仮面と変態と常識人と 作:あんころもっちー
それから時は進んで放課後!いつもなら喜んで家に帰る私だけど、今日は少しだけ事情が違っていた。
「それじゃあ、まず説明しないといけないのが、昨日の深夜にどうして俺と幽々子さんが言葉を交わすことなく、彼女を納得させたというか、そんな状況に持っていけていたかだけど」
「そうね、その説明をお願いできる? 何か、喉に魚の小骨が引っ掛かっている感じで、気持ちが悪いのよね」
そう、それはお母さんが不可思議な態度を取った時に、和真が言っていた言葉の説明を聞く為だ。
どうして、あんなに怒っていたお母さんが納得といかないまでも、落ち着いた上に私を抱きしめて心配という感情を強く表していたのか、それが知りたかったからに他ならない。
だけど、この和真とユーノ、この二人から飛び出した言葉は私の度肝を抜くというか、神経を逆撫でするものでも合った。
「えっと、さ、説明させてもらうけど、僕達魔導師は思念通話といってテレパシーみたいな感じで、声に出さないで会話が出来るって知ってる?」
「…… 知らないし、初耳だけど?」
「え?…… じ、じゃあ、輝夜ってユーノを拾った時に、なんか頭の中に直接声が響いたりしなかったか?」
「別に無かったと思うわね、ただ、家に帰る時に近道だから通ったら、倒れてるユーノを見つけただけだけど、それが何?」
真剣な、あくまでフェレットの表情でという枕詞が付きそうな様子のユーノの言葉に私が答えれば、和真が慌てた様子で私に質問をしてくる。
それに答えていた私だけど、ちょっとイライラしてきている言葉になっているのは、ツッコミを入れないで欲しい、私だって分らないことだらけなのだ、ベルベットルールで言われた事とか私自身に今起こっている事とか、そういったことでね。
実際、この年頃の普通の女の子の精神だったら、とっくに癇癪を起こしている自信があるわ、精神年齢がとっくに三十代に突入した私だから、まあ今はまだ、ある意味で冷静でいられるのだろう。
だけど、ちょっとだけ、お母さんも和真もユーノも何も肝心な事を説明してくれてない状況に、腹を立てていたりするけどちょっとダケだからね…… ついついスカートのポケットに隠してある召喚器に手が伸びそうなのは気のせいよ。
それからユーノと和真の二人は顔を見合わせて、一度頷いた後、意を決したように和真が先に口を開いた。
「えっと、輝夜には魔法を扱う才能というか、俺達と同じ力はないみたいだ」
「…… それで?」
「ええ、と…… 昨日の夜のこと、覚えてる?」
私の言葉というか和真からの言葉に返事を返すようにして出てきた、問いかけで私が不機嫌なのを察したのだろう。
ユーノと和真の二人は少しだけど狼狽し始めるけど、こっちとしては説明して欲しいのに回りくどい言い方をしてくるから、それでイライラしているのだ。
ちょっとは私のことも考えて欲しいというのは、ちょっと我儘かな。
なんて考えながら、ユーノの言葉に頷くのだった。
私が頷いたのを確認したユーノと和真は再び顔を見合わせる。
…… だから、これはなんなんだろうか。
そう考えていた私を二人が見つめてくる。
「昨日の深夜、俺とユーノが幽々子さんと思念通話を行って事情を説明したんだ」
「輝夜のペルソナっていってた力の事とか、ジュエルシードの事とかね」
「ふぅん……」
ようやく合点というか、納得がいく説明を聞くことが出来た。
どうやら私の使う力とは、まったく違う力をお母さんも持っているということも分る。
「だけど、幽々子さんには事情が合って、僕達と同じ力を持っていても、事情があって今は力を振るうことは出来ないんだ」
「ああ、詳しい説明をすると長くなるから、簡単に言うとリミッターといって幽々子さんは地球で暮らすために自分に枷を付けている様なんだ」
「……」
「説明もしておくと、幽々子さんの魔導師としての本来の実力は僕と和真に輝夜が束になって挑んでも、圧倒的な敗北を喫するくらいの力はある」
説明というか、昨日の状況を聞いていて思う、どうして和真とユーノが使うものと同じ力を、私は持っていないのだろう、ということを。
