シナリオモードが追ってくる〜原作に関わりたくない悪役令嬢の華麗(?)なる逃走劇〜   作:LA軍

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第5話「確率論」

「あーねむたー」

「なら、お昼寝をなさったらいいじゃありませんか」

 

 いつもの市場、

 いつものメンバーで雑踏に立つも、私の足元はすでにフラフラだ。

 

 時刻は午後3時前。

 昼の授業が終わって割とすぐの外出なので、陽はまだ高い頃だが、私の顔にはクマがびっしり。

 ……明らかな寝不足である。

 

「そうもいかないでしょ。……誰かさんのせいで、トイチの借金を持っているんだもん」

「当然ですよ。そもそも、メイドからお金を借りるどっかの貴族令嬢が悪いと(わたくし)めは思いますけどぉ」

 

 へーへー。

 おっしゃる通りで。

 

「でも、その借金とも今日でおさらばよ」

 

 くっくっく。

 

「まーた、悪い顔をなさっておいでですよ。そんなんだから、鞭でしばかれるんですよ」

「それを思い出させないでちょうだい」

 

 今日も今日とて、メリンダ夫人にケツをビシバシとしばかれまくった。

 みてよこれ、腫れて真っ赤っか。

 

「こんなところで脱がないでくださいよ」

「振りよふり! 脱ぐわけないでしょ」

 

 痴女か!

 

「それよりも見てよ、これ」

 

 くくく。

 稼ぎも稼いだり、金貨がザックザク!

 

「あーそう言えば、さっきのお店で結構な値段で売れましたわね」

「でしょ? 紙は需要のわりに供給が少ないから高いのよ」

 

 羊皮紙なんてその最たる例だ。

 

 あの紙をつくるために、それ相応の獣の死骸が必要なのだから当然。もちろん、あの薄さにするために手間暇もかかっている。

 

 それをアンタ。

 中古とはいえ、それなりに安価で卸すともなればザックザクですよ、ザックザク。

 

「代筆屋があんなにお金を出すとは意外でした」

「あー連中は、元神父とか貴族崩れとか、小金もってんのが色々いんのよ」

 

 アイツ等は街中で代わりに手紙なんかを書く職業だ。

 この時代、この世界の庶民の識字率は最悪。

 なので、代わりに手紙を書いたり、書類を読んだりする職業がまかり通っている。そんな連中がの一つが代筆屋だ。

 

 簡単に言えば代わりに手紙を書く人。

 

「連中、半端に知識があるからね。だから出すとこには出すわ。紙が安価なら喜んで買うに決まってるでしょ」

 最悪転売もできる品だしね。

「なるほどー。でしたら、大きな商店に降ろしたほうがよかったのでは?」

 

 大店の方が、値がいいのは道理。

 だけど、それはそれで問題あり。

 

「そうもいかないの。……あれ中古の再利用品だしね。一応はお父様が書き損じた書類だもん。念のため、上書きしたうえで消してるけど……機密っちゃ機密なのよねぇ」

「あー……それで」

 

 まぁ、本当にヤバい情報は、ゴミになる前に処分されるので、あの手の書類はマヂでどーでもいい情報だったりする。

 とはいえ、貴族家から出る情報がどう活用されるかはわからないので、ここは個人の店に売るに限る。もちろん、それも安全とはいいがたいけどね。

 

「それと、お針子(・・・)さんに売っていた──あれは?」

「ん? あぁ、あれね」

 

 もう一つの換金アイテム。

 素材が微妙だったので数が作れなかったけど、10個ほど試作して全部売れた。締めて銀貨5枚の売り上げ。悪くはないが良くもない額。

 

「大したものじゃないけど、欲しかったらあげるー」

「欲しいわけではありませんが……なんです、これ?」

 

 ちょっとした金属片。

 失敗作だけど、使用には耐えるものをオパールに投げ渡した。

 

「針通しって代物よ。その輪っかに糸を通して引っ張ると一発で針に糸を通せるわ」

「なんと……! それって地味に画期的では?!」

 

 まーねー。

 昨日市場調査して見当たらなかったのがこれだ。

 

「とはいえ、こんなのアイデア商品だし、誰かに真似されたら一発で終わりよ。お針子連中なんて口が軽いし、来週にでも広まってるんじゃない?」

「な、なるほど……たしかに」

 

 まぁ、それはそれでいい。

 

 もともと大量に売れるものではないし、一時的に金を得られればそれでいいのだ。

 なにせ今の私に必要なのは小銭だからね!

