仮面と変態と常識人と 作:あんころもっちー
前回、ペルソナ召喚という力に目覚めて、霧島に送られて家に帰った私だけど電気がついていないし人の気配もしない。
「お母さん、やっぱり警察に呼ばれたのかな?」
「多分そうだろうと思うぞ、斉藤さんのお母さんって槙原動物病院の獣医師の一人なんだろ?」
「うん」
「じゃあ、警察や消防から連絡が入って、今は現場で色々と話を聞いている最中じゃないのか?」
家の中を見ても何時もお母さんが使っている寝室からも、お母さんの気配を感じないし、最低限の足元の確認とかで点けている明かりも消されている状態、私はそれを確認していると霧島がそういって来る。
因みに、帰ってくる最中の道で私のお母さんが槙原動物病院で獣医師として働いている事は、説明済みだ。
その霧島の説明を聞いて、私としては納得という感情が表に出てくるのだが、同時に凄く嫌な予感もしてくる。
お母さん、警察や消防に呼ばれて病院に行く前に私の部屋を確認したり、とかしてないよね? と、まあ、とりあえず居ないならいないでちょっとラッキーと考えていた私は、霧島の方を振り向いたと同時に固まってしまう。
「ん、どうしたの、斉藤さん?」
「お帰りなさい…… 輝夜…… それとキミはどこのどなたかしら?」
「…… た、ただいま……」
「こ、コンバンワ……」
そう私達のちょうど後ろに目が全く笑っていない笑みを浮かべたお母さんが立っていたから!お母さんの声が聞こえた瞬間の霧島の反応には納得する。
何しろ、思いっきりビクゥ!となって硬直したんだしね、あ、顔中に冷や汗がダラダラと出ている。
なんて考えていて硬直したままの私たちを見て、お母さんはより笑みを深める。
「とりあえず、二人とも、玄関に入りなさい…… そして、正座」
「「は、はい!!」」
今のお母さんの声を暗闇でいきなり聞いたら、気絶する自身がある。
そういいきれるほどの凄みのある声でお母さんは、私達に対してそう言って来る。
私達はその言葉に大人しく従って家の中に入り、玄関にて正座すると、お母さんの説教が始るのだった。
玄関近くの時計を見れば、かれこれもう三十分近くお母さんから、説教されているだろうか。
ご近所さんのことを考えているのか、声自体は小さいのだが、ハッキリと言おう冷静に、尚且つ、静かに説教される事の方が怖い。
だけど時間が時間だし、明日の学校じゃ居眠りしそう、というか今しそ…… いたたたたたた!!
「輝夜、何か別のことを考えてないかしら?」
「ふぉ、ふぉめんにゃひゃい!!(ご、ごめんなさい!!)」
真面目に聞いていない私の事を一瞬で察知したお母さんは、私の頬をつねり上げていた。
そんな私の隣では、霧島が【うわ、痛そう】と言わんばかりに顔を引き攣らせていて、私たちの足元にいるユーノもフェレットの表情の上でだけど、霧島と同じ様な表情を浮かべていた。
それから少しして、私の頬から手を放したお母さんは霧島に視線を向ける。
抓られていた場所がヒリヒリしてて痛い…… なんて考えてさすっていたんだけど、霧島がお母さんに視線を向けられた瞬間、背筋をピンと張っていた。
「ぼ、僕は斉藤さんのクラスメイトで霧島 和真って言います」
「ふむ…… 貴方が輝夜がいつも話してたお友達の一人の和真君ね…… だけど、どうしてこんな時間に私の娘と一緒に居たのかしら?」
「そ、それは……」
お母さんの眼光は鋭くて、まるで鷹と表現できそうなくらいに迫力のあるものだった。
それは、前世で一度だけ見たことのある本職の刑事さんとかが、犯人を追い詰める際の視線にそっくりで、そういえば私はお母さんの若い頃の事を良く知らない事に今、気が付いた。
それに霧島とお母さんがいつの間にかじっと、見詰め合というか睨み合っているのも気に掛かるし、それはユーノも同じなのがもっと気に掛かる。
なんなんだろう、そう考えていたらお母さんは呆れたというか、それでも怒っているというか、そんな感じの微妙な表情になって溜息をついていた。
