仮面と変態と常識人と   作:あんころもっちー

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第2話

 

 

 早速だが、私は面倒過ぎる奴に絡まれている。

 

 

 

「やぁ!俺の名前は浩太・D・ポーカーって言うんだ!君の名前は?」

 

「………………」

 

 

 

 そう、浩太・D・ポーカーである。

 私の顔が生理的な嫌悪を向けた目を彼に向けているのが自覚出るけれど、霧島やらバニングスと言った連中はどうしたのかって? 何か去年のクラスメイト達とか、それ関係の奴らと思える連中にしつこく捕まっているようで、どうも絡まれている私のところに一刻も早く向かいたいが、周りが向かわせてくれないという状況を見せている。

 

 奴も彼らが私の元にこられない状況を見つけた絡んだというか、いや、これは私がどう反応するのを見ているのかもしれない。

 

 整いすぎていて逆に見るからに気味の悪さしか感じない笑顔だが、下手に侮蔑などの感情を浮かべて対応すれば奴を喜ばせてしまうのは明らかとなれば。

 

 

 

「斉藤 輝夜よ、自己紹介の時に聞いてなかったの?」

 

 

 

 無表情&無関心を装いつつ奴に対してなにもリアクションを起こさない事、これが最適な回答と考えたんだけど。

 正しかったらしい奴は一瞬だけ、非常に、ひっっっじょうに!!残念そうな表情を浮かべていたが、急にニヤついた表情になって私に近づいてくる。

 

 げ、逃げ送れた、奴が近づいてきたときから凄まじく嫌な予感がしたから、体を何時でも動かせるようにしていたんだけど。

 それを奴は何もなかったかのように、一瞬で近づいて私の肩に手を回していた。

 

 

 

「っ!!」

 

「じゃあ、改めて自己紹介しようか、俺の名前は浩太・D・ポーカー…… 君の事をもっと知りたいなぁ」

 

「ぃ、ぃ、ぃやぁ…… は、はな…… はなして……!」

 

「へぇ、やっぱり君、すっごく可愛いなぁ…… もしかして俺に惚れちゃった?」

 

 

 

 肩に手を回された瞬間、私の体を生理的嫌悪感と言う奴が駆け巡り、一瞬で体が硬直してしまう。

 私の体が硬直して自分の口から出てくる恐怖という感情に彩られた声を、どう勘違いしたのか、より俺の体を抱きしめるように体制を固めていく。

 

 全身をゴキブリや蛆虫といった害虫の類の不快なものが這い回っている、不快という言葉をどれだけ足しても足らないくらいの、そんな凄まじい不快感に包まれていた私の視界の端では私の状況に気がついたのか、霧島や高町に月村とバニングスの表情が一変し、絡んできていた友人たちを無視してこちらへと一直線に勢いよく向かってくる。

 

 そうこうしている内に、奴は私の顎を持って上を向かせ、ってまさか!?

 

 

 

「それじゃぁ、君の唇を味わ「こんのぉ!!女の敵がぁ!!!」べらぶっちゃ!!「いつかはやると思っていたがよぉ!いい加減に死ねやぁ!!」うわらわばぁああぁぁぁぁぁあ!!!」

 

 

 

 私の顎を持ち上げた瞬間、修羅と化したバニングスと霧島によって吹き飛ばされたポーカーは壁に叩きつけられて、私は月村によって優しく包まれる感覚を感じていた。

 目の前には私を庇う様に仁王立ちと言うべき体勢の高町がいて、彼女達の中のポーカーに対する感情と言うのも分る。

 

 そしてポーカーはといえば、バニングスと霧島によって袋叩きも生易しい状況なんだけど、表情が恍惚として嬉しそうなのは本当に見たくなかった。

 

 そんな中で私はもう大丈夫という安心感に、月村に守ってもらったという感情が色々と上ってきたからか、目尻や鼻にツーンとしたものが駆け上っていき。

 

 

 

「うっ…… くぅっ……」

 

「えっと、斉藤さん?」

 

