブは…

 

 

ーードパァァン!!ーー

 

 

「任せろ!」「頼む!」

 

 

『ここは綺麗にあげてきました白鳥沢!』

 

 

「こい!」

 

 

『そしてセッターが出した選択は…!』

 

 

誰に出す…俺なら…ここは必ず決めて流れを渡したくないはず…そんで俺たちが1番慣れてなくて対応不足なのは

 

 

ーードン!ーー

 

 

「っし!」

 

 

ーードシャ!ーー

 

 

「んな!」

 

「なんで!?」

 

《4:8白鳥沢リード》

 

『ドシャットー!!ここは1人で止めて見せました!雪ヶ丘1番!神凪リオ!』

 

『今のバックアタックを読んでたんですかね〜!素晴らしい読みにブロックです!』

 

 

 

 

そして再び流れを掴んだかのように見え…もう一度サービスエースを狙う翔陽だったが今度はリベロに完璧に拾われてしまい白鳥沢の攻撃に備える

 

 

俺と佐藤くん…それにコージ…どちらも狙うのか…さっきコージの方を狙いに行き俺に完璧に拾われたのを見ると今回は…

 

 

ーードパァァン!ーー

 

 

「佐藤くん!」

 

 

「はい!」

 

 

佐藤くんに放たれたスパイクは若干後ろよりだが綺麗にレシーブされいち早くかけ出した俺がボールの落下地点につく

 

 

「…!」「…?」

 

ーーコクッーー

 

 

翔陽とのアイコンタクトを終え俺は翔陽が1番打ちやすい得意な大きくループを描くトスを上げる

 

そしてそれを見た白鳥沢は

 

 

「きた!2番だ!2番がくるぞ!」

 

「3枚締めろ!…せぇの!」

 

「「…!」」

 

ーードン!!ーー

 

翔陽はスパイク体勢に入り全力で跳躍した後…体を大きくしならせ右腕を大きく振りかぶる

 

 

ブロッカーたちは強烈なスパイクがくると考え力を入れるが…

 

 

ーーフワッ!ーー

 

「「なに!」」

 

「前だ前!」

 

「くっそっ!」

 

 

ーーダダン!ーー

 

 

翔陽が放ったのは強烈なスパイクに偽装したフェイントだった…大きく振りかぶった腕をボールを打つ前に急ブレーキをかけブロッカーたちを嘲笑うかのうにその牙城をゆらりとくぐり抜けレシーバーたちの前に落としたのだった

 

『5:8白鳥沢リード』

 

『な、なんと!2番日向選手!今度は嘲笑うかのようにブロックの穴をつくこちらもまた見事なフェイントです!』

 

『今まで見たことなかったんですがフェイントも使えるのもそうですが…このタイミングで見事に決め切った事に驚きを隠せません!』

 

 

「ナイス翔陽!やればできんじゃん!」

 

「うるせぇ!俺はいつでもできる!」

 

「嘘つけよ!昨日まで五分五分くらいだったじゃねぇか!」

 

「にしてもこんな必殺技残してたんだね翔ちゃん!」

 

「ま、まぁな!」

 

(あ、嘘だ…俺が言うまで絶対忘れてたなこいつ…)

 

 

 

 

 

 

 

そしてここまでノリに乗っていた雪ヶ丘だったが翔陽が、その後ネットにボールを引っ掛け相手サーブになってしまいそこから連続で相手にポイントを奪われてしまった。…やはりこちら側は俺と翔陽のサーブが終わってしまったらあとは全てチャンスボールに等しいサーブしか残っていないのが痛い。

 

 

それにいくら俺と佐藤くんがレシーバーとして鎮座しているとはいえ佐藤くんはサーブに対してはレシーブ力は非常に高いがスパイクに関しては相手も…1流…特に3番・五色のサーブは威力・コース共に並の中学生を超えているのでレシーブ出来る確率も正面で五分…コースを振られたら3割にも満たないだろう

 

俺に関しても守備は苦手ではないが特別上手い訳でもないので2人で守るとなるとカバーしきれない部分も必ず存在する。

 

そしてその穴を徹底的についてくるのが強豪校であり真の強さを持つチームである事を理解しているが故に中々この悪い雰囲気を脱却する術を見出せないでいた…

 

 

ただ…コチラもただやられている訳ではなく俺や翔陽のスパイクも必ずしも決まらない訳ではなく俺に関しては言わずもがな…翔陽に関してもフェイントを交え始めてからスパイクをドシャットされることはなくなり捕まりつつも相手コートには必ず返しているので得点には貢献している

 

 

ただ…

 

 

《24:14 白鳥沢リード》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現在タイムアウト中…

24―14。

スコアボードを見上げた瞬間、会場の空気が一段重くなる。

白鳥沢中の応援席は盛り上がり、対して雪ヶ丘はどこか沈黙が支配していた。

 

 

「……やばいな、これ」

 

コージが小さく漏らす。

 

だが、リオと翔陽だけは違った。

負けている、追い込まれている。

その“事実”すら、どこか楽しんでいるような薄い笑みを浮かべていた。

 

