仮面と変態と常識人と   作:あんころもっちー

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第5話

 

 

 いつもなら私もお母さんも寝ている、そんな時間帯に私は妙な感覚を感じて目が覚める。

 

 

 

「夜の十二時だ、いつもなら目が覚めないで朝までぐっすりと寝ているのに……」

 

 

 

 そういつもなら、布団に入った後はトイレにたまに起きるくらいで朝までキッチリと寝ているし、今みたいにはっきりと尚且つ寝惚けることなく起きるなんてない。

 寝惚けてフラフラしながら便座に座って用を足すのに、どうしてだろうか?

 

 なんて考えていたら唐突に心臓が一際大きく鳴り響いた。

 

 

 

「ッ!? なに…… これ?」

 

 

 

 心臓が煩いくらいになり始めたと同時に感じたもの、それはナニかが近くにいるということ、それは家の中じゃなく昼間、あのフェレットを運んだ動物病院の方から感じる。

 しかも、近づいてきていると同時に自分の中で何かが騒ぎ出す。

 

 コレを家に近づけてはダメだ!!と直感で分る、コレが家に来たら、無慈悲に尚且つ容赦なんて欠片もなく家を粉砕して、お母さんまで殺してしまう。

 急いで私はパジャマから、余所行きの服に着替えを始めるんだけど、パジャマを急いで脱ぎベッドの上に投げ出すように放置してクローゼットの中から、フリルが沢山ついたお母さんの趣味全開なゴスロリ風の白いワンピースを取り出して着替えると、どうしてか分らないけど私の手は自然に机の上に置いていた銀色の拳銃を握り締めて、レバーをスライドさせてハンマーを下ろしていた。

 

 

 

「今まで、何処の部品も動かなかったのにどうして? ッツッ!!?」

 

 

 

 今まで完全に動かないように溶接すらされていそうなくらいに、動く気配が全くなかった拳銃の各部の部品に疑問を抱いていた瞬間、また心臓が一際高く音を立てて振動して今度はさっきよりも強烈にあの気配を感じた。

 

 もう時間なんてない!

 

 そう考えた私は拳銃をポケットの中にしまい、玄関へと向かい靴を急いで履いて夜の街に飛び出すんだけど、この時は急いでいたあまり気がついていなかった。

 不自然に歪んだ空と、奇妙な空気に包まれた自分の周囲や街灯が付いていない筈なのに、目の前がよく確認できているという不可思議な現象のことに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 この体になってから体が縮んだだけじゃなく、前世と比べて運動が出来なくなっているのが痛い。

 はっきりいって、前世の同じ年齢の頃の自分とも差がついているだろう、この年頃と言うのは体が未発達だから、男女ともに身体能力はあまり差はない筈なのに、必死で動かしても足の回転が遅くてもどかしく感じる。

 

 それにこの独特の空気も嫌だ、なんなんだろうか、この体に纏わりつく不快感と共にある変な疲労に似た感覚は。

 とらいあんぐるはーとの原作にだって、結界を展開していても原作中の人物達に(素人含む)体力が動とか、といったデメリットなんて言ったものはなかったはずなんだけど、どうしてと考えながら。

 

 

 

「っ、くっ!はぁはぁっ!どうして、どうして、こんなに息苦しいのよ!?」

 

 

 

 こんな思っても見なかった状況から、口からは悪態が漏れ出て来る。

 本当にどうしてこんなに息苦しいんだか、そう考えながら私の足は自然と夕方にフェレットを届けた愛さんが経営して、お母さんが従業員でもある動物病院に動いていて、既に視界には動物病院が映っていた。

 

 

 

「ま、まだ…… まだ何も起こってないの……?」

 

 

 

 ここまで走って来た事と、それまでの息苦しさも相俟って息も絶え絶え、と言った風体で私は呆然と動物病院を少し見ていた。

 それと同時に自分の呼吸も整える為に、数回深呼吸をしてから改めて、周囲の状況をくまなく窺っていく。

 

 

 

「な、なぁんだぁ、なにも起きてないじゃん…… ただの勘違い、だったのかなぁ?」

 

 

 

 この言葉は私にとっては希望的観測と言う奴が、口から出てきたものだった。

 今までと同じ感覚は消えてはおらず、逆に、ここにきたことで強まった事から断言できる、ここで何かが起こるのは間違いないのだ。

 

 不気味なくらいに静まり返って、まるで私以外の人間が全て居なくなったかのように錯覚してしまう、そんな異様な雰囲気に包まれた中で、一つの違和感が動物病院から飛び出してくる。

 

 

 

「あの仔、夕方の!!」

 

 

 

 動物病院の入り口となっている場所から飛び出してきたのは、夕方に私がここに連れて来た怪我をしているフェレットだった。

 あの仔は包帯が巻かれた痛々しい姿で、まるで命の危機に晒されているような動きで走っている。

 

