仮面と変態と常識人と 作:あんころもっちー
平凡な小学三年生だった私、高町 なのはに訪れた大きな出来事。
神社に来るっていう子狐さんと遊びたくて、油揚げを持って行った神社で起きた変態さんや和真君達との事件、解決した後でユーノ君って言う名前の喋るフェレットさんから聞いたことは、私に色んな意味で衝撃を与えてくれた。
だけど、一番衝撃をうけたというか複雑だったのは、あの人…… 和真くんの輝夜ちゃんに対する態度の事…… 明らかに私達に向ける視線とは違う視線を輝夜ちゃんに向けていたから。
私達じゃ、和真くんが隠してる何かの助けにはなれなくて、輝夜ちゃんだったら助けになれるの? そう、そんなことを考えていたの。
どんなこと、なにが、私達と輝夜ちゃんと違うんだろう? って、女の子の私から見ても凄く魅力的で、何時も私達と楽しく過ごしている時に、たまに、本当にたまにだけど年上のお姉さんと話しているような雰囲気を見せることがある輝夜ちゃん、だけど、それ以上に暖かくても寂しさと悲しささえも感じさせる秋の風みたいな、そんな雰囲気を見せることもある輝夜ちゃん。
そんな輝夜ちゃんを見ていて、私も友達、ううん、アリサちゃんとすずかちゃん達と同じくらいに大事なお友達だって感じるようになっていていた輝夜ちゃんの姿。
今までの日々の中で、ずっと見てきた輝夜ちゃんのことを考えても、どうして和真くんと輝夜ちゃんが一緒にいるのか、どうして和真くんと同じ力を持っているはずの私じゃないのか、そんな感情がぐるぐると、ぐるぐると、私の中を蠢いていた。
「私…… 嫌な子だ……」
部屋にはもう私以外には誰もいないから、出せた言葉、これを自覚して出したと同時に私は自己嫌悪っていう感情で一杯になってしまう。
だって、私は【良い子】でいないといけない。
それはお父さんが入院して、皆が忙しそうにしていた時に感じた事だったから。
良い子にしていないと、私は誰からも見向き去れない、必要ともしてくれない。
だけど、輝夜ちゃんの言ってくれたあの言葉だけはハッキリと覚えていた。
「説明は後!とにかくアンタは障壁の維持に専念しなさい!今はなのはが、貴女が必要だから!!」
どんな形でも良い、私をハッキリと必要といってくれた輝夜ちゃんの言葉は、私の心に深く残っていた。
だって、今まで誰も言ってくれなかったから、私の事を必要だ、とも、必要ない、とも。
輝夜ちゃんのあの言葉が、あの場を凌ぐ為の言葉だったとしても、私は嬉しかった。
私自身を必要だって、そういってくれる言葉があったのは、だから、だから、ゆれてしまうんだろうな。
好きな男の子を優先したいのか、必要だってハッキリと言ってくれた大事なお友達の女の子に協力したいのか、ということを。
だけど、次の日にすずかちゃんの家に行った時、問答無用でファリンさんとノエルさんの二人に玄関の所で襲われてピンチになっていた時に、和真くんと輝夜ちゃんの二人が来るけど、少し考えてしまう。
「なのは!俺とお前の二人で、ファリンさんを止めるぞ!ノエルさんは輝夜が対応しているから心配は要らない!」
そんな言葉と、輝夜ちゃんへの凄い信頼と親愛みたいな感情を。
…… やっぱり和真くんにとって、輝夜ちゃんは大事な人だって事なのかな。
そう、なのはは考えていた。
前回、恭也さんにラクカジャをかけてからの戦闘描写は省かせてもらいます。
え、手抜きじゃないのかって? まあ、なんていうか、ダイジェストで言えば、私恭也さんにラクカジャをかける→恭也さん無双スタート→ただでさえ危ない調子だったノエルさんあっさりと敗北。
そんな戦闘をどう表現すればいいのか分らないわ、現実に目の前で無双される相手を見たら、本当に不憫な気持ちになってしまうのは仕方のないことよね。
そんなことを考えながら、今は気を失っているノエルさんを縛っている恭也さんを眺めていた。
「ん、どうかしたのか、輝夜?」
「いえ…… 恭也さんも聞きたいことはあるでしょうけど…… とりあえず何があったんですか、ノエルさん達が忍さんや恭也さん達を襲うなんて、考えられないんですけど?」
