あのクソスライムをぶちのめして、俺は絶対に成りあがる(n回目) 作:遺物
ミュウランさんと別れてから、私は街往く人にリムルの印象を聞きました。民衆からは中々好意的な印象を持たれているようです。ですが、私は騙されません。クレイマンさんが言っていました。
「アイツは邪魔なのですよ。私の野望に。」
クレイマンさんは良い人だ。こんな私を助けて下さったのですから。そんなクレイマンさんを困らせるリムルを、私は許せません。
そう考えると、少々気分が高揚してしまいました。少し体を動かしましょうか。
そう言えば、クレイマンさんからある武器を貰ったのだ。それがこの針、
「これは傷つけた防具や生物の耐久力を著しく落とす代物だ。伝説急の武器らしいのだが、如何せん小さいため、天を穿つ針とは名ばかりの武器さ。でも、お前ならば・・・」
<ユニークスキル 拡縮者>
こうすることで、剣くらいの大きさにすることが出来ます。持ち手は後付けですが、様になっています。私も魔王の部下なのだから、ちょっとは格好良くしないと。都市から少し離れた森林で剣を振るっていたのです。
その時でした。森の奥から一迅の風が吹いたと思ったら、後ろから何者かの声がしたのです。
「君は誰だい?」
咄嗟に背後に剣を向けました。が、そこには誰もいませんでした。私が不思議に思っていると、下から水色の塊が飛び出てきました。
驚いた私はそれを、いや、その方を思いっきり切ってしまいました。
二つに分かれた水色の球体は、モゾモゾと動いて一つに戻ると、人語を話しました。
「いや~ごめんごめん。びっくりさせちゃったかな?」
私はまた驚きました。まさかこんなに早く、彼と会えるとは思っていなかったのです。
「俺はリムル=テンペスト。君の名前は?」
好都合。まず頭に浮かんだ言葉がそれでした。取りあえず、今はこちらに敵意があることを悟られてはいけません。
「ご丁寧にどうもぉ!俺は氏家逆人。見ての通り・・・えーと、旅人だ!」
「氏家逆人ね。サカヒトって呼んでもいいかい?あと、とても旅人には見えないけど。」
確かに、荷物も持たず全身マントでフードを被り、剣を振り回している奴は旅人には見えないでしょう。そこに関しては私も同意見です。
「あぁサカヒトで構わないぜ。この格好は・・・えーと、えーとぉお、あ、用心棒!旅をしながら用心棒で日銭を稼いでるのさ!今は日課の鍛錬の時間でねぇ!」
そう言うと、スライムなので表情は分からないが、とにかく張りつめていた空気は緩んだのが分かりました。
「そうかい。それなら良かったんだ。」
そして、私の頭の中にある一つの考えが浮かびました。ここでリムルを倒してしまえばいいのではないでしょうか。ここで私が任務を終わらせてしまえば、ミュウランさんの仕事も減ります。なにより、きっとクレイマンさんも喜ぶでしょう。王の居ない国など、女王蟻のいない蟻塚、取るに足らないものです。
「少し・・・手合わせをしないか?」
このまま斬りあいに持ち込み・・・
「おいおいサカヒト、お前相当腕に自信があると見えるぜ?」
彼には死んでもらいましょう。
「その通り。俺が怪我しても構わん。早く戦ろうぜ!」
ごめんなさいリムル=テンペスト。
「まぁいいか。後悔すんなよ!」
貴方の運命はここで終幕です。
「良し、行くぜサカヒト!?」
私は彼に剣を向け、脚に力を込めました。そして、必殺の一手を使おうとしました。
(これで終わりです。)
<拡縮者>
「「良い訳ないでしょう!」」
その瞬間、森の向こうから二人の女性の声が被って聞こえてきました。後少しで、地中に埋めることが出来たというのに、とんだジャマが入りました。
「もう、リムル様ってば!私たちが来ていなければ、本当に戦っていたんですか?ソウエイから知らされてて良かった~。」
「ん?何ですかあなたは?まさかリムル様の暗殺の為に仕向けられた者?!」
「ちょっと待て、シュナ、シオン。おいサカヒト。こいつらに説明してやってくれ・・・サカヒト?」
動けませんでした。彼女が目に入った瞬間、私の身体は固まり、息は止まり、心の臓は16ビートを数えました。
