仮面と変態と常識人と 作:あんころもっちー
ここは海鳴市に存在するとある一つのビルの屋上、深夜といえる時間帯で周囲は既に真っ暗な闇に包まれた中、一人の金色の髪をツインテールに結っている少女が降り立つ。
死神のカマを髣髴とさせる、そんな斧にも似たデバイスを持った少女【フェイト・テスタロッサ】は周囲を見渡していた。
「ここが、海鳴市…… 母さんの探しているものがある場所」
ビルの屋上に吹いている強い風を特に気にした様子もなくたっている彼女の横に、額に赤い宝石が突いたオレンジ色の毛並みを持つ一匹の大きな狼が近寄ってくる。
だが、狼の瞳はどこか不安のようなものが浮かびあがっていて、今、ここにいる事に嫌なものを感じている様子だった。
「なぁ、フェイト…… 本当にあのババアに従って、この町で過ごすのかい?」
「アルフ…… それは何度も確認したはずだよ」
「だけど、さ……」
狼、アルフ、と呼ばれた動物の口から出てきたのは人の言葉であり、表情だけを見たときには分らない不安と恐怖という感情が、その声の中には大きく含まれていた。
最後の言葉を言い淀んだアルフの様子に、フェイトは疑問に感じている様子を浮かべていると、アルフは再び口を開いていく。
「来る前から感じていたけど、この町に来てハッキリと感じちまうんだ……」
「何を感じるの? 私は特に何も感じないけど……」
「なんか、得体の知れない化け物の腹の中に自分で飛びこんじまったような、そんな感覚」
周囲を見渡しながら匂いを嗅いで、落ち着かない様子のアルフをフェイトは宥めるように頭を撫でてやっていたが、アルフが落ち着くことはなかった。
そんな様子のアルフを見て、優しい微笑をフェイトは浮かべる。
「大丈夫、私とアルフならすぐに全部集めて母さんの所に戻れるから、すぐに終わらせれば問題ないよね?」
「そりゃ、そうだけど、さ……」
「じゃあ行こう、アルフ」
「…… ああ」
そういって夜の街へと身を躍らせて、空を掛けていく少女と狼の姿。
奇しくアルフと呼ばれた狼の言っている事、これは後々においてどういうことなのかが分るのだが、この時点では神ならぬ者達では分るものでもなかった。
幸いにも今日は休日だったからゆっくり出来るなぁ。
なんて考えながら、お母さんの作ってくれた朝食を食べて、出勤していくお母さんを見送った後、洗濯物を干した私は客間へと来ていた。
「お、輝夜、終わったか?」
「ええ、全部終わったわよ、あら、ユーノも戻ってきたのね、おかえり」
「ただいま輝夜、それに高町さん…… なのはへの説明は終わったしね、これから念話でだけどなのはも含めてジュエルシードの位置確認を行う所だよ」
客間には和真とフェレット姿のユーノの姿があった。
帰って来た気配は感じなかったというか、ユーノがフェレットの姿をしているし、帰ってきても私が気付けないのは当たり前、か。
因みに和真は最初こそ、洗濯物を干す事の手伝いを申し出てきたが、お母さんの下着やら私の下着に服を干せるの? と聞いたらあっさりと辞退して、食器洗いに自分から回って行ったのを若いなぁ。
なんてニヤニヤしながら眺めたのは、仕方のない所という所でしょう。
そう考えながら客間に置いてある椅子に私は座っていた。
「んじゃ、輝夜も戻ってきた事だし、幽々子さんが探査魔法を使ってくれてな、今現在で分かっているジュエルシードの位置確認を行うぞ」
「りょうかい」
「うん」
そうして始る和真とユーノからの、現時点で判明していてそこにあるのが確実と見られているジュエルシードの位置情報だけど、判明している全ての情報に問題があった。
その理由はというと。
「判明しているもの全部海の中じゃない、和真達なら回収は可能だろうけど、しないの?」
「ハッキリと言えば、俺とユーノが恐れているのが、暴走体の存在なんだ…… 輝夜は海上、つまり空中で戦え「無茶なことを言わないでよ、空を飛べない私にどうやって海の上で戦えと?」ですよねぇ……」
