残る枠は遊撃手のみとなってますが、しっかり吟味来た上で確定したいと思ってますので、たくさんのご応募お待ちしております。
場合によっては2人採用する事になるかも?
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=342265&uid=493369
入寮日の翌日。朝日が完全に昇りきり、今日もまた一日が始まる。
ジャージに着替えて身支度を済ませ、適当に買っていたゼリー飲料を飲んで寮の部屋を出る。
外に出たら軽いストレッチと準備運動で身体を温め、30分間のランニング。距離にして大体5キロ。
これが俺の今の日課だ。
高校でも投手をやる以上、パフォーマンスを落とさないように体は動かしておかなきゃいけない。その上高校野球から試合は9回まである。真夏の連戦を投げ抜くことを考えるならスタミナは必要不可欠。これからも少しずつ距離を延ばすことも視野に入れている。
そんなこんなでランニングを終え、グラウンドへ向かう。買っておいたスポーツドリンクでのどを潤しながらベンチで少し休憩。
程なくして、燃えるような真っ赤な髪を揺らしながら真っ直ぐ歩いてくる少女が一人。
「ふふっ。おはようございます、葵桜くん」
「おー、火乃宮か。おはよう」
昨日運命的な再会をした火乃宮炉佳。
こちらも挨拶を返しながらも、アップを始める。
入学式をまだ迎えていない関係上、野球部はまだ設立されていないが、練習自体は可能であり、グラウンドを自由に使っていいことは確認済。現に俺達野球部以外にも陸上、サッカー部、バスケ部といったメジャーな部活への入部、設立を目指し、早くも練習を開始しているところもある。
俺達経験者にとっても、グラウンドを使って練習できるというのは非常にありがたい。
「あ、そうだ。せっかくこのグラウンドを広々と使えるんだ。俺が投げるから、打ってみないか?」
「そうですね〜。では、お言葉に甘えて」
「葵桜が投げるならリリも打ちたい。リリも混ぜて」
「OKそれじゃあ……ちょっと待てリリ!?おま、いつの間に」
いつの間にかいたのは、灰色がかった長い銀髪と群青色の瞳が特徴の小柄な少女。
突然の来訪者……それも見知った存在に驚いてしまう。
いやまぁここに誘ったのは俺だけど、もういるとは思わなかった。
「久しぶり、葵桜」
「おう、久しぶり。つーか来てたなら連絡くらいしろよな」
「えーっと、お知り合いですか?」
「ああ。多分お前も名前くらいは知ってるはずだぜ」
「ん、リリは
「津雲莉々菜……確か埼玉みなとみらいシニアの4番の……私は火乃宮炉佳と言います」
「知ってる。江戸川シニアの正捕手でしょ?」
互いに自己紹介を交わす二人。やはりと言うべきかお互いの情報はある程度把握していたようだ。まぁ二人とも世代を代表する選手だからな。当然と言えば当然か。
「それにしても、彼女までここにいるとは驚きです」
「リリに関しては俺が誘ったんだ。ダメ元だったけどな」
「ん。葵桜の話を聞いて、面白そうだと思ったから。それに知ってる人がいると気が楽」
「というわけだ。さてと、そろそろいい感じにアップもできたし、早速練習……の前にリリ。久しぶりにガチ勝負しようぜ」
「ん。望むところ」
リリと再開したらどうしてもやっておきたかった真剣勝負。
リリは間違いなく全国クラスのスラッガーだ。恐らく、どの高校に行ってもよっぽどの事がなければ一軍に上がれる。
それほどの打者相手に俺がどこまで通用するか、試してみたい。
「悪いな火乃宮。いきなり巻き込んじまって」
「ふふっ、大丈夫ですよ。それに、彼女の実力は目の前で見たかったので」
「だな。んじゃ15球、アップに付き合ってくれ」
「はい♪」
火乃宮がプロテクターや防具をつけている間、俺はリリのステータスを確認する。
名前:津雲 莉々菜
ポジション:三/一
利き腕:右投右打
弾道:4
ミート:C
パワー:B
走力:F
肩力:F
守備:D
捕球:C
特殊能力
・パワーヒッター
・プルヒッター
・冷静
・対エース〇
・一掃
・四番〇
・守備職人
・対変化球〇
・ささやき破り
・盗塁×
・走塁×
・選球眼
・強振多用
・慎重打法
