仮面と変態と常識人と 作:あんころもっちー
霧島の攻撃【絶衝一閃】とか言っていた衝撃波が直撃し、その波が収まった後に中空に浮かんでいる宝石を私は呆然と見ていたが、素早い霧島の行動によって現実に引き戻される。
「封印術式起動!!ジュエルシードシリアル21封印!!」
そんな言葉を霧島が言ったと同時に、青い宝石は霧島の剣の柄と刀身の接続部分についている宝石みたいでいて、機械音声が出ていた場所へと吸い込まれていく。
そんなこんなで戦闘が終わった後、私達は目の前に広がっている光景を見て絶句した。
どうしてかって? 愛さんの動物病院の前の道路が滅茶苦茶になっていたからといえばわかるかな。
だけど、最初に私の目の前で破壊されたはずの動物病院のブロック塀なんかは、普通なのはどうして? 確かに私の目の前で(破壊された瞬間は目を閉じていたけど)壊されたはずなのに、元通りというか私が来た時と同じ状態なんだろう。
私の目の前には冷や汗をかいて、少し顔を青くしている霧島の姿があったから、彼が何かを知っているかもしれない。
なんて考えてちょっと問い詰めようか、なんて瞬間、霧島はいきなり私の手を掴んで走り出す。
「急いでこの場を離れよう!!」
「ちょ、ちょっと!?」
唐突というべき他にない彼の行動に、私は流されつつも自分の身体能力が上がっていることに、この時始めて気がついた。
私の運動能力はお世辞にも良いとはいえない、その筈なのにすずか並みに運動神経が抜群に良い霧島の走りに問題なく着いて行けていたんだし。
「悪い!説明はとにかく後で!!」
「だから」
「サイレンの音が迫ってる!!」
「っ!?」
後で説明するという霧島の言葉に異議を唱えようとした私だが、彼の言葉のサイレンという言葉にようやく気が付いた。
私達の後ろから警察や消防に救急と思われる各種のサイレンのけたたましい音が、重なり合って聞こえてくるのにね。
もしも、この場に居て警察に事情聴取なんてされたら…… 補導所の騒ぎじゃないわよね。
そう考えると私は自然に霧島に合わせて走り出していた。
それから暫く走った私達は、学校近くの公園まで来ていた。
公園に着てから私は霧島によって、すぐにベンチに座らされると彼はすぐに近くの自動販売機から、二つ飲み物を買って私に一本を渡してくる。
「はい、斉藤さん、緑茶でよかった?」
「えっと、ありがと」
彼の手には缶コーヒー(ジョー氏アのオリジナルなのは突っ込んじゃいけないわね)が握られていて、どっちも温かいのだろう。
まずは霧島がプルタブを引いて中身を飲み始めるのを確認してから、私も彼が買ってくれた緑茶を飲み始める。
少しだけ火照っていたけど、初夏とはいえども六月の夜の冷気は既に私の体を冷やし始めていた、ワンピースの上から薄めのセーターを着込んだけど少し汗をかいたのが、やっぱり体が冷えている一番の要因かねぇ。
なんて考えながら、霧島が買ってくれたお茶が心地よい温かさと一緒に私の体に入って来る。
それを一口飲んで、ほぅ、と一息ついた所を見計らっていたのか、フェレット君が私の肩に上ってくる。
「じゃあ、落ち着いた所でだが、俺らの現状について説明のし合いこといかないか?」
「そうね、私も知りたい事が色々とあるし」
目の前に立っている霧島は、私が一息ついた時に口を開いてくる。
彼が言っていること、私達の現状の確認は私にとっても願ったりと言ったものだったので、すぐに了承する。
私達の確認が済んだと同時に、私は肩に乗っているフェレット君を肩から下ろし、私の横に置く。
「えっと、あの?」
「アンタにも説明してもらうからね? あの変な化け物の事とか喋ることが出来る事とかね」
「あ、はい、分りました」
私が肩から降ろした事に戸惑いを感じているのか、私を見上げてくるフェレット君だけど、私の言葉を聞いたら納得したらしい。