 

「とはいえ、これでなんとか軍資金はゲットよー!」

「合計で金貨5枚と銀貨8枚ですね──では、私への借金が金貨3枚ですので利子を引いて……はい、残りをどーぞ」

 

 おーっふ。

 

「アンタ、容赦ないわね」

 

 きっちり、一割とってるし……。

 

「お嬢様の返す返す詐欺は飽き飽きですので」

「返すってのー。はぁ……せっかくの軍資金が半減」

 

 手元には金貨2枚と銀貨5枚かー。

 

 ちなみに、貨幣価値はだいたいが振銅貨一枚でパン一個。

 その銅貨が100枚で銀貨1枚。

 そして、銀貨10枚で金貨1枚。ちなみに、金貨2枚は町の衛兵のひと月分の給料相当──ま、日本円でいうところの20万円といった感じ。

 

「そう考えると、25万円かー」

「は? にじゅうごまんえ……なんの話です」

 

 こっちの話ー。

 

「しかし、徹夜で稼いだお金がこれかー、いいんだか、悪いんだか」

「稼ぎとしてはかなりの物かと」

 

 それはそう。

 

 貴族令嬢が徹夜で作業した代金として、ありかどうかは別とする。

 

「ま、おかげで労働の尊さを知ったわー」

「さすがはお嬢様です。その心をずっと大事にしていただければきっと下々に者も──」

 

 うん。

 つーわけでこれをもとでにもっともっと稼ぐわよ!

 

「というわけで、さっそく賭場に案内なさい」

「……人の話聞いてました?」

 

 聞いてた聞いてた。

 右から左に抜けたけど、聞くだけは聞いてた。

 

「はぁ……お嬢様は相変わらずお嬢様ですねぇ」

 

 そういいつつも、手元の年季の入った皮手帳をパラパラと……。

 

 ……それ、賭場情報も入ってんの?

 

「アンタも大概ね」

「視野が広いとおっしゃってくださいまし。……え~っと、貴族向けサロンと、荒れくれが集まる場所が近くにございますが、どちらに?」

 

 んなの決ってんでしょ。

 

 

 

「荒れくれのほうよ」

 

 

 

 

※ ※ ※ ※ ※

 

 

 

 わいわい。

 

  ぎゃはははは!

 

 

「おらー! てめぇ、順番抜かしてんじゃねーよ!!」

「なんで、俺の素材がこんなに安いんだ! 舐めてんじゃねーぞ!」

 

 ぎゃーぎゃーぎゃー!

 パリーン、ドカーン!!

 

「……いや、荒れくれとは言ったけど、ここって──」

「冒険者ギルドですね」

「あ、やっぱり?」

 

 えー。

 やっぱあるんだ。さすが異世界。

 

「えっと、私、賭場に案内してって言ったんだけど?」

「もちろんですわ。あそこにございますよ、ほらっ」

「ほらっ、て、あーた(アンタ)

 

 あー……ギルドに併設された酒場の一角か。

 

「なるほど。あれも賭場っちゃ賭場ね」

「はい。酒場にギャンブルはつきものですよ。正規の物ではございませんが、暇な冒険者が集まれば自然と賭場になります」

「ほほーう」

 

 なんでコイツがそれを知っているのかはさておき。

 冒険者ギルドかー……。

 

「一応、他にも酒場はありますよ? あとは、アングラな賭場もありますけど……私めが妥協できるギリギリのラインがこちらです」

「まぁ、さすがに半グレ連中がいるような賭場は私もごめんだし、ここでいいわ」

 

 だけど、できればふつーの酒場で良かったかなー。

 

「ここが一番安全ですよ。ギルド内での暴力沙汰はご法度ですので」

「ほんとにぃ?」

 

 うぎゃぁぁあ!

  どかーーーん!

 

「……これで?」

「じゃれてるだけですよ」

「言葉って便利ね」

「同感です」

 

 はぁ。

 まぁいいか。

 

 目的は荒稼ぎすることだし、別に酒場だろうがギルドだろうが何でもいいや。

 

 貴族向けサロンなんて論外だしね。

 こちとら12歳児ですがな。入る前に摘み出されるか、実家に通報されるのがオチだ。

 そう言う意味では冒険者ギルドは確かにありかもしれない。

 

 下手な酒場やアングラなところに、私みたいな美少女がのこのこと行ったら、

 身ぐるみはがされ、しまいにはあっちの膜まで剥がされて、エラいことになるに違いないしね。

 ある意味、グッドチョイスといえるだろう。

 

