それぞれの道に突き進んでいた。
シグナーの一人、クロウもその一人で、
クロウはプロのDホイーラーとなるため、修行をしながら各地を旅していた。
そんな矢先、一人の男に声をかけられる・・・・
「青年よ」
唐突に呼び止められ、クロウは後ろを振り向く。
そこには、妙な白装束を着た、長身の男が悠然と立っていた。
年のころは二十台だろうか?
ヒスイ色の長髪をなびかせ、強い意志を秘めた眼光でこちらを見据えている。
「ン、何だアンタは?」
とは言ってみたものの、その毅然とした立ち振る舞いから、この男が只者でないことはすぐにわかった。
「我が名はダーツ。破滅を担いし者。」
口元を醜く歪めると、男はでゅえるでぃすくを起動させる。
それに連動して、Dホイールに組み込まれていたクロウのでゅえるでぃすくは強制的に起動する。
「な?! 破滅だと?」
「・・・・フィールド魔法、発動。オレイカルコスの結界。」
突然の光が暗雲を裂いて降り注ぎ、辺り一体に魔方陣をえがきだす。
「な、これは・・・・?!」
「この結界から抜け出すためには、どちらかの魂を封印しなければならない・・・・」
耳を疑った。
まさか。
信じたくはなかった。
「と、突然現れて、何を言ってやがる?!」
「・・・・イリアステルは力不足だった。やはり、こうなったか。」
イリアステル・・・・
不意に、この間の大事件のことが、心に浮かんでくる。
破滅の歴史をかえるため、ゾーンによって未来から送りだされてきた刺客たち。
俺たちシグナーとイリアステルによる、文字通り命がけの、厳しい戦いだった。
「イリアステル、だと? 奴等は、俺らが、シグナーが、この手で・・・・」
また、地上に危機が迫っているとでも、いうのだろうか。
ククク、と自嘲気味に笑う。
「倒した、と? 連中は私の手駒に過ぎぬ。 お前達は、何も解決してはいない。 何も、変えてはいない」
「奴等が・・・・手ごま・・・・? 馬鹿な、ゾーンは、俺たちは、分かり合えたんだ!」
「下らぬ問答をするつもりはない。 さあ、運命に魂を捧げよ。」
男は、このままでゅえるを始める気だ。
もし、ヤツの言うようにイリアステルの黒幕がまだ居たとしたら、
おそらくこのでゅえるは・・・・
「待て・・・・! 俺は・・・・・!」
「残念だが、貴様はもう逃げられない。 私のターン。」
フィールドに、リバース・カードが勢い良くセットされる。
直後、ターン終了と宣言された。
上等だ、遊星に代わりに、今度は俺が・・・・!
「フン、でかい口たたくわりには、モンスターも召還できなかったかよ?
悪いが、お前に次のターンは来ねえぜ!」
俺の手札には、必勝コンボが揃っている。
ワンターン・キルで俺の勝ちだ。
たった一枚のリバースカードで、止められるものなら止めてみるがいい。
「俺のターン、ドロー! 手札より、『手札断札』『黒い旋風』を発動!」
このカードは永続魔法だ。発動後、永続的に効果が適用される。
そして・・・・
「さらに手札から、『ブラックフェザー-極北のブリザード』を召還!」
このモンスターはその攻撃力こそ低いが、召還時に墓地のモンスターを対象に、
その特殊能力を発動できる。
「極北のブリザードの効果発動、墓地の『ブラックフェザー-黒槍のブラスト』を、蘇らせる!」
黒槍のブラストは、攻撃力が非常に高い、強力なエース・カードだ。
これで、一気に2枚のモンスターカードが、クロウの場に出そろったことになる。
「墓地・・・・」
「そうさ、手札断札の効果で、俺は黒槍のブラストを墓地に送っていた。
だが、驚くのはまだ早いんじゃねーか?」
遊星、もうお前にばかり、辛い思いはさせない。
力が、みなぎる。
これはシグナーとしての力ではない。
この1年で磨いた、俺の、俺たちの、人としての力だ。
「この瞬間、永続魔法、『黒い旋風』の効果発動。
モンスターが召還されたとき、デッキ(山札)からモンスターカードを一枚、手札にくわえることができる!」
「フ、好きにしろ。」
男の顔には動揺が見られない。
だが果たして、これを見ても平然としていられるのだろうか?
「これが、一撃ひっさつのラストカードだ!
速攻魔法、発動! 『サモンチェーン』!」
このカードは、2枚以上のカードが同時にその効果を発動したとき、初めて発動できる使いどころの難しいカードだ。
『黒い旋風』の魔法効果と『極北のブリザード』のモンスター効果が同時に成立したことで、
このカードは発動できた。
「このカードの効果により、俺はこのターン、手札のモンスターカードを更に召還することができる!
『ブラックフェザー-大旆のヴァーユ』『ブラックフェザー-蒼炎のシュラ』ッ!!!!
まだだッ! 更に、『BF-疾風のゲイル』!!!!」
怒涛のカード・タクティクス(プレイ技術)により、
クロウのフィールドには5枚のモンスターカードがずらっと並んだ。
ポーカーでいえばストレートフラッシュに相当し、こうなれば勝負はほぼ決まったようなものである。
「俺たちは、未来を変えられる。イリアステルの闘いで、そう証明したんだ。それでも信じてくれねえなら、好きにしろ。」
「ン?」
男は訝しげな顔をする。
「何度だって、証明してやる! 俺たちの、絆の強さを!
お前らに、何度でもな!
俺は、俺はもう迷わねえ!
5体のモンスターで、ダイレクトアタック!」
この攻撃が通れば、クロウの勝利である。