ガンダムビルドダイバーズ Twin-Dive-漆黒の戦乙女- 作:陽@曜花推し
「わあ……! おっきいお城……!」
高級感あふれる白亜の城郭——トップフォース「アヴァロン」のプライベートネストに足を踏み入れたミーシャは、巫女服の裾を揺らしながら目を輝かせた。その小さな手を、リーアがしっかりと握りしめている。
「すごいでしょミーシャ! ここがGBN最強のダイバー、キョウヤさんの本拠地だよ!」
「リーア、はしゃぎすぎです。私たちは観光に来たわけではありませんよ」
和服姿のヴェルが、妹の頭を軽く小突く。リーアは「いたた」と頭を押さえながらも、小動物のように表情をくるくると変えて見せた。
三人が大理石の廊下を進むと、待ち受けていた一人の男が振り返った。チャンピオン、クジョウ・キョウヤだ。その傍らには、彼の愛機である高貴な紫の俊英——『ガンダムAGEIIマグナム』が、整備ドックの中で静かに佇んでいる。
「待っていたよ、ヴェル、リーア。それに……その子が例の少女だね」
キョウヤは優しく微笑み、ミーシャの前に屈み込んだ。ミーシャは少し緊張したようにヴェルの後ろに隠れたが、キョウヤの穏やかな瞳を見て、そっと顔をのぞかせた。
「ヴェルから大まかな事情は聞いている。彼女のデータを少しスキャンさせてもらえるかい?」
「はい。お願いします、キョウヤさん」
ヴェルが差し出したデータ端末をキョウヤが自身のコンソールに接続すると、空中へ複雑なコードのホログラムが展開される。データを見つめるキョウヤの表情が、次第に真剣なものへと変わっていった。
「……やはり間違いない。彼女は通常のダイバーじゃない。バグや人々の想いが電子の海で結実した、デジタル生命体——『EL(エル)ダイバー』だ」
「ELダイバー……!?」
リーアが驚きに目を見開く。
「かつてGBNを揺るがしたサラと同じ存在、ということですか」
冷静なヴェルも、これには驚きを隠せない。
「ああ。そして、これほど純度の高い情報体だ。彼女を狙い、そのデータを不正に利用しようとする不穏な動きがあっても不思議じゃない。現に、君たちが遭遇したダイバーたちは——」
キョウヤの言葉が途切れた瞬間、アヴァロンの防衛システムが、けたたましいアラート音を鳴り響かせた。
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「警告:ネスト外周部に強制介入プログラムを感知。緊急戦闘ディメンションへ移行します」
「チッ! またあいつらね! しつこいんだから!」
リーアが拳を握りしめる。
「アヴァロンの暗号セキュリティを強引に突破してくるなんて……通常のダイバーの手口ではありません。ミーシャをハッキングするつもりです!」
ヴェルの理知的な瞳に、鋭い怒りの光が宿る。
「二人とも、ミーシャちゃんをお願いする。僕が迎え撃とう」
キョウヤが立ち上がろうとしたが、リーアがそれを遮るように一歩前に出た。
「キョウヤさん、私たちも行きます! ミーシャは私たちのフォースが守るって決めたんだもん!」
キョウヤは一瞬驚いたように目を見張ったが、すぐに頼もしげに頷いた。
「わかった。君たちの力、見せてもらうよ!」
「システム:ツインプレイス・エンゲージ。ガンダムヴァルキリー、発進!」
「ガンダムAGEIIマグナム、クジョウ・キョウヤ、往くよ!」
漆黒の『ガンダムヴァルキリー』と、鮮烈な輝きを放つ『ガンダムAGEIIマグナム』が、夜空へと飛び出した。
前方から迫るのは、異常なデータ増幅を施された『ギラ・ドーガ』や『ジェガン』のカスタム機。それらはすべて、どす黒い電子ノイズのオーラを放っており、明らかに通常のガンプラバトルの範疇を超えていた。
「来るよ、ヴェル!」
「了解。直列結合型ダブルドライヴ、同調開始。火器管制システム、全並列起動!」
前席のリーアが操縦桿を激しく捌き、ヴァルキリーが漆黒のフリーダムを思わせるメインウイングを広げて加速する。背部の3ノウルスラスターからバイオレットの粒子が奔流となって吹き出した。
「そりゃあああっ!」
腰部から抜刀した2振りの『GNバスターソードⅢ』が、鮮烈なバイオレットのクリアエッジを輝かせる。
リーアの直感的な白兵センスにより、ヴァルキリーは敵の包囲網をトップスピードで文字通り「すり抜け」た。交差した瞬間、瞬く間に3機の敵MSが真っ二つに両断され、データとなって霧散する。
「お見事! ならば、僕も……!」
キョウヤのAGEIIマグナムが、流麗な変形機構(フェニックスモード)を駆使して敵陣を縦横無尽に駆け巡る。ハイパードッズライフルマグナムの精密な一撃が、次々と敵を撃ち抜いていく。
「これがチャンピオンのバトル……! でも、私たちだって負けてないんだから!」
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敵の第一陣を壊滅させた二機の前に、空間を歪めながら「本命」が現れた。
