公安対魔特異4課。
その日、東京の一角で異常事態が発生していた。
「〇〇公園の周囲10メートルが白い煙で覆われています!」
「悪魔か?」
「いえ、タバコです!!」
会議室が静まり返る。
「……タバコ?」
早川アキが眉をひそめる。
「現場近くの住民によると、『猫耳を生やした魔人が公園でタバコをずっと吸ってる』と」
「なんだそりゃ」
デンジは耳をほじる。
「別によくね? 俺は気にしねえぜ」
パワーは机を叩いた。
「ワシは知っておるぞ! タバコは大人のカッコいいやつじゃ!!」
「お前は絶対似合わねぇよ」
そんな中。
マキマだけが黙っていた
「……」
「マキマさん?」
「嫌な予感がします」
──―
現場。
そこにはいた。
公園のベンチに座り込み、空き缶に大量のタバコの吸い殻を入れて
満面の笑顔でタバコを吸うヤニねこが。
「スゥ────ー……」
「はぁ──────……」
「今日も労働したくないにゃ……」
デンジは目を輝かせた。
「なんだこいつ! めっちゃダラダラしてる!」
アキは顔をしかめる。
「臭っ……!」
パワーは煙にむせた。
「ゲホッ!! 人間界は火事か!?」
ヤニねこはデンジたちを見ても全く動じない。
「にゃ、サラリーマンだにゃ」
「仕事大変そうだにゃ」
「吸うにゃ?」
一本差し出されるデンジ。
「いいのか!?」
「ダメです」
マキマの一言でデンジの動きが止まる。
しかし。
その時だった。
ふわっ。
煙が風に乗ってマキマの元へ。
「…………」
マキマの表情が固まる。
さらに追撃。
「スゥ──────……」
「はぁ──────……」
「今日のメシ何にしようかにゃ」
「二郎系でヤサイマシマシ、ニンニクアブラカラメにするかにゃ」
煙が直撃する。
マキマは数秒沈黙した。
「……吐きそう」
アキが驚いた。
「マキマさんが吐き気を!?」
どんどん顔が青くなるマキマ
再び煙。
「スゥ────ー……」
「はぁ────ー……」
「……」
マキマが一歩下がる。
さらに一歩。
また一歩。
デンジは人生で初めて見た。
マキマさんが涙目で顔を歪めているところを
(涙目のマキマさんもかわいい)
「マキマさん!?」
「早川くん、あとは任せます」
ヤニねこが首を傾げる。
「お姉さん疲れてるにゃ?」
「吸うと落ち着くにゃ」
「遠慮します」
「メビウスだにゃ」
「遠慮します」
「限定パッケージだにゃ」
「遠慮します」
「普通のより高かったから美味いにゃ」
「遠慮します」
「頑なだにゃ」
その時。
ヤニねこが近づく。
「お姉さんいい匂いするにゃ」
「お礼に幸せの気分を分けてあげるにゃ」
ヤニねこは口からハートの煙の輪をマキマに向けて吐き出した。
「…………」
マキマは走っていき曲がり角に消えていった。
アキは頭を抱えた。
「嘘だろ……」
パワーは叫ぶ。
「マキマに勝ったぞ!! よくやったぞタバコの悪魔よ!! ワシたちの勝ちじゃあ!!」
「にゃーはヤニねこにゃ」
──―
数日後。
公安本部。
対策会議が開かれていた。
議題。
『ヤニねこ対策について』
「現状、物理攻撃は効果が薄いですね」
「説得も無意味というか」
「労働を勧めても逃げますからね」
「禁煙外来に連れて行ってもそこでタバコ吸ってましたし」
沈黙。
マキマが静かに言った。
「喫煙所と空気清浄機を増設しましょう」
全員が頷いた。
その日から東京都には、
最新型空気清浄機が大量導入されたという。
一方その頃。
ヤニねこ。
「最近喫煙所が増えたにゃ」
「吸いやすいにゃ」
「ありがたいにゃ」
結果として、
ヤニねこの生活環境が改善された。