仮面と変態と常識人と   作:あんころもっちー

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第17話

 

 

 今、俺達はすずかの家に向かうバスの中にいる。

 原作アニメの中でも描かれていたけど、すずかの敷地周辺にも公共の交通機関、ぶっちゃけ、バスが通っているんだよな。

 

 初めて見た時はすずかの家、つまり豪邸を見たときよりもビックリしていたりする。

 なにしろ、バス停に【月村邸宅前】なんていう文字があったんだからな!ここが本当にフィクションの中ならともかく、今は俺にとってはハッキリとした現実だから、余計に驚きも大きかったりするんだよなぁ。

 

 なのはにとってはすずかの家の方が驚いたらしいけど。

 

 

「……」

 

 

 因みに、輝夜は今、俺の隣でペルソナ全書と銘打たれた本を真剣に読んでいたりする。

 俺が持つ原作知識を照らし合わせても十中八九アレだろう、と判断できるくらいの本だけど、輝夜には普通にペルソナの本として機能しているっていう話なのに、俺が見た時には普通の小説となって言ったのにはビックリした。

 

 やっぱり、ワイルドとペルソナ、この力の素養に目覚めた人間でないと読めないのかもしれないな。

 

 

「…… あの邪神っぽい神にペルソナを願っとけば良かったかなぁ……」

 

「……? 何か言った?」

 

「いいや、なんでもない、なんでもないさ」

 

 

 口から漏れ出てくるのは、愚痴みたいなボヤキ声、これに反応した輝夜が今まで視線を落としていたペルソナ全書から顔を上げて、俺に向けて問い掛けてくるけど、なんでもないという感じで俺も誤魔化していた。

 

 そんな中で、俺は彼女、斉藤 輝夜に対しての自分の中での印象をまとめていた。

 俺と同じ転生者でワイルドのペルソナ使いで、どうも聞いた限りというか持っているものの特長で、イゴールさん達より上の者と契約したっぽい事、前回で判明したけど男のエロ心に理解のある美少女、そう男のエロ心に理解のある美少女!といえる美少女で、成長すれば間違いなく絶世と言う言葉をどれほど付け足しても足らないくらいの美女になるのは明白な女の子。

 ただ、やっぱり、限度はあるみたいだけどね。

 

 あのやり取りが中学生辺りでやられたら、間違いなく輝夜を押し倒す(間違いなく返り討ちにあうな)か、夜のオカズにしてしまうのは間違いない。

 というか、性欲を弄ばれたってあんな感じのことを言うんだろうなぁ。

 

 だけど、これから起こるであろう出来事の中心となっていて、しかも、ペルソナ使いじゃない俺は間違いなく彼女の力にもなれないという状態。

 この数日で、本当に輝夜の存在って大きくなったよな…… とも考える。

 

 始業式初日にアイツ、ポーカーの阿呆に輝夜が絡まれなかったら、俺と彼女がこうして友人となることはなかったかもしれない、それどころか、流れから判断して彼女一人で孤独な状況で危険な事に対応させられていたかもしれない。

 そこまで考えた自分の頭に少しだけ、怖気が走る。

 

 真剣な表情でペルソナ全書を読みふける輝夜の綺麗な横顔を、俺はじっと見つめていた。

 だけど、こうしてじっと見つめていたのが、運が良かったのかも知れない、彼女が思わず、といった風に漏らした小声の言葉を聞くことが出来たのだから。

 

 

「…… 今の時点で出てきている項目は二つ愚者と死神、か…… でも、死神のタナトスってレベル差考えて今の私の召喚技術じゃ使えるわけがないか……」

 

 

 タナトス…… タナトスだって!? と俺は叫びそうになる自分を抑えるので精一杯だった。

 あのペルソナ、タナトスはP3の主人公専用ペルソナであって、しかも、その主人公は最後には死んでしまったはずだし、次のシリーズでも専用として扱えるワイルドのキャラはいなかったし、何より扱えたのも、エリザベスさんがペルソナカードとして扱えただけのはず。

 

 

