冷静沈着、青の戦士、ブルー・フェニックス!
自然と安らぎを守る緑の戦士、グリーン・フェニックス!
希望と未来の銀色の戦士、シルバーあっ、フェニックスうっ!
光と輝きの戦士、イエロー・フェニックス!
「世の平和、令和の御代を守るため、現代の伊賀忍者、ここに集う!」
「不死鳥忍者部隊ザ・フェニックスっ、ただいま参上!!」
不死鳥忍者部隊にレッドが参加するのは、もう少し後の物語になります。
紺のブレザーに赤のお洒落なリボン、胸には通っている高校の黄色の刺繍つきのエンブレム、黄色が混じったタータンチェックの短めのスカートに学校指定の紺のハイソックスに黒のローファという姿をした四人の女子高生たちが駅方面に向かう道を歩く。
「ごめんね、今日もこれからバイトがあるの。うん、今度、埋め合わせするから…」
下校途中だった風祭りりかは、友人である佐原陽菜、西野翠、川口智花の三人に向かって、軽く手を合わせながら、謝るふりをする。
今日は友人同士四人で
最近出来たばかりの駅近くの綺麗なショッピングモールにあるゲームセンターに立ち寄り、ついでにプリクラ撮影やコスメを見て回ったりなんかもして楽しもうよ
という話をしていたところだったのだが、りりかのみは
ごめん、バイトがあるから付き合えない!
と言い出したのだ。
「何よ、りりか、またなの?」
と幼少の頃からの友人である陽菜が、またか、という様子であきれ顔をする。
それって、あなたのパパのとこのお仕事だよね…
心の中で陽菜はそう呟いたが、口には出さない。
「なんだか、りりかも新しいバイトをはじめてから付き合い悪くなったよねー」
と、これは日頃から陽菜と仲が良い智花がぼやく。
「でも、そのバイト、時給いいんでしょう!」
いささか羨ましそうに翠が言う。
皆、そのバイトなるものの実態知ったら驚くだろうな…
りりかはそう思いつつも、それを声には出さず
「うん、そうなの。それに、いろんな意味で勉強にもなるし」
いろんな意味で勉強にもなるし…
まあ、嘘ではない。
「給料良くてもブラック企業なんでしょう。いつだったか、りりか、いつ緊急出動がかかるか分からないって、こぼしていたじゃない。あたしたち未成年なんだから、労働基準法から言っても、職場の都合で勝手に呼び出されるなんてさ!」
と智花。
「あたしたち、来年には大学受験なのよ!」
と、これは翠。
「遊べるのは今のうちだけ。ねえ、りりか、聞いてるの?、あたしたち、これでも心配してるのよ」
「うーん、とー」
りりかは決まり悪そうに笑った。
「まあ、そうなったら、今のバイト先で、そのまま仕事するから」
「りりかのパパ、怒るわよ」
陽菜が言った。
「大学くらい必ず出なさいって!」
まあ、それは本当にそう言われている。
それでも
自分は決意した上で『入隊』したのだから!
それは、りりか自身のささやかな矜持でもあったのだ。
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ところが、そんな他愛もない話をしながらの下校途中の女子高生たちの前に立ちふさがったものたちがいる。
「きゃあっ!」
まず智花が悲鳴を上げる。
続いて
「な、何なの、これえっ!!」
翠が体全体を恐怖で震わせながらも、その右手の人差し指で、目の前の『もの』を指差す。
それは青い肌をした、一つ目の鬼そのものの姿をした怪物であった。
「フガアッー!!」
鬼の姿をした怪物は奇声を上げると
「お前たちの中に風祭りりかという奴はいるのかアッー!」
三人の女子高生たちに心の底からの恐怖を感じさせるような威圧感ある声で叫んだのだ。
「りりか、まさか、こいつが…」
事情を知る陽菜のみが、目の前のりりかに対して、確認を求める。
「うん、陽菜、そのまさかよ。こいつが悪の組織チグルマンの使い魔の一人、一つ目鬼っ!!」
「あ、悪の組織いっ…」
それを聞いた智花は思わず素っ頓狂な声をあげる。
「りりかさあっ、テレビの特撮番組じゃないんだからさあっ!」
と、翠も目の前の怪人に対する恐怖も忘れて言ってしまう。
