仮面と変態と常識人と 作:あんころもっちー
戦いが終わって、私は和真の治療の為にディアラマを彼に掛けると、精神力、原作風に言えばSPを完全に使い果たしたようで、倦怠感と疲労から立ち上がることも出来なくなっていた。
なのはへの説明はユーノが自分でやると言って、私達には帰宅するように言って来た。
それまでの会話の中で試してみたのだが、私がペルソナ使いという特性を持っているのか、ユーノの魔法じゃ私の肉体と精神の両方に蓄積された疲労は回復する事はかなわなかった。
若干だけど、なのはは和真に対してどこか複雑な視線を向けていたけど、和真自身はそれに気が付いているのかいないのか、という曖昧な態度でなのはを帰路に着かせていた。
ただ、ユーノがなのはの肩に乗らずに歩いているのが少し気になったけど、本人(?)が自分で歩いているんだし、別に良いか。
「それじゃあ、俺達も帰ることとしたいけど…… 立てるか?」
「正直、すぐには無理……」
私の前に歩いて来て手を差し伸べながら質問してくる和真に、正直に答えていた。
正直に言えば、口を開くのだって億劫なくらいの倦怠感と疲労感なのだ、疲労感からくる吐き気とかがないのが救いか。
…… 疲れすぎて粗相を…… なんて事になったら女としてのプライドが粉々になる自身がある。
そんなことを考えつつ私はバス停をポケットの中にしまい、ある物を取り出していた。
「って、ジュエルシードって言うかどうしてバス停がポケットにはいんの!?」
「入れたら普通に入ったからだけど?」
「いやいやいやいやいやいや!!!普通はどう頑張っても入らないから!!」
「便利よねリアル四次元ポケットって」
「もう、もうツッコミが追いつかなくて試合終了です…… 安西先生……」
私の数々の言葉と和真からの数々のツッコミ、和真って本当に律儀なツッコミ系な人よね。
だからアレの相手が出来るのか…… というか、良く胃に穴が開かないわよね…… これからは和真の前じゃこういった行動は慎もうかな? とも考える。
せっかく見つけた仲間なのに、胃潰瘍で入院→重症化し死亡、なんていうあまりにも想像したくない未来を回避するためにもね。
…… 胃に優しい薬膳お菓子も確か存在してたし、それ関係の勉強もしようかな、和真自身の健康の為にも。
後、前回の最後で持ったまま走ってたじゃんって考えた人、流石です、そう途中までは持ったまま走ってたけど走りにくい!からポケットに入れたら入るかな? なんて考えて入れようとしたら入ったのよね。
…… うん、自分の行動がどれだけ常識ってものを投げ捨てたものだったのかは理解してる、理解してるよ。
まあ、最後は溜息を一つ吐いてから、ジュエルシードを受け取って自分のデバイスに収納してたけど怪訝な表情を浮かべていたのが気になる。
「どうしたの?」
「輝夜…… ジュエルシードが封印状態だったんだけど、お前って俺達魔導師が使う封印系の魔法は使えないよな?」
「使えるわけないじゃない、暴走した敵をブッ飛ばしたら、普通の状態のジュエルシードが出てきたから、ポケットに入れてただけよ、それに和真達の使う方法じゃないと安全に格納できないみたいだしね、だから渡したけど、問題あった?」
「なっ!? ペルソナ使い、それもワイルドに選ばれた人間だし、そういうこともある、のか?」
あまりにも深刻な顔で聞いてきた和真に、私はちょっと気圧されつつも正直に答える。
だけど、やっぱりコイツは私の知らないペルソナの何かを知っている。
まあ、今馬鹿正直に聞いた所でこいつが素直に口を割るわけがないし、口を割らざるを得ない時に割らせよう、と決意を新たにする。
それからは少ししても回復が遅くて歩けない状態な私&もうすぐで私の門限の時刻、という状況になった時、和真がある意味で予想できていて尚且つ、予想外な行動に出て来る。
「輝夜、調子はどう? 歩けるか?」
「ごめん、まだちょっと無理っぽいわね」
「そう、か…… 輝夜、ちょっとゴメン」
「? なに、きゃぁ!?」
和真が聞いてきたことは、私が歩けるか否かという事だけど、ハッキリと言おう。
体がダルイ上に未だに少し動かすだけでもキツイのだ、こんな状態で歩くとか無理ゲーにも程があった。
顔色とか言葉とかの様子で私がまだまだ歩けるような状態ではない、そう悟ったのだろう。
腕を組んで少しの間なにかを考えていた和真は、気合を入れるような様子を見せる。
え、なに? と考える間もなく私は持ち上げられていた。
背中に回された左手に膝の下に回された右腕、俗に言う【お姫様抱っこ】という奴で。
っていうか、恥ずかしすぎる!!
