シナリオモードが追ってくる〜原作に関わりたくない悪役令嬢の華麗(?)なる逃走劇〜   作:LA軍

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第3話「市場調査」

「というわけでや~ってきました、庶民の市場ー」

 

 ふんぞり返った私が降り立ったのは、市民でにぎわう市場であった。

 背後には公爵家の使用人が使う馬車があり、しずしずとオパールが降りてくる。

 

 うーん、場所もメイドも地味な感じで目立たなくていいね!

 

「つーか、こういう時、先に降りるのアンタじゃないの?」

「勝手にお嬢様が降りたんでしょ」

 

 そうだっけ?

 ……まぁいいや。

 

「あと、護衛といないの?」

「お嬢様の護衛をしたがる奴がいるとお思いで? 御者を手配するだけでやっとでございました:

 

 えー。

 公爵家の騎士にまで嫌われてるの、私?

 

「絶賛嫌われ者のぶっちぎりトップです。勤務外かつお忍びの護衛なんて絶対ひきうけてくれませんよ」

「ひどくね? 私、公爵令嬢なんですけど?」

 

 だのに、いくらお忍びとは言え、こんな庶民溢れる市場にメイドと二人っきりとかー。

 

「安心してください。お嬢様を攫うような不届きものは王都にはほとんどおりませんよ」

 

 ほとんどってことは多少はいるじゃねーか。

 あと、断言するなよ。

 

「あと、私が護衛を兼ねておりますから、ご安心を」

「えー。アンタひとりじゃ頼りないなー」

 

 できればこう……白馬の騎士とまではいわないけど、イケメンの護衛とかさー。

 

「安心を、こう見えて護身術は免許皆伝。あんさ……ごほんっ、斥候術なども習得済みです」

 

 そういって、すらりと地味な私服の中から巨大なナイフの刃を見せる──……いや、ナイフっつーか、それククリだよね?

 世界最強の傭兵、グルカ属の……つーか、さっき暗殺って言わなかった?

 

「え? アンタって、もしかしてめっちゃ強い?」

「めっちゃというほどではありません。、すごく強いです」

 

 いや、強いやんけ!

 

「賊の4、50人はちぎ投げです」

「あ、4、5人じゃないんだ──……オパールさんって呼んだほうがいいかしら?」

 

 うん。

 呼び捨ては……いけないですよね。

 

「御随意に」

「あ、はい」

 

 こっわ。

 この人、目が全然笑って泣くて、こわー。

 

「しかし、どうして市場なのですか?……金策となんの関係が?」

 

 隣に立つのは無礼メイドことオパールもとい、最強メイドのオパールさんが今更そんなこと聞いてくる。

 

「えー。今聞く? 出発する前に聞いてよ」

「いや、そんな時間ありませんでしたし。お嬢様が服がないとかギャーギャー騒ぐから」

 

 ギャーギャーとは言ってない!

 

「アンタが変な服しかもってないからでしょ! なによ、あのヒラヒラの服は!」

 

 勝負服か!!

 

「……変?」

「さ、さーせん」

 

 いや、だって、私サイズのお古貸してっていったら、

 な~んかすっごいヒラヒラの服でてくるんだもん、コイツの十代ってどんな青春だったのかと突っ込みたくもなるわ!

 

(どっかの御当地アイドルかっつーの!!)

 

 結局他のメイドから借りる(強奪)する羽目になったし……。

 

「……なんか失礼なこと考えてません?」

「いんえー。今のアンタは地味な服だなーとは思っただけでーす」

「お嬢様ほどではありませんよ。あ、それに合ってます」

「ん。ありがと」

 

 誉め言葉じゃないけどね。

 

「それでどうして市場なんです? 言っちゃあれですけど、お嬢様が来るようなところではないと思うんですけど」

「ばっかねー。私は箱入りよー。金策するにしても、何がこの市場にあって、なにがないのかをまず見極めなくっちゃ」

 

 そう。

 金策において一番大事なのは需要と供給だ!