お母さんが私に注いでくれる愛情は間違いなく実の娘に向けるもの、だからこそ私はお母さんの実の娘だって分るけど、どうして私が魔導師としての資質を持っていないのかが、私の中では不に落ちない。
だけど、お母さんの才能を受け継いでいないとすれば、昨日覚醒したペルソナ、これしかないわね。
そんな私の考えを表情から見抜いたのか、和真は言葉を選ぶように問い掛けてくる。
「恐らくだけど、輝夜に魔導師としての才能がないのは、ペルソナ、これを操れるからだろうな」
「…… でしょうね、私もそう思うわ」
「推測だけどかなり強力な力だよアレ、俺がデバイスを使って調べた限りだと、オモイカネって日本神話では重要な位置を占める神様みたいだったしね(えーりん!えーりん!助けてえーりん!!の元ネタだし)」
「な、和真の言うとことが確かなら古の神様を召喚するような力って事じゃないのかぃ!?」
和真が転生者だという確信が持てた。
昨日の夜に私が始めて召喚したペルソナ、オモイカネ、これは確かに日本神話だと重要なポストを担う事が多かったけど、あまりメジャーな神様とはいえないし。
それにペルソナって聞いて神話に関連付けれることも、良い証拠になる。
普通なら間違いなく強力な存在を召喚する事ができる能力、という風になるでしょうしね、ユーノの見解はソレだったようだけど、和真の言葉を聞いて血相を変えて詰め寄っている。
「い、いや、多分だけど神様の本人? を召喚しているんじゃないとは思うけど、な」
「私も和真と同意見よ」
「輝夜?」
言わなくていいことまで口を滑らせた面があると感じたのだろう、和真はユーノに詰め寄られながら、冷や汗を流して色々と誤魔化そうとするように視線をさ迷わせていた。
うん、間違いない、こいつペルソナの事を知っているし、私の召喚方法を含めた何らかの知識も持ってる。
突然口を開いた上に和真へと近づいていく私を、ユーノが疑問の色が強く浮かんだ表情で見てくるが、私はそれを無視して和真へと近寄っていく。
私は彼の目の前に立ち、耳元に顔を寄せる。
「ちょ、ちょっと、輝夜!?」
「貴方、転生者、でしょ?」
「ッなっ!?」
「驚いただろうけど、だけど安心して、私も【同じ】だから」
「……」
私が耳元に顔を寄せたからビックリしたように、和真は身をよじらせていたけど声を潜めて言い放った私の言葉を聞いて、彼は驚愕のあまりに声になっていない声を上げて硬直していた。
こんな私たちの様子を見てユーノは不思議な、というか変なものを見る視線を向けているんだけど、私はソレを無視して更に彼に対して言っていた。
…… 心のどこかで【仲間】と言える人を探していたのかもしれない。
前世で死んだ覚えがないのに、唐突に全く別の人の実の娘になり過ごしてきた、これについては不満は全くない、何しろ今まで育ててくれたのだ、今のこちら側での生活は前世と比べれば充実している面が多いから、逆に張り合いがある面も多い。
だけど、前世の記憶があってしかも周りの子供達との違いも実感させられる事が多い事、これが私の中で知らぬ内にストレスとなっていたのだろうと思うし、実感もしている。
何しろ無邪気と言うかなんと言うかという感じなので話題も合わないし、周りの子供達のノリについていけないそれだけで、大人達からは変な目で見られ、心配される日々を過ごしていて始めて現れた同類と言える人間達の姿。
まあ、もう一人の転生者と思える奴はかなりアレでソレだから、今の私の境遇と言うか仲間とも思いたくないと言える。
だけどいきなりこんな事を言われたらビックリするだろうし、それにようやく見つけた私のお仲間だ、簡単に離す気はないし離さないわよという意味も込めるし、安心させる意味もこめて柔らかい口調と言葉に表情を浮かべて、和真に対して私は自身の事も伝えていた。
「…… やっぱり、か……」
「じゃあ、アンタも?」
「ああ、多分、そうだろうなとは感じていたよ」
「よかった……」
(なんだろう…… この話の中心の一人としてこの場にいたはずなのにいつの間にか疎外されているという、この状況って…… 一体何?)
