仮面と変態と常識人と 作:あんころもっちー
『誰か……!僕の声を聞いて、力を貸して…… 魔法の力を……!』
遂にこの日が来た!いや、来てしまったなぁ……。
と俺【霧島 和真】は考えてしまう。
居眠り運転のトラックに轢かれて若くして死んだ俺を哀れに思った神様にチート能力を与えられてから、この世界【魔法少女リリカルなのはに転生】に転生するというテンプレ満載の前世と今の生だけど、転生当初は…… うん、すっげぇ黒歴史と言っていいくらいの阿呆で愚かでクソな奴だったと自覚できる。
何しろ、自分は神に選ばれて転生した選ばれし人類だ!なんて中二病患者と言えるくらいの痛々しい奴だったんだし。
まあ、死んだのがちょうど中学二年だったから…… それでなんで本当に中二病を患ってどうするよ!? 俺、という感じで今は反省できる。
どういう風に痛々しかったんだって? ガチでなのはやフェイトやアリサにすずかとアリシアと言った原作の主要な女性達を、俺のハーレム要員にするべくして俺は転生したんだ!!とか考えていたんだから、更には俺が介入することで出て来るであろうオリジナルの女性キャラも俺のハーレム要員だ!!なんて考えていたから救いようがない。
だけど、それは早々に瓦解したけどな、浩太・D・ポーカーの手によって…… 前の人生での政治関係のニュースで聞いた【ブーメラン発言】の意味を発言しないでいるにもかかわらずに思い知ったんだし。
「…… い、イカン…… ま、ままたたぁ、思い出しダメージが……」
思い出していたら、当時の自分の思考のあまりの愚かさ具合により、胃がギリギリィッ!!と痛みを訴え始めてくる。
特に最近ポーカーの奴のストッパー役にいつの間にかならされてからはお馴染みとなっている痛みだけど、こちとらこの世界じゃぁまだ9歳だぞ!? 俺、この時点で、こんな痛みを知りたくなかったなぁ。
なんて考えつつ、俺がどうして当時の自分が非常に痛々しい奴なのかが分ったと言えば詳細は割愛する、ただ言えるのは奴の行動を見ていたら張り合って行動した時に、自分も奴と同じ存在にアレなモノに見られてしまうから、と言うのが真相だったりする。
「バイでドM属性な奴と一緒の存在にだけは見られたくない……!!」
という間抜けにも程がある理由で、当時の自分が痛々しい奴と言う事を自覚していたりするのだ。
最初こそ張り合って行動しようなんて考えていたが、ポーカーの様子に疑問を持って立ち止まった事で、幸運にも俺は本当の意味でテンプレといえる踏み台転生者としての人生をギリギリでマジでギリギリのラインで、逃れる事が出来たと言えるのだから。
その後で冷静になってよーく考えてみれば彼女達とキャッキャウフフ(古ぅぅっ!!)する関係になれたとしても、なのははオハナシしたいの!とか言って問答はしつつも無用で砲撃ぶちかます娘になるし、まだ見ぬフェイトは警察組織と言える場所にいるにも関わらずに脱ぎ魔になるし、アリサは家が大金持ちで前世も今世もパンピーな自分じゃ凄まじく苦労する未来しかないし、すずかに至っては二次創作やらの情報を見る限りで家が特殊な生まれだったか? 吸血鬼とかそんな感じな上にアリサと同じくすずかも大金持ちでパンピーの自分じゃ苦労する未来しかない、だから考えた結果【彼女達とくっ付くなんてしたら、俺の人生…… 思いっきり灰色じゃん?】という結論に至ったのだ。
だからこそ、最初はポーカーに絡まれていたなのはたちを助けずにいたんだが、まあ、その、我慢の限界って奴を迎えてポーカーを殴り飛ばして奴に目をつけられ(貞操的な意味で)て、危険を感じた俺は士郎さん達に土下座してまで御神流の一部を習わせてもらったりとか、色々あったんだけど、後で語ろうかね……
だけどな、今の俺には普通の女の子と普通にイチャイチャして、普通にゆっくりと夫婦と子供たちに囲まれて年をとり、老後を過ごしたい!!