 私はそんなフェレットに近づいて抱き上げると、その仔は私を不思議そうでいながら、私を見上げてくる。

 

 

 

「あ、貴女は夕方の!!どうしてここに!?」

 

「っえぇぇぇ!!!し、ししししし、喋ったぁぁぁぁ!!!?」

 

「え?」

 

 

 

 不思議そうな表情をしていたと思っていたら、フェレットから人間の言葉が出てきましたとさ!!なんて考えている間にも、思わずフェレットを地面に向けて叩き付けるように投げ捨てなかった私を褒めて欲しい、うん切実にね。

 そのくらい驚いたし。

 

 そのフェレットは私が喋った事に対して驚いたのか、はたまた別な理由で驚いたのか知らないけど、変な表情、具体的には【なに言ってんのコイツ?】的な表情を人の顔だったらしているに違いない。

 そんな雰囲気を感じ取って、青筋を浮かべた私は悪くない。

 

 だけど、フェレットは今までの慌てたというか、なんというかといった様子を霧散させて、私に更に声を掛けてくる。

 

 

 

「と、とにかく、ここにこれたという事は貴女には魔法の才能があるって事です!!」

 

「ちょ、ちょっと何のこッッッ!?」

 

 

 

 行き成り訳の分らない事を喚き始めるフェレットに、流石に私も今までの雰囲気で緊張は限界をとっくに超えていたため為、激しい言葉でフェレットに更に問いかけようとした瞬間、近くにあったコンクリート製のブロックが轟音と共に破壊され、その衝撃と思われる風邪が私の髪や体を揺らす。

 それを私は少し身を小さくして目を閉じる事で回避したんだけど、目を開けた瞬間、私の目の前にはブロックを破壊したと思われるモノが居た。

 

 

 

「な、な…… に、よ?」

 

 

 

 なによコレ? そう言おうとした私の口は動いてなどくれずに、ただ、一際大きく鳴り響いた心臓だけが、コレが私が止めなくちゃいけないという存在だということを報せてくる。

 まるでも何もペルソナ2での共鳴のようなといえば表現できるような、そんな鼓動の激しい動きと反比例するように、私の体は動いてくれない。

 

 全身がまるで漆黒の影から出てきたように真っ黒で、大量の腕が影から生えていて、その内の数本が剣を持っていて別の一本が仮面を持っている、そんな化け物がまるでこちらの位置を探るように仮面を動かしているのを、私は呆然と眺めていることしかできなかった。

 

 ソレはまるで標的を見つけたといわんばかりに、こちらへと勢いよく近づいてくる。

 

 

 

「くっ!!」

 

「なっ!?」

 

 

 

 勢いよく近づいて私達に剣を振り下ろそうとした影みたいな存在を確認したフェレットは、するりと私の腕を抜けて肩に乗ると、フェレットの言葉と同時に目の前に緑色の壁みたいなのが出て来る。

 事態に付いていけない私は無視される形で、障壁という奴だろうか? それにぶつかった影みたいな化け物と壁の間で火柱が散り、それらが普通の光景でない事を私に思い知らせてきていた。

 

 いつからこの国は魔法の世界になったのだろうか? なんて阿呆なことを考えてしまうくらいに目の前の光景は現実離れしていて、転生なんていうみょうちくりんな体験をした私であっても理解しがたいものだった。

 

 

 

「と、とにかく!!僕の声を聞いてここに来ることが出来た貴女には、確実に魔法の才能がある!!」

 

「え、え、え? ちょ、ちょっと何のこと!? あんた、さっきから何を言っているの!?」

 

 

 

 状況に付いて行けていない私を無視して何を無茶振りしているのでしょうか? このフェレット君は。

 そう私は言いたいくらいだ、あの部屋【ベルベットルーム】にいたということは、私に存在している才能という奴は恐らくだけど、ペルソナ召喚能力の才覚であって、魔法という奴じゃないのは確か。

 何しろ、フェレットが言っている声って奴を私は聞いた覚えはないし、ここに来たのも自分の中にある別のナニかに急かされてきた、と言った方が正しい状況なのであって、私に正直に言って魔法の才能があるとは思えないのだけど。

 

 それを伝えようとすることを、状況が許してくれない。

 

 

 

「そんなことよりも状況を切り開く為に、この魔法の杖を…… あ、あれ?」

 

「なによ?」

 

「ない、ないないない!!!!レイジングハートがなくなってるぅぅぅ!!?」

 

「キャッ!な、なによ!?」

 

 

 

 何も行動というか、疑問に感じるばかりで今も体を動かせないでいる私に業を煮やしたのか、フェレットは自分の首元を指差して魔法の杖なんて言い始めた、言い始めたけど、そこには、なにもない。

 

 それに気が付いたら間抜けな声を上げ始めるフェレットくんは、確実に首から提げていたなにかが、彼の言う通りならば魔法の杖とやらがあったのだろう。

 だけど、今現在の所彼の首には何もかかっておらず、それを確認したフェレット君は突然大声を出し始めて、私はそれに驚いてしまうんだけど、今、今私が上げた悲鳴って…… 完全に女の子の悲鳴じゃない……?