こんな状況になって、私達に話を聞こうという様子を見せていた恭也さんに忍さんにアリサ達だけど、こっちからしたら、ノエルさんとファリンさんが恭也さん達を襲っていたという事情を知りたいし、何よりも納得も出来ない。
普段の穏やかな日常を過ごしている彼らを見れば、信頼しあっている様子なのは明白というのは、間違いないのだし。
それに戦闘中の間ずっと、ノエルさんは一言も喋る事はなく、表情も人形のような無表情のままで襲ってきていたのだから、間違いなく以上を引き起こした何かがあったと言える。
「お、終わった…… の?」
「恭也、ノエルは!?」
戦闘が終わって安全になったことを確認したのか、私達の所に忍さんとアリサがおずおずと近づいてくる。
だけど、ノエルさんが完全に行動を停止している様子を見て、忍さんは少しだけ慌てた様子を滲ませながら、恭也さんへと問い掛けていた。
「意識を奪う程度に手加減はしているさ、だけど輝夜がいなかったら、それも危なかったが」
「そう、良かった……」
心配していたのか、恭也さんの言葉に胸を撫で下ろす忍さんを見て、私は和真達の方はどうなったのか、と思い出して彼らの方を振り向いていた。
そんな私の様子に和真となのはのことを思い出した恭也さん達も、私と同じ様に振り向いて、固まった。
どうしてって? 簡単よ。
「か、和真くん……」
「ん?」
「こんなにバインドでぐるぐる巻きにする必要あったのかな?」
「すまん、いつもの癖でつい……」
「ふぁ、ファリーン!!」
顔以外が和真の魔力光って奴だったっけ? その色であるグレーカラーのチェーンで簀巻きという言葉も生温いくらいの状況になっていたのだ。
悲惨なくらいにぐるぐる巻きにされているファリンさんを見た忍さんは、悲鳴のような絶叫を上げるけど仕方がないわ、こんな感じになっていたら。
しかも目はアニメみたいにぐるぐると回っているから、余計に情けない状況にもなっているしね。
まあ、なんにせよ少しは事情を知っている可能性がある忍さんとアリサに話を聞かないといけないか。
「あの、忍さん、一体何があったんです? ノエルさんとファリンさんがこんな事をするなんて」
「あ、ああと、そうねこっちも聞きたいことはあるけど、そっちの方が先ね…… 私と先についていたアリサちゃんの二人で一緒にお茶を飲んでいた時だけど……」
それから始まる忍さんたちの説明なんだけど、、アリサがどうしてか不気味なくらいに大人しく沈黙しているのが気になる。
いつもの彼女なら、それこそ怒髪点を突きそうな勢いで問い詰めてきそうなものなんだけど、私達全員をじっと見つめて、何かを考える様子を見せている。
どうしてだろうか、とも思うけど、それは一先ず置いておくとして、忍さんが説明してくれた状況というのはこうだ。
私達が来るよりも前にアリサは到着していて、最初はそこにいたすずかに忍さんと一緒にお茶を飲んでいて、それから少ししてすずかが立ち上がって部屋に忘れ物をとりにいって来る、といって出て行ったのと入れ替わりにノエルさんとファリンさんがお変わりのお茶やお菓子を持ってきた。
だけど、十分近くたってもすずかは戻らないし、彼女達がお茶を飲んでいた場所もすずかの部屋からほんの数分も掛からない位置にあったから、流石に不審に感じた忍さんが様子をノエルさんとファリンさん達に見に行かせる。
それから数分も経たない内に、私達が見たようなあまりにも不自然な様子になっている二人に襲撃されて、玄関の方に逃げたら運よく恭也さんになのはが来ていて、彼らが戦う事で自分達は何とか無事だったということだった。
正直にいって状況としては何も分らないけど、すずかがいなくなった事と様子を見に行ったノエルさん達の様子の激変は間違いなく、無関係じゃなくて大きく関わっているでしょうね。
昨日の夕方に見たすずかのシャドウらしき存在、あれはやっぱりシャドウだったってことか。
ジュエルシードの暴走体がどうしてすずかの姿を模したシャドウとなって現れたのか、それは分らない。
