不死鳥忍者部隊ザ・フェニックス   作:shpfive03

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本編では変身中については、例えば

ピンク・フェニックス桃香

変身解除、普段の状態、またはメットを外した時には

桃香

という書き分け方をしています。

それが成功しているかどうかは別として

一応、そのような区別を意図しています。




風祭総司令と五号の対面、そしてネストに潜む毒蛇

ここはフェニックス・ネスト最深部に位置する風祭隼人総司令の執務室。

 

重厚な木製デスクの前に立つ風祭総司令の両脇には、伊賀工作員007号こと霧島楓と、同じく008号の藤ノ宮澪の二人が、微動だにせず控えていた。

 

その前に立つのは、ヘルメットを外し、バトルスーツ姿のまま整列するフェニックスの五人。中央に立つピンク・フェニックスこと鳳桃香をはじめ、竜也、りりか、凱、烈の表情には、一連の戦いを乗り越えた緊張感と静かな自負が漂っている。

 

そして、その中央には事前検査を終えた女戦闘員05号。

 

さらに後ろの入口付近には、今回の件の証人としてこの場に同席することになった智花と翠の二人が、固唾をのんで事の成り行きを見守っていた。

 

隊の代表として一歩前へ出た桃香が、澄んだ声で報告を口にする。

 

「以上が、舞浜の地下基地における経緯、ならびにこちらの五号さんの受入手続きの報告となります。バイオスキャンおよびレントゲン検査の結果、彼女の体内に自爆装置、追跡発振器、その他の危険要因は一切検知されませんでした」

 

「ご苦労だった、鳳隊長」

 

風祭総司令は深く頷くと、視線を黒と赤の戦闘員服に身を包んだ女戦闘員05号へと向けた。

 

威圧感を与えることなく、しかし組織の長としての圧倒的な存在感を湛えた眼差しで、静かに語りかける。

 

「初めまして、05号さん。私がこの不死鳥忍者部隊『フェニックス』の総司令を務めている、風祭隼人だ。私も君のことを、現場の隊員たちにならって『五号さん』と呼ばせてもらおう。私のことは、そう、気兼ねなく『風祭さん』とでも呼んでくれればいい」

 

「クエッ……。あ、ああ……分かった……」

 

思いのほか温かく、人間として扱ってくれる総司令の態度に、チグルマン女戦闘員05号、いや五号はマスクの奥で戸惑いながらも、どこか不器用な声で返答した。

 

これまでの彼女は、チグルマンの中では単なる「兵器」「05号」として扱われ、誰かに敬称をつけて呼ぶことも、自分に「さん」をつけられて尊重されることもなかった。

 

凱や烈、智花に対しても、どう呼んでいいか分からず無機質な距離を保っていた彼女である。

 

戸惑いは隠せない。

 

だが、その様子を静かに確かめた上で、風祭総司令は背筋を正し、厳粛なトーンで言葉を続けた。

 

「まず五号さん、君の現在の『立場』について説明しておこう。結論から言えば、君は国際法および人道法規に照らし合わせ、単なる『捕虜』ではなく、自らの意志で武力を捨てた『自発的投降兵(Surrendered Combatant)』として扱われる。君は、正当な法的権利と保護が認められる立場にあるんだ」

 

「トウコウヘイ……?」

 

聞き慣れない言葉に頭を傾げる五号に対し、風祭総司令は噛み締めるように語って聞かせる。

 

「君はチグルマンの自爆指令を拒否し、自らの危険を冒して智花さんと翠さんを助けようとし、現に救出した。これは明確な交戦意思の放棄であり、人道的な貢献だ。したがって、当フェニックスとしては、君を犯罪者や敵の兵器として処罰するのではなく、敵組織からの脱走・帰順者として正式に身柄を保護する事になる」

 

総司令の言葉を、後ろで見守っていた智花は息をのんで聴き入っていた。

 

(すごい……。ただ可哀想だから助けるとか、そういう感情だけで動いているんじゃないんだ。フェニックスの司令部は、国際法、法のルールをちゃんと承知した上で、正しい手続きで五号さんを守ろうとしてくれているんだ……!)