表情にあまり変化はないけど、少しだけキリッ、としたものを見せているけど本当に器用よね、この仔は。
そうした私達の様子をどこか複雑な表情で霧島が見ていることに、私は気がつく。
「どうかしたの? 霧島」
「いや、なんでもない…… そうか、斉藤さんが拾っていたからなのはが来なかったのか……」
「なに? 何か言った?」
「なんでもないさ、ただの思い過ごしというか、予定外の事があっただけだから」
「そう」
私の問い掛けに歯切れの悪い返事を返してきた霧島は、その後にボソボソと何かを呟いたけど、よく聞き取れなかった私は聞こうと思い聞いてみると、彼からは誤魔化すような言葉が返ってくる。
まあ、今は特に興味があることでもないし良いか、そう考えてから改めて問いかけを行うことにした。
「それじゃ、改めて聞きたいこととしては最初に霧島、あんたって魔法使いなの?」
「やっぱりそこだよな…… んじゃ説明するけど、そこのゆ…… フェレットも俺の使う魔法の事を知っているだろうし、間違っていることがあったら補足してくれ」
「あ、はい、分りました」
私の今現在の一番の疑問点、霧島が魔法使いなのかどうか、という事だ。
あの魔法、まるで科学技術の延長線みたいな感じも受けるような魔法も気になる、前世でのファンタジー系の魔法のほとんどが呪文の詠唱とか、そういったものが必要だった。
それなのに、霧島が使っていた魔法はといえば、やたらメカメカしい杖が機会の合成音声と一緒に何かの球体を発生させたりとか、風を発生させて攻撃していたんだし。
まるで、魔法の詠唱とかそういうのを杖が代替わりしている様子もあったしね。
まあ、そんなことは置いておいて霧島が説明を始めるんだけど、霧島ってフェレット君のことを一瞬だけ別の呼び方で呼ぼうとしたわよね? なんて呼ぼうとしたんだろう。
そう考えていた私だけど、それから説明されたことは私が今まで抱いていた魔法に対しての常識ってものを粉砕させてくれるのに、十分すぎるものであった。
霧島の説明とフェレット君の補足を聞いた限りの、霧島が使う魔法としてはミッドチルダ式と呼ばれる魔法術式であり、本来は中距離から遠距離戦を主体としている魔法形式なんだそうだけど、彼は全ての戦闘をこなせるオールラウンダーだということだけど、フェレット君の補足じゃ霧島みたいな近接戦も完全にこなすミッドチルダ式の魔導師は珍しいらしい。
更に彼が持っていた剣が魔法を使うための杖代わりとなるものであり、インテリジェントデバイスと呼ばれるものらしい。
その上、霧島はフェレット君の説明では、Sランクとも言っていた霧島の力は、かなりの稀少の位置に属するほどのものであり、霧島が使う魔法を主に使用する法的期間では、数千人に一人という割合の力との事だったけど、霧島の様子としてはまだまだ隠し玉がありそうな気がするのは、気のせいじゃないでしょうね。
との事だった。
「まあ、俺のことはこんな感じだな」
「はい、彼のことに関しては僕も把握できましたし、まさか、そこまでのランクを保有しているなんて…… でも、それだけの貴方が圧倒されたアレは一体?」
「フェレット、アレの事は気になるだろうが、先に斉藤さん」
「ん?」
「キミが使った力について、説明をして欲しいんだけど」
やっぱりか、とも思うし、当然だとも考える。
私の隣でお座りの体勢で座っているフェレット君も、私に向けてペルソナの事を気にしている視線を向けている事もあるし、何よりも彼らは戦っているときは本気だったし、結果的にとはいえ霧島が何かしていたんだろうけど、愛さんの動物病院が無事で済んだことだし、ね。
それに戦闘中に私が援護していたんだし、当然私も説明しなきゃいけないなぁ、なんて考えながら頭の中を整理する意味もこめて口を開いていく。