タイプでした。好みドストライクでした。
「あの・・・お名前を・・・教えていただけませんか?」
そう言うと、彼女は少し不思議そうな顔をしながらも、答えてくださいました。
「私はリムル様の忠実なる部下、シオンです。それが、何か?」
シオンさん。とても優美な名前をしていらっしゃるお方だ。
「そう・・・ですか。」
すると、リムルが口を開いた。今は貴方の声など聴きたくはないというのに。
「そうだ。シュナは俺に戦ってほしくないんだよな。」
「そうですよ!」
「で、サカヒトは鍛錬のために戦いたいと?」
「あ、あぁ、そうだよ。」
「ならば、シオンと戦えばいい。シオン、行けるか?」
「はい、リムル様が行けと仰るのであれば。」
やはりコイツは鬼畜の魔物のようです。見るからにか弱そうな彼女を、私と戦わせるなんて、なんということを思いつくのでしょう。
ですが、ここで引き下がっては先ほどあんなに戦いたがっていたのが怪しく思われるかもしれません。
「いいいぃいいぜ。やややややってやろうじゃねぇか。」
「声が震えてるぞサカヒト。」
お互いに距離を取り、剣を持ち、にらみ合う。リムルが見ている以上、能力は使わずに終わらせたい。
「よーい・・・始め!」
すいませんシオンさん。なるべく傷つけず終わらせますので、どうか私を許してください。
思いっきり踏み込み、喉元に剣を向けて降参してもらって終わり。それでいいでしょう。
「ハッ!」
剣は思い切り空を切りました。私はこんなに普通の女性が素早いものなのかと思いましたね。シオンさんは驚いた顔をしていました。
「クッ早い・・・」
そうして、また互いに見合っている時に、リムルから聞かれました。
「サカヒト!どこかで剣を学んだのか?」
「故郷に師匠がいるんだ!」
まぁ半分ホント半分嘘です。◯ター・ウォーズに憧れていた時期に、剣技の真似をしていました。実践でも通用するものですね。
「俺からも良いか?彼女は人間ではないのか?!」
「シオンは鬼人だぞ!」
種族が分かつ恋。私、非常に燃えます!
剣を空に投げ、格闘戦に持ち込みこもうとしました。もう彼女に手が届く距離まできた。これで終わりだ。
気付いたら、私の目の前に彼女がいました。彼女に胸ぐらを掴まれて、グイッと引き寄せられました。それで、ポロっと口走ってしまったのです。
「・・・綺麗だ。」
そこで一瞬、ほんの一瞬だけ二人の動きが止まりました。
「え!?」
そう思ったのも束の間、私は気付いたら、彼らがとても小さく見えていました。
彼女に投げ飛ばされていたのです。
「うぉわああぁぁぁ!!」
「勝利です!リムル様!シオンの勝利ですよ!」
「それより大丈夫かサカヒト!だからちゃんと聞いといたのに!」
彼らの声がやたら遠く聞こえます。この時の私は恥ずかしい想いで、とにかくこの場から離れたかったのです。
「覚えてろシオン!次は俺が勝ってやるからな!」
「なんだったんですかね。」
「なんだったんでしょう。」
「なんだったんだろうな。」
木の枝から枝へ飛び移り、森の奥へと逆人が去っていったあと、リムルは密かに思った。
(アイツ、日本名だった。ということは、俺と同じ転生者か?だとすればスキルがあるはずだ。気になるな、アイツにはソウエイを監視につけるとしよう。)
気を取り直して、何かやることはないかと考えました。そうだ。今のうちに都市中に罠を仕掛けておきましょう。これは名案だ、と思いましたね。そうと決まればゲルミュッドさんに頼んでおこう。
「爆弾だとぉ?」
「あぁ、たぁ~っぷり死人が出る奴をくれ。」
「何故ゆえに?」
「俺のスキルで縮小した爆弾を都市に隠す。そうして、攻め入る時が来ればそれらを大きくしてドカン!って寸法よ。」
「なるほど、了解した。すぐに配下の魔物に届けさせよう。あぁそうだ、伝え忘れていたんだがな・・・」
「何だ?」
「オークロードがジュラの大森林へと攻め込むのだ。そこでだ。お前には奴の監視を頼みたい。ワタシは私用により現地へいけないのだよ。」
「了~解。面白くなりそうだぜ。」
よし、爆弾が届けば、だいぶ皆の負担も軽減されるだろう。早く作戦が実行される時が楽しみだなぁ。