だけどそれは彼の方も私と同じ様な心境だったみたいで、私の言葉を聞いたと同時に安心したようでいて、不安やらといった様々な複雑な感情が混じった表情を浮かべて私を見つめてくる。
まあ、元男の私としてはイケメンに熱っぽく見つめられても、ちょっとというか、かなり怒りを覚える(前世では普通の顔、通称フツメンだったので悔しいのよ)が、ソレをぐっと心の奥底へと押しやって耐えていたりする。
でも、和真の言葉を聞いてから私の口から出てきたこと、これは本当に私の心の底から出てきた言葉でもある。
それと同時に私は自分の顔が本当に安心した微笑みになるのを、自覚する。
だけど、これを見た和真の顔が真っ赤になって、ユーノが黄昏ていたけど気にしてはいけない所かしらね。
なんて考えていたら、唐突に状況が変化した。
「「「ッ!?」」」
「これは……!」
「ジュエルシードの発動だ!」
「これが、ジュエルシードが発動したってことなの?」
いきなり、昨日の夜に感じた感覚を感じたのだ。
またあの時のように一際高く響いた心臓の音、それが聞こえたと同時に私は身を強ばらせると、ユーノと和真は瞬時に状況を言い当てていた。
「ユーノ!俺は先行して暴走体を抑える!!」
「分った、僕と輝夜は陸路で向かうから!」
「待ちなさい」
真剣な表情で打ち合わせをする二人だけど、そんな二人に私は声を掛ける。
というか、私が感じれたとすればジュエルシードを取り込んで現れたのは、昨日の夜に現れたアレと同じ存在だ。
このまま和真が先行すれば間違いなく、昨日の二の舞になるのは間違いない。
「ペルソナ!」
《フム、威勢が良いのは結構だが、主の仲間よ、そのまま行けば昨夜の二の舞ぞ? ラクカジャ!》
「「あ」」
「忘れてたでしょ? アンタ達」
私が召喚器を米神に当てて召喚したペルソナ、オモイカネ、の言葉もそうだし掛けられた魔法で、状況が分ったらしい、ユーノも和真も間抜けな表情を浮かべていた。
ちょっと呆れてしまいそうになるけど、まあ、それだけ必死になっていることでもあるでしょうし、何も言えないか。
「ありがとう!輝夜!いって来る!!」
「すぐに私達も追いつくから、ムリしないようにね」
「ああ!!」
そう考えていたら、掛けられた魔法を呆然と見ていた和真だけどすぐに気が付いたらしくて私の方を見たあと、一瞬であの西洋の甲冑と魔法使いの服の中間みたいな服に変身していた。
あれって、確実と言うかアニメとかの魔法少女の変身シーンってやつが、あの一瞬で展開されているんでしょうね。
まあ、男の変身シーンなんて誰得って話だけどね。
それから和真は足元にミッド式魔法陣(ユーノの説明にあった)を展開して、空へと浮かび上がりジュエルシードの反応があったと思われる方向へと飛んでいっていた。
その姿を見送った私は、ユーノを胸に抱かかえると校舎を走って後にした。
それから解説は輝夜から俺へと移る!
なんて平常心を装っていっている俺だけど、最後辺りの輝夜の言葉とか仕草には正直に言えば、なのはとかすずかにアリサたちの可愛い仕草なんて目じゃないくらいの魅力があって、一瞬堕ち掛けた。
というか、マジな話で蓬莱山 輝夜の容姿に雰囲気を持った少女に、あんな表情をされたら普通の男は落ちてるんじゃないのかね。
そういえる状況でもあった。
「あそこか!!発動した場所も同じなんてな!無印第二話の神社!!」
そんなこんなを考えていたら、ジュエルシードの反応が出た場所が見えてくる。
それは、前世で俺がなのは無印のアニメで見たことのある神社であり、恐怖という感情で歪んだ表情を浮かべて、硬直し腰を抜かして倒れるような体勢の女性に、その女性の手を引っ張っているなのはの姿もある。
って!なのはの姿があるだと!? なんでだよ!!