「お、下ろしなさいよ、このばか!!」
「ちょ、ちょっと輝夜、暴れるなって!」
「暴れたくもなるわよ!普通におんぶでいいじゃないの!!」
「あ」
なんだ、その【それがあったか!】とか言わんばかりの顔は!こいつ変なところで、特に女の子に対する行動の時ってハーレム系オリ主として当然の如き天然さを発揮するから性質が悪い!しかもこの時、本人は下心0%の善意100%だから余計にと言えるわね。
私の抵抗で嫌がられていると判断できたらしい和真は、一度私を降ろすとおんぶを勧めるように目の前で腰を下ろしてくる。
本当は自分で歩いて帰りたいけど、回復するまで待っていたら間違いなく日も暮れて、お母さんの怒りが再び降り注ぐ。
昨日の帰宅した時に見たお母さんの怒り顔を思い出して、少しブルッ!と身を震わせると私は、おずおずと和真の背中に背負われて神社を後にしていた。
おんぶをして貰っている時に思い出したのは、前世と今の生でのお父さん達の姿だった。
自分自身の性別こそ男と女という違いは有るけど、失われつつある前世の記憶の中で、今でもはっきりと思い出せるものの一つでもある。
前世では夕焼けに包まれた空をお父さんの背中に遊び疲れた私は背負われて、ゆっくりと家路についている姿、いつもとは違う高い視点での夕焼けとか地面の姿とかが印象的だったのを覚えてる。
今の生じゃお父さんが帰ってきた時、ついつい嬉しさからはしゃいでしまって、リビングで寝てしまいお父さんにおんぶで運ばれるんだけど、その時の温かさとか頼もしさみたいなものも懐かしさや悲しさみたいな感情と共に感じていた。
生まれて自分で動けるくらいの年頃になって思ったのは、前の生に戻れるのなら戻りたい、という事だった。
確かに前の生の家庭環境は、私が死ぬ前(多分だけどね)の記憶じゃあまり良いとはいえないものになっていた、だけど、見守らなきゃいけない大事な弟に妹達が何人もいて、ほっとけない子達もいたのだ。
彼らのことを思うと、私(俺)は今、本当にこの世界にいてもいいのか、あの世界に戻らないといけないんじゃないか。
そんなことを考えて枕を涙でぬらしたのも、一度や二度じゃないし、物心が付いた時に前世と同じ男言葉を使っていて、お母さんに注意されたりとか色々あった。
まあ、その内に私が今の女としての生を受け入れて、今のお父さんとお母さんの子供だという事を受け入れ、この世界で【斉藤 輝夜】と言う一人の女の子として生きていこう。
そう考えることができた出来事が小学生に入る前に有ったんだけど、まあ、今は関係ないから割愛ね。
そんなことを考えていたら、あの神社のかなり長い階段を降りて少しした所の道を歩いている様子だった。
「今日は、夕焼けが綺麗よね」
「そうだなぁ…… この夕焼け時は何時も変態に追いかけられていたからなぁ……(しかも美少女をおんぶして帰るなんて!それなんてギャルゲー的展開なんだろう!まさか!まさか!俺にこんなラブコメな展開が来てくれるなんて……!)」
「普通の穏やかな時間を迎えられて嬉しいのは分ったから、泣かないでよ……」
足取りはしっかりしたものだけど、アレのことを口にした瞬間、物凄く嬉しそうに感極まったように目の幅一杯の涙を流しだすのにはちょっと引く。
如何にアレの存在が和真の生活に影響を与えていたのかが、良く分るわね。
まあ、今はそっとしておくとしましょうかね、幸いにも人通りは少ない上にすれ違う人々は、小学生の男の子が女の子をおんぶしているって言う光景に微笑ましさを感じている様子で、和真の一種異様な雰囲気は分っていない様子だしね。
それから少しの間だけ、私達の間に会話はなくて和真が歩いている心地よい振動と、夕焼けに包まれたオレンジ色の周りの景色を楽しんでいた、ゆっくりとではあるけど、少しずつ歩を進めていた私達の耳につい最近になって親しいという意味で、聞き慣れた声が聞こえた。