という夢があるのだ!あのアニメやサウンドステージなどで見たり聴いたりしてきた濃い人生など、ノーサンキュ状態なのだ!という決意を堅くしていたりする。
とっくに手遅れだとか考えてないぞ!!今からでも修正は十分に間に合うんだ!そのはずなんだ!
………………… さてと、さっきの夢の中の話をしようかね…… 疑問点が大量にあった夢だったし。
夢の中で見た通称というかネット上での他称淫獣こと、ユーノ・スクライアは多少うろ覚えになりつつはあるが、まだ思い出せる無印のリリカルなのは第1話の状況と同じ状況ではあった。
森の中を民族服に身を包んだ、金色の髪を持つ少年が地面の影から大量に手が生えて、その内一本の手は仮面を持っていて、それ以外の数本の手は西洋の片手剣を持っている。
そんな異様な風貌の敵に追われていたのだが…… あんな敵に追われてたっけ? 原作じゃあ、もっと形がハッキリとしていない黒い霧というか、コールタールのような化け物に追われているだけだったような。
そう思うが、答えが出てきそうで出てこない状況にモヤモヤしていたのが数日前。
「だけど、ユーノを追っていた敵に見覚えがないわけじゃないんだよな…… あれって確かペルソナ3の最初の敵だった、シャドウ、だよな?」
そう、ユーノを追いかけて原作のようにジュエルシードの封印術式を展開させる間もなく、たった一撃でユーノを戦闘不能に追い込んでフェレットに変身したのを確認してから、その場を立ち去った化け物の姿には見覚えがあったんだよな。
あれは、そうだ、俺が死ぬ一年位前に出て死ぬ直前くらいまで凄まじくハマっていた【ペルソナ3】の、一番最初に主人公がペルソナ能力に覚醒した瞬間に、タナトスにやられるかませのシャドウと呼ばれる化け物に良く似ているのだ、いや、アレと同一の存在と言って良い位だ。
「だけど、シャドウがどうして現れたんだ?」
ポツリ、また自然と口からは言葉が毀れる。
シャドウが現れる因子のようなものは、今まで確認できていなかったはずだ、桐条財閥も存在しないし辰巳ポートアイランドや巌戸台といったキーワードといえる地名は存在していなかった。
つまり、シャドウが現れる下地なんど全くといってよいくらいに存在していないはず、それなのにシャドウが現れてユーノを襲っていた。
これがどういうことを意味しているのか、それを察した瞬間に俺の背中を冷たい汗が流れ落ちる。
「まさか…… 発動状態のジュエルシードを取り込んだら、シャドウになるって言うのかよ? いや、まさか……」
そう呟いた瞬間、自分の中に【冗談じゃない!!】といった類の恐怖に似た感情が沸き起こる。
どうしてジュエルシードを取り込んだらシャドウになるのか、どうしてシャドウが現れるのか、という疑問点は頭の隅に追いやってひたすらに考えるのは、シャドウはペルソナ使いでしか対応できない、ということだった。
神様によって転生してもらった時に与えられたチート能力は、SSSの魔力(今は修行代わりでAAにまで抑え込んでいるけど)にデバイスマイスターとしての知識と技術、様々な処理能力などを大幅に強化しつつカートリッジシステムまで搭載したインテリジェントデバイス、といったものを貰っている。
だけど、もしもだけど、シャドウが相手になるんだったら、自分の持ちうる力を発揮して戦いになるのかどうか…… という不安と恐怖に絶望といった感情が自分自身の中を駆け巡っていく感覚を感じていた。
私は気持ちの良いまどろみに似た感覚を少し味わいながらも、寝起きの感覚で目を少しだけ開く。
「んぅ…… お母さん達が治療室に入ってから、5分も経ってない……?」
あの長鼻の老人、イゴールさんと(多分、構造は大分違うけど、あれはベルベットルームね)話していたのは、夢の中じゃ数十分以上は感じていたけど、こっちじゃあ数分も経っていない状況なのは、ペルソナ2罰の悪魔絵師が言っていたこと『この部屋では時間は意味を成さない』というのが本当だったという事かな。
だけど、私が思うのはどうして、今になって夢という形でベルベットルームが出てきたのか、という事だろう。