 必要のないものを売りに出しても売れるはずがない。

 なので、現代日本知識チートするにしても、商品を確認しておかないと、「おぉー! これがマヨネーズ! 魔法のソースぅ!」っていう展開ができいのだー。

 

 ──まぁ、マヨネーズの作り方とか朧気(おぼろげ)にしか知らないけど。

 

「なるほど?……でも、そんなことは、聞けば教えて差し上げますよ?」

「ちっちっち。百聞は一見にしかず。見て感じなきゃわからないこともあるのよ」

 

 聞くとみるでは大違いだし、

 なにより、私の目で見て、何があって何がないかを見極めなければ知識が活用できない。だから、こうして地味な服を着て、現地にわざわざ足を運んでるのよ。

 

「ま、見た感じマヨネーズはないわねー」

 

 今んとこは作らんけどー。

 

「あまり食品系は充実してるとはいえませんからね」

「そうみたいね」

 

 他にも発酵食品とかもほとんど見当たらない。

 あるのは野菜果物塩蔵品か。

 

 このあたりに商機はありそうね。

 あとは……。

 

「つーか、今更だけど、お忍びで大丈夫かしら? 普通、ダメって言われない?」

 

 執事に外出したい旨を放したらあっさりオーケーがでた。

 お父様の許可もいらないって。

 

 そんで細かいところはオパールに任せたら、こうして地味な返送グッズをはじめ、ぱっと見、高位貴族さまとはわからないように工夫してくれた。

 まぁ、それでも、こう──溢れる気品はでちゃいますけどねー。

 

「めっちゃ馴染んでるので大丈夫ですよ」

「まだ何も言ってないわよ」

 

 あと、誰が馴染んでるか!

 こちとら、生まれも育ちも公爵家やっちゅうねん。魂は融合しちゃってるけどー。

 

「──っと、それはさておき、こうして市場をざっと見たけど、意外と物はあるのねー」

「王都ですよ? なんでもありますよ」

 

 うん。

 ホントなんでもあるわ。

 

 そして、参ったわー。

 

「こう、現代知識チートしてやりたかったけど、思った通りいかないかも」

 

「現代知識チートが何かは知りませんが、『ここが違うのよ、こーこーが』ってのはどうなったんです?」

「……忘れろ。それより──うーん。活版印刷もあるんだー」

 

 中学の時に社会科の時にならったあれ。

 文字の入った木枠を並べ替えたりして、インクつけて、ペタッ! ってやつ。

 

 あれ、画期的だったらしいからこの世界になかったら、広めてウッハウハに稼いでやろうと思ったのに──。

 

「そんなの結構前からありますよ。紙の技術と一緒に入ってきましたね、東方から」

「げー……ってことは、製紙技術もかー」

 

 ゆーて、紙の作り方なんて雑にしか知らないので、なくても再現できるか微妙だけど。

 

「まぁ、紙のほうは一応は……という程度ですけどね。技術はありますが、質が悪いんですよ。なので主流は昔ながらの羊皮紙ですね」

「あらそうなのね」

 

 確かに市場に売ってるのは羊皮紙ばかり。

 植物由来の紙もあるにはあるけど──これ、ただのぼろきれじゃん。おそらく、服とか布の残骸を一度ほぐして作った紙モドキだね。

 

「ふーむ。でもこれだけじゃ商機にはならないわねー」

「商機って……。商人の真似事でもするんですか?」

「言ったでしょ、金策だって。……借金もちなもので、まずは動かせるお金が欲しいのよ」

 

 金貨一枚からでも、自分のお金がないと稼ぎようがない。

 なので、まずはアイデアから金を作り出す必要があるのだ──そして、そのための市場調査である。

 

「んー。そう言う意味では、思った以上に色々あるわね。『透明ガラス』もあるし、『鏡』もある。……『既製服』もおいてるし、あ、『石鹸』もあるのね」

 

 他にも娯楽用品として、『チェス』をはじめ『トランプ』まであった。

 この辺のアイデアは、使えそうにない。多分、この感じだと『宝くじ』とかもありそう。

 

「むむむ。これ、思ったより技術が発展してるわね」

「何を基準にしてらっしゃるのか知りませんが、こんなものですよ」

 

 マジかー。

 全国的にこのレベルなら、今から参入するにはハードルが高いな。しかも庶民レベルでこれらは普及してるなら、貴族階級ならもっとということになる。

 

「……とすると、もっと隙間産業を見つけないと──ん、あれは?」

「はい? あぁ、お針子さんですね。服を塗ったり直したり、まぁ、未亡人なんかの仕事ですよ」

 

 いや、そうじゃなくて──……。

 

「効率が悪いわね」

「そうですか? 手際はいいように見えますけど」

「ふふん。それだとまだまだよ。見なさい──あのおばあさんを」

 

 お針子さんが集まる一角で、おばあさんのお針子さんが手をプルプルしながら悪戦苦闘して針に糸を通している。

 その作業だけで下手をすれば何分も掛けているではないか。

 

(いいわね──あれは結構な商機になるかも)

 

 そうと決まれば、メモメモ。

 あ、でも、羊皮紙しかないわね──……って、そうだこれよ!