「あらっ、翠、目の前の現実を否定するのは良くないわよ」
いささか嬉しそうにりりかは微笑むと
「それにしても」
彼女はあらためて目の前の『一つ目鬼』と名乗った怪物と向かい合う。
「あたしに限らず、不死鳥忍者部隊のメンバーの日常生活の情報は守られているはずなのに、どうして、あなたは、私が、この昭華学園の生徒で、今、下校中だなんて知っていたわけ?」
「フガアッー!!」
怪物一つ目鬼は、またしても奇声を上げると
「そんなことは、どうでもいい。俺は今、我々チグルマンの邪魔をする不死鳥忍者部隊のメンバーのうち、一番弱そうなお前から、まず、片付けに来たのさあっ!」
悪びれもせず、すらすらと答える。
が、その一つ目鬼の返事を聞いたりりかの方がブチキレてしまったのだ。
「なんてすってえっ!、えっ、誰が一番目弱いだって!、このブザイク鬼めがっ!」
彼女は一つ目鬼に向かって、そう叫ぶと
「陽菜っ!、早く、智花と翠を安全な場所へと誘導して!、私は今からこいつを叩きのめしてやるっ!」
思わず両手の拳をギュッと握りしめ、怒りを露にする。
「なに言ってんのよっ!、早く、りりかも一緒に逃げようよっ!」
智花が悲鳴を上げるように叫ぶ。
「待ってて、今、警察に電話!」
翠が通学用バッグの中からスマホを取り出すと、急いで110番と入力しようとする。
が、そんな翠の側にいた陽菜が、それを押し止めると、首を横に振った。
「陽菜…、一体?」
何かを言おうとする翠に向かって、陽菜は首を横に振る。
そして
「翠、智花、早くここから避難しましょう。私たち三人がいても、今は、りりかの足手まといにしかならないの」
冷静沈着に、二人の友人に向かって、そう言いきる。
「えっ、どうなってるの?」
と翠。
「納得いかないー」
と、これは智花。
が、そんな翠と智花を強引に引っ張るようにして、陽菜は物陰へと避難しようとする。
「フガアッー!!」
一つ目鬼はまたしても奇声を上げると
「お前たちいっ!、出てこい!」
と号令する。
すると、その場には突然
オレンジ色のターバンのような帽子に赤いアイマスクをつけ、前側上半身は赤だが、全体的には黒のレオタード調のスーツに身を包み、手には赤いロンググローブをつけ、腰には銀色に髑髏のエンブレムが入ったバックルをつけたベルトを着用、足には黒のロングブーツをはいた異形の姿をした
いかにも『悪の戦闘員』という雰囲気の男たちが現れたのだ。
「クエッ!」
その男たちは一斉に奇声を上げる。
「この俺様が、この目の前のガキを叩きのめしている間に、お前たちは残り三人の小娘どもを捕まえるんだ、いいなあっ!」
そんな怪人、一つ目鬼の号令に、男たち、いやチグルマン戦闘員たちは、これも一糸乱れず
「クエエッーーー!!」
叫び声をあげながら、物陰に隠れた陽菜、智花、翠の三人を捕まえようと、駆け寄ってくる。
その様子を見たりりかは思わず身構えると
「智花、翠、今から起こることは見なかったことにして!」
と強い口調で、背後の物陰に隠れる三人の女子高生たちに向かって言う。
陽菜だけは事情分かっているから…
りりかは心密かに幼い頃からの親友に感謝の気持ちを抱く。
そして
「フェニックス・チェンジ・オン!」
彼女はそう叫ぶと、まず左手をいったん前に出し、すぐにその左手で右腕にあるブレスレットを掴む。
すると、そのブレスレットが光輝き。点滅したのだ。
次の瞬間、りりかの姿が大いなる光に包まれると
その光の中から、完全武装した黄色の戦士が姿を現したのだ。
「光と輝きの戦士、イエロー・フェニックスっ!」
彼女は自らの戦士としての名前を宣言すると、眼前の一つ目鬼、そして戦闘員たちを力強く指差した。
「チグルマンっ!、お前たちの好きにはさせない。この私が今からお前たちを叩きのめすっ!」
誇り高き黄色の戦士は目の前の敵に向かって闘志を剥き出しにしたのだ。
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「り、りりかあっ!、ええっ!、う、ウソおっ!」
