「お前たち、何を狼狽えている!、ええいっ、情けない!!」
予想しなかった事態に、桐谷の声にも苛立ちが混じる。
だが、彼女はすぐに冷静さを取り戻すと、手にした端末をあらためて操作し直す。
システムの修復作業に入ったのだ。
そして
「ふっ、よく出来た小細工ね。でも、そんなもの一時しのぎに過ぎないわ。今から、この端末を使って施設全体の防音・防波シールドを起動させる。そうすれば、ものの数十秒でこの程度の音波など無効化されるわよ」
端末を持ったままの桐谷は強い視線で目の前にいる智花を睨み付ける。
「そうすれば、直ぐにでもあなたを手術台に連れていってあげるわ。そして、私の可愛い女戦闘員になるのよ!」
その桐谷の冷たい、そして威圧感を感じさせる強い視線を受けながらも、智花は手にした発信器を、その胸に強く押し当て、目をぎゅっと閉じ
そして、叫んだ。
「烈さあーんっ!!
早く来てえっ!!
この女性(ひと)、今、私の、目の前にいるのよーっ!!」
その時である。
ウインッ、ウインッ、ウインッ、ウインッ!!
院長室の非常灯が赤く点滅し始め、施設全体に大きな音で警報が鳴り響いた。
そして
ズガアアッーーン!!
重い爆発音のようなものが聞こてくる。
「烈さんっ!!」
智花の声は歓喜に満ちていた。
そう、彼女は自分の確信を疑っていなかった。
緑川烈、緑の不死鳥(グリーン・フェニックス)!!
彼が、ここまで駆けつけて来てくれたのだ。
「お、おのれえっ!」
桐谷の声は怒りで爆発せんばかりであった。
そして、智花が持つ発信器からの信号音に頭を抱えながら苦しんでいる男女四人のチグルマン戦闘員たちを軽蔑するかのように見ると、決意したように端末をデスクの上におく。
そして
「こうなれば、私自らがお前を取り押さえてやる!!」
じりっ、じりっ!!
桐谷は智花に少しずつ近づき、そして彼女に向かって飛びかかろうとする。
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だが、その時である。
70歳を少し超えた老人、伊賀工作員03号の息は苦しげであった。
顔は青白く、額には汗がびっしょりと浮かび、足はガクガクと震えている。
若い頃の体力は既にないのはともかく
長期間の潜入の中で、このサソリーナ・ホリスティック・メディカルセンターなる施設で『治療』と称した薬物投与を受け、その体力はさらに弱らされていた。
それでも、彼はヨロヨロとよろめきながら、その手に持つ発信器のスイッチを懸命に押し続ける智花の前に体を割り込ませた。
そして老人、伊賀工作員03号は、その全身で桐谷の前に立ちふさがる。
「お嬢さん……早く……行け……!」
「え……おじいさんっ?」
智花が驚いて振り返る。
だが、老人、伊賀工作員03号は、なおも発信器を押したままの彼女の手を取ると、そのまま背中を弱々しく押し、院長室の非常口の方へ向かわせようとしたのだ。
「どちらにしても…、ワシは……もう……限界だ……、最後のご奉公で、ワシがこいつを…、ここで足止めする……お嬢さん、あなたは……烈君のところへ……、生きて……戻るんだ……!」
そんな老人、伊賀工作員03号に対して、桐谷は冷笑を浮かべた。
「ふふっ、……ご老体が、無理してまだ動いても、何の助けにもならないわ。せいぜい足掻いても、どうせ数秒の命よ」
「黙れえっ!」
老人、伊賀工作員03号は必死の声をあげると、震える手で、どうやって隠していたのか、白衣の内側から小さな玉のようなものを取り出した。
そして、最後の体力を振り絞って、指先が白くなるほど力を込めて握りしめる。
「これでもっ…、くらええっ…」
バアアアアーーーンッ
それは煙玉
たちまち院長室の中は煙幕で包まれる。
「く、くそっ!!」
突然の煙攻撃に、桐谷の動きにも一瞬の隙が出来た。
その隙に老人、伊賀工作員03号は、智花の背中を押し、非常口の方向へ必死に向けたのだ。
「お嬢さん……!、ワシが……ここで……時間を稼ぐ……お前さんが……共倒れになる必要は……ない……!、烈に……伝えてくれ……ワシは……任務を……果たした……と……」
老人、伊賀工作員03号の声はすでに掠れ、足元がふらついてその場に片膝をついてしまっている。
それでも彼は、智花が振り返らないよう、彼女の背中を残された力いっぱいに押したのだ。
智花は思わず叫ぶ。
「おじいさん!! ダメッ!!、私と一緒に……!」
だが、老人、伊賀工作員03号は弱々しく首を横に振る。
「バカを言うな……!、若い者は……生き残れ……!、これが……老人の……最後の役目だ……!」
その時である。
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非常口へ向かって走り出そうとした智花の背後で、老人、伊賀工作員03号が煙の中で、何とか桐谷を引きつけようとしていたその時
ドォォォーーン!!