イゴールさんは私に試練と選択の時が迫っている、なんて言っていたけど、それがどうして【今】なのかが分からない。
原作というか、私のペルソナの原作知識は女神異聞録ペルソナにペルソナ2罪とペルソナ2罰だから、このシリーズの中に小学生が登場したというような設定は無かったし、何よりある程度精神が成熟していないとペルソナの制御も困難、というような設定もあったはずだ。
幾ら前世で二十代後半に差し掛かり、三十代に王手をかけていた私でも今は十にもならない小娘だ。
…… お母さんにべったりという時点で、自分自身の精神年齢が肉体に大きく引っ張られているのが良く分るしね。
下着類もお母さんの悲しそうというか、残念そうな顔を見るたびに、男の子でも穿けそうなシンプルで且つ中性的なものよりも女の子が好んで穿く様な可愛いものといった、少女趣味全開!といったものを穿いていても、その下着独特の違和感を、全く感じなくなってきたし。
元男であった自分が消えていくようで、少しだけ心の中でorzの体勢になっていたりしたことは、秘密だ。
「イゴールさんの後ろで頭にタンコブ一杯作って簀巻きにされてた、多分燕尾服姿の男の人も気になるけど…… エリザベスって誰?」
そう、私が本当に疑問に感じていた事に突き当たる。
私が知るベルベットルームの住民というか、登場人物は、長であるイゴールさん、ピアニストのナナシさん、歌を歌っているベラドンナさんに2罪と罰で悪魔絵師が加わったくらいなのだ、少なくとも私の記憶の中にエリザベスなんていうキャラはいなかった。
まあ、その後、私が死んだ後にシリーズの最新作が出ていたりしたら全く分らない事だけど、それでも私の記憶の中には思い当たる人物は存在していなかった。
米神に手を当てて、これまでのことを考えていた私は待合室に掛けられた時計をなんとなく見る。
「あ…… もう三十分くらい経ってるんだ…… あのイタチってどうなったんだろぅ……?」
壁に掛けられた少し大きな時計を見れば、私が目覚めて考えに耽った時から実に三十分近く経っていた様だ。
人が考え事にふけると、時に時間を感じなくなる事もあるけど、私のこれはちょっとアレじゃないかぃ? なんて感じつつも少しだらけていて乱れていたスカートを含めた体勢を整え(スカートが長くてよかったぁ、短かったりしたら見えてたよ)て、改めて考え事を行おうとした瞬間、治療室の扉が開いてお母さんが出てくる。
「輝夜」
「お母さん、あのイタチは!?」
「うーん、正確というか本当はフェレットって言う動物よ、あの仔は」
「え、えっと、うん分った」
お母さんの姿を見て詰め寄るようにして駆け寄った私を見て、お母さんは苦笑に似た笑みを浮かべて、私の頭を撫でながらあれがイタチではなくフェレットだという事を優しく教えてくれる。
へぇ、あれがフェレットなんだぁ、なんて暢気に考えていた数秒後に、そのフェレットがどういう状況だったのかを思い出す。
「あの仔って…… どうだったの?」
「心配しなくても大丈夫、見た目ほど怪我も酷くないから、明日には元気になるわね」
「よかったぁ……」
お母さんの心配ないという言葉には素直に良かったと思える。
前世から動物は好きだったし、何よりも目の前で死に掛けている小さな命を見捨てられるほど、私は薄情でもない。
本音としては犬(特に柴犬)を飼いたいが、我儘は言えないのでずっと言わないでいるのが本当の処でもある。
ホッとした私の様子を優しい微笑を浮かべてみていたお母さんは、改めて治療室への扉を開いて、私に問い掛ける。
「ちょっとだけなら、あの仔と会わせてあげられるけど、会って見る?」
「うん!会いたい」
「分ったわ、病室の中じゃ静かにね」
「うん」
お母さんの問い掛けに思わずと言った感じで、勢い良く返事をしてしまった。
それを見たお母さんは苦笑して私を窘めると、一緒に治療室へと入っていく。
治療室に入った私の目に映ったのは、治療台の上で包帯を巻かれて、痛々しい姿を見せつつも生きようとする生命力を感じさせる姿でもあった。