「まあ一つだけ言えるのは、これからする説明には、あまり口出ししないことと、質問はなるべく私の説明が終わってから、という約束をしてくれる?」
「別に構いません」
「フェレットと同じく右に同じだ」
「じゃあ、説明するわね」
正直に言えば、私が得た力というのは彼らをもってしても、非常識といえて信じられないといえるものなのは間違いない。
だから説明途中で割り込まれたくないし、私としても説明のテンポを崩したくもないから、説明中は口を挿まないことを約束させると、二人ともほとんど同時といって良いくらいに返事を返してくる。
それを見た私は、一度頷いてから説明する為に言葉を選びながら口を開いていく。
「まずは、あの力についてだけど、あれはさっき説明されたミッドチルダの魔法とか、そういうんじゃなくて、ペルソナと呼ばれる力のことだけど、言って置くけど今日が始めてペルソナを召喚した日だからね、あまり詳しいことは知らないわよ」
「…… ペル、ソナ?」
私の言った言葉、ペルソナと言う言葉にフェレット君は反応するけど、私の言葉を思い出したらしく、すぐに口を閉じていた。
「私も、この力について詳しくは知らないし、どうして召喚が可能なのかも分らない、けど、この拳銃の銃口を頭に突きつけて引き金を引いたら召喚が今日は可能だった」
「今日は、ということは昨日までは不可能だったのか?」
私の言葉の中の今日と言う言葉に、疑問を感じたのか霧島が問い掛けてくる、私としても疑問に思って欲しい所だったし、逆に話が円滑になるから霧島の問いは逆に助かったといえる。
「そうね、昨日まではこの力を使える感覚はあったけど、実際に使えるようになったのは今日が始めてよ」
「じゃあ、何が原因で?」
「多分だけど、この拳銃ね、ちょうど霧島が最初にやられそうになった時に、使い方が分ったからね」
「…… まさか、召喚器、か?」
「…… 霧島?
「ッ!? い、いや、なんでもない!!続けて、斉藤さん!」
「…… そう?」
私がこの力【ペルソナ】を使えるようになったのが今日だと知ったフェレット君の質問、それに私が答えて居た時に思わず漏れ出てきたような、霧島の声に私が疑問を向ければ、彼は泡を食った様子で否定してくる。
やっぱり霧島はペルソナの知識を持っていたことと言い、ペルソナを召喚できたこの拳銃について知っている可能性があるかもしれない、そう考えながらも、この場で彼に問い詰めても絶対に彼は言わないだろうという、そんな確信じみた事もあったから、私は表面上は気にしていない様子を見せて更に言葉を重ねていく。
「まあ、今日この場に来てから、不思議としか言いようのない感覚を感じて召喚が出来た、それだけの力とも言いたいけど、強力すぎるのも確かなんでしょ? フェレット君」
「…… はい、僕の知る限り防御や攻撃力といったものを上昇させるのはブーストアップ系の魔法しかありませんでしたし、なにより、それは戦闘時における後衛専門といえる人間にしか扱えないような高度な術式でもありましたから、あれほど強力な支援の強化魔法を使える上に、人の上に別の人の形が浮かぶような力も聞いた事がなかった」
「そうよね、使っていた私自身も驚いたし」
普通に会話している私とフェレットくんだけど、ペルソナという力、これを使っていた私自身が驚いたことが一つ、それは恐ろしいと言える程に汎用性というか力の方向が万能と言えることだ。
無論のこと、私が降魔しているオモイカネが万能と言えるくらいの力を持っている可能性が高いけど、他のペルソナと言うか高度な位置に属する連中はよりチートだしね。
全ての攻撃に強い、なんていうふざけた様なステータスを持っているペルソナもいた上に、持っているスキルもチートと言えるし、シリーズによってはラスボスも一撃必殺出来るような合体技を持つようなペルソナもいたしね。
