TS転生不老不死銀髪幸薄系美少女   作:むけー

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以前投稿してたものをちょびっと変えて再投稿もとい初投稿。
曇らせ物です。


未亡-1

 気がついたら異世界転生してた。しかも女として。巷で流行っていなくもないTS転生ってやつだ。

 

 もちろん最初はビビり散らかした。

 現代日本で大学生として普通に暮らしていたら、次の瞬間いきなり赤ん坊になってたんだから。

 しかも周りの人はみんな白髪で、明らかに日本人離れした顔立ちで、知らん言語を話してるときた。

 

 あ、異世界なんだなってピンと来たね。

 

 それからは……何してたんだったかな。

 

 とりあえず言葉が分からないとどうにもならないから、周囲の会話に耳をすませてリスニングの訓練をして。

 幸い両親らしき二人はいい人達だったから、彼らから愛情を注がれながら育って。

 なんとか言葉が理解出来るようになってからは、子供らしくない異質な子供として見られているんじゃないかと不安になって。

 お隣さんの幼馴染の男が、ただの転生者の自分なんて霞むほどの化け物みたいなやつだったから、特に気にされていなくてホッとして。

 

 それから……それから、化け物幼馴染と仲良くなって。

 

 いくつか歳を重ねて、化け物幼馴染が更なる化け物に進化していくのに置いていかれないように、剣の腕を磨いて。

 女の体の成長に引っ張られて精神も変質していくことを自覚しながら、幼馴染とずっと一緒に日々を過ごして。

 両親が魔物に食われて塞ぎ込んでいた私を、幼馴染が慰めてくれて。

 一人称が、いつの間にか『俺』から『私』になって。

 村の守護者になった幼馴染と、その右腕として村を守ってきて。

 

 なんやかんやあって、幼馴染とくっついて。

 

 それから、それから……何でこんなことを思い出してるんだっけ? 

 

 

「お……ごふっ、あぁ?」

 

 

 思い出した。これ、走馬灯か。

 

 目線を少し下に下げると、咄嗟の防御に何の役にも立たず真っ二つに砕かれた剣と、腹に突き刺さっている黒い触手と、足元に赤い水たまりが見えた。

 

 下腹部を貫通している何かが蠢いて、その度に四肢から熱が失われて、そのくせ腹だけは燃えるように熱くて、傷口からはドボドボと赤い液体が零れていく。

 

 時々見える肉塊は、はみ出た内臓か何かだろうか。

 

 ああ、これは助からないな、と。

 そんな他人事みたいな感想を抱いた。

 

「────!!」

 

 するとそこで、我が頼れる愛しき幼馴染が目にも止まらぬ速さで腹に突き刺さったままの触手を切り刻み、私を守るように剣を構えて目の前に立った。

 

 こちらへ向けて何かを叫んでいるようだが、耳鳴りがひどくてよく聞こえないのが残念だ。

 

 はは、お前のそんなに焦った顔、初めて見たよ。

 

 あーあ、()()()()だってこの前言われたばっかだったのになあ。

 

 腹にデカい穴が空いちゃどうしようもないよなあ。

 

「ぐっ……ふぅ……!」

 

 もう目も霞んでしまっているが、私と我が子を殺すことになる下手人だけは一目見てやろうと、なんとか目線を上げる。

 

 

 そこを染め上げていたのは、純粋な『黒』だった。

 

 

 村の礼拝堂として使っていた洞窟の壁面は全く明かりを反射しないようになり、のっぺりとした黒が広がっていてとても気味が悪い。

 

 村の守り神を祀っていたはずの祠は、とっくに漆黒の中に飲み込まれている。

 

 そしてその祠があったはずの場所には、人型のように見えるナニカがいて。

 

 本来目玉があるはずの位置に口を二つ持ち、鼻がある位置には指が生え、口がある位置に金色の目玉をいくつも持っているような、めちゃくちゃに失敗した福笑いのような風貌のアレは。

 

 明確に嫌悪感と敵意と殺意を持って、私達を──いや、私だけを認識していた。

 

 ああ、だが何故だろう。それも仕方ないと思ってしまう。

 

