「俺たち、俺たち、こいつらに勝ったんですよね!!」
思わず快哉を叫ぶシルバー・フェニックス凱。
だが、ピンク・フェニックス桃香、ブルー・フェニックス竜也、グリーン・フェニックス烈の三人は、決して慎重な姿勢を崩していなかった。
確かに戦いはこうして、いったん終わったかには見えるのだが…
「うっ……うう……」
足元から、弱々しい呻き声が凱の耳にも聞こえてきた。
その呻き声は、廃墟と化した瓦礫の陰に倒れていたチグルマン戦闘員のものだったのだ。
それはもちろん、偶然ではない。ブルー・フェニックス竜也が、意図的にこの一人だけ、止めをささずに生かしておいたのだ。
そのブルー・フェニックス竜也は静かな足取りで倒れているチグルマン戦闘員のところへへ歩み寄っていくと、身を屈め、その襟首を容赦なく掴み上げ、そして締め上げたのだ。
「おい。お前たちの今回の作戦、その真の目的は何だ? 答えてもらおうか!」
ブルー・フェニックス竜也の鋭い眼光に射抜かれ、ダメージで抵抗もできないチグルマン戦闘員の瞳に明らかな動揺が見える。
「ク、クエッ……、そ、それはっ…」
何事かを話そうとする、まさにその瞬間だった。
「なにっ!?」
突然、チグルマン戦闘員の足元から不気味な黒紫色の魔導陣が浮かび上がると、地獄の底から噴き出すような怨念の業火が立ち上った。
メラッ、メラッ、、ゴオォッッーー!!
異常な熱気を察知したブルー・フェニックス竜也は、咄嗟に後方へ躍り出て間一髪で回避した。
だが動くことが出来なかったチグルマン戦闘員に逃げ場はない。
「クエエエェッーーー!!!」
組織の目的を話そうとする、その前にチグルマン戦闘員を覆い尽くす地獄の業火。
口封じのために解き放たれた容赦なき呪術の炎に包まれ、チグルマン戦闘員は断末魔の叫びを上げながら一瞬で灰と化していった。
「貴様あっ!?」
ブルー・フェニックス竜也には、その炎を呼び出したものの正体は分かっていた。
そして、彼だけではなく
ピンク・フェニックス桃香、グリーン・フェニックス烈の二人、それにシルバー・フェニックスに変身したばかりで、まだ状況が理解できていない凱までもが、はるか頭上の破壊されたビル群の屋上へ、何事かと息を呑んで視線を向ける。
「ふっ、チグルマンの掟は『失敗には死』。戦闘員ごときに余計なことを喋らせる気はない!」
夜風を孕んで翻る、血のように赤いローブ。
ビル越しに差し込む月光を背に立ち尽くしていたのは、不気味な黒金の髑髏仮面を被り、怪しく明滅する魔導杖を手にした男――チグルマンの幹部、魔導神官ガイマであった。
仮面の奥から覗く二つの瞳が、冷徹な殺気を孕んで青白く光っている。
その全身から漂う禍々しい妖気は、先ほどまでの戦闘員や飢者髑髏の比ではない。
空間そのものが重く歪むような圧倒的な威圧感に、ピンク・フェニックス桃香、ブルー・フェニックス竜也、グリーン・フェニックス烈、そしてシルバー・フェニックスとなったばかりの凱は思わず息を詰まらせた。
「な、何なんですか……あいつは!?」
突如現れた圧倒的な異形の存在に、シルバー・フェニックス凱は息を呑み込むようにしながらも、他の三人に説明をもとめようとする。
胸を刺すような禍々しい妖気に気圧され、僅かに震える右手で屋上に立つ男を指差すブルー・フェニックス竜也が凱に向かって、その正体を説明しようとした瞬間
それを遮るように魔導神官ガイマの冷ややかな嘲笑が響き渡った。
「クックック。恐怖に身を震わせるか、愚かなフェニックスたちよ。そして、まだ我のことを知らぬ銀色の戦士に自己紹介させてもらおう」
そしてガイマは自ら名乗りをあげる。
「我が名は偉大なるチグルマン首領の忠実なる
ガイマは血のような赤いローブを風にはためかせ、黒金の髑髏仮面を不気味に誇示するように見下ろす。
「新たに降臨した銀色の不死鳥か。だが貴様らが束になって挑もうと、我がチグルマンの絶対なる闇を払うことなどできぬ。今ここで、真の絶望というものをお前たちに見せてやろう!」
そう叫んだガイマが掲げた手元の魔導杖
その先端に嵌め込まれた髑髏の眼孔が、おどろおどろしい深紅の光を放ち始める。
「フハハハ……フェニックスども! 我が呪術の真髄を見せてやる!」
ガイマは不気味な声で印を結び、禍々しい呪文を詠唱し始めた。
「黄泉の門よ開け……地の底に眠る怨念の肉を喰らい、巨大なる魔神として這い上がれ!!」
暗雲が渦巻き、街の一角に怪しい紫の雷鳴が轟く。
「怨霊再生・巨大怨化(おんか)──招来!!」
呪文の完成と共に、ガイマが魔導杖で強く地を突いた。
ドゴォォォーーン!!