この建物の屋上が爆発的に吹き飛び、コンクリートと鉄骨が砕け散る大きな音
白い粉塵と閃光の中から、一筋の緑色の軌跡が急降下する。
この建物の屋上を破壊した直後に自動操縦に切り替えられた小型戦闘機グリーン・ファイターが低空を旋回する。
そして、そのグリーン・ファイターの中から、緑色のバトルスーツを身につけた人影が勢いよく、院長室を目指して飛び降りてくる。
着地した彼は、そのまま院長室に向かうと、その扉を蹴破った。
バッキーーーン!!!!
「グリーン・フェニックス、ただいま参上!!」
緑色のバトルスーツを身につけた戦士、緑の不死鳥グリーン・フェニックスが、この院長室に姿を現したのだ。
院長室の扉を蹴破り、そして智花の無事を確認した、緑色のスーツに包まれた彼の身体が軽やかに動き、義手の左腕がわずかに光を反射する。
「烈さん、来てくれたのね!!」
智花は大きな感動で震えていた。
ほら、やっぱり、烈さんは、来てくれたんだ!!
「智花さん、信号をキャッチして直ぐにグリーン・ファイターを呼び出して、すっ飛んで来たよ!」
グリーン・フェニックス・烈も、智花の無事な姿を確認して、安堵したように言う。
発信器の緊急信号をキャッチした瞬間、直ぐにチャットで皆に急を知らせ、そして単独でグリーン・ファイターをすっ飛ばし、ここまで急行した甲斐があったというもの。
そして、グリーン・フェニックス烈は、即座に智花と老人、伊賀工作員03号の前に立つと、二人を背中で庇うように構えると、チラッと智花の方を振り向く。
「智花さん、無事で良かった!!」
智花が烈の声に応える。
「烈さん、ありがとう、来てくれて!!」
一方で、背後では老人、伊賀工作員03号が安堵で緊張感が緩んだのか、床に片膝をつき、再びハアハアと荒い息を繰り返すようになっている。
「おじいさんっ!!」
老人の心配をする智花が、思わず介抱しようとする。
彼女は、もはや発信器を握りしめてなどいなかった。
烈さんが、来てくれたから…
それが気にならなかったと言えば嘘になるが…
グリーン・フェニックス烈の視線は、ゆっくりと部屋の奥に立つ白衣の女性、桐谷の方へ移った。
そして彼は言う。
「桐谷さん、久しぶりですね」
彼の声は低く、しかし激しく響く。
そして桐谷も、突然院長室の扉を破壊し、侵入してきたグリーン・フェニックスの姿にも動じず、むしろ楽しげに微笑んだ。
「あら……早いお越しね、烈くん。いやグリーン・フェニックスと呼ぶべきかしら?」
その様子を見て、グリーン・フェニックス烈の全身から、抑えきれない怒りのオーラが立ち上る。
「母さんの仇。 あんたが母さんの研究を横取りし、そして母さんを俺の目の前で殺した。そして俺の左腕を奪い、伊賀の研究所も灰に変えた張本人、そして伊賀の裏切者!! その悪事、今こそ清算してやる!」
普段、『僕』という一人称を使うことが多い烈の『俺』という一人称に、智花は彼の強い怒りを感じた。
それと共に
伊賀の裏切者??