ペルソナ2罰までだったら、本人にとって触れられたくない部分を使って揺さぶって、本体を苦しめてそれを見て嘲笑うことを目的としている存在、苦しめる為であれば大事な人達を自らの手で絶望の底に叩き込んで殺害しようとまでする。
なんていう表の自分を徹底的に苦しめる存在でもあるわけだけど、昨日の夜、ベルベットルームに呼ばれる前の和真の口振りだと、違う可能性もある。
2罪のミッシェルのシャドウのように、本人を装って成りすましていた例もあるし、もしかしたら最終的には本人と入れ替わるのが目的だった可能性もある。
こんな感じで、思考の渦に沈んでいた私が現実に帰ってきたのは、どこか切羽詰ったような和真の声だった。
「あ、あの…… アリサさん……?」
「とりあえず、私の頭が今は追いついていないから、今回の件が終わったら聞かせてもらうわよ? それと輝夜!」
「ふひゃい!!」
ギブ!ギブギブ!!といわんばかりに、和真は握り締められている肩を叩いているから、多分万力のような力で握り締められているんだろう。
そんな微笑ましい(?)光景をボーっと見ていたら、アリサはギュリン!という効果音が付きそうな勢いで、こっちに振り向いて凄まじい剣幕で私にまで声を掛けてくるから、変な声が出ちゃった。
あぅ、ビックリした。
「最近様子のおかしかったアンタにもたっぷりと聞かせてもらうからね!!」
「り、了解しました!マム!」
トンでもない剣幕、明らかに逆らったらヤバそうという雰囲気をビンビンにさせながら、そういって来るアリサに私は敬礼しながら軍隊みたいな返事を返していた。
それを見たアリサは満足そうに一度頷いた後、和真の方から手を離していたけど、和真は非常に痛そうに肩をさすっていたのは、言うまでもないわね。
だけど、思考の渦に沈んでいた時にいつの間にか話は進んでいたらしい。
すずかの家の中に突入するのは、和真になのはと私にユーノの四人で、恭也さんはノエルさんとファリンさんの目が覚めた時に二人が襲われた時に守る為に、この場に残るけど正気に戻っていたら彼も後から突入してくるとの事だった。
うーん、私ってこんなことが多いなぁ。
そう考えて、人の話をちゃんと聞くようにしないといけないわよね、特にこんな状況下だからこそ、しっかりとしないと、と、決意を固めてすずかの家の玄関へとまっすぐに私達は向かっていた。
玄関に到着した私たちだけど、一つ問題が発生していた、それは。
「鍵、掛かってるよね……」
「だけど、すずかのことを考えたら開いてる場所を探す、なんていう回り道もしてられないしどうしたら……」
「それに他の場所があいているって保障はないわよ」
「だよなぁ……」
そう、玄関に鍵が掛かっていたのよね。
忍さんとアリサは玄関から飛び出してきたって、なのはも恭也さんも言っていたし、本人達も玄関から外に出たって言っている。
だから、普通に考えたら玄関に鍵が掛かっているのはおかしい。
でも、和真の言う通り回り道もしていられない、だったら一つしか方法はないわよね。
「今は急いでいるし、何よりすずかのことが心配だしね」
「か、輝夜さん?」
「ええと、輝夜ちゃん?」
こんな状況である以上、急いで中に入る為に取れる手段は少ないわね。
なんて考えてポケットからバス停を取り出した私を、和真となのはは怪訝というか、不安一杯な表情で見ていた。
だけど、友達の命が掛かっている状況でまごついてなんていられない!!それが私の正直な心境なんだ。
ようやくこの世界で出来た普通の友達、それを失ってしまうかもしれないという恐怖と、焦り、これが私の中をぐるぐると巡っていた。
そして私はバス停を握る手に力をこめて、思いっきり振りかぶる。
「エキセントリックお邪魔します!」
「か、輝夜ちゃん!そこは普通にお邪魔しますで良いんだよ!?」
「ツッコミ所が違うだろ!なのはぁ!!」
フルスイングの要領で私は重石の部分を玄関にぶつけると、玄関はかなり気持ちの良い音共に玄関は粉々になって中の空間が顕になる。
中と外に降り注いでいる玄関の破片の中、ずれにずれたなのはのツッコミと、鋭く煌く和真の神速のツッコミが炸裂したりしていた。