 なので、とりあえず、ナイス判断のオパールにグー♪

 

「いえー」

「いえー」

 

 そして、その間にも、喧嘩(?)で吹っ飛んできた冒険者を裏拳で弾き飛ばしたオパールを見なかったことにして、私は目的の卓を捜す。

 

 ギルド併設の酒場の中でもギャンブルで盛り上がっている卓はどれかなーっと……。

 

「あ、いいのみっけ」

「あそこですか?……結構なベテラン冒険者がいますし、掛け金もそこそこですよ」

 

 それがいいんじゃないの。

 

「なにより、複数でやってる(・・・・・・・)のがいいのよ」

「は、はぁ?」

 

 要領を得ない顔のオパールはさておき、

 BランクだかAランクだか知らないけど、いかにも歴戦といった感じの戦士たち詰める卓にズカズカと近づいていく。

 

 すると、ちょうど掛け金が尽きたのか、若い男が頭をぐしゃぐしゃ掻きむしりながら捨てセリフを吐いて去っていくところだった。

 

「ここいいかしら」

「あーん?」「なんだこのガキ」「おい、ここはお前みたいなガキが──」

 

 じゃりん♪

 

「ゲームしにきただけよ。この通り、お金もあるし、ルールも知ってる。……あ、後ろのデカイのはただの置物だと思っていいわ」

「置物でーす」

 

 デカいことは否定しない置物──もといオパールはそのまま、物言わぬ置物になる。

 

 すると、なぜかムスッと押し黙った冒険者たちは一度卓のメンバーに視線を映しつつ、私が投げた皮袋に中身をチラ見する。

 

「……いいだろう、ワンゲームの最低相場は銀貨1枚から。途中で降りても、そいつは回収する。いいな?」

「結構よ」

 

 銀貨一枚、つまりワンゲームで日本円にして1万円。

 かなりの相場と言えるだろう。

 

「ゲームはヴァン・アン(ブラックジャック)。親は時計回りでコイツのターンからだ。ここまでは?」

「すべて結構」

 

 すまし顔で言う私に、鼻を鳴らす冒険者たち。

 ガキのくせにそこそこ持っている私から身ぐるみ全部剥ぐ気満々らしい。

 実際、さっきの若者は自慢の剣までもっていかれたッポイ。

 

(ばっかねー。ギャンブルは引き際が肝心よ)

 

「その点私はよゆーよゆー」

「(そんなこと言ってますけど、お嬢様。勝算はあるんですか?)」

 

 こそっと耳打ちするオパール。

 

「(問題、ないわよ。コイツ等仲間じゃないし、イカサマしてる感じもない)」

「(そんなのどうしてわかるんんです?)」

 

 まぁ、勘かな。

 あとは──。

 

「(装備よ。ひとりは魔法使い、もう一人は弓使い、最後の(ディーラー)が回ってきた奴は斥候(スカウト)……こんなバランスの悪いパーティがいるわけないでしょ」

 

 しかも、ひとりは若い女で、のこりはオッサン。

 バランスどころの話じゃない。

 

「(なるほど、たしかに……さっきの若者がいたらパーティの可能性もありましたが、これはないですね)」

「(そーいうこと。あと、親のくせに手つきがカードに慣れてないのよ)」

 

 カードを切る手もたどたどしいので、おそらく時々遊ぶ程度だろう。

 つまり、ギルドに集まった暇人が偶発的にゲームをしているだけ──つまりは、

 

「私のカモってことよ」

 

 くっくっく。

 

「あーん? なんか言ったかい?」

「いえ、別に──」

 

 呆れたーみたいな顔で点を仰ぐオパールを尻目に、私はゲームに没頭していく。

 

 手持ちの資金は金貨2枚と銀貨5枚。これをいかに増やしていくかか勝負ってとこよ────……ってあれ?