と、まず智花が驚きの声をあげる。
「確かスーパー戦隊シリーズって、先週で終わったはずよね…」
と、翠も場違いな言葉をもらしてしまう。
「智花、翠、悪いけど、これはテレビドラマじゃなくて現実なのよ」
一応は事情を知る陽菜は、今一つ現実離れした状況が飲み込めていない二人の友人に向かって、悟りを開いたかのように言う。
そして、彼女は通学用バッグの中からスマホを取り出すと
「本部応答、本部応答、こちら工作員009。チグルマンが現れました。至急応援乞う!」
大声で何処かへ救援を求めたのだ。
「えっ、りりかだけじゃなくて、陽菜もなの?」
驚いたかのように智花が言う。
陽菜とは長い付き合いだけど、そんなことは一言も言ってくれなかったのに…
「ううん、智花」
陽菜は寂しそうに首を振る。
「不死鳥忍者部隊の正規メンバーであるりりかとは違って、私は、ただの連絡員なの…」
そうしている間にもチグルマン戦闘員たちは、じりっ、じりっ、と三人の女子高生たちに近寄ってくる。
「陽菜あっ、智花、翠いっ!」
三人の友人がチグルマン戦闘員に襲われそうになっている様子を見ながら、気が気ではなさそうに黄色の戦士イエロー・フェニックスは叫ぶ。
「フガアッー!!」
一つ目鬼は、そんなイエロー・フェニックスの様子を見ながら、まるでバカにするように
「イエロー・フェニックスっ、どうだ、お前の同級生たちが戦闘員どもに捕まり人質となれば、どのみち抵抗は出来まい。降伏するなら今のうちだぞ」
と豪語する。
「くっ!」
悔しそうに歯噛みするイエロー・フェニックスだったが、決断は早かった。
「一つ目鬼、勝負は預ける!」
そう叫ぶと、いきなり大きく跳躍し、そして陽菜、智花、翠たちが避難し、チグルマン戦闘員たちが迫る物陰の方へとスタッと着地し、そして背中に差していた剣を抜き、構えると
「チグルマン戦闘員っ!、私は、お前たちごときに私の大切な友達に指一本ふれさせない。そのつもりで死にたい奴からかかってこい!!」
大声で、目の前のチグルマン戦闘員たちに向かって、そう宣言したのだ。
だが、である。
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「動かないで!」
次の瞬間、イエロー・フェニックスりりかの同級生であり、友人の一人でもある智花の首筋に背後からナイフが突きつけられていたのだ。
「ええっ!、陽菜っ、なんでっ!、なぜなの!!」
彼女の首筋にナイフを突きつけていたもの、それは
自分よりずっと以前から、風祭りりかの幼馴染みであり、友人てあり、そして、つい、たった今、そのりりかが所属するらしき組織に工作員009と名乗って連絡を取っていたはずの…
佐原陽菜、その人であったのだ。
もう一人、一緒に物陰に隠れていた西野翠も驚いたように大きく目を見開く。
「ええっ、陽菜、これっ、どういうわけなの?」
その翠の問いかけに対して、智花の首筋にナイフを突きつけたままの陽菜は、まるで自嘲するかのように、フッと影のある笑みを浮かべる。
「りりか、生憎だけど、今はあなたを安心させるために本部に連絡を取るふりをしただけなの。実際には本部には何の連絡も取っていないから救援は来ないわ!、そして」
彼女はイエロー・フェニックスことりりかに向かってそこまで言うと、今度は自分がナイフを突きつけている智花に向かって、囁くように言う。
「智花には悪いけれど、はじめからこうするつもりだった…」
それを聞いた智花は、その陽菜によって自分の首筋にナイフを突きつけられている恐怖も忘れて叫ぶ。
「何なのよ!、私、全然納得できないわっ!」
そう言って、抵抗を試みようとするものの、首筋に突きつけられたナイフへの恐怖から、結局、何も出来ないままだった。
「陽菜っ、なんで?、あたしたち友達じゃなかったの?」
イエロー・フェニックスりりかは疑問と当惑を隠せないまま、それでも
目の前の友に向かって、激情のあまり、大きな声で叫ぶ。