 

 思わず自分が上げてしまった悲鳴にショックを受けている間もなく、目の前の化け物は障壁を突き破り、こちらへと急速に距離をつめてくるのを見た私は、フェレット君を抱えて横に飛び化け物の攻撃を回避することに成功していた。

 

 地面を何度転がっただろうか、数回転がって別のブロック塀の手前で止まった私のポケットから、銀色の拳銃が私の近くを転がっていた。

 多分だけど、地面を転がった時に出てきてしまったんだろう。

 だけど、私の目の前にはいつの間にか眼前に迫って剣を振りかぶった化け物が居て、私が取るべき行動が何もないという状況を、頭の中で静かに下していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 尻餅を着いて、フェレットを抱きしめている私の目の前には、剣を振りかぶって私達の命を断とうとする化け物の姿。

 これを見ても、私の頭に回避とか防御しようという想いが浮かんでくる事はなく、ただ、ただ、呆然と眺めていることしかできなかった。

 

 ようやく頭と私と言う感情の全てが追いつき、剣が振り下ろされたのを見た私は、目をきつく閉じてフェレットをより強く抱きしめていた。

 

 

 

「ブリューナク!!」

 

『Divine』

 

「バスター!!」

 

 

 

 フェレットを抱きしめて、自身の見に起こるであろう事を考えながら、私は自分の体に鈍くも鋭い刃物独特の痛みと共にめり込む刃を想像したけど、代わりに聞こえたのは最近仲が良くなったクラスメイトの声と、聞きなれない機会音声だった。

 まるでも何もファンタジーの世界でしか聞いた事のないような音が聞こえ、自分の体には再び風というか、衝撃が通り過ぎただけでもあったため、私は恐る恐る目を開けると、目の前には私を庇うように慕っている霧島 和人が居て、彼の右手にはゲームやアニメの中で出て来そうな剣が握られていた。

 

 だけど、私の利き手である右手はごく自然に、ポケットから零れ落ちていた拳銃を手に取っていた。

 

 

 

「無事か、斉藤さん?」

 

「え、えと、うん……」

 

「…… その様子だと大丈夫そうだけど、話は後で!!」

 

「あ、ちょっと!?」

 

 

 

 私の無事を確認した霧島は、私に向かって説明は後、なんて言いたい言葉を残して化け物に肉薄して戦闘を開始していた。

 それから始まる戦闘を呆然と見ていた私とフェレットくんという、結構間抜けというか、変な状況が出来ていたけど、私としてははっきりといって今の状況を全て説明して!言いたいくらいだ。

 

 何処の世界にアラサー男が女の子に転生されられて、ペルソナ召喚? 能力なんてものを持っているであろう状態で、ここにいて、しかも、クラスメイトが魔法使いという現実があるというのだろうか。

 私は知っていたら是非とも説明などを求める!!

 

 と言いたいくらいだけど、目の前の戦いを見れば、こんな考えは吹き飛んでしまう。

 

 

 

「ぐっ!!」

 

「そ、そんな!? あの人の力はAAA近くはありそうなのに!!!?」

 

「霧島!?」

 

 

 

 苦悶の表情を浮かべて、霧島が化け物の攻撃によって吹き飛ばされて、近くの塀に叩きつけられているのを見たからだ。

 流石に、何時も(変態から)助けてくれるクラスメイトが、頑張っているのに何も助けになれないという自分が情けなくてしょうがない、という感情で自分の頭がしはいされていく、だけど、自分の中にある何かが叫んでいる。

 

 私が利き腕である手で持っているものを、ある手順で、あることをしろ。

 

 そういわれているとしか言えない感覚を感じ、霧島がなぶり殺しと言えるような状況にされているのを見て、私は右手に持つ銀色の拳銃の安全装置を解除し銃弾を込める動作をしてから自身の米神に銃口を当てる。

 

 

 

「ちょ、キミ、なにをしているのさ!!」

 

 

 

 フェレット君の言葉も気にならない、ただ、私は、自分の内側から響く何者かの声に耳を傾けていた。

 

 

「ペ」

 

 

 そう、それは、まるで約束されていて望んでいなかったような、状況。

 

 

「ル」

 

 

 それで居て、私が一番望み、叶えられなかったこと。

 

 

「ソ」

 

 

 日常から、非日常へと足を踏み入れて、彼らを強大なモノ達と過ごすための合図となるもの。

 

 

「ナ」

 

 

 そして、私は遂に引き金を引いてしまう。

 これが、後々でどんな状況を自分に招いてしまうのか、それをあまり理解しないように。

 

 

 

 

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