 

「いきなりゴミきたかー」

 

 がっくし。

 

 くばられたカードは、「スペードのJ」に「ハートの5」つまり、ブラックジャックのルールでいうなら15……。

 微妙ぉ……。

 

 他に連中にも視線を向けると、同じく12、17と割と微妙な数字……。

 

 一方、ディーラーは一枚は伏せカードで、見えてるのは「ダイヤのA」

 ふむ。

 

 つまり、「10」か。

 

 これはないな……。

 もちろん、他の連中のどうこうをちゃんと確認──……よし、このゲームはたぶん無理ー。

 

「いいかい?」

「もちろん」

 

 ディーラーが開いたカードの合計値は19。

 ご当地ルールがない限り、ディーラーは17以上で手を止める。

 

 つまり、ディーラーの総勝ちだ。

 

「へへっ、悪いなお嬢ちゃん」

「いーえー」

 

 まーだまだワンゲームよ。

 

 こんなの序の口序の口──……といいつつも、次のゲームも似たような展開。

 

 親が「ハートのK」……つまり、「10」

 

「ぐむ……!」

 

 これも厳しい……。

 

「悪いなー」

「い、いーえー……」

 

 そして、この冒険者ギルドのルールでは、5ターンは親が続くらしいので、まだまだこの流れは変わりそうになり。

 残金、残り金貨2枚と銀貨5枚。

 

「(お嬢様、『ここが違うのよ、こーこーが……!』はどうなったんです?)」

「(だぁーってろ!!)」

 

 ちっくしょー。

 運が悪いなーいきなり2敗かー。

 

「だけど、落ち着け私──」

 

 そう、運が悪い(・・・・)のは事実だが、事実じゃない。

 

 ブラックジャックは確率だ。

 

 運の悪さはただの乱数。

 そして、私が勝負するのは自分の運にあらず──……!

 

「いいこと、オパール。見~ていなさい」

 

 くくくっ。

 ブラックジャックは、運の女神と勝負するんじゃないのよ、ディーラーをバーストさせるためのゲーム!

 

「つまり、神には頼らない! 頼るのは数字よ、数字!」

 

 そして、

 自分は徹底的に、数字と確率を信じて、頭をクールにして感情を排すのよー!

 

 

  おーっほっほっほ!

 

 

「さぁ、来い! 頭の中に確率の神を宿すのよー!」

「……いや、神いうてますやん」

 

 うっさい!

 今から、脳みそフル稼働するからだぁーってろ!!

 

 それからというものは、私は徹底的にカードを見る。

 場の山に残ったそれを計算し、アホな他の冒険者どものそれを見極めつつ、勝負に徹する!

 

 するとどうだ──。

 

 

  ざわざわっ

   ざわざわっ

 

 

「おい、何勝目だ?」

「すでに20勝くらい……。いや、もちろん、負けもあるんだが、あのガキ──……いい感じの所では確実に勝ちを拾って、それ以外だと負けが少ない」

「ああん、たまたまじゃねーのか?」

 

 すでにギルドで話題になってきたのか、なんどかメンバーが入れ替わりつつも、勝負は続いている。

 ちなみに、いまのところの勝敗は正確には16勝14敗。

 

 大勝というほどでもないが、大負けでもない。

 一見すると、普通のちょっと運がいい程度のゲーム運びに見えるが……とんでもない。

 

「ふふっ、今の金額は?」

「え~っと……ひーふーみー……銀貨で77、いえ78枚ですわね」

 

 ざわっ!

 

「8倍?! こん短時間で?!」

「マジかよ、なんだあのガキ!」

 

 ふんっ。

 7~8倍かー……堅実にいったにしては増えたほうかな。

 

「結構。ではそろそろここでお暇させてもらおうかしら。オパール」

「はっ。このゲームは場代として、こちらが支払ます──それでは」

 

 銀貨3枚は惜しいが、

 勝ちすぎも良くない。それでも、銀貨75枚──金貨換算で7枚以上だ。つまり、7~80万の稼ぎだ。

 

 うふふふっ。

 初日にしては悪くないわねー。

 

「それでは皆様、ごきげんよう」

 

 優雅に一礼。

 恰好こそ、地味にはしているが貴族特有のオーラはバレバレなので、ことさら隠す気もしない。

 

 ギルド側もその辺が分かっているので、無暗につっこみもsないし、かといってへりくだりもしない。

 見て見ぬふりという奴だ。

 

 そうして、こうして私はそれなりの金額を手にしてギルドを去るのであった──。

 

 その帰り道。

 

「……なに?」

「いえ、その──どうやったのかなーって」

 

 粗末な馬車の中でじーっと視線を向けてくるオパール。

 

 奴の手には私から巻き上げた借金返済という名の金貨数枚と銀貨があるが、私はそれ以上を稼いでご満悦。

 そのからくりが知りたいという感じかな?

 

「お嬢様の勝ちはたったの16勝。てすが、勝ち金は何倍も。これって偶然じゃないですよね?」

 ふふん。

 そりゃそーよ。

「こんなの、大したことじゃないわ。場のカードを数えただけよ」

「はい? それってイカサマですか?」

 

 ちゃうちゃう。

 ただの確率論。

 

「カウンティングっていう手法よ。細かいこと言うと分かりにくいから、ざっくりとだけね」

「はい、ぜひ!」

 

 いや、ざっくりとやで?