そう、全部が海の中に存在していたからだ。
これが陸上、つまり私達が生活している場所に存在しているんなら、陸に誘き寄せる事が出来るならばそうするけど、流石に空を飛ぶなんて私には出来ないから無理ね。
だけど。
「でも、暴走する前に一個ずつ回収するのは無理なの? 出来そうな感じだけど」
「ええと、それがさ……」
それから始まるユーノの説明を聞くと、何でもジュエルシードはちょっとの衝撃でも発動する可能性を秘めていて、発動すればあんなとんでもない暴走体になってしまうと確認できた以上、魔法を使って海の中に潜っての捜索とかみたいな方法は危険が大きいと判断していて、現状で海底の地形に引っ掛かって動かないのであれば、そちらは後にして先に陸上のものの回収を急ぐとしたらしい。
まあ、妥当な所でしょうね。
「なるほどね…… ちょっとの魔力でも発動しちゃうなら、うっかり発動でもして海の中で敵に囲まれる、なんて事になったら目も当てられないわね」
「そこが一番のネックだな、現時点で戦力が足らない事、これが一番厄介な所に鳴っているな」
「なのはは覚醒したてだし、幽々子さんも現役時代の力を発揮する事は不可能で、水中に入れるのは和真一人だけだからね、確実性を重視した形でもあるよね」
確認するように私は顎に手を当てて呟きながら、足を組んでいた。
何か視線を感じた気がする、特にスカートの辺りに、因みに今日の服装は水色のプリーツスカートに白いブラウスだったりする。
まあスカートの丈は膝より少し上で、ロングともミニともいえないくらいの長さで、椅子に座って足を組んだりしたら、まあ奴は男の子だしね、動いているスカートに視線が行ってしまうのは無理ないかもしれない。
誰の視線が行っているのか、とかはあえて言わないけど、まあ、分るでしょうね。
「まあ、海の中の方は追々考えてくってことで、でいいわ」
「ああ、今回の話し合いは、この辺の確認とか伝える事が主だったものだからな」
「そっか、でも、なのははこの話し合いを聞いているの?」
「おう、思念通話、通称念話を介してリアルタイムで会話は聞こえているぞ、因みに今は俺達の会話を、ほへぇぇぇ、とか情けない声を出して聞いていたな」
「そんな様子、簡単に浮かぶわね」
疑問の一つでもあったなのはが本当に聞いているのか、という事も聞けたけど、和真の言葉になのはが今浮かべているであろう表情やら仕草が簡単に分ってしまうのは、本当になのはという女の子が真っ直ぐな証拠だろう。
すぐに脳裏に浮かぶわね、少し間抜け面してそんな声を上げて感心したような、それでいて分っていないような様子の彼女の姿が。
そんなことを微笑を浮かべつつ、噴出しそうになりながら考えながら足を組み直すと…… まただ。
ま、これからの為にも少しは老婆心ながら、突っ込んでおくとしましょうかね、大人になってもこんな癖があるといけないし。
「所で和真」
「なんだ?」
「さっきから視線を何度も感じたけど、私のスカートの中に興味があるの?」
「ブフォゥ!!直球!? 直球だよこの娘!?」
「真剣な話し合いの最中に、何処見てるのさ和真……」
まあ、オブラートに包む事でもないから普通に聞いたら、顔を真っ赤にして思いっきり噴出しているという和真の姿があった。
私の肩に乗っているユーノの視線は、和真を性犯罪者でも見るような冷たい視線へと変わっているが、まあ、気にしないでおこう。
そんな姿の彼らを見ていた私は、一度溜息を吐いた後、和真をじっと静かに見つめる。
「な、なんだ?」
「まあ興味があるのは分かったし、視線が向く気持ちは分るしね、なによりも普通に女の子に興味があるの良い事だからね、仕方ない面があるでしょう」
(女の子なのに男としてスカートの中に目が行く気持ちが分るの!?)