という言葉にもショックを受ける。
じゃあ、この桐谷という
智花の驚きの表情に、だが、彼女に介抱されていた老人、伊賀工作員03号は、ゆっくりと、肯定の意味で頷いた。
「お嬢さん…、そ、その通りだ…、あいつは…、桐谷は……、伊賀の…裏切者………」
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その老人、伊賀工作員03号の言葉を、まるで引き継ぐかのように、桐谷が智花に向かって
「そうよ。私も元々は現代伊賀忍者。烈の母親である理緒とは『人間化身の法』を発展させた『不死鳥因子』の研究チームの仲間だったことは、さっきも言った通り。そして、私はその研究成果を手土産にしてチグルマンの一員になったの。だから伊賀の連中から見れば、私は正真正銘の裏切者よ!」
と、誇らしげに言う。
「そんな……、なぜ!?」
智花は、そんな桐谷を見て、理解できないとばかりに叫んだ。
が、桐谷は
「智花さん、人間というものは弱いものよ。重度の外傷、不治とされる病、そして」
そこで老人、伊賀工作員03号を指差すと
「老いによる衰え、そして寿命、これらに対してヒトは決して逆らえないわ。それは、この老人を見ただけでもわかるでしょう」
と、まるで嘲笑するかのように言う。
その桐谷の言葉に、老人、伊賀工作員03号は悔しそうに体を震わせる。
「そして、だからこそ私は人間の体を、より強靭で強大なものにする研究がしたかった。そう完・全・化・身、による超人こそは人類の新しい可能性を切り開くのよ!」
なおも得意気に言葉を続ける桐谷に向かって、だが、グリーン・フェニックス烈は
「ふざけるなっ!!」
強い怒りを発する。
「人の体を強靭、強大なものにする完全化身、なんてのは、その時点で、もう人類じゃない!!、だからこそ母さんは、あんたの考え方に反対した!」
だが、桐谷は、そこでフフッと笑う。
「まあ、烈君、よりにもよって、あなたがそれを言うのかしら? 少なくとも、あなたの、その左腕は、人間化身の法の秘術により生成されたものであることは、他ならないあなたが一番よく知っているでしょう」
その桐谷の言葉に、グリーン・フェニックス烈はマスクの内側で悔しそうにグッと唇を噛み締める。
「しかも、その左腕を研究開発したのは、伊賀の研究所にいた当時の、この私。そして、それをあなたに移植したのは、あなたの父親、仁。そう、あなただって不完全でも化身体には違いないのよ。それが、人並みに恋人なんか作っちゃって!」
が、烈は感情を暴発させることもなく、冷静に
「それが母さんの遺言だったからな!」
と答える。
「瀕死の状態だった母さんは、駆けつけた父さんに向かって、左腕を失ったものの、まだ延命の可能性がある俺を助けるために、桐谷さん、あんたが残していった左腕の標本を俺に移植してくれと懇願し、そして…、亡くなった…」
その会話を聞いている智花の心は強い苦しみを感じずにはいられなかった。
だが、目を背けてはいけないとも強く思った。
それは烈さんが歩んできた人生そのものだから…
「幸い、研究所内には十分な施設もあり、手術は成功した。そして今…」
そこでグリーン・フェニックス烈は、目の前にいる桐谷を睨み付ける。
「俺は、ここで不死鳥の炎により、桐谷さん、あんたのすべてを焼き尽くす……!!」
その言葉には、静かな怒りと長年の復讐心が込められていた。
そして義手の左腕を無意識に握りしめ、緑のエネルギーがわずかに漏れ出す。
だが、桐谷はそんな烈を見て、クスクスと笑いながら手を広げた。
「ふふ……相変わらず熱い子ね。あの時の幼い少年が、こんなに立派になって……感慨深いわ。
でも、あなたのその炎は、つまり、私が育てたようなものよ?」
グリーン・フェニックス烈は、即座に反応し、智花と老人、伊賀工作員03号を自分の背後にしっかり庇いながら構えた。
右手には剣を持ち、左の義手を前へと突き出す。
だが、智花は烈の背中に手を添え、小声で伝えた。
「烈さん……おじいさんが…!……私を逃がそうとして……」
烈は一瞬だけ老人、伊賀工作員03号の方へ視線を走らせた。
だが、老人、伊賀工作員03号は
「烈君、ワシに構うな!、彼女のことだけを…」
弱々しく、かすれ声で言う。
だが、グリーン・フェニックス烈の心は決まっていた。
「智花さん、わかっている。君も、おじいさんも、僕が守る。二人とも、俺の後ろに!」