だけど、今ここでこのことを説明しても、信じてもらえないだろうし、どうするべきかねぇ。
「でも、この拳銃で引き金を引かないと今は使えない力みたいだけど、ね」
「見ているこっちの方の心臓に悪いような力だよな、それって」
「そう、ですね、最初に貴女が頭にそれを付きつけた時は、一瞬だけ気が狂ったのかと思いましたし」
なんて考えていた私だけど、思っていた以上に私は口が回る方だったらしい。
拳銃を見せてから頭に向けながらそう言っていたら、納得と言うか微妙なものを見る目付きと表情になっている二人がいた。
まあ、私だって霧島と私の力が逆だったら、似た感想を抱いたと思うしね。
フェレット君の言葉も尤もだと言えるけど、せめて本人がいない場所で行ってくれないかなぁ。
そう考えていた。
そんな感じに色々と話が進んでいた。
「とにかく私の力の説明は以上だけど、質問は?」
「ええと、聞きたいことはありますけど、僕のことについて説明させてもらえますか?」
「あ、ゴメン、忘れてた、そうよね喋れるフェレットなんだから、特別な事情があるわよね」
「すまん、俺も忘れてた、お前さんの説明が一番重要なのにな」
と、ここで私達の言葉に割り込むようにいって来るフェレット君、正直私達はガチで忘れていたから、素直に謝っていたんだけど、フェレット君の表情はショボーンという感じに落ち込んだ様子になっているのはちょっと可愛いな。
なんて思ってしまう。
「と、とにかく説明させていただきます、まずは僕の名前はユーノ・スクライアと言います……」
それからフェレット君こと、ユーノのことが説明されていくんだけど、その説明には色々とツッコミをしたい所があったのには、まあ、お約束という奴だろう。
願いをかなえる願望器と言える宝石であるジュエルシードの事、取り込まれた生物が奇妙な化け物になっていたこと、しかもその原因が分らない事、彼らにも彼らの法的執行機関があるにもかかわらず、未だに通報もしていないというツッコミどころ現状などだった。
だけどユーノの説明が終わった後に、ボソッと呟いた霧島の言葉が少々というかかなり気になる。
「でも、斉藤さんの初期ペルソナのアルカナが気になる…… 愚者だったらワイルド…… だとしたら、これからとんでもない事態が起こる、のか?」
「ん? ねぇ霧島、ワイルド、ってなによ?」
「い、いや!なんでもない!ナンデモナイヨ!?」
と呟き声が聞こえて一応は聞き返したんだけど、あまりにも怪しい誤魔化し方をしてくる。
片言にまでなっているんだけど、冷や汗をたっぷりかきながら誤魔化している所を見ると、絶対言いそうにないわね、コイツ。
こんな霧島の様子を見ていたユーノも怪しむような視線を向けている、向けているけど、そっぽを向いて口笛吹いている時点で怪しさ全開じゃない……
「まあ、霧島の謎の呟きは置いておいて、帰らない?」
「そうだな、もう2時近いしな、送っていくよ」
「ありがと、フェレット君はとりあえず今日の所は私の家に来なさいよ、お母さんたちに説明もしたいしさ」
「は、はい、ありがとうございます」
まあ、霧島が言いそうに無いことを問い詰めても仕方が無いし、時間の方もいつもならとっくに夢の中にいる時間帯なんだし。
それに動物病院の周辺がああなっている事を考えれば、お母さんにも連絡が言っていてしかも、私がいなくなっていることが知られている可能性が高い。
もしも、お母さんに知られていたとすれば、間違いなく怒ってる…… 怒ってるよね……? 本気で怒ったお母さんの恐怖…… うぅっ。
こんなことを考えている表情を必死で隠しながら、ユーノを胸に抱いて私は霧島と一緒に私の家へと歩いていく。
…… あまり怒られないといいなぁ。
なんて考えながら。