 

これ(・・)も使えるかも」

「はい? じっと紙を見つめてどうしました?……紙はさっき商機にならないとかいってませんでしたか」

 

 うん。そうはそうなんだけどね。

 

「発想の転換よ。いいこと思いついたわ」

 

 今手にしているのは、お父様が執務で使った「書き損じ」や「使い古し」の羊皮紙であった。

 羊皮紙は文字通り、皮で作った紙なので、多少は厚みがあるものだ。

 

 なので、再利用することがままある。

 なにせ、元は皮なのでちょ~っと削れば何度かは使えるのだ。

 

 ちなみに、今手にしているのは使い古しで、何度も再利用された奴。すでに、向こうが透けて見える保薄ーーーくなりすぎて、もはや使用に絶えつかも怪しいなものだ。

 

 なので、私のおもちゃとして与えられているのだが……うん、これは使えるかもしれない、

 

「ふふふっ! いいじゃない。まだまだ足りないけど──当面の小銭を稼ぐ方法は見つけたわよ」

「ほんとですかぁ? やり方を聞いても?」

「もちろんよ、詳しくば屋敷に帰ってから教えるけど。その前に頼みがあるの」

 

 とても重要な頼みだ。

 

「なんでしょう? できることなら、なんなりと──」

「うん。たいしたことじゃないわよ。……お金貸して」

「は?」

 

 いや、「は?」じゃなくてさ。

 

「お金よ。お金よー。銅貨とか銀貨とか、金貨とかあーいうやつ」

「それはもちろん知ってますけど……」

 

 なら貸せや。

 

「……使用人にお金を借りる大貴族の令嬢ってのは初めてですわね」

「でしょー」

 

 なんたって、こっちは借金もちー。

 

「……プライドないんですか?」

「そんなもん犬に食わしちまいな」

 

 こちとら、必死なのよ。

 なにせ猶予はたったの3年。金策がごといで躓いている場合ではないのだー。

 

「はぁ……。まぁ、ちゃんと返してくださいね」

「返す返す。なんなら借用書もかくわよ」

 

 利子もつけるし。

 

「ではお願いしますね」

「……いや。なんで紙がすでにあんのよ。……アンタ、いつこれ作ったのよ!!」

 

 しかも、金額がところが空欄になっとるし……。

 

「おまけに。金利が10日で一割って、あんた高利貸し?」

 

 ──どこのミナミの人ですか!

 

「そりゃ、返ってくる保証がございませんので」

 

 ……返すってのー。

 

「わかったわよ、書けばいいんでしょ、書ーけーば!」

 

 え~っと、エリナ・エーベルトっと。

 

「はい、確かに。……それでは、代わりに建て替えますので、欲しい物をどうぞ」

「相変わらず切り替え早いわねー。まぁいいわ、え~っとまずはこれとこれと、あとこれもね」

 

 そうして、こうして、私は必要なものをいくつか買い。

 余った時間で、市場をさらに調査するのであったー。

 

 

 

 

 で、夕方。

 公爵邸に戻ってきたわけだけど。

 

 

 

「よいしょっと!……ここに置きますね」

「ありがと」

 

 買っていたモノを部屋に積み上げ、ご満悦。

 

「しっかしまー。買いましたねー。これをどうするんですか?」

「まぁまぁ、これをちょっと手を加えて魔法の商品を作るわよー」

 

 具体的には二つほどー。

 

「魔法の商品ですか? お嬢様魔法使えましたっけ?」

「今は無理ー」

 

 将来的には使えるようになる。

 そして、主に原作主人公への嫌がらせに使うのだー。……我ながら最低だね。

 

「では、どのように──」

「それをこれから見せるのよ。くくくっ。未来の錬金術を見せてやろうじゃないの!」

 

 

 

 オーッホッホッホ!

 

 

 

 市場で安く買った腐りかけのレモンやらのかんきつ類。

 そして、金属くずで、隙間産業を制してやるわよー!

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