「あれ、和真くんに…… 輝夜ちゃん?」
「お、すずかか、おーっす」
「すずかじゃない、えーっと…… 今から塾?」
すずかの声だったけど、和真が振り向いてくれたから視線に入ったすずかを見て、違和感があった。
和真を見る時は親愛の感情を浮かべたというのに、おんぶされている私を見た瞬間、はっきりと感じたのだ、嫌悪と嫉妬言う負の感情の渦を、その上に忌々しそうな表情を一瞬だけ浮かべた事で私の中の違和感は余計に膨らむ。
コレは、すずかの格好をしているのはダレ? と、だけど感じる気配や見た目はすずかのものだけど、雰囲気や纏っている空気が普段の彼女とはまるで違うのが分る。
そうだ、まるでコレは…… ペルソナ2のシャドウ、ペルソナ使いの悪意だけを抽出して本人を徹底的に苦しめる為だけに現れた影に似ている
この事に和真も思い至ったのか、最初挨拶していた時の様な友人に向ける温かいものはなく、今は戦闘状態になった時に私を降ろして自身は戦闘を行える足と体勢を整えている様子を見せていた。
「そんなに警戒しなくても良いよ…… 今の所は輝夜ちゃんとワタシに危害を加えるつもりはないし」
「それって、どういう意味だよ? すずか」
「? 何を言っているのよ、すずか……」
「わからないのかな? クスクスクスッ…… とくに輝夜ちゃんは」
この言葉で確定というか、少しでも彼女と親交を持っている人間ならすぐに分るくらいの、露骨、とも言える位の表情の変化がそこにあった。
そう、厭らしさを含み、まるで嘲笑しているような微笑を私に向けて浮かべたのだ。
この笑みを見て思う、すずかは、まだ私は知り合って数ヶ月も経っていないけど、でも、分かることはある。
絶対に彼女は、こんな見ている方が不愉快になる表情を浮かべる事を、絶対にしない少女だと。
今の目の前にいるすずかの狙いというか、否な感情を全て向けている標的が誰なのか、それを和真は分ったようで、私の体を支えている手に力が篭り、更に足はいつでも激しい動きが可能なように低く体勢を整えていた。
こんな様子を見せた私達を嘲るように彼女は、嘲笑を深め、目元や口元が卑らしさしか感じない形に歪む。
「まあ、近い内に全ての意味が分るよ…… じゃあね」
私達のどちらかが制止の声を掛ける前に、踵を返して立ち去っていくすずか、彼女を暫く見ていた私達は黙ったままで、その場を動けないでいた。
だけど、和真が普通に歩き始めたことで、私の意識が戻ってくる。
私はさっきのすずかの様子を和真に問いかけたかった、だけど、真剣、あまりにも真剣すぎる。
そんな様子でなにかを考えている和真を見た私は、開きかけた口を閉じていた。
それから後の私達には、私の家につくまで本当に会話らしい会話はなくて、彼が考えていた事と、私がずっと考えていた事が同じ、という可能性が濃厚になっている。
それを悟らせてくれる沈黙の時間にもなっていた。
それから帰宅して、夕食も食べてお風呂にも入った私は和真と共に自分の部屋にいた。
え、どうして和真も一緒にいるのかって? とりあえず帰ってからの私達をダイジェストで振り返るとこうなる。
私を背負って和真が私の家に到着。
↓
お母さんちょっと慌てるが、私が説明しようとしたら、和真が説明して納得する。
この時は、既に歩けるくらいに回復していたから自分で立っていたけど、私を放っておいて話が進んでいくのにはorzな体勢になるのを我慢していたりする。
↓
和真が一人暮らし&食事はお昼の弁当以外はレトルトかカップ麺で済ませていることが発覚、目が笑っていないお母さん、つまりマジギレモードのお母さんが降臨めされ、和真は今日も泊まらせられる事になったとさ。