 なぜなら私も、アレに殺されるからとかいう理由ではなく、本能として、腹の底から、心の底から──一目見た瞬間から、アレのことをこの世から消し去ってやりたいと思ってしまったから。

 

 きっと、アレも同じ様に感じているんだろうと、そう直感したから。

 

「くたばれ……この、ばけものが……」

 

 だからそう言って、中指だけ立てて、私は膝から崩れ落ちた。

 

 精一杯の虚勢でしかないが、今の私にできることなんて何も無かった。

 

 私は死んで、より強いアレだけが生き残る。

 

 それがこの弱肉強食の世界の結末で。

 

 新しい生を受けても何も成せなかった、くだらなくてしょうもない私の末路なんだ。

 

 だから、だからさあ。

 

「……馬鹿、がっ……」

 

 私に治癒の術なんて掛けてないで。

 

 私をアレの視線から遮るように立たないで。

 

 私に向かって、安心させるように微笑んでないで。

 

「はやぐっ……いっ、にげろよぉ……!」

 

 あんな化け物に、人が敵うはずない。

 

 やめろやめろ、私だけならまだいい。

 

 だけどお前まで、貴方まで死んでしまったら私は──

 

「────、────?」

 

 私に向かって、何かを言っている。なんて言っているんだろう。伝わってない、聞こえてないから。私のことなんて気にしないで、早く逃げて。

 

 そんな願いも虚しく、私の愛しい化け物は、黒い化け物に白く輝く剣を向け。

 

 黒い化け物は、私を殺すのを邪魔する愚者を、この瞬間初めて認識した。

 

 そして二人の化け物は向かい合って──

 

 

 

 ああ、私の愛する人は殺される。

 

 神話のような戦いだった。

 

 力は劣らず。どこにそんなものを隠していたのか、これまで本気なんて見せたことがなかっただけか。

 

 無尽蔵に湧いて出る触手を、白銀の斬撃で全て消し飛ばしながら化け物に迫って。

 

 ただその度に、化け物は私に攻撃の狙いをつけ、彼は私を守るためにまた退いて。

 

 今日は礼拝の日で、私達以外にも人はいたから、村人たちもまとめて守るように縦横無尽に立ち回って。

 

 しかしそんな戦い方も長くは続かず、彼の体に傷が増えていき、守るべき村人も一人、また一人と触手に貫かれて死んでいく。

 

 傷つき疲弊した彼はボロ雑巾みたいになっていく。

 

 その間も、私に掛けられた治癒の術はずっと途切れないままで、私に向けられた攻撃は一つも体にかすることもなかった。

 

 本当に馬鹿なんじゃないだろうか。私を見捨てて戦っていれば、速攻で片を付けられて、私以外の生き残る人数はいくらか増えていただろうに。

 

 貴方まで死ぬ必要なんてなかったのに。

 

 判断ミスだ。大馬鹿者だ。結局皆死ぬ。くだらないものを救おうとして全部失うなんて。

 

 馬鹿すぎて涙が出てくるよ。くそったれ。だから早く逃げろって言ったんだ。いや、逃げなくてもいいから、アレをぶっ殺してくれれば、ああくそ違うっ。とにかく生きてくれれば良かったのに。

 

「──っ」

 

 とそこで、ちょうど私が倒れ込んでいる隣に、全身ボロボロの彼が弾き飛ばされてきて、私と目が合った、ような気がした。

 もうよく見えない。最期に、顔だけでも見たかったけれど……。

 

 治癒の術が途切れて、急速に体が冷えていく。

 

 ああでも、右の手のひらだけが少し温かい。握ってくれているのだろうか。粋なやつ。

 

 そろそろ眠くなってきたな。とても疲れて、体が重い。彼と一緒に眠れるなら悪くないかもしれない。

 

 なかなか、ままならない、後悔ばかりの二度目の人生だったけれど。

 

 貴方と出会えて、良かった────

 

 

 

 ◇

 

 

 

「ごめん、負けちゃった」

 

「……けど、君を見捨てることなんて、絶対に出来なかった」

 

「例えここであの子に勝ったって、君がいなかったら僕の生まれた意味がなかった」

 