 

法学を志す智花にとって、総司令の毅然とした裁定は、フェニックスという組織に対する深い安心感と揺るぎない信頼へと変わっていく。

 

五号は少し戸惑いながらも、その言葉を噛み締めるように確かめた。

 

「クエッ、あなたのことは……『風祭さん』と……呼べばいいのか……?」

 

不器用で、どこかぎこちない問い返し。

 

だが、そこには明確に「人として相手に向き合い、敬意と親しみを持とうとしている変化」が宿っていた。

 

そして、それを後ろで見守っていた智花は、五号の口から出た小さな「風祭さん」という言葉を聞いて、胸がキュッと温かくなるのを感じていた。

 

(五号さん……今まで誰かを心から『~さん』って呼んだこと、なかったんだ。少しずつだけど、私たちの世界に近づいてきてくれている……!)

 

そのわずかな変化を逃さず感じ取った風祭総司令は、目元を優しく緩め、深く頷いた。

 

「ああ、それでいい。よろしく頼むよ、五号さん」

 

「クエッ……。あ、ああ……」

 

五号が不器用ながらも深く頭を下げるのを見届け、風祭総司令はわずかに口元を緩めたが、すぐにその表情を護衛の指揮官としてのものへと引き締めた。

 

「だが、五号さん。国際法や難しい手続きのことは、今の君がすべて理解できなくても構わない」

 

総司令は一度言葉を区切り、重厚で優しい眼差しをまっすぐに五号へ注ぐ。

 

「大切なのは、君が自らの手でチグルマンの洗脳を断ち切り、人命を救う道を選んだということだ。君はこれからは……君として、一人の『人間』として生きていくんだ。そのために必要な手助けや協力は、我々フェニックスも惜しまない」

 

「人間として……生きる……?」

 

耳慣れないその言葉に、五号は胸の前に添えた手に思わず力を込めた。

 

黒と赤のキャットスーツ風衣装に身を包み、赤と金の精巧なアイマスクで目元を覆った己の姿。

 

これまでは単なる「チグルマンの兵器」として命じられるままに動くことしか知らなかった自分が、一人の「人間」として扱われ、未来を与えられようとしている。

 

あふれる情報と、生まれて初めて抱く感情に追いつかず、アイマスクの下の素顔の口元が戸惑うようにわずかに震えた。

 

「クエッ……。わ、私には……まだ、よく分からない……。だが、あなたたちの言う『協力』には……感謝する……」

 

「焦る必要はないよ。まずはゆっくり体を休めなさい。取り急ぎ、安全の確保された客室(控え室)を用意した。我々の準備が整うまで、そこで待っていてほしい」

 

「クエッ……分かった。ありがとう、風祭、さん」

 

深々と頭を下げる五号の姿を確認すると、風祭総司令は脇に控えていた凱へ視線を遣った。

 

「凱君、五号さんを控え室へ案内してあげなさい」

 

「了解っす、総司令!」

 

凱の返事を確認した風祭総司令は続いて智花、翠の二人の方へと視線を向ける。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

「さて、智花さん、翠さん。君たち二人にとっても今回の件は大きな問題だ」

 

「はいっ!」

 

「え……?」

 

突然名前を呼ばれ、智花と翠がハッと顔を上げた。

 

「りりかさんの下校時、ホワイトデーでの智花さんの拉致、そして今回の休日におけるディズニーランドでの襲撃。チグルマンが君たちの動向やプライベートな予定まで正確に把握し、ピンポイントで刺客を差し向けてきているという事実。内部の安全対策、ならびに君たちの護衛体制については、一刻も早く再構築する必要がある」

 

総司令のその視線は、言外に『情報漏洩』の危険性を警告していた。

 

そして壁際に控える二人の伊賀工作員……楓と澪の二人に、密やかな、しかし鋭い疑惑の目が向けられていたのだが、この時の智花たちには知る由もなかった……

 

「その件についても、こちらでは新たな準備をするので、明日の夕方、またこのネストに来てほしい。送り迎えは鳳隊長とりりか君にお願いしようと思う。智花さんは鳳隊長の車で、翠さんはりりか君のイエロー・ファイターに同乗して来てもらう形だな」

 

「えっ……あ、あたし、せ、戦闘機で送り迎え……!?」

 

思わず目を丸くする翠に対し、りりかは

 

「任せて! 左側座席、準備しておくから!」

 

と頼もしそうに胸をたたいた。

 

一方、智花の方を優しく見つめる桃香の瞳には、どこか静かな覚悟のような色が宿っていた。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

凱が前に出ると、桃香が「智花さん、翠さんも送りの準備ができるまで一緒についていってあげて」と優しく声をかけた。

 

執務室をあとにし、静かなネストの廊下を進む一行。

 