それは、巨大な腕部と異形のクローを持つ、漆黒の大型カスタムMS。機体各部から怪しい赤い発光現象が起きており、ミーシャを強制拘束するためのデータキャプチャー・ワイヤーを無数に展開している。
「あの機体……ミーシャちゃんのデータを根こそぎ奪う気だね。リーア、ヴェル、僕が隙を作る!」
AGEIIマグナムが、4基のFファンネルを射出。敵機のキャプチャー・ワイヤーを次々と切り裂きながら、果敢に肉薄していく。しかし、敵機が放った強力な超広帯域ジャミングにより、AGEIIマグナムのセンサーが一瞬、激しく狂わされた。
「くっ……強力なデータ負荷だ……!」
「キョウヤさん!? ……ヴェル、アレを使うよ!」
「ええ、リシア! 私が制御します。ファング、展開!」
ヴェルの超並列演算が、敵のジャミングの隙間を完璧に縫う。
メインウイングの外殻スリットから滑り出すようにパージされた8基の『GNドラグーン・ファング』が、夜空にバイオレットの軌跡を描いた。
ヴェルの緻密な遠隔操作により、8基のファングが敵機の巨大なアームの関節部をピンポイントで次々と狙撃。敵の姿勢が大きく崩れた。
「今だ、リシア! 最大出力照射!」
「いっけえええええーーーッ!!」
ヴァルキリーの脇の下から、ガンダムDX譲りの2門の巨砲『GNバスターキャノン』**がスライド展開。同時に、手にした大口径ビームランチャー**『トリニティ・バスターランチャー』の銃口が、眩いバイオレットの光で満たされる。
「不殺の、精密狙撃……! 敵のコックピット(コアデータ)以外を、完全に焼き切ります!」
ヴェルのミリ秒単位の出力調整と、リーアの直感的なトリガータイミングが完全にシンクロした。
ズドォォォォンッ!!!
放たれた3条の極太熱線が一本の太い濁流となり、敵機の武装、巨大アーム、そしてジャミングシステムを完全に融解させた。戦闘能力を100%喪失した敵機が、宇宙に力なく漂う。
「……見事なコンビネーションだ。複座システムと直列ドライヴの性能を、完全に引き出している」
センサーを復旧させたキョウヤが、感嘆の声を漏らした。
満身創痍となった敵機のメインモニターが赤く明滅し、合成された不気味な音声が通信回線に割り込んできた。
『……その個体(ミーシャ)は、我々のものだ……。いずれ……深淵へと還る……』
それだけを言い残すと、敵機は強制ログアウト処理を施され、爆発四散した。
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バトルが終わり、アヴァロンのフォースネストに戻った一同。
ミーシャは無事だったものの、どこか不安げにリーアの服の裾を握りしめている。
「キョウヤさん、あいつらは一体……」
リーアの問いに、キョウヤは静かに首を振った。
「GBNの裏で動く、違法なデータコレクターの類かもしれない。だが、一番の問題は彼女の存在そのものだ。これだけ強力な襲撃が続くとなると、彼女のデータがGBNのサーバーに負荷をかけ、最悪の場合、消去対象(バグ)としてシステムに処理されてしまう可能性がある」
「そんなの絶対ダメだよ!」
リーアがミーシャを抱きしめるように叫ぶ。
「……方法が、一つだけあります」
ヴェルが静かに、しかし決意に満ちた声で呟いた。
「ヴェル?」
「キョウヤさん。サラさんの時のように、彼女のデータをサルベージし、現実世界(リアル)の受け皿に移すことは可能ですか?」
「技術的には可能だ。だが、彼女の意識を受け止めるための、極めて精巧な『リアルボディ』が必要になる。それを用意するのは、容易なことじゃ……」
「私が作ります」
ヴェルはキョウヤを真っ直ぐに見つめ返した。
「ガンプラビルドの技術は、モビルスーツを作るためだけのাত্র(もの)ではありません。私の全ての技術を注ぎ込んで、ミーシャの、新しい『身体(模型)』をスクラッチしてみせます。だから……彼女を私たちの本当の家族にさせてください」
ヴェルの言葉に、キョウヤは驚いた後、今日一番の温かい笑顔を浮かべた。
「……素晴らしいビルダーだね、ヴェル。わかった、サルベージの環境はこちらで手配しよう」
「ありがとう、ヴェル! ありがとう、キョウヤさん!」
リーアが涙を浮かべて笑顔を見せ、ミーシャもまた、小さな声で「ありがとう……」と呟いた。
電脳世界の深淵から迫る影。しかし、それに立ち向かう双子の絆と、新たな家族への想いは、今ここに確かな形を結び始めていた。
(第2話 終)
ミーシャを現実世界へと迎えるため、ヴェルは持てる全ての技術を懸けて『リアルボディ』の制作に挑む。
一方で、一ノ瀬家の日常に突如として現れた、プラチナブロンドの髪を持つもう一人の影……?
次回、『ガンダムビルドダイバーズ Twin-Dive -漆黒の戦乙女-』
第3話:「産声のリアル、紡がれる身体」
ツイン・ダイブ! 命を吹き込むその手で、明日を創り出せ!