リリは典型的なプルヒッター。それでいて、ホームランを打てる強打者だ。その上打率も低くない。
その一方でフルスイングばっかだから安定感には欠ける。
甘い球は厳禁。あとは……火乃宮が俺をどうリードしてくれるか。
俺の肩も準備が整った事で、火乃宮がマウンドに立つ俺の元へとやってくる。
「今のうちにサインを決めましょう……とは言っても、今から作る時間もありませんし、あなたがシニアで使ってたサインを私がそのまま覚えます」
「OK。俺の球種は知ってると思うけど、ストレートと縦横のスライダー、チェンジアップの4つな。サインはこんな感じ」
「分かりました。リードに関しては……」
「基本そっちに任せるよ。もちろん、嫌な予感がしたら首振るけどな。2人で打ち取りに行こう」
「はい」
会話を終え、火乃宮がキャッチャーボックスに座る。
一方リリは準備万端と言わんばかりに既にバッターボックスで立ち構えていた。
「葵桜との真剣勝負はいつもワクワクする。今日は負けない」
「こっちだって、打たせるつもりはねーよ」
サインを交わし、投球動作に入る。
要求先は
その緊張感を感じながらも、右腕を振るう。
要求通り、それでいてストライクゾーンギリギリに吸い込まれるストレート。
リリはタイミングを合わせるために踏み込んだが、バットを振らずに見逃す。
これでワンストライク。
「……やっぱり、葵桜のストレートは凄いね」
「綺麗なバックスピンのストレートですからね。ここまで綺麗なストレートを投げられる投手は全国的に見ても多くはありません。私もこのストレートには手を焼かされました」
「うん。でも、次は打つ」
ボールが返ってくると同時にすぐにサインが送られてくる。
またしてもインコースにストレートのサイン。だが今度は低め。その上外れてもいいというサイン付き。
これにも葵桜はすぐ頷き、すぐにモーションに入る。
リリの膝元、
だが今度狙いすぎたのか、僅かに内に外れ、リリは目だけで見逃す。
「ボール、だよね?」
「はい。1個分外れてます」
これで1B1Sの平行カウント。
次なる要求は先程と同じコース。ボールからストライクになる、インローへのスライダー。
際どいコース、それでいてストライクゾーンギリギリに放られたそれを、リリは上手く腕を畳み、フルスイング。
思いっきり引っ張った鋭い当たりはファールゾーンへと転がり、フェンスに直撃する。
「スライダーのキレも変化も進化してる。流石葵桜」
「だからと言っていきなり当てるかよ普通」
「ですがこれで追い込みました。あと一息です」
追い込んでの4球目。
今度はアウトコースへのチェンジアップは外れ、2B2Sの平行カウント。
いつもなら決め球で締めくくる場面。しかし、火乃宮のサインは───マジかよ。ここでそれかよ。首を振る必要は……ないな。上等!投げ込んでやるよ!
決めに行く5球目。
俺が全力で右腕を振るい、投げられたボール。
投げたのは得意のスライダーでも縦スラでもない。
初球と同じコースと球種。インハイへのストレート。
「っ!」
リリも想定外の球種、コースに驚くも、自分のスイングを貫く。
豪快なフルスイングと共に響く甲高い打球音。
ボールの下を叩き、空高く舞い上がる白球は─────
「悪いなリリ。俺の勝ちだ」
マウンドに佇む俺のミットに収まった。
「流石葵桜。最後の最後にボールの勢いに押された。でも、次は打つ」
「望むところだ。勝負はいつでも引き受けるぜ」
火乃宮もサンキューな。俺一人じゃ抑えきれなかった」
「いえいえ。葵桜くんだからこそのこの結果ですよ」
正直なところ、素直に縦スラで勝負してたら負けたのは俺だったと思う。最後の最後、火乃宮がインハイへのストレートで勝負するという大胆なリードのおかげで、リリを抑え込むことができた。これができるのも火乃宮が俺の特性を熟知しているからこそ。
火乃宮炉佳。江戸川シニアで正捕手を務めただけあって、リードも一級品だ。
リリの打撃もそうだ。結果はピッチャーフライだったが、ここまで高く上がったピッチャーフライは見たことがない。
「火乃宮。リリ。改めて、よろしくな」
「はい!」
「ん」
俺に加えて全国区の選手である火乃宮とリリ。高校野球を勝ち抜くためのピースが、着実に揃いつつある。