そして、そんなグリーン・フェニックス烈と、智花、そして老人の様子を見ながら、桐谷は
発信器の信号音がなくなり、苦痛から介抱された男女四人のチグルマン戦闘員たちに向かって、号令する。
「お前たち、やれえっ!!、グリーン・フェニックスは足手まとい二人を見ながらでは、どうせ、まともには戦えない。いいか、取り押さえろ!」
その桐谷の号令により
「クエェッーー!」
「クェッ!!」
「クエッ!!」
「クエエェッーー!!」
四人の男女チグルマン戦闘員たちは一斉にグリーン・フェニックスたち三人に向かって襲いかかろうとする。
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グリーン・フェニックス烈は智花と老人、伊賀工作員03号の二人を庇いながら、チグルマン戦闘員たちと片手の剣で戦いつつ、徐々に有利な位置へ移動しようとする。
老人の体力を考えると、長時間の戦いは厳しい。
だが、それでもグリーン・フェニックス烈は守りながらの戦いを選んだ。
義手てある左腕を攻撃と防御の両方に使い、右手の忍刀でチグルマン戦闘員たちの攻撃を退けながら、智花と老人、伊賀工作員03号を、その全身でガードする。
「まあ、かっこいいわね、烈君。でも、あなたの左腕……私の作品よ? その義肢が、どれだけあなたを苦しめているか……今、教えてあげましょうか?」
桐谷がそんな戦闘シーンを見ながら、グリーン・フェニックス烈を茶化すように言う。
だが、グリーン・フェニックス烈は素早く動いた。
「くっ……! 智花さん、下がって!、おじいさんも!」
しかし、老人、伊賀工作員03号はすでに息が荒く、立っているだけで精一杯の様子
だが智花が、そんな老人を自分の肩でしっかりと支え、そして後方へと下がる。
「おじいさん、しっかり!!」
その様子を確認したグリーン・フェニックス烈は、歯を食いしばり、左腕に緑色のエネルギーを集中させた。
義手に不死鳥の力が流れ込み、光が激しく脈打つ。
「これで……まとめて吹き飛べ!、フェニックス・グリーン・ブラスト!!」
グリーン・フェニックス烈は義手の掌を正面に向け、充填されたエネルギーを一気に解放した。
ドゴォォォォーーン!!
強力な緑色の衝撃波が爆発的に広がり、四人の男女チグルマン戦闘員をまとめて吹き飛ばす。
「クェッ!!」
「クェッ!!」
「クエェッーー!」
「クエエェッ!!」
四人のチグルマン戦闘員たちは壁に激突し、火花を散らしながら動かなくなった。
そして、その場に倒れ伏す。
そして戦闘員たちは、その生命活動が止まると共に
シュウッ!!
その体は不気味な音と共に気化するように消滅する。
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そして、自分の部下であるチグルマン戦闘員たちが倒されたのを見た桐谷は、わずかに眉を寄せる。
「あら、派手な技ね。でも、それで私の部下を倒せたつもり?」
そういうと彼女は右手を上にあげる。
すると、部屋の外から、今度はチグルマンの女戦闘員たちが十人ほどなだれ込んできた。
キリがないな…
烈は息を整えながら、すぐに智花と老人、伊賀工作員03号の方へ振り返った。
「二人とも、無事か?」
まず智花がコクリッと頷く。
ついで老人、伊賀工作員03号は、ハアハアと肩で息をしながら、弱々しく頷いた。
だが顔色は悪く、足はほとんど立っていない。
その様子を確認しながら、グリーン・フェニックス烈は、天井の穴から見える上空に停まっているグリーン・ファイターを一瞥した。
小型戦闘機であるグリーン・ファイターは単座仕様に近く、助手席は実質一人しか乗れない。
パイロットである烈が操縦する席の隣に、もう一人ギリギリ座れる程度。
三人(烈+智花+弱った老人)を一度に運ぶのは物理的に不可能だった。
このままでは、ここからの脱出は難しい……
烈の表情が苦渋に歪む。
それを察した智花が
「烈さん……おじいさんを、先に逃がしてあげて!!、私、これで少しだけ頑張ってみる!!」
彼女はグリーン・フェニックス烈に向かって、懐にしまっていた発信器を再び取り出した。
「お、お嬢さん……、バカなことを…、あんたが…、先に……」
老人は弱々しく言うが、智花は強い意思で首を横に振る。
「ダメよ!!」
二人をどうやって……?