「輝夜ちゃん? どうかしたの?」

 

 

 

 あ、もうだめ。

 

 

 

「ふ、ぇ、ふぅ…… ふえぇぇぇうぁぁぁぁぇぇぇん!!」

 

 

 

 泣いちゃったわけだ。

 精神年齢前世とあわせて三十以上の人間が、などと思うだろうが、考えてみて欲しい。

 

 男だった頃は絶対に味わうはずのない恐怖感に加えて、体は子供であり記憶が蘇った当初から自身が体に引っ張られているのが自覚できていたのだ。

 泣いちゃうのは当たり前というか、ぶっちゃけ、こういう時は自分で自分の肉体を制御できないんだよな。

 

 もう少し年齢を重ねれば制御できるようになるんだろうけど、今はまだこんな感じかねぇ。

 

 なんて体は大声出して泣いていて、心の中はある程度落ち着いていて冷静に自己分析を行うという、妙に器用な事をしながら、オロオロとしつつも俺を宥めている月村と高町を見て思うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あの時間自体が既に学校が終わっていたのもあって、私は半べそをかきながら月村に優しく手を引かれて、屋上へと向かっていた。

 出て行く際に教室からは打撃音とか少なくとも人体から起こってはいけない、そんな色んな音が鳴り響き続けていたから、ポーカーはボコボコにされ続けているのが良く分った。

 

 ただ、高町と月村がひそひそと会話していた内容もちょっと気になる。

 

 

 

「でも、あれだけやっても足止めが精々かな……」

 

「なのはちゃん、嫌な予感がするし、そういうこと言わないほうが良いよ」

 

「そうだね」

 

 

 

 出て行く時にチラリと見たポーカーは【見せられないよ!】の札が掛かっている、まさに肉塊というべき状態だったから、幾らギャグ補正があっても簡単に復活できそうな様子じゃなかったんだけど、朝の霧島やバニングスの様子を見る限りアレだけやっても足止めが精々なんだろうか。

 まさかと思うけど【美少年や美少女からの暴力はご褒美です!】とか言う人種なんだろうかな、これから絶対に関わり合いになりたくないけど、無効から関わって来るだろうし、自衛手段を持つべきなんでしょうね。

 

 家に帰ったらアレを本格的に調べないと。

 

 なんてしている内に屋上について私は両隣に月村と高町に挟まれて座っていた。

 

 

 

「ごめんね斉藤さん、私達が油断してたから不愉快な思いをさせてしまったよね」

 

「いい、あんまり気にしないで」

 

「でも……」

 

 

 

 元々責任感というか、そういった考えが強い持ち主達なんだろう、自分達が話していなければ、という自責の念に囚われているようだった。

 だけど、ポーカーの奴は間違いなく。

 

 

 

「あれって、蔑まされたりとか暴力を振るわれるって事を喜んでない?」

 

「「…………」」

 

 

 

 そのことを言った瞬間、彼女達は気が付きたくないことに気がついてしまったという表情になったが、まさか。

 

 

 

「二人とも気がついてなかったの?」

 

「い、言わないで……」

 

「そ、そうだよ…… でも、よく考えてみたら輝夜ちゃんの言う通りだよ…… いつも私達がなにをしても悦んでたし」

 

 

 

 後頭部にはでっかい汗をかいて、顔を引き攣らせながら彼女達は言っていたんだけど、多分というか確実に分っていたけど、分りたくなかった。

 なんていう所の心境が真相だろうか。

 

 まあ常識的に考えて分りたくはないだろう。

 

 自分達が私を慰めるというか宥める為に連れてきたのに、私自身が彼女達の空気をブレイクしてしまった為、この場には微妙な空気が流れ始める。

 私の言った一言に普段のアレの行動を思い出して、顔を引き攣らせたりといった、どうも心当たりのある事を思い出してしまったのか、ドン引きといった様子を見せていたのだが、アレの普段の様子が彼女達がこの答えにたどり着くのを阻害していた原因の一つかもしれない。

 

 その微妙な空気となった瞬間を狙ったように、屋上に続く扉が勢いよく開くと同時に、一つの金色の人影が入ってくる。

 考えるまでもなくバニングスだろう、というか、今姿が見えたから確実だ。

 

 

 

「ハァッハァッ!に、逃げ切った!!」

 

 

 

 息を切らせて、額には玉のような汗をかいたバニングスが入り口で息を整えていたが、近くには霧島の姿が見えないから恐らくは囮にでもなったのかな?