「はい」
「正座はしないようにね」
「え、なん「ちょうど良く見える位置になるだろうし、中を見たいならどうぞ? 体勢変えてあげないから見放題よ?」立ったままでお願いさせていただきます!!」
私にじっと見つめられて、思いっきり挙動不審な様子になった和真、まあ、前世の自分で同じ様な状況になったらならば、慌てるというのは大いに自覚がある。
反省している事を示すためか、正座をしようとする和真だけど、椅子に座っていて足を組んでいる私の真正面で正座なんてしたらどうなるか、まあ、指摘されて気付いたんだろう敬礼して私に対してそういって来るが、全く隠しきれてない残念そうな様子くらいは隠しなさいよ。
なんて突っ込みたくもなる。
ただ、ユーノの顔が驚愕という感情に包まれているのは、まあ女の子が男の子のエロに理解を示したからが故だと思われる。
普通なら軽蔑とかの感情を見せるだろうし。
「まあ、そういった視線とかに女は鋭いから、これからは不躾にチラチラ見るとかは止めといた方が良いわよ、見るんなら自然を装うことね」
「はい……」
「輝夜は一体、和真の行動を止めたいのか、アドバイスしているのか、どっちなのさ……」
「そういった視線を感じたってだけで、人を性犯罪者扱いする女だっているんだしね」
「以後、気をつけます……」
私の言葉に、しゅんという様子でうな垂れる和真に、アドバイス的なものもつけたら、ユーノが呆れというか感心という二つの感情を持たせた溜息を吐いてくる。
止めたりなんかして、ホモォ、な非生産的な道に走られたりなんてしたら、罪悪感でハンパないことになるし、ここで私が積極的に許すなんてして、妙な女から性犯罪者扱いでもされたりするのなんて嫌だしね。
だから、注意しながらもアドバイスするなんていうことをしているのよね。
ただ、一つだけ気になる点はあった。
「それにしても、どうして私なの?」
「え?」
「だから、どうして私にはそういう視線を向けて来たのかなって思ってさ、あんたってなのはやアリサにすずか達には、一切、そういう視線向けたことないじゃない? だから余計に気になってね」
「…… そういえばそうだよな……(…… って、当たり前だろ、あいつらにそういう視線を向けたら、俺って変態じゃん)」
それは、和真がこういった視線を向けるのが、今の所は私限定であって、何時も一緒に何時面々の女の子達には、一切、そういった不純な視線を向ける事がないということだった。
まあ、自然にそういった視線を今の同年代に向けていれば変態(ペド)に成り下がるだろうし、私が彼と同じ立場なのも影響しているのかもね。
肉体年齢はともかく、精神年齢は違うし。
なんて考えるが、当の本人は本当に不思議そうな様子で考え込んでいたから、もしかしたら極自然に気になって向けていたのかもしれない、とも考えてしまう。
「ま、これからそういうことがあったらなるべくは、私に言う事ね」
「「えぇ!!?」」
「相談に乗ってあげる、っていうことよ、行為は絶対にしないわよ、そういうのは好きになった人とするべきものでしょうし」
「ソウデスネ……(今の所はなんとも思われて無いってことかよ…… まあ、これからか……)」
「……(輝夜の言った言葉を聞いて僕はどうして、ホッとしてるんだろう?)」
勘違いさせてしまいそうになる言葉、これを言った時にユーノまで一緒に驚いたような声を上げたのはどういうことだろう。
あ、良く考えたら普通に成長して、そういったコトで相談されたら本番込みで対応してあ・げ・る!
なんていう風にも聞こえたから驚いたのかもしれないかな、まあ、ハッキリと相談に乗ってあげるだけで行為には及ばない!と明言したし。
これで、変な勘違いはなくなったと思いたいけど、ユーノと和真の二人が変な雰囲気で何かを考えているのは、ちょっと気にしないほうがいいかもね。
それからは、何とか雰囲気が元に戻ったから普通に談笑していた時、和真の携帯にメールが届いた。
「ん、なのはからか…… 輝夜にも伝言をって?」
「なのはからは、なんて?」
普通に和真宛のなのはからのメールなら気にしないけど、私にまで伝えるべき事があるんなら気になってしまう。
だから聞いた時、和麻は私の方を向くと自分の携帯の画面を見せてくる。
そこに書かれてあったのは、すずかちゃんの家に集まって遊ぼうって話になってるんだけど、和真くんと輝夜ちゃんはこれるかな? っていう文章だった。
「どうする?」
「今日はこれ以上予定なんて無いんでしょ?」
「ああ」
私に文面を見せてきた和真の方は参加する予定ではあるらしくて、確認みたいな言葉を掛けてくるけど、私の名前が出たということはアリサもすずかも私が参加する予定で、準備をしているでしょうね。
なんて考えて、返事を返していく。
それらの和真からの返事を聞いた私の言葉なんて決まっていた。
「んじゃ、私達も行きましょうか」
「おう!なのはには、メールしておくな」
この言葉が、今日という日を非常に長くさせるものになるものだったとは、今の私達には気づけないものでもあった。