ん、何があって、お母さんは溜息をついていて、しかも霧島とユーノは安心したような様子になっているのかしら? なんて考えた私の方にお母さんが振り向いて来る。
「輝夜」
「えぇ、と、お母さん、何が? って、な、何!?」
上の台詞だけじゃ訳が分らないと思うけど、こっちを振り向いたお母さんがいきなり私を抱きしめて来たのだから、驚くほかにない。
え、どうして? Why? などと考えていた私をよそに、お母さんは私の髪をゆっくりと撫でてくる。
「あまり心配を掛けさせないでね、輝夜……」
「え、お母さん?」
お母さんの心配やら悲しさと言った感情がごちゃ混ぜになっている声、これを聞いた私は余計に訳が分らないという状況になるのだが、霧島とユーノはといえば、二人で納得しあっているみたいだし、どういう状況なのかしら。
なんて考えていた私を放置して、状況は動いていく。
「それじゃあ、霧島君はとりあえず客間に布団を敷くから泊まって行きなさい」
「はい、分りました」
「そして、輝夜が拾ってきて動物病院に居るはずのフェレット君は…… 霧島君と一緒に居なさいね」
「キュ」
え、本当にどんな状況よ、これ? だ、誰か説明を!説明をプリーズ!なんて考えていたら、霧島が囁いてきた。
「とりあえずは明日の放課後に詳しい事を話す、だから、今は待っていて欲しい」
「…… う、うん……」
そう囁かれた言葉に私は頷くと、どうやら客間に布団を敷きに行っていたお母さんが戻ってくると、一度手を叩いて私達全員の意識を向ける。
「それじゃあ、今夜はとりあえず寝ましょうか、霧島君はこっちの部屋を使ってね、後、輝夜は私と一緒に久しぶりに寝るわよ」
「え、えっと、お母さん?」
「ありがとうございます」
「ほら、早く、輝夜」
場を仕切り始めたお母さんは、まずは霧島とユーノが寝る部屋に案内し、それからいきなり私を横抱きに抱え(所謂お姫様抱っこってやつ、だけど、まさかお母さんにされるとは思わなかった)られると、お母さんとお父さんが普段使っている寝室に連れて行かれていく。
その際にユーノと霧島を見れば、普通に客間に入っていくから、私達の方には関わらないようにしているらしい。
それからお母さんに抱きしめられて眠ったんだけど、一つだけ思うことがある。
どうして、お母さんはユーノのことを突っ込まなかったんだろうか、と。
帰って来た時に、霧島だけじゃなくて夕方に拾ったフェレットこと、ユーノも一緒に居れば、間違いなく突っ込みを入れそうなのに、そうだと言うのに普通に霧島と寝せようとしている時点で、あの時、お母さん達が無言で見合っていた時に何らかのやり取りが合ったんだろう。
だけど、どこか釈然としないものを感じるのは何故だろうか、私だけが仲間外れにされたような感覚になるからかな。
なんて考えながら、私はお母さんに抱きしめられながら、眠りにつくのだった。
それから、私の目に差し込んでくる光で目を開けるんだけど、一瞬だけ知らないベッドの上だったから混乱しかけたけど、昨日はお母さんと一緒に寝かされたんだったっけ、そう考えて時計を見れば。
「6時20分…… うぅ…… ほとんど寝れてない…… 後、あと5分だけ」
なんて口に出しながら、目を閉じようとしたら私の体が持ち上がる浮遊感を感じる。
誰よ? 私の至福の時間を邪魔するのは!? なんて考えてから、その方向を見てみれば。
「おはよう、斉藤さん、幽々子さんに起こして来てくれって言われてるしさ、起きた方が言いと思うぜ?」
あんたかぁ!!と叫びたい気持ちで私の心の中は一杯になる。
何しろ、霧島が微妙な表情で多分魔法か何かで、私を浮かべていたんだし。
ちくせう反撃したる!!なんて考えても、昨日私が着ていたワンピースはお母さんが脱がしてしまって、綺麗に折り畳まれてベッドの傍に転がっていて、私はお母さんが脱がせた後に着せてきた新品のパジャマに身を包んでいる。
肝心のペルソナを召喚する為の銃も、綺麗に折り畳まれたワンピースの上に乗っていて、今は召喚が出来ないときたものである。