(まだ終わってねぇよ。ここからだろ……翔陽)

 

リオがちらりと横を見る。

翔陽は肩で息をしながらも、目だけはギラギラと燃え続けていた。

 

 

「リオ……俺、まだ跳べるぞ!俺にくれ!」

 

「当然だ。翔陽、ここから全部ひっくり返すぞ」

 

 

タイムアウト明け、相手のサーブは強烈。

白鳥沢中のエースのジャンプサーブが重砲のように飛んでくる。

 

「っ!!」

 

受けたコージの腕に当たりわずかに弾かれるもコート外に弾かれる。

だが——

 

「落とすかよ!」

 

リオが滑り込みスライディングでボールを上げ、体勢そのままの状態で右手だけを返す。

 

そこに翔陽が反応。

助走0から跳び上がり、無理矢理に体勢を作り反転のまま打ち切った。

 

 

ーーバァン!!ーー

 

 

「うぉ!あの体勢から!」「なんつぅ運動神経!」

 

 

白鳥沢のコートに突き刺さる。

 

ーーピィィ!!!ーー

 

審判の声が響く。

 

《24―15白鳥沢リード》

 

客席が少しざわつく。

 

「おお…今の拾うのか」「あれ決まるんだ」

 

翔陽は息を荒げながら振り返った。

リオは立ち上がり、手のひらを差し出す。

 

 

「まだ折れてねぇな?」

「折れてねぇよ!!」

 

パンッ、と手が鳴る。

 

 

リオのサーブ。

ここで崩せなければ第一セットはほぼ終わる。

 

リオは深く息を吸い、トスを上げた瞬間——

力の配分を完璧に変えた。

 

 

(狙うは……リベロの逆。守備の薄いサイド)

 

 

ーードパァァァァァァン!!ーー

 

 

直線的なドライブサーブが白鳥沢のレシーブラインを割った。

 

 

『サービスエェェェス!!』

『ここにきても未だ強力サーブ陣は健在です!』

 

 

「ナイスサーブ!!」

「いける、まだいけるぞ!」

 

《24―16白鳥沢リード》

 

 

そしてまだまだリオのサーブの展開は続いていく

 

もう一球。

今度は速度を僅かに落としてその分横回転を多めに加えたサーブ。

 

 

ーーシュルルルルルルーー

 

「ま、曲がった!」

 

「飛び込め!」

 

白鳥沢の一年レシーバーが前に飛び出すも、ほんの指先で弾く。

 

 

『24―17白鳥沢リード》

 

白鳥沢ベンチがざわりとする。

“嫌な流れ”が蔓延する

 

(あと3点……最低でもそこまでは詰める。俺と翔陽なら出来る)

 

 

3球目。

リオは一瞬だけ翔陽を見る。

 

「翔陽、準備しろ」

 

「任せろ!!」

 

リオのジャンプサーブは、今度は逆サイドの深い位置へ。

リベロが飛びつき強引に上げるが、体勢が崩れた。

 

セッターが慌ててトス。

その一瞬の乱れを——

 

「跳べ翔陽!!」

 

翔陽が一直線に走り抜け、2枚ブロックの間を割るように跳び上がった。

 

ーーズドンッ!!ーー

 

白鳥沢の足元に落ちた。

 

《24―18白鳥沢リード》

 

会場の空気が完全に変わった。

 

 

 

 

 

 

 

白鳥沢のセットポイント、24―18。

が会場ではここからの逆転を期待する雰囲気で溢れていた

 

 

しかし相手も流石の対応力を見せる。リオのサーブを今度は完璧にレシーブしたあとセットし直し完璧な対応を見せてきた

 

 

「佐藤くん!」「はい!」

 

佐藤くんが横っ飛びでレシーブ。

ギリギリ手のひらで返したボールがふわりと上がる。

 

「リオ先輩!!」

 

リオは走り込み、片手でジャンプトス。

体勢は崩れているのに、翔陽が一番踏み切りやすい高さに放つ

 

翔陽が走り抜け、跳ぶ。

 

ブロック2枚が揃っていたが——

翔陽は空中でひねり、

指先ギリギリを抜く“押し込み”でコート後方に転がす。

 

コトッ。

 

《24―19白鳥沢リード》

 

 

「まだまだいけるぞ!」

 

「「「おう!」」」

 

 

ーードパァァンン!!ーー

 

 

「ぐっ!頼みます!」

 

「任せろぉぉぉ!」

 

 

 

リオが放ったサーブを今度はようやく"慣れ"出したWSがあげて見せセッターがトスをセットする

 

 

そしてセッターが上げたボールを相手エース…五色は全力で跳躍し…ここでなんと……

 

 

 

 

 

ーーフワッ!!ーー

 

 

 

「んな!」

 

「くそ!」

 

 

 

俺と翔陽がブロックしたのも束の間…翔陽が見せたフェイントをそのままやり返されセットポイントとなってしまったのだった…

 

 

 

 

 

 

 

■ 第一セット終了 25―19

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リオはどこに進学させるべき?

  • 烏野
  • 青城
  • 白鳥沢
  • 県外
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