禁足地的など田舎 作:究極完全態ゾ・シン
「お、いたいた」
秘密基地を抜け出て数分、お目当てのモンスターを発見した。
まず真っ先にこいつを狩って、この世界で最大の悩み事を解決したかったからだ。
そう。それはもちろん食料。
いや食べるものが無い、という意味ではない。
なんかのモンスターが森を焼け野原にしても、翌日には草原になって、三日もあれば若木が生え、五日もあればおおむね元通りになるような世界だ。
食料自体はある。
問題は、それが野菜か虫の二択ってところだ。
というわけでまずは生肉……もといアプトノスを狩ってやろう。
グースカと眠る数匹のアプトノス一家に近寄る。
月明かりだけでも十分に明るい。
剣の届く距離まで近づいて。
「うぉ……でっか」
身長測ったことないから具体的な数値はわからないが、それでも成体のアプトノスの横に並ぶと、その大きさがよくわかる。
なにせ頭だけで俺の身体くらいでかい。
すっげー、焼き肉食べ放題だ。美味しいのかな。まあ食べればわかるか。よし。
よいしょっと武器を振りかぶる。
「あ……おはようございます」
と、そんなところでアプトノスと目があった。
野生に生きるモンスターだし、殺気的な何かでも感じ取ったんだろうか。
起きたアプトノスはそのまま頭突きを仕掛けてくる。
「ぐえっ。あたた……力強」
とっさに刀身で頭突きを受けたものの、そのまま押されて尻もちをついてしまう。
さすがの巨体だ。
なんて感心していると、俺の身体に影がかかる。
「のぉぉお」
二足歩行するみたいに上体を起こして、全身を使ってアプトノスの前足が俺のいた場所に落ちてくる。
コロリンして横にずれ、無防備にさらされた首めがけて剣を振った。
わりと時間をかけて自分で研いだ刃は、いい感じにアプトノスの肉を斬ることに成功する。
あっぶな。
もしかして鎧とか無しだと、生肉モンスターに小突かれるくらいで死ぬか、これ?
ォォンと鳴きながらアプトノスがぐるっと反転する。
当然のように長い尻尾もこっちに振り抜かれたので、慌てて後ろに下がった。
こちらに背を向けたアプトノスは、物音で起きていた一家総員で走って逃げ始める。
「あ、こら! おい待て!」
せっかく手傷を負わせたのに、飯を取り逃してたまるか!
俺も走って追いかけようとするが、とても追いつけそうにない。
ダメだこりゃ。走るんならやっぱり、武器を背中に背負えるようにする必要があるか?
ゲームはあれで合理的だったんだなぁ。と。
すぐに追っかけるのを諦めて、逃げるアプトノスを見送る。
──キシャァ
また別の鳴き声と共に、青い影が血を流しながら走るアプトノスに飛びかかった。
複数のそれらは爪や牙を突き立て、たちまちのうちにアプトノスは悲鳴をあげるのをやめる。
勝利の雄たけびをあげ、取り合うように倒れたアプトノスに噛みついて、噛みちぎる。
ランポスだ。
二足歩行。地面と水平なくらい前のめりな姿勢で、尻尾でバランスを取っている。
そんな頭を低くしている体勢にも関わらず、見る限りは俺よりも高さがある。
頭から尻尾までの長さはその数倍。
ほんとにジュラ◯ックパ◯クに登場するヴェロキラプトルくらいのサイズ感がある。
そんな──
ふと。
アプトノスの腹に首を突っ込んでいた一匹が顔を上げる。
そしてこちらを振り向く。
基本引きこもっているから、人間を見るのは始めてなのだろう。
赤く染めた顔を、不思議なものを見たかのように傾げた。
「おっと」
死んだか?
ランポスは再び鳴き声をあげると、トン、と軽々数メートルの距離を跳ねて、ひとっ飛びにこちらへ飛びかかる。
ガキィ──ン。
鋭い爪をなんとか剣で受けた。
そのままこちらを押し倒すように体重をかけながら、俺の顔に噛みつこうとガチガチ牙を鳴らす。
「くっ、こんっのぉ!」
刀身に左手も添えて、両手で剣に力を込めて押し返し、横にぶん投げる。
転んだランポスは、しなやかな身のこなしですぐに立ち上がろうとするが、それでも生まれた隙に首を斬る。
一度ではまだ動いて戦闘を続けようとしていたので、二度三度と剣を振り下ろした。
「はぁーはぁー。っしゃおら! ビビらせやがって雑魚が! 二度と俺に歯向かうなよ!」
ふぅ。危ない危ない。なんとかなったな。ヨシ!
さてと。
後これが二匹もいるわけだが。
武器を構え直す。食事を中断し、ガラス玉のような目が四つ、こちらに向いていた。
一匹が吠え、そのまま立ち去る。
もう一匹もアプトノスをもう一口食んでから、続くように駆けていった。
助かった、のか。