先ほど倒されたはずの
そして地面が不気味に脈打ち、亀裂から無数の亡者の影のような黒い手が這い出してくる。破片が怪しく明滅しながら吸い寄せられるように集まり、ドロドロとした暗黒の泥と交じり合って、巨大な肉塊へと膨れ上がっていったのだ!
ガチッ……ガチチチチッ……!!
大気を震わせる不快な金属音のような骨の擦れる音が轟き、立ち上る紫煙を突き破って、ビルをも見下ろす超巨大な骨の巨大なものが姿を現す。
その大きさは恐らく60メートルほどもあろうか
それは等身大の時とは比べものにならない威圧感を放つ、巨大妖怪『飢者髑髏』の再誕であった。
「ガシャーッッ!!! 」
強烈な地響きと共に巨大な足が叩きつけられ、街の建物が激しく揺れる。
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「なっ、なんだありゃあぁぁぁっ!? ビルよりでけえっ!? これじゃ、まるで……スーパー戦隊の怪人の巨大化そのものじゃないすか!」
見上げるほどの巨大な骨の怪物を見上げ、シルバー・フェニックス凱は絶句してすっとんきょうな叫び声を上げてしまう。
そして見上げるほどの骨の巨像と化した飢者髑髏を見上げ、あらためて絶句する。
そんな凱へ向け、ピンク・フェニックス桃香はメット越しに鋭い
「貴方、お名前は!?」
「え? 俺か? 俺は凱、銀水凱ですっ!」
「そう、なら、凱君と呼ばせてもらうわ! 浮かれているヒマはない、これはテレビドラマでも物語でもない…今、私たちが立ち向かわなければいけない現実なのよ!!」
凱の名前を記憶に刻むと同時に、ピンク・フェニックス桃香は冷静に、しかし危機感を露わにして現実を突きつける。
そして、そんなフェニックスたちを見下ろし、廃墟となったビルの屋上から魔導神官ガイマの嘲笑が響き渡る。
「ハハハ! 狼狽えるがいい、フェニックスども! 我が使徒の足元で、無惨に踏み潰されるがいいわ!」
「ガシャーッッ!!」
ガイマの冷酷な指令に応じ、巨大獣『飢者髑髏』が、その山のような巨足を振り上げた。真っ黒な影が四人のフェニックスを覆い尽くし、そのまま踏み潰さんと力任せに振り下ろされる!
「みんな、散って!!」
ピンク・フェニックス桃香の叫びと同時に、四人は前後左右へ激しく跳躍した。
ドズゥゥゥン!!
フェニックスたちが間一髪で回避した足元で地響きが走り、アスファルトが粉砕されて爆風が吹き荒れる。
そして 着地と同時に、ピンク・フェニックス桃香は素早く右腕の通信器を口元へ掲げる。
「フェニックス・ネスト応答!! こちら桃香! 巨大獣の出現を確認、フェニックス・ガイオーの緊急出撃を請う!」
『了解、ピンク・フェニックス。フェニックス・ガイオー、発進シークエンスへ移行します!』
通信器から響いたのは、フェニックス・ネストで画面に向かう女性オペレーターの落ち着いた声だった。
現状、フェニックス・ガイオーは本来の「五機のファイター(戦闘機)による分離・合体機能」がシステム制限によりオミットされている。
このため、出撃の際は格納庫からロボット形態のままカタパルトで緊急射出するしかなく、現場到着までにどうしても致命的なタイムラグが生じてしまうのだ。
(5人揃ってファイターでの高速飛来ができれば、一瞬で現場に急行できるのに……!)