仕方ない、起きるしかないかぁ。
なんて考えると霧島に魔法の発動を抑えるようにジェスチャーをして、止めさせると、私はベッドの上にポスンと女の子座りの体勢で着地する。
「ふわぁぁ…… 霧島… あんたってどうして平気なのよ?」
大きな欠伸を女の子が男の子の目の前でするなどはしたない!なんていうツッコミは今は遠慮してもらいたい程の大きな欠伸が私の口から出ると、霧島はしょうがないものを見る目つきと言うか、なんともいえない微妙な表情となっていた。
それを見ながら霧島は口を開いていく。
「まあ、俺は体鍛えてて早起きには慣れてるしな、遅く寝たっていつも通り起きて生活できるんだよ(というか、今の斉藤さんの姿ってまんまロリバージョンのぐーやじゃん…… 幻想ってこういうことだったんだな……)」
「そっか、羨ましいというかなんと言うか…… とにかく私は眠ぃ……」
「寝るなっての」
「あいたぁっ!!」
寝惚け半分、覚醒半分、と言った様子で答える私を見ていて、何か、男の幻想と言うか夢を破壊されたような様子を見せていた霧島だけど、また閉じようとする私の瞼を見てから、今度は実力行使に出たらしく額にチョップをしてくる。
中々に力の篭った一撃のようで、私の眠気が消し飛んだ、だけど、もうちょっと女の子の扱い方を熟知してくれないかなぁ!? なんて考えてしまった瞬間、私はベッドの上でOrzの体勢になりそうになるのを必死で堪えながら、涙目になる自分の姿を自覚することになる。
「ちょ、ちょっと斉藤さん、そんなに痛かった? ご、ゴメン!」
「い、いや、そうじゃない、そうじゃないの!」
チョップされた額を押えて自分の思考を理解した瞬間に涙目になった私を見て、少しだけど誤解させてしまった。
私を泣かせてしまった!と勘違いした霧島が大慌てで誤ってくるのを見て、私も慌てて否定するけど、いつの間にかベッドに登って来たユーノが呆れ果てているような表情を浮かべていた。・
「2人とも、幽々子さんが待っているよ、輝夜は自分の部屋に戻って制服に着替えて、それに和真は幽々子さんの所に戻らないといけないだろう?」
「あ、ああ……」
「あ、あぅ、そうだった……」
「ちょ、ちょ輝夜!? キュー!!」
「あ、ユーノの奴、連れて行かれちまったけど…… まあ、ユーノの奴次第で淫獣の烙印は回避できるか」
それから思わずユーノを抱えて私は自分の部屋に戻っていく。
ユーノを抱えたのは、昨日の戦闘の後からずっと抱えていて、つい癖になったとしかいえない。
因みに霧島の呟きは、慌しく動いた私の音で私の耳には届いていなかったりする。
「ちょ、輝夜!?」
「ん、何?」
「ぼ、僕、後ろ向いてるから!!」
それから部屋に戻った私はユーノの目の前で着替えを行うけれど、パジャマを脱いだ私の姿を見て、急に照れ始めたユーノを横目にしながら、私は聖祥の制服に着替えていくのだった。
まあ、ユーノらしき視線を感じつつではあったけどね。
それからいつものお母さんと私の2人だけじゃない、霧島とユーノを交えた朝食となる。
その朝食の卓上の会話の中で、思わぬクラスメイトの境遇も明らかになる。
「そういえば、和真君のご両親に連絡を私も忘れていたけど、大丈夫なのかしら?」
「心配ないですよ幽々子さん、両親は海外赴任中でして、だから俺って、一人暮らしですし」
「…… は?」
そう、霧島が一人暮らしだということが判明したりとか、何時も霧島が持ってきている弁当が自作であるということが分ったりとかね。
なのは達に聞かれた時には両親自作のベーコンなんて、言っていたり、他には凄く美味しいミートボールも偶然で出来合いの美味しいものを見つけた、なんていっていたあのお弁当を自分で作っていたの!? という驚きに満ちていた。
それを考えたら、明らかに年上の私って…… と考えて落ち込みそうになったのを、お母さんが慰めてから朝食がちょっとしょっぱくなったのは、ご愛嬌という奴、かしらね。