 そう思うんだが、あの男はあれほどの怪我から復活して霧島を追いかけていることになるんだが、気にしない事にするべきだな。

 

 

 

「アリサちゃん!!和真くんは!?」

 

「あいつは、和真は……」

 

 

 

 月村と高町の言葉を聞き、息を整え終わっていたバニングスは校舎の中を手などで耳をすませろ、といった具合のジェスチャーをするとワタシタチ全員がそれに習い耳をすませる。

 そうして聞こえてきたのは。

 

 

『あははははっ、和真~!待ってくれよー!』

『チィッ!神速の領域に余裕でついて来ただと!? 人間かよお前!?』

『フッ、簡単な事だ』

『言ってみろや』

『俺を好いてくれる美少年や美少女にぶたれ、蔑まれる事こそ我が人生であり最高の快感なり!その為ならばいかなる努力も惜しまぬわぁ!!』

『その努力をちったぁ社会の役に立つ事に生かしやがれ!!それと俺達全員お前なんそ大っ嫌いなんだよ!!』

『そんなわけなんぞあるわけがない!俺がお前もアリサもすずかもなのはも、今日追加したが輝夜も俺は深く愛しているから問題ない!さあ、和真!ついに二人きりになれたなぁ、愛する俺達が結ばれるシチュエーションとしては完璧じおっほう!!!』

『問題ありすぎじゃボケェ!!どさくさに紛れて斉藤さん巻き込んでんじゃねぇよ!!』

『ふぅははははぁ!!美少女や美少年からのありとあらゆる全ての暴力は最高のご褒美です!さあ、和真、僕をほっげげげぇ!!!』

『和真!!無事か!?』

『恭也さん!!』

 

「「「「………………」」」」

 

 

 

 私は自分の名前がアレの口から出た瞬間からおぞましいナニかが、自分の背中といわず全身を這い回る感覚を感じた為、聞くのを止めたんだが。

 高町達は全員が一様に嫌そうな、それでいて確実に霧島に対して申し訳ないと言った感情で、それぞれが沈黙していた。

 

 どうすればいいのん? これ。

 

 なんて考えている私はきっと悪くない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから私は屋上で三人と改めて自己紹介を行い、名前で呼び合うことを決めて携帯のアドレスなども交換し終わった。

 その後、アリサの車に送ってもらって自宅へと向かう際に時速四十キロで走っているはずの車を霧島となのはが『お兄ちゃん!!』と叫んだ事から、彼女の兄と思われる青年が走って追い抜いていったのは驚いた。

 

 あの二人、どんな健脚をしているのやら、健脚で片付けて良いのかも問題だけど彼らの後ろをスキップで追いかけていたポーカーには更に驚いた(こいつも普通に車を追い越したわ、でもその際にアリサの機転で座席に伏せて私達と認識させなかったおかげか、あの二人を追いかけていったのは幸いか、今度なのはのお兄さんにお礼の品でも持って家に行こう)けど、すずかの話では未だに追いかけっこの真っ最中の様子である為、彼らはまだ帰宅していないそうだ。

 

 だけど割と日常的にこういったことがあるため、既に霧島もなのはのお兄さんも慣れたものなので、夕飯までには帰ってくるよ。

 なんてなのはが言っていた事はかなり驚かされた。

 

 

 

「ただいまぁ~……」

 

 

 

 こんなのが日常だなんて嫌過ぎる…… そう思った私の声は必然的に暗くなって帰宅の挨拶をする。

 それと同時に家の奥、台所がある場所からスリッパ越しの足音が聞こえてきた。

 