 だけど、この次に現れたのがメサイアだったりしたら、確実に輝夜は【彼】と同じ運命を辿ることになってしまう。

 そうであったとしても、昨日の事を見る限り、俺がその事を伝えようとすれば間違いなく輝夜がベルベットルームに呼ばれてしまうのは明らかだ、伝えられないというもどかしい苛立ちを押えながら、輝夜の膝で気持ち良さそうで、幸せそうに、本当に気持ちよくて幸せな様子で丸まって眠りこけているユーノを締め上げて状況を教えたい。

 

 そんな気持ちを無理矢理抑えながら、自分の右手をギリギリと握り締めているのだった。

 せめて、せめて、俺の知るタナトスでない事を祈るしかない、か。

 

 

 しかもユーノの奴は、輝夜が着替える為に部屋に入っていく時も、当然のような様子で輝夜の部屋に入って行こうとしたんだしな。

 まあ、俺が止めたけどね、その際に輝夜は原作のなのはと同じ様にユーノをペット扱いしていたのは明白だったから、これを小声で指摘したら、流石にユーノは白い石像みたいになって硬直していたけど、輝夜の怪訝と言うか、何やってんのコイツ? という視線は少し堪えていたりする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私と和真にユーノの三人は、すずかの家に向かう為に直通のバスに乗って向かっていたりする。

 ツッコミ所があるのは自覚しているわ。

 

 だけど、お出かけ用の服に着替える為にユーノも一緒に連れて行こうとしたら、和真がどうしてか凄まじい剣幕でユーノを掴みあげていたのは、謎、と言って良いくらいね。

 因みに、当時のやり取りを見せるならこんな感じになる、台詞だけで申し訳ない。

 

 

「おいユーノ、お前どうして一緒についていくんだ?」

「…… あ」

「もしかして、合法的に女の子の着替えを見れるから付いていっているのか?」

「ば!そんなわけないじゃないか!!ただ、自然に体が動いていただけだよ!!」

「それ、もっとヤバくないか? 将来が不安になる言い訳だぞ」

「……」

「それに輝夜って、お前の事、完全に人語を喋るペット扱いだと思うぞ」

「…… え? 本当?」

「本当と書いてマジだ」

「…… 回復は遅れるけど、人の姿で過ごした方が良いのかな……」

「出来るんならそうしといた方が良いと思うぞ、ぶっちゃけ幽々子さんも半分ペット扱いだろうし」

「幽々子さんまでになんて、流石に、落ち込みそうだよ…… 」

 

 

 というやり取りがあったんだけど、ユーノってフェレットじゃない、人間に変身するなんて…… まあ、魔法があったからありえない話じゃないか。

 あれ、ユーノが実は人間だったんなら私って昨日の朝、制服に着替える時に部屋に連れ込んだよね。

 

 バッチリと見られた? まあ、和真の対応を見る限りでもしも人間なら私達と同年代っぽいし、今はそんなに気にならないかな、とも考える。

 それに私が連れ込んだんだし、私が何かを言うのもお門違いか、と結論付けて私の膝の上で丸くなって眠っているユーノを優しく起こさないように撫でていた。

 

 隣では物凄い形相をしている和真に気が付かないままだったけどね。

 

 とりあえず、私はそんなことをしながらペルソナ全書を読みふけっていた。

 こんな所で読むなよ、とツッコミを受けそうだけど、どうやらペルソナ使い以外にはどうも普通の小説にしかも、ペルソナの元ネタ? 的な人物、カール・グスタフ・ユングの著書になっているみたいだし、傍目から見たら難しい本を小学生の女の子が読んでいる。

 それくらいの認識になるでしょうね。

 

 相変わらず白紙のページが多いけど、ペルソナを召喚する前にはなかった変化が大量に本の中に現れていた。

 そう、書くアルカナの欄が追加されていたのだ、白紙のページにはどうも同じアルカナのペルソナが埋まっていくらしい。

 

 

「…… 今の時点で出てきている項目は二つ愚者と死神、か…… でも、死神のタナトスってレベル差考えて今の私の召喚技術じゃ使えるわけがないか……」

 

 