「だから……ごめんね。これは完全に、我儘でしかないけれど」

 

「君は、ここで死んじゃいけない」

 

「この選択は、君を苦しめるだけかもしれない。けどいつの日か──」

 

「──君とどこかでまた出逢える日を、ずっと待っているから」

 

 

 男は、傷だらけの体を引きずって倒れている女に近づき、血色を失っているその唇に口付けした。

 

 すると、女の体がほのかに光りはじめ──

 

 

 その直後に、二人まとめて漆黒に押し潰された。

 

 

「今までありがとう、僕の愛しい君」

 

 

 

 ◇

 

 

 

 私は目を覚ました。何が何だか分からなくて、とりあえず体が五体満足であることを確認する。腹の穴は、もう塞がっている。

 

「……あれ?」

 

 完全に死んだと思っていた。だが死んでいない? 何故? 

 

 思わず辺りを見回してみると、あの黒い化け物はもういないようだった。

 

 ただし、礼拝堂だったその場所には、そこら中に死体が転がっていて、生きている人間は私以外には存在していなかった。

 

 そして、私のすぐ隣に彼の上半身と下半身が分かれてしまっている死体があった。

 

 なるほど、これは悪い夢だな。

 

「よし」

 

 彼が右手に握っていた白剣を手に取り、私は自分の首を斬り飛ばした。

 

 これで一緒に死ねる。おやすみなさい。

 

 

 

 

 

 

 ──私は目を覚ました。

 

「は?」

 

 何だ? 何がどうなってる? 

 

 自害した記憶がある。くるくると宙を舞う首から見た景色を覚えている。

 

 死んだ。死んだはずだ。絶対に夢じゃない。何で死んでいない? 

 

 とりあえず地面に落ちていた剣を拾って、目玉を貫通させて脳をかきまぜて──

 

 

 

 ──目を覚ました。

 

「はは、は?」

 

 おい、ふざけるな。なんだこれは。なんで、なんでこんな。

 

 私の隣には半分になった銀髪の彼が横たわっている。

 

 その横には私の頭が落ちている。白かったはずの髪が銀色になった私の頭が転がっている。

 

 目を開いたまま、虚ろな金色の瞳でこちらを見ている。

 

 なんだ? 悪い夢でも見てるのか? 

 

 頭がおかしくなりそうだ。いやもう既になってるのか。

 

 気味が悪い。気持ち悪い。冒涜的すぎる。夢なら早く覚めてくれ。そうじゃないなら……いやそんなはずない。

 

 ふざけるな、ふざけるなよ。

 

 

 私は胸骨を砕きながら心臓に剣を刺し、確実に致命傷に至らせて、その激痛に意識を失って──

 

 

 

 ──目を覚ました。

 

 ──目を覚ました。

 

 ──目を覚ました。

 

 ──目を覚ま──

 

 ──目を──

 

 ────

 

 

「──ぐ、うぇ……」

 

 

 その日、私は死ねなくなった。

 

 

「なんで……なんでだよ……」

 

 

 彼のいない世界に取り残されてしまった。

 

 

「これも、お前の力なのか? なあ、おい……」

 

 

 しかし、これが彼の望んだことだと言うなら。

 

 私はこれから、何をすればいいのだろうか。

 

 教えてくれよ、誰でもいいから。




●主人公ちゃん
・本作主人公。めちゃくちゃかわいい。そこそこつよい。
・白髪赤眼→銀髪金眼。
・そこそこでかい。
・メンヘラ。

●幼馴染くん
・主人公ちゃんの恋人。めちゃくちゃイケメン。クソ強い。
・主人公ちゃんらぶ。ガチ恋。村人全員<主人公ちゃん。
・銀髪金眼は『守護者』の証。これを産まれた時から備える彼は、他の追随を許さない圧倒的な才を見せた。たった一人、産まれた時からずっと傍にいた女の子を除いては。
・本来守護者となった者は、子孫を多く残すため村の女子全てを孕ませる義務を負う。しかし今代の守護者は何をトチ狂ったのか、たった一人の親無しにご執心だ。と、村の長老には不評だった。
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