 

 

「お帰り、輝夜」

 

「ただいま!お母さん!」

 

 

 

 一階部分の奥から現れたのは、私の母親である【斉藤 幽々子】である。

 どこかで見たことのある容姿に名前を持っているけれど、気にしないったら気にしない。

 

 だけどやっぱりお母さんの顔を見たら、今日学校で起こった嫌な事が吹き飛ぶのが自分でも良く分る。

 

 女の体になって思うのが私自身が驚くくらいにお母さんっ子になったということだ、何か嫌な事があってもお母さんの笑顔を見ると吹き飛んで、こっちも笑顔になるけれど食事の時には微妙な心境になるのは気にしない方が良いよね。

 お母さんって十人前くらい普通に食べちゃうし、この家のエンゲル係数ってどうなってるんだろ? その分、お父さんが頑張っていると思うけど、本当にどうしてるんだろうね。

 

 

 

「お腹空いたでしょ? 今日のおやつはケーキを作ってみたの、一緒に食べましょ?」

 

「うん!それじゃあ、着替えてくるね!!」

 

 

 

 そういって私はパタパタと足音を立てながら階段を上がり、自分の部屋へと向かっていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 それから着替えも終わり、お母さんと一緒におやつを食べて部屋に戻った私は、勉強机の上に飾ってある一冊の辞典並みの分厚さを持つ本と、その本に寄り添うようにして立てかけられている銀色の拳銃をながめる。

 

 その本のタイトルは【ペルソナ全書】とタイトルが書かれていて、お父さんとお母さんの話だと私が生まれて三歳になった頃には、私が使うと予定していた部屋の本棚に置かれていたらしい。

 中には何も書かれていないことやタイトルが私にしか読めなかったこともあった上に、現在に至るまで危険と言えるような状況になるようなものもなかったために私の勉強机の本棚に収まっているという訳だ。

 銀色の拳銃についても同様であるらしく、ただしこれは精巧に作られた置物だという事が分っている、引き金こそ本物の銃のように重たいものの、モデルガンでも実銃でも共通して言える弾を入れる為の機構がなくて、レントゲンなどでスキャンしても中身は空っぽというか何かを詰められる形状にはなってないらしいという事が分っている。

 

 まあ、拳銃の方は捨てても、また私の傍に戻ってくるという事で両親が半ば諦めておいているらしいのだが、転生した事を自覚した当初は不気味さを感じていたのが正直な所だ。

 

 

 

「んしょっと」

 

 

 

 相変わらず可愛らしい声だこと、前世の結構や太くむさくるしかった自分の声を思い出して軽く鬱になりながら、ペルソナ全書と拳銃を胸に抱えながらベットへとむかう。

 

 正直に言って、私としてはペルソナ全書とやらも銀色の拳銃にも、未だにかなりの不気味さを感じてはいるけど、ペルソナと言う言葉には心当たりがある。

 前世ではペルソナって言うタイトルのゲームがあって1~2までをプレイしていたけど、これらのシリーズでこんな意味の分らない構造をした拳銃が登場したことは無かったし、拳銃が出てきても登場人物たちの個人的な武装として出てきていたから、余計に心当たりと呼べるものが存在しない。

 

 

 

「本当に、この拳銃もペルソナ全書ってのも何のために私の元に来たのかねっ!!?」

 

 

 

 そうぼやきながら私はペルソナ全書の最初のページを開いた瞬間、物理的な衝撃といえるナニかと共に自分の中がかき乱される感覚が走った。

 それと同時にページの部分には文字が浮かび上がっていく、まるで今から先の自分の将来を暗示するかのように。

 

 

『覚醒の時は来たれり、召喚の器用いて己が内の心を、自分を呼び覚ませ』

 

 

 

 だが、それに囚われたのは一瞬だった為か浮かんだ文字を見た瞬間に冷めてしまったから、ベッドの上に放り投げてしまったのは悪くない。

 絶対に悪くないのだ。

 

 

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