 現時点で確認できるペルソナは4つ、愚者に私の初期専用である【オモイカネ】と追加されたらしい【ジャアクフロスト】で、死神が【ロア】と【タナトス】の二体ね。

 この中で問題なく使えるのが、オモイカネとロアの二体で、ちょっとSP消費がマッハという意味で、無理すれば使えそうなのがジャアクフロストか、多分私の力量的に追いついていないから消費が大きいんでしょうね。

 それから全く召喚出来る出来ない以前に、差があり過ぎてお話にならない状態なのがタナトスだったりする。

 

 ま、召喚できないものは気にしてもしょうがないし、今はジャアクフロストとロアの確認が第一かね。

 

 

「ん?」

 

「どうかしたのか? 輝夜」

 

「え、ええと、うん?」

 

 

 なんて気を取り直して再び視線をペルソナ全書に移そうとしたら、周囲にどこか妙な違和感を感じる。

 言葉に出来ない違和感、これはなんなんだろう、私の言葉に和真が怪訝な様子を浮かべて問いかけてくるが、これに答えられる言葉がなくて、私は視線と顔を落ち着きなく動かしていた。

 

 それからすぐにバスは月村邸の前に到着したらしく止まり、目的地にも付いたので私達はお金を払いバスを降りるけど、ここでようやく分った変な違和感の正体と発生している場所が。

 

 

「和真」

 

「どうしたんだ?」

 

「すずかの家って、あの巨大な豪邸よね?」

 

「そうだけど? どうしたんだ?」

 

 

 やっぱり、か。

 昨日の内に、予想くらいはしておくべきだった。

 

 昨日の夕方にすずかのシャドウが現れたというのに、本体を苦しめる為にシャドウが本体の元へと向かうのは分りきっていた事、これにも予想が付いてなかった。

 

 

「多分、昨日のすずかのシャドウがあの家の中にいるわ、しかも騒ぎも起こしているかもしれない」

 

「な、なに!?」

 

 

 私の言葉に驚愕した和真はすぐに結界を展開して、バリアジャケットを身に纏ってデバイスを持っていた。

 何となくだけど、こういう変身するって言うのはちょっと羨ましいと感じていたりもする。

 

 まあ、そんなことは置いておくとして、魔法陣を展開した和真は何かを探っている様子を見せていたけど、何かが分ったらしく慌てた様子を見せる。

 

 

「戦闘が発生している!? 恭也さんとなのはが一緒にファリンさんとノエルさんと戦っているなんて!!一体何が!?」

 

 

 因みに何回かいったことのある月村の家は、やはりというか、とらいあんぐるハート3とは家族構成が違っていたりする。

 ノエルさんと忍さんは同じだったけど、やはりすずかという妹がいた所為かファリンという女性もいたりするのよね。

 

 

「とにかく混乱するのは後よ!今はすずかの家に向かいましょう!」

 

「分った!」

 

 

 彼女も恐らくはノエルさんと同じく自動人形だろう、だけど、戦闘が発生しているのならどうしてそんな事に、とも思う。

 私達は月村邸に向かって走り始めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 屋敷に付いた私達の目の前に会ったのは、瞳から光が消えてロケットパンチを恭也さんに放っているノエルさんに、大きなハルバートを持ってなのはへと接近していくファリンさん達だった。

 そんな彼らから守られるように少し離れた位置にいるのは、アリサとすずかの姉である忍さんだった。

 

 すずか本人が居ない事が気になるけど、とりあえず援護しないと!そうアイコンタクトで判断した私と和真は、それぞれの目標に向かって走り出す。

 

 

「ペルソナ!!」

 

【友の兄の援護か!ならば、受けるが良い機械人形よ!ガルーラ!!】

 

「なっ!? 輝夜か!!?」

 

 

 私が恭也さんに、和真がなのはへと向かって行き、最早お馴染みとなった拳銃を頭に突きつけての召喚を難なくこなす。

 もう聞きなれたガラスの割れるような音と共に姿を現すオモイカネ、彼が放つ大量のカマイタチがノエルさんを急襲する。

 