グリーン・フェニックス烈は、即座に決断した。
義手の左腕を軽く握りしめると、冷静だが強い二人に向かって口調で答える。
「僕がここに残る。二人はグリーン・ファイターに乗ってくれ。乗ってくれたら、直ぐに自動操縦に切り替える。上空にいれば、こいつらも」
そう言ってグリーン・フェニックス烈は、目の前の桐谷、そしてチグルマン戦闘員たちを指差す。
「そう簡単には手出し出来ないだろう。その間に他の皆がここに来るのを待つ!!」
その一方で彼は桐谷に向かって
「桐谷さん、あんたとの決着は、二人を安全な場所に置いてからだ。今は…邪魔をするな!」
そう宣言する。
だが、桐谷は優雅に笑いながら、ゆっくりと手を挙げた。
「まあ、困ったわね。大切な人を守りながら、私たちチグルマンと戦うなんて…… あなたらしい選択だけど、甘いわよ?」
この施設の警報がさらに激しく鳴り響き、さらに他のチグルマン戦闘員たちの気配も近づいてくる。
グリーン・フェニックス烈は、智花と老人、伊賀工作員03号を背後に固く庇い、忍刀を構え直す。
「今、グリーン・ファイターがここへ降りてくる。そうしたら智花さんは、おじいさんを連れていって乗せてくれ」
「烈さん……」
智花の瞳は涙で潤んでいた。
一方で老人、伊賀工作員03号の体力は、もう限界のようだった
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
だが
「烈君、その必要はないわよ!!」
ふいに、施設全体が激しい爆音とエンジン音に包まれる。
それと共に上空から、次々と四機の小型戦闘機が順に急降下してくた。
最初に到着したのは、桃色の機体を輝かせるピンク・ファイター。
続いて青いブルー・ファイター、
銀色のシルバー・ファイター
黄色いイエロー・ファイター
次々と、この病院施設の天井ホール近くにホバリングした。
そして各機から、変身を完了した不死鳥忍者部隊のメンバーが次々と飛び降りてくる。
そして、院長室に真っ先に飛び込んできたのは黄色のバトル・スーツを着た女性戦士だった。
そう、それはイエロー・フェニックスりりかである。
彼女は即座にグリーン・フェニックス烈の傍らに駆け寄ると、智花、そして弱りきった老人を見て目を丸くした。
「烈さん! 智花! ……このおじいさん、大丈夫なの!? 息が荒い……早く安全な場所へ!」
そのイエロー・フェニックスりりかの声に、グリーン・フェニックス烈は、短く頷くと、老人をイエロー・フェニックスりりかに託した。
「りりかちゃん、このおじいさんを頼む。イエロー・ファイターの助手席に乗せて、ひとまず施設外へ脱出させてくれ。僕は智花さんと、ここで少しの間、待って…」
「烈君、あなたも直ぐにグリーン・ファイターへ行きなさい!!」
凛とした女性の声、そして、それと共に
桃色のバトル・スーツを着た女性戦士、そして青色のバトル・スーツを着た男性戦士、銀色のバトル・スーツを着た男性戦士も次々と院長室に入ってくる。
「桃香さん、竜也さん、凱さん!!」
グリーン・フェニックス烈は、思わず声をあげる。
皆、来てくれたんだ!!