内心で呟くピンク・フェニックス桃香の頭上で、再び巨大獣飢者髑髏が咆哮を上げる。
「ガシャーッ!!」
「まずいぞ、ガイオーが到着するまであと四、五分はかかる! このまま、こいつに街を破壊させるわけにはいかない!」
ブルー・フェニックス竜也がソウル・ブレードを構えるが、等身大の剣で巨大獣に立ち向かうには限界がある。
「えっ、四、五分!? おいおい、あんなドデカい化け物を相手に、俺たち、どうやって立ち向かうんだよ!?」
シルバー・フェニックス凱が叫ぶと同時に、巨大な骨の拳がビルを叩き割りながら四人へ振り下ろされる!!
グワアッーーーン!!
巨大な骨の拳がビルを粉砕しながら振り下ろされた。
「ええと、凱さんですね。下がっててください!! ガイオーが来るまでは僕たちが奴の足を止めるしかないんです!」
グリーン・フェニックス烈が勇敢にも前線に躍り出ると、その義手である左腕に高密度のエメラルドグリーンエネルギーを充填させる。
「これで吹き飛べっ!! フェニックス・グリーン・ブラスト!!」
ドゴォォォーーン!!
放たれた強烈な衝撃波が、巨大獣・飢者髑髏の足首を直撃! 巨躯が一瞬グラリと傾き、踏みつけの動作が強引に中断される。
「烈君、ありがとう!! 今よっ!、気高き正義の矢──『フェニックス・イグニッション・アロー』!!」
間髪入れずに跳躍したピンク・フェニックス桃香が、光の弓から極大の矢を解き放つ。
拡散した光の弾丸が巨大飢者髑髏の顔面を直撃し、火花を散らせて巨大獣・飢者髑髏の視界を完璧に奪ってみせた。
「ガシャーッ!、ガシャーッ !」
怒り狂う巨大獣を前に、屋上の魔導神官ガイマが不快そうに呪杖を掲げる。
「ええい、鬱陶し不死鳥どもめ。我、自ら引導を渡して──」
ガイマがフェニックスたちへ追撃の呪術を放とうとした、まさにその瞬間!
「させん!!」
鋭い叫びと共に、青い疾風がビルの壁面を駆け上がった。
ブルー・フェニックス竜也だ!
「フェニックス・ソウル・ブレード!!」
天から降り注ぐような青いオーラを纏った一閃が、ガイマめがけて鋭く振り抜かれる!
「くっ、小賢しい奴め!?」
予期せぬ至近距離からの強襲に、ガイマは慌てて呪杖で刃を受け止めた。
ガギィィィン!!
激しい火花が散り、竜也とガイマの目が間近で激突する。
「横から口を挟むな、ガイマ! お前の相手は俺だ!」
「ほざくか、ブルー・フェニックス……!」
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(すげえ……!!)
あまりのスケール差に足がすくみかけていたシルバー・フェニックス凱は、目の前の光景に息を呑み、激しく胸を打たれた。
ビルを見下ろす巨大獣『飢者髑髏』。そして、その頭上から冷酷に死を撒き散らそうとするチグルマンの幹部『魔導神官ガイマ』。
人間一人の力などあまりにもちっぽけに見える「二重の絶対的な脅威」を前にして、三人のフェニックスたちは誰一人として下を向いていなかった。
グリーン・フェニックス烈の放つ魂の衝撃波が巨大獣の足を止め、そしてピンク・フェニックス桃香の気高き光の矢が巨大獣の視界を奪う。
そして竜也は、自らの危険も顧みずビルの壁面を駆け上がり、禍々しい邪気を放つ魔道神官ガイマへ真っ向から斬りかかっていく。
(三人とも……恐怖がないわけじゃねえ。街を守るために、あのバケモノどもに生身で挑んでやがるんだ……!)
たった今、わけも分からずに変身しただけの自分とは違う。
彼らは「スーツのパワー」で戦っているのではない。「誇り」と「覚悟」をもって戦っているのだと、『凱』はハッキリと理解した。
自分も今は銀色のスーツを纏った。ならば、ただ守られているだけの観客でいていいはずがない。
「クソッ……指くわえて見てる場合じゃねえだろ、俺!!」
右手に握りしめた銀の剣をシルバー・フェニックス凱は力強く握り直した。
恐怖で震えていた膝を叩きつけ、全身の血液が逆流するような熱い感情と共に、巨大獣と魔道神官ガイマを見上げる。
「俺だって……俺だって戦うことは出来る!!そのフェニックス・ ガイオーとやらが来るまで、1秒だって逃げてたまるかよ!!」
シルバー・フェニックス凱は腹の底から叫ぶと、倒壊したビルの瓦礫を蹴り飛び、巨大飢者髑髏の足元――その気を引くべく、自ら危険な前線へと飛び出していった!