因みに、昨日着ていた服とかはお母さんが洗濯するらしい。
今はお風呂に入った後に何時もやっていることである髪の乾燥の仕上げの為にタオルを当てているんだけど、和真が顔を赤らめてそっぽ向いているのがちょっと気になるわね。
もう少し年を重ねたら、お風呂上りの女の子の艶やかな色っぽい仕草にうんちゃらかんちゃら、といったギャルゲーとかエロゲーとかの展開でありがちな心境も考えられるんだけど、今は小学生だぞ(輝夜は自分の姿の事を考慮に入れていません)私達は、なんて考える。
まあ、私としても和真とは話したい事が沢山出来ていたし、都合が良かった。
そういえるし、彼にとっても私と今日の夕方に起きた事とかを話し合いたい様子を見せていたしね、和真からしてもちょうど良かったんだろう。
最初はどうやって断ろうか、と考えていたのが、急に真剣な表情と伴に止まる事を了承していたのだから。
推理は簡単に出来るよね。
「輝夜は、シャドウ、そう呼ばれる存在についてどんな知識を持っている?」
「…… 自分自身の普遍的無意識より現れた本人の心の闇と言える感情の全てを具現化させた存在、悪意を持って表の本人に害意を齎すって言うくらいだけど」
「やっぱり、か……」
和真の問いに答えた私の言葉を聞いて彼が浮かべた表情を見て思ったのは、まただ、というものだった。
前も感じたそれに私は、一瞬だけだけど、激しく問い詰めたい感情に囚われる。
だけど、今この状況下で彼に詰め寄っても、私が問い詰めた事で彼が言葉を引っ込めてしまうかもしれないという核心に至って、私は黙って彼の言葉を待つ。
少し、時計をチラチラと確認した私は分るけど、五分も経たない時間、体感時間では数時間にも感じたようなそれ、こんな時間が経ち和真は口を開いた。
「輝夜」
「なに?」
「ペルソナ3にペルソナ3フェスにP3P、ペルソナ4とP4Uについては、何処まで知ってる?」
「………………… なに、それ? 私が覚えている限りじゃ、ペルソナ2罰が最新作のはずだったけど?」
「やっぱり、か……」
和真が真剣な表情でして来た問い掛けを聞いた私の中に存在するのは、ペルソナ3にペルソナ4だと!? 続編が出ていたというのか!やりたかったし!!という思いだったりする。
なにしろ、異聞録つまり1からどハマりしてしまって、全作品のサウンドトラックに設定資料集だのドラマCDだのペルソナ倶楽部だのを網羅した私だ、続編が出ていたのならば間違いなくプレイしたと断言できるのにプレイできずに死んでしまったというのか!? という、一種の絶望感に包まれてしまうのも無理はなかった。
だけど、私の様子を見ていた和真は納得した様子を見せた後、一度頷いてから私を真剣な表情で正面から見つめていた。
「え、と、なに? 和真」
「これから話す事、これを驚いたりとかしないで聞く自信がある? 輝夜」
「…… やっと、やっと話す気になったのね、私の力のことについて」
「ああ」
困惑、この感情が強かったけど和真の言葉を聞いた私は、逆に強い驚きと同じくらいの喜びを感じていた。
ようやく分るのだ、和真が言っていた謎めいた言葉とかの真実が、この事件が始ってから分らない事だらけだった私にとっては、朗報とも言って良いコトだった。
それがやっと聞けると言う事、それに興奮を覚えなかったといえば嘘になる、だけど、次の瞬間にあの部屋へと無理矢理呼ばれる感覚を感じる。
「…… っぅぅう?」
「輝夜!?」
私の意思とは真逆の行動を、目を閉じて体外との切れた人形のように座っているベッドにに倒れ行く感覚、和真の悲鳴のような焦りに満ちた声を聞きながら、私の意識はあの青い部屋、ベルベットルームに導かれる感覚を感じて強制的に目を閉じるのだった。