その間にイエロー・フェニックスりりかはすぐに老人を支え、優しく肩を貸しながらイエロー・ファイターへ誘導した。
老人はハアハアと息を荒げ、足取りもヨロヨロだったが、イエロー・フェニックスりりかの支えでなんとか機体へ乗り込む。
「はあ……はあっ……すまない……若い者に……迷惑を……」
「大丈夫ですよ、おじいさん! 今から自動操縦に切り替えて、この子(イエロー・ファイター)を上空に飛ばします!」
続いてグリーン・フェニックス烈も智花の手を取ると、一緒にグリーン・ファイターへと向かう。
「行かせないわよ!」
桐谷がチグルマン戦闘員たちにそれを妨害させようとするが
すかさずブルー・フェニックス竜也が
「フェニックス・ソウル・ブレード!!」
と叫ぶと共に、彼は背中に差していた剣を抜く。
そしてブルー・フェニックスは、フェニックス・ソウル・ブレードと自ら呼んだ剣を大きく構えると、上に向けて大きく円を描く。
こうしてオーラ・パワーを貯め、そして敵を斬るのが彼の必殺技である。
そして
「行くぞ!」
ブルー・フェニックスはそう叫ぶと、その手にした剣を振り上げ、そして、その剣で大きく円を描き、そのパワーで、向かってくるチグルマン戦闘員たちを次々に十字に切り裂く。
「クエェッーー!!」
「クエェッーー!!」
「クエェッーー!!」
「クエェッーー!!」
チグルマン戦闘員たちは、あっという間にブルー・フェニックスのフェニックス・ソウル・ブレードに斬られ、その場に倒れ伏す。
そして
ピンク・フェニックス桃香、ブルー・フェニックス竜也、シルバー・フェニックス凱の三人が一列に並び、グリーン・ファイターに向かうグリーン・フェニックス烈と智花を守り
襲いかかるチグルマン戦闘員たちを寄せ付けない。
その様子を見た桐谷は白衣の袖を払い、冷笑を浮かべる。
「ふふ……不死鳥忍者部隊、勢揃いね。でも、この施設は私の城、そう簡単にはいかないわよ?」
それに対して、ピンク・フェニックス桃香は優雅に、そして少しの皮肉をこめて
「桐谷さんね。はじめまして。不死鳥忍者部隊のリーダー鳳桃香と申します」
目の前の桐谷に挨拶する。
「烈君とりりかが戻ってきたら、あらためてご挨拶をさせてもらいますけどね」
その間にもチグルマン戦闘員たちは三人の戦士たちに襲いかかるのだが
ブルー・フェニックス竜也に続いて、今度はシルバー・フェニックス凱が、その手にした剣を右回しに高速回転させる。
「フェニックス・ワールウィンド・スラッシュ!!」
驚くべきことに、その旋風回転は大きな風を呼び、そして、それはカマイタチのように、三人に向かって襲いかかってくるチグルマン戦闘員たちを吹き飛ばしたのだ。
「クエェッーー!!」
「クエェッーー!!」
「クエェッーー!!」
「クエェッーー!!」
そうした攻防による一進一退のうちに
グリーン・ファイターに智花を乗せたグリーン・フェニックス烈
イエロー・ファイターに老人、伊賀工作員03号を乗せたイエロー・フェニックスりりか
が、それぞれ戻ってくる。
「全員集合ね。じゃ、皆行くわよっ!!」
ピンク・フェニックス桃香の号令に、他の四人も異口同音に
「おうっ!!」
掛け声をあげる。
そして五人は順に名乗りをあげ、それぞれのファイティングポーズを取る。
まずピンク・フェニックス桃香
「愛と勇気の桃の戦士、ピンク・フェニックス!」
続いてブルー・フェニックス竜也
「冷静沈着、青の戦士、ブルー・フェニックス!」
そして
グリーン・フェニックス烈が義手の左腕を強く握りしめ、復讐の炎を燃やしながら
「自然と安らぎを守る緑の戦士、グリーン・フェニックス!」
ひときわ大きな声で名乗りを挙げると
続いてシルバー・フェニックス凱が
「希望と未来の銀色の戦士、シルバーあっ、フェニックスうっ!」
と、独特の名乗りを挙げ
最後に
「光と輝きの戦士、イエロー・フェニックス!」
イエロー・フェニックスりりかが名乗りを挙げた。
そして五人は一斉に
「世の平和、令和の御代を守るため、現代の伊賀忍者、ここに集う!」
「不死鳥忍者部隊ザ・フェニックスっ、ただいま参上!!」
と言霊を発する。
それを見た桐谷は、わずかに表情を強張らせつつも、楽しげに手を叩く。
「まあ、皆さん、立派な名乗り。でも、言葉だけでは私を倒せないわよ?」
その桐谷に対し、五人のフェニックスが、揃って構えを取った。
戦いは、これから本格的に始まろうとしている。