ただ、やった後でちょっと不安になる。
緊急事態だったからといって、玄関を壊したのはやりすぎだったかなぁ、と。
まあ、とにかく道を作った私達は、恐らくすずか達、二人のすずかがいるであろう場所、彼女の自室へと走って向かう。
その道すがら、私の横に並んだ和真が小声で話しかけてくる。
「さっき、何を考えていたんだよ? 俺達の話も耳に入っていない様子だったからさ」
「シャドウについてよ、3から先のペルソナ使いのシャドウって、本人に成りすまそうとかそういった行動をとった事ってある?」
「…… 3の方はシャドウって言う存在の定義が違っていたから、違うって言えたけど、4の方なら本人のシャドウが出たら、本人と入れ替わろうとしてたけど…… って、まさか今回のすずかのシャドウって!?」
「ただの推測よ、本人を目の前にしないとはっきりとは言えないわ」
「あ、ああ……」
和真の言葉の中に少しだけ責める様子があるのは仕方が無いと思う。
だけど、良い機会だと思って和真に対してシャドウに対して問いかけてみれば、やっぱり後のシリーズじゃ本体と入れ替わる事を目的としたシャドウがいたのね。
驚愕と納得に焦燥、これらの感情に包まれている和真に私は推測を交えている、なんていったけど、私がプレイしたよりも後のシリーズを良く知る彼のことだから、とっくに結論には達していて私の言葉で、確信を深めただけなのかもしれない。
なのはを先頭にして、私と和真が横に並んで、ユーノはなのはの横を走っているという状態だけど、何度か来てすずかの部屋の位置も把握していた私達は、あっという間にすずかの部屋到着していた。
はやる気持ちを皆が抑えて、ゆっくりとすずかの部屋を空けたその先に広がっていたのは、ある意味では予想通りの光景だった。
「どうやら、来ちゃったみたいねぇ…… ほらほら、さっきまで私が言っていた事、これを否定して反論してみてよ、ワタシ?」
「ち、違う違う違う違う!!!私は、私は!そんなことなんて考えた事、ことなんて……」
「え? すずかちゃんが、ふた、り……?」
二人のすずかが、そこにいたんだから。
この常識を逸脱しすぎている光景になのはは呆然として、和真は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。
だけど、私の中で疑問なのは、彼女達は何を話していたんだろう、ということだった。
明らかに和真を見た瞬間、すずかの顔に怯えという感情が広がっていたのだから、理由が余計に分らない。
そんな私達を放る形で、昨日とは違って金色の目をしているシャドウは更に言葉を重ねていく。
「ハンッ!今更何を言っているの? いつもイツモ何時も考えていることじゃない!私がワタシだから良く分るわ」
「なにが、何が分るの!!」
「分らないの? 一人の女として和真くんが大好きなのに彼が本当に目を向け始めたのは、最近になっていきなり現れたあの女!それを見てアンタはどう考えた? とても口には言葉では出せないようなことを考えたよねぇ!!」
「やめて!聞きたくない!聞きたくないよぉ!!」
「すずか、ダメよ!!」
「すずか!それ以上そいつを否定するな!!」
すずかの顔を醜悪に歪めて、口汚い言葉を言い放つシャドウ、同じだ。
2罪や2罰のシャドウと一緒で本人が一番否定したい言葉や行動と誘発させて、より本体を苦しめるように持っていく。
もしも、もしも私の推測が当たっていて、和真の様子とも合致したあれが真実なら、これ以上すずかが否定の言葉を重ねたら、大変なことになってしまう!そう考えていた。
だけど、私達の思いとは逆の方へと状況は流れてしまう。
「私は、ワタシはそんなことなんて考えてなんてない!!貴女なんて……」
「すずか、その先を言うなぁ!!」
「貴女なんてわたしじゃない!!!」
遂に言い放ってしまった。
自分で自分自身の負の心を否定する言葉を、私が持っている知識じゃ、これからどうなるかが予想が付かない。
だけど、確実に大変なことになるのは決まっていると言えた。