蒼の栄冠   作:星乃夜空

1 / 2
こちらの活動報告にて主人公チームのキャラ募集を行っております!
たくさんのご応募お待ちしております!
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=342265&uid=493369


プロローグ

甲子園。

そこは、球児なら誰もが憧れる夢舞台。

そして、『才能』と『運』に恵まれ、『努力』をした選ばれし者達しか立つことができない、憧れの地。

 

夏の日差しが照りつける中、甲子園は暑さに負けない盛り上がりを見せていた。グラウンドの土は陽光を浴びて黄金色に輝き、フェンス越しに見える観客席は、目の前の激戦を見守る無数の眼差しを待ち受けていた。

スタンドからは、選ばれなかった野球部員たちによる精一杯の応援の声が響ぬ。彼らの汗は、試合に出場できなくとも、その熱意は確かにここにある証。

 

そのスタンドの一角で、俺、天宮葵桜(あまみやあお)はどこか他人事のようにその光景を見つめていた。

 

選ばれなかった俺達のために戦う戦士達を応援しなければならないのは分かっている。

 

だが、そんな気持ちすら半分義務のように感じてしまう自分がいる。三年間、必死に練習してきたのに、ベンチ入りメンバーに入ることはできなかった。努力はした。でも足りなかった。才能もあったのかどうかも分からない。

 

今、あの輝くグラウンドに立つことすら許されなかった俺にとって、この歓声も応援も、全てが遠い世界の出来事に思えた。あそこに立てた人間だけが得られる栄誉、名誉、感動。それらを手に入れることができるのは一部の人間だけであり、俺はその枠組みから外れたのだ。

 

 

それでも、やっぱり俺はあの舞台に立ちたかった。 

甲子園に⋯⋯いや、高校野球という舞台で1度でもいいから選手としてプレーしたかった。それが叶わない夢だとわかっていながらも、心の奥底では諦めきれずにいた。

 

試合終了を告げるサイレンが鳴り響き、選手たちが整列して挨拶を交わす。

結果として敗退が決まった俺達は、これで高校野球が終わった。

この悔しさや虚しさはどうすればいいのだろうか?

来年なんて俺達3年生にはもう無い。メンバーに選ばれなかった時点で、もう終わっていたのだから。

 

 

 

 

試合後の帰り道を俺はひとり歩いていた。グラウンドの喧騒も、仲間たちの話し声も、遠く離れていくように感じる。今日は負けたが、ベンチ入りすらできなかった俺にとっては、今日も明日も、何も変わらない一日の終わりだった。

 

「……結局、俺は何のために三年間やってきたんだろうな」

 

夕焼けが西の空を赤く染める。オレンジ色の光がアスファルトに長い影を落とすが、その影さえもどこか頼りなく揺れているように見えた。周りを行き交う人々も、自分とは違う世界の住人のように思える。甲子園を目指した青春の一ページは、俺にとっては白紙同然のものだった。

 

途中、コンビニの前で立ち止まる。喉が渇いていた。自動ドアが開き、涼しい店内に入る。ペットボトルのスポーツドリンクを一本手に取り、レジへ向かう。会計を済ませ、店を出ようとした、その時──。

 

ブゥンッ!

 

突如、けたたましいエンジン音と金属が擦れるような異音が背後から迫ってきた。振り返る間もなく、何か巨大な質量が俺の体を容赦なく吹き飛ばす衝撃。

 

「……っ!?」

 

視界が一瞬真っ白になる。全身を襲う痛みよりも、何が起こったのか理解できない混乱の方が先に来た。車だ。歩道に突っ込んできたのか? 運転手は? 思考がまとまらないまま、硬い地面に叩きつけられた感触と共に、耳鳴りのような轟音が世界を埋め尽くす。

 

冷たいアスファルトに叩きつけられ、薄れゆく意識の中で最後に脳裏をよぎったのは、やはり甲子園の眩しい照明と、俺が永遠に触れることのできなかったグラウンドの砂の匂いだった。

 

 

────ああ、やっぱ俺は、あの舞台に立ちたかったな。

 

 

そうして俺は、もう二度と目覚めることはない深い闇に包み込まれた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。