目の前に立った私を僅かに首を上げて、目を開いて見ているフェレット、私は出来る限り優しく微笑みながら頭を撫でてあげると、少しだけフェレットはくすぐったそうにしながらも受け入れていた。
「きゅ……」
「……(か、可愛い……)」
「あらあら」
「くすくす」
人懐っこいというか、人に慣れてるなぁ。
誰かが買っていたのかな? なんて考えていたら小首を傾げたフェレットは、私の人差し指をぺろりと舐めてくる。
僅かなくすぐったを感じたそれは、目の前のフェレットの愛らしさを伝えてくれるのは、充分すぎるものだった。
ただ、後ろのお母さん達が可愛いものを見る目で私を見ているのは、余り気にしないことにしておこう。
槙原動物病院の近くにあるのが我が家である斉藤家だ。
因みに帰り道で、お母さんの仕事については聞いてあったりする。
何でもお母さんも愛さんと同じく獣医師免許を持っており、私が生まれてからはなるべく家に早く帰れる仕事場を探していたら、愛さんに誘われたらしい。
なお勤務の時間帯は9時~14時か、15時辺りだとのこと、今日は16時近くになっていたが偶然にも残業があったために残っていたと言っていた。
初めて聞いたお母さんの仕事場というか、どうして話してくれなかったんだろうか、と思っていたら、本人が話したと思い込んでいたらしい。
だから私に何も話がなかったのか、なんて考えていた。
「でも、イゴールさんの言っていた今日起こる試練と選択の時って、どういう意味なんだろう?」
自宅に帰ってお母さんが作ってくれたご飯を食べて、お風呂に入ってから私は部屋のベッドに寝転がって、用途不明の銀色の拳銃を見ながら夕方のイゴールさんの言葉を考えていた。
あの人は今日私に試練と選択の時がやって来る、そう言っていたけど、どういう試練が起きて選択って何を選択しなくちゃならないのか。
それが全く分らない。
「せめてもう少しヒントになるような事を言ってくれたら良かったのに」
そう独り言を呟きながら少し頬を膨らませてしまう自分、前世の男だった時では間違ってもしない動作だよ。
自然に、自然に体が仕草を取ってしまうのだからある意味では仕方のない面もある。
まあ、そんなことはさて置いてと、やっぱりペルソナシリーズに出てくる人物なだけあって、謎掛けと言うか、そういう言葉遊びの様なものが好きなのかねぇ。
なんて考える。
実際、フィレモンやら這い寄る混沌とかの謎描けとか言葉遊びに似た、謎のメッセージなんて前世でのプレイ中に幾らでもあったし。
「だけど、その言葉が当たるから、余計に性質が悪いんだよな」
おっといけない、いけない、連中の謎々と言うか変な謎掛けの言葉を思い出している内に、男だった頃の口調が出てきた。
これをお母さんに見られたら間違いなく怒られるから、気をつけないとな。
まあ、それは置いておくとして、私は彼らの言葉が性質が悪いと考えるのは、それが確実に発生する事柄である、という事である。
何しろ、人の運命や実際の行動やらを見て【観察】しているような連中だ、これから私の身に何が起きても不思議じゃない。
不思議じゃないけど、お母さんとお父さんが巻き込まれたりしないかどうかが心配だ。
特にお父さんは長期の仕事で家を空けることが多い人だし、そこを付かれて…… とかになってしまったら目も当てられない。
でも、お父さんの職業は何だろう? この前、長期の海外出張に出る前の格好は多分征服だろうけど、下が白のズボンで上が青い色と肩の所に特徴的な形をした、多分自衛隊とかの階級証とかが取り付けられていそうな形のものがついていたし。
それに次元艦隊勤務がどうたらーとか聞こえたけど、お父さんって…… 海上自衛隊とかに勤めてるのかな? でも海上自衛隊にあんな制服ってなかったよな。
…… 次元って何?
「まさか…… 普通の所に勤めていないとか? それこそまさかだよねぇ?」
本当にそう思う、何処をどうすれば次元という名前のつく艦隊勤務という勤務体制があるのだろうか、知りたいものである。
なんて考えていた私は知らない、今日、この日を持って普通の日常が一時的に去ってしまって、非日常へと足を踏み入れてお父さんの仕事の正体も知る事になる、ということを。