そう考えるが、彼女達が相対している存在を見れば、これまでの浮ついたものは全て消え失せる。
「力のヘカトンケイル、だと!なんでここに?」
彼女達の前に居たのは【刑死者】のアルカナ、力のヘカトンケイルと呼ばれるシャドウであり、あのゲーム【ペルソナ3】をやりこんだ俺だからこそ、と言いたい所だけど、あんまりやりこんでいない連中でも分りそうなのは姿を見れば、少し納得すると思う。
どうして、明らかに変な用途に使われる木馬に乗っているんだよ!!と、突っ込みたい気分だが、目の前で力を感じているなのはたちはそうではないらしく、必死でなのはが腰を抜かした女性を動かそうと頑張る姿、そこにゆっくりと近づいていく力のヘカトンケイル。
「ブリューナク!」
『OK, Boss, Load cartridge』
「ディバインバスター!」
そんなヘカトンケイルへと向けて、なのは達に当たらないように細心の注意を払いながら、ディバインバスターを放ちつつ神社の境内へと降りていく。
俺の目の前で力のヘカトンケイルは衝撃を受けて、僅かに体勢を崩して足を止めていた。
「へ、だ、誰!?…… か、和真君!?」
「話は後だ!とりあえずなのは、輝夜がもう少しで来るからその女の人と一緒に安全な場所にいてくれ!」
「で、でも!って、これなに!?」
[……… オオオオオオ]
「ッ!」
「やっぱりダメージはほとんどない、か…… タルカジャもかけてもらえばよかったか」
前回の輝夜の時の反省を生かして、浮遊魔法を応用して彼女達を浮かべると、近くの茂みの中に避難させる。
そうしている内に目の前を見れば、全く堪えた様子のない力のヘカトンケイルは、さっきまでのゆっくりとした進みから全く違うスピードで、こちらへと間合いをつめてくる。
幾らラクカジャをかけているとはいっても、一撃を貰うわけにはいかないか。
そう考えた俺はブリューナクを正眼に構えると、奴を迎え撃つ為に走り出そうとした瞬間。
[…… ブフダイン]
「何!? くそ!ブリューナク!!」
『Protection.』
二体目でいきなりブフダインとか、これだからアトラスの連中ってのは!!そう考えつつも俺を包み込むようにして発生した氷結の魔法を防ぐ為にプロテクションを展開、防御する。
「ぐ、ぐぅうぅぅ!!!」
くぐもった悲鳴が自分の口から上がってくる。
障壁を展開して受け止めたと同時に感じた途方もない冷気と、衝撃にも似ている感覚、吹雪と雹が同時に局地的に吹き荒れる光景の中、俺は何とか耐え切り反撃に移るために動こうとしたが体が動かない事に気が付く。
くそ!バッドステータスの【氷結】かよ!そう考えている内にすぐに体が動くようになるのだが、その少しの時間が命取りになった。
[ォオオオオ!]
「しまっ!がぁ!!」
「和真くん!!
気が付いた時には力のヘカトンケイルは腕を振りかぶり、正拳突きの要領で俺の胴体を殴り飛ばしていた。
防御も出来ずにまともに受けた攻撃は易々とバリアジャケットを突き抜け、俺の胸からは何かが折れる音も聞こえる。
神社の境内の石畳を破壊しながらバウンドして、数回転がっている時になのはの悲鳴とも、慟哭ともいえる位の悲痛な声が響き渡る。
「な、なの、ゲホッゴボ!ヅッウェ!」
「か、和真君!」
茂みから出てきて俺の方に走り寄って来るなのはに、俺は声を掛けようとするが上手く声がでないばかりか、腹から込みあがる不快感と同時に抵抗する間もなく、血を吐き出していた。
血を吐き出した俺を見たなのはは動転したように俺の傍に来て、俺の肩を掴んでいた。
[オオオオオオ……]
「ッ!ヒッ……」
そして、気が付いた時には再び力のヘカトンケイルが俺達の前に居て、腕を振りかぶって俺達を潰そうとしていた。
くそ、こんな所で終わってたまるか!そう考えても俺の体は激痛を示すばかりで動いてくれず、スローモーションのような視界の中でゆっくりと腕が振り下ろされてくるのだった。