そのイエロー・フェニックスの大きな声と、激しく気迫に対して、友人の一人である智花の首筋にナイフを突きつけたままの佐原陽菜は、一転してキッとした視線で、目の前の幼馴染みを睨み付ける。
「ええ、そうよ!、私たちは物心つく四歳の頃からの幼馴染みだったし、同じく伊賀忍者の末裔の家系に生まれて、学校も小学校からずっと一緒、幼い頃から忍術の修行も一緒にしてきて、切磋琢磨してきた、それこそ本当に長い間の友達たった。けれども…」
そこまで言うと、陽菜は長年の心に鬱積したものを吐き出すかのように、イエロー・フェニックスに向かって叫ぶ。
「私は、あなたに、ずっと、ずっと、嫉妬していた。いくら友達だと言ってみても、私とあなたとでは身分が違っていたのよ!」
その『身分』という単語に、だが、いち早く反応したのは、イエロー・フェニックスりりかではなかった。
陽菜によって首筋にナイフを突きつけられ、場合によっては即、殺されるかもしれない立場にあるはずの智花であった。
「陽菜っ、そんなのって嘘よっ!、江戸時代じゃあるまいし。今の日本じゃ、私たち国民は一人一人平等なの!」
だが、その智花の叫びは、何らナイフを彼女の首筋に突きつけている陽菜の心を動かすことはなかった。
「智花…、悪いけど、それが現実なのよ。私たちの家系…、伊賀忍者の世界には、今も身分制度が存在しているの。論より証拠!」
そう言って陽菜はあらためて目の前のイエロー・フェニックスりりかに挑戦的な視線を向ける。
「伊賀上忍の家に生まれた風祭りりかはご覧の通り、不死鳥忍者部隊の正規隊員。片や、伊賀下忍の家系に生まれた、この私は、ただの連絡要員よ。そして、正規隊員になることは絶対にない!」
だが、それを聞いたイエロー・フェニックスこと、風祭りりかは大声でキッパリと言いきったのだ。
「陽菜っ!、そんなことない。私がイエロー・フェニックスとしての力を使うことが出来るのは、伝説の『大いなる力』を感じとり、使うことが出来るからよ。身分の違いなんかじゃないっ!」
そして
「お願いっ!、目を覚まして!!。陽菜がどう思っていようと、私は、あなたのことを…、今も…」
感情を吐き出すようにイエロー・フェニックス、りりかは言いきった。
「大切な友達だと思っているわ!、チグルマンに何を言われたか知らないけれど、お願いだから、目を、目を、醒まして!!、でないと、私…」
マスクの内側で風祭りりかは苦しそうな表情をする。
「お願いだから智花を放してあげて…、出来ないなら私、あなたと戦わなければいけなくなる……」
だが、陽菜は、友人であるはずの智花に突きつけたナイフを微塵も動かすことなく、冷たい笑いを浮かべる。
「上等よ、長年のあなたとの関係に決着をつけるときだわ」
「くっ、ならば!」
覚悟を決めたイエロー・フェニックスこと風祭りりかは、目の前の冷酷そうな笑みを浮かべる長年の友、佐原陽菜に向かって飛びかかろうとする。
一瞬の差で首筋にナイフを突きつけられている智花を救い出し、その上で陽菜を戦うつもりだった。
だが、である。
「フガアッー!!」
それまでは、何故かイエロー・フェニックスりりかと佐原陽菜のやり取りを見ながらも、あえて介入を控えていたらしき、チグルマンの使い魔一つ目鬼が、まるで
お遊びは終わりだ!
と言わんばかりに叫び声をあげ、そして介入してきた。
「ははは、イエロー・フェニックス、もう、心行くまで話しただろう。その通り、伊賀工作員009号は、我がチグルマンに帰属し、その配下となったのさ。今からは俺様と戦闘員が、お前を捕らえ、今度は他の連中の前に人質として晒してやるのさ」
そして、一つ目鬼が手にした棍棒を大きく振ると
それを合図に五人のチグルマン戦闘員たちがザッとイエロー・フェニックスことりりかを取り囲んだ。
戦闘員一人一人が殺気を漲らせながら、イエロー・フェニックスに向かって剣を構える。
「やれっ!、イエロー・フェニックスは人質を取られて抵抗は出来ないはずだ。お前らでも捕まえられる!」
一つ目鬼のその言葉を合図に
「クエェッーーーー!!!」
チグルマン戦闘員たちは一斉にイエロー・フェニックスに襲いかかっていった。