 なんで目ぇキラッキラやねん。

 

「え~っと、そうね。まず、ブラックジャックなんだけど、このゲームって比較的、カードが数えやすいし、人数が増えるとその分情報も増えるのよ」

「情報、ですか?」

 

 そそ。

 

「まず前提として、ブラックジャックは自分や周囲との戦いじゃなくて、ディーラーをいかにバーストさせるかが勝負。ここまではいい?」

「はい。……はい?」

 

 いや、わかってないな、コイツ。

 

「まぁいいから聞きなさい。52枚のカードがあるなかで、ミソとなるのは「10」のカード」

「はぁ? 絵柄とかそう言う……」

 

 うん、そう。

 

 あと、純粋に数字の10な。

 

「それがあるおかげでカードのバランスが著しく悪いのよ。1~9まではそれぞれ4枚ずつしかないのに、10だけやたら多いことになるでしょ?」

「そうですね」

 

 なので──。

 

「それらに『確率論』と『引き算の概念』をいれるだけで、簡単な勝負基準が作り出せるのよ」

「基準……」

 

 そう、基準だ。

 

「マヂでざっくりとだけど、2~6までの数字で+1、7~9を0、それ以上の絵柄や10を-1って感じにして」

「え~っと……」

 

 メモるなメモるな。

 

「この計算式をもって場の数字が大きくなったら勝負時──それだけよ」

「……はい?」

 

 うん、まぁ、私も細かい理屈は知らないのよね。

 いわゆる『ハイロー戦術』ってやつ。

 

 昔、学校でちょろっと習っただけだし──っていうか、今こういうのって教えてるのかしらね?

 おっと転生前の歳がバレるー。

 

「う~ん、よくわからないです」

「深く考えなくていいのよ。私を含め、ディ-ラーや他のプレイヤーの見せカードの数字を計算。場にあるカードの数字をさっきの基準に置き換えて計算。その合計が『+』になったら勝負時。『+4』以上だったら大勝サイン。……それを見極めて、その時々に掛け金を釣り上げるだけよ」

「……あぁ! なるほど! つまり、2~6なんかの数字が多く出ていて、場が「+」側に傾いてるってことは──」

 

 おっ。

 

「──まだ出してない札に絵札や10が多いってことですか!!」

「そーいうこと」

 

 なーるほど、と膝をうつオパール。

 まぁ、言うほど簡単じゃないし、確率論は乱数に弱い。

 つまり数をこなさないと最終勝利には近づかないけどね。実際、最初は2連敗だったし。

 

「はー……お嬢様って賢かったんですねー」

「殴るわよ」

 

 誰がアホお嬢さまじゃ!

 

 こちとら、あと3年で死亡ルートに入るの決定なんだから、必死にもなるわーい。

 

「しかし、あのギルドで同じことはもうできないわねー」

「そうですか?」

 

 そりゃそうよ。

 

「勘のいい奴、頭のいい奴が真似するし──そして、そもそもギルドが禁止するんじゃないのー?」

 

 もっとも、あくまで確率の話なので、誰でもうまくいくかというとそうでもない。

 

 何百何千とやれば確実に勝ちに傾くだろうが、数回程度では負けがかさむこともある。

 そして、負けがかさむと人間ってのは冷静な判断ができなくなり、妙な勝負を挑みがちだ。

 

 いるはずもない神に頼ったりねー。

 

「確かにありそうですねー」

「でしょ? なので、次は、別の所で稼ぐわ。それで、数回繰り返してこの稼ぎ方からは足を洗うのよー」

「おー。潔いですね!」

 

 とーぜん。

 ギャンブルで稼いだ金は絶対身につかないもの。

 

「なので、明日もいい感じの賭場をよろしくね。あ、当然、貴族のサロンはなしよー」

「心得ていますとも」

 

 ニヤリと笑ったオパール。

 

 ……コイツ、今日の勤務が終わったら絶対やるだろうなー。

 まぁ、いいけどね。

 

 

 

「さて、これである程度の資金を稼いだら次だ」

 

 

 

 まだまだ、手元も資金は少ないけど、稼ぐ段取りは徐々に整いつつある。

 3年なんてあっと言う間だし、のんびりして覧内から、次もガッポリ稼ぐわよー!

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