 だが、相手はやはり機械人形というべき相手、私が向かう頃にはロケットパンチは回収し終わっていて、小太刀に似た短剣で恭也さんに肉薄していたが、私からの攻撃を確認直後に回避と防御を同時に行うなんていう無茶すぎる機動で離れていた。

 恭也さんの横に並び立つと、改めて分るのが彼が負っている傷だった。

 数箇所に打撲や切り傷と言ったものがあり、今の時点では戦闘に支障は無さそうだけど、後々に響いてくるのは間違いないといえるものでもある。

 

 

「お話は後で、とりあえず今は」

 

「き、傷が、いや、疲労までも一瞬で!?」

 

「させない!プロテクション!」

 

 

 とりあえずディアラマを使い恭也さんの傷を癒すと、やっぱり驚くわよね、なんて考える。

 でも、驚いてもらっている暇はないし、何よりも体勢を立て直して、こちらへとロケットパンチを放ってくるノエルさんを見てペルソナを呼び出そうとした瞬間、ユーノのプロテクションに阻まれてノエルさんの攻撃は失敗する。

 

 あ、起きてたのね、ユーノ。

 今まで台詞がなかったから、寝てるものだとばかり思ってたわ…… とりあえず、ごめんね。

 

 

「状況の確認だとか、色々と話すことはあると思いますけど、それはこの戦いが終わってからで良いですよね?」

 

「…… ああ、こちらも聞きたいことはあるが、まずはこの状況を終わらせないといけないな」

 

 

 この一連の流れでいつもの調子を取り戻した恭也さんを見て、私は自分の武器でもあるバス停をスカートのポケットから取り出して構える。

 恭也さんが仰天したような表情を見せたけど、気にしないことにした方が良いわね。

 

 というか、私が逆の立場だったら同じ様になる自信があるわね、普通は小学生の女の子のポケットからバス停が出てくるなんて言う不可思議な光景なんて、絶対に見れないんだし。

 まあ、こんな事も気にせずにしないと、目の前のおっかないノエルさんは見逃してくれそうにないなぁ!なんて考えてノエルさんが打ち込んできた短剣を回避したと同時に、バス停をしたから上へと突き上げるようにして振るう。

 ペルソナ使いになったからこそ得られた身体能力って奴よ!なんて心の中で叫んで、胸元、もしくは顎に打ち込もうとするけれど、再び常識ってもんをどこかにおいてきたような運動で回避される。

 

 

「ハッ!!」

 

 

 回避して私とノエルさんの間合いが開いた瞬間を見逃さず、恭也さんは両手に持つ小太刀でもって連撃を加えていく。

 原作でも思ったけど、やっぱり御神の剣士パネェ…… 両手が閃光になっていて、ペルソナを召喚出来るようになってから上がった動体視力でも全く追いきれないよ。

 

 何て暢気に考えつつも私はすぐに行動を別に移す。

 

 

「来て!オモイカネ!」

 

【汝の友の兄の守りを固めん!ラクカジャ!!】

 

「こ、これは!? これなら!!」

 

 

 とりあえずは、恭也さんがどんなにすごい動きで攻撃を避けれるとしても、まずは紙装甲をどうにかしないといけない。

 直撃したら即死という現状なのはダメだ。

 

 それに恭也さんの驚きと納得した様子は、以前ラクカジャを掛けられた和真が少し漏らしていたりする。

 実は、補助魔法を掛けられた相手は光に包まれたと同時に、自分のどの能力が向上したのかが分るんだそうだ。

 だから、恭也さんが思わずと言った具合の様子でも悟っているのは、その為でもある。

 

 

 そして、私は再び拳銃を額に当てて、隙あれば恭也さんの援護の魔法を放つために構えつつ戦況を見守っているのだった。

 だけど普段の様子からして、タルカジャなんてかけてノエルさんを恭也さんが破壊してしまったら、と考えてタルカジャだけはかけていないんだけど、既に無双モードが入ってノエルさんをハメにハメている恭也さんに、これ以上の支援は必要あるのかな? とも考えてしまうわね。

 

 

 

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