先頭を歩く凱の背中を追いながら、五号はどこか落ち着かない様子で周囲を見回していた。そのすぐ横には、寄り添うように智花が歩んでいる。

 

「五号さん」

 

智花が優しく声をかけると、五号は少し肩を跳ねさせ、アイマスク越しに智花を見た。

 

「クエッ……なんだ、智花、さん……」

 

「うふふ……総司令の前で『風祭さん』って呼べたの、すごく素敵でした。五号さん、なんだか少しずつ表情が柔らかくなってきている気がします」

 

「表……情……?」

 

自分の頬に赤いグローブの手を当て、五号は首を傾げた。

 

アイマスクで目元は隠れているものの、そこから覗く素顔の口元は、かつての冷酷な刺客のそれではなく、戸惑いとわずかな温もりを宿して柔らかく結ばれていた。

 

「ふふ、分かりますよ。アイマスクの奥の瞳や、口元の優しさで。……私ね、五号さんが『風祭さん』って呼んでくれた時、なんだかすごく嬉しかったんです」

 

「智花……さん」

 

五号は胸の奥がじんわりと温かくなるのを感じていた。

 

かつて基地にいた頃は、名前などただの識別番号に過ぎず、誰かに心を開く言葉など持ち合わせていなかった。だが今、風祭総司令や智花の名前を口にするとき、胸の奥から愛おしい感情が込み上げてくる。

 

(私は……この者たちの名前を……もっと呼びたいのだな……)

 

形式的な報告や命じられた仕事のためではなく、「この人たちと繋がりたい」という自発的な好意。それが、彼女の中に確かに芽生えた「人間としての心」だった。

 

アイマスクの下の口元を不器用に綻ばせながら、五号は小さく呟いた。

 

「……智花、さん」

 

「はい?」

 

「……案内……ありがとう……」

 

ぎこちなく、けれど確かな親しみが込められた感謝の言葉に、智花は花が咲いたような笑顔で頷くのだった。

 

「どういたしまして、五号さん!」

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

五号を客室へ送り届けた凱が執務室へと戻ると、風祭総司令は部屋の両脇に控える伊賀工作員……007号の楓と008号の澪の視線を感じながら、静かに、しかし聞こえるように隊員たちへ向き直った。

 

「さて、全員そろったな。これより各自、本日の任務に就いてもらう」

 

総司令の声に、桃香たちは姿勢を正す。

 

「桃香隊長は智花さんを、竜也は翠さんを、それぞれ自宅まで車で送り届けなさい。二人の安全確保が最優先だ。烈はグリーン・ファイターを出し、凱を舞浜の駐車場まで送ってやってくれ。放置してある愛車の回収だな」

 

「了解っす!」

 

凱が応じると、総司令は最後によろしく頼むというように頷いた。

 

「そしてりりか君。君は高校生だ、本日はもう遅い。無理をせず自宅へ帰りなさい。あとの警備は我々に任せていい」

 

「はい、分かりました!」

 

りりかが元気に返事をすると、風祭総司令は壁際に控えていた二人の工作員へと視線を移した。

 

「楓君、澪君。君たち二人にはネストの留守番と、控え室にいる五号さんの様子を看ていてもらいたい。長旅で疲れもあるはずだ。……よろしく頼む」

 

「はい、お任せください」

 

「了解しました」

 

楓と澪が揃って深く頭を下げる。その親身で可憐な澪の表情の裏に、冷酷な刺客の顔が隠されていることなど、表向きは誰も気づいていないかのように見えた。

 

「では、各自行動開始」

 

風祭総司令の号令とともに、隊員たちは次々と執務室をあとにした。

 

風祭総司令もまた、重厚な足取りで部屋を退出していく。

 

――だが。

 

廊下に出た直後、風祭総司令は歩みを止めると、周囲に人の気配がないことを確認し、先行する桃香たちへ短く、密やかな眼差しを向けた。

 

「……手はず通りにな」

 

声には出さず、目線だけで交わされた密かな「本当の指示」。

 

フェニックスの面々は誰一人動じることなく、静かに、けれど完璧な罠(トラップ)を仕掛けるべく、ネストの闇の中へと散っていくのだった。

 

一方、残されたネストの調理室。

 

「五号さん、お腹空いているわよね。温かいスープでも作って持って行ってあげましょう」

 

楓が甲斐甲斐しく鍋を用意し、野菜を刻み始める。そのすぐ横で、澪もまた手際よく食器や飲み物の準備を進めていた。

 

(くっ……! 早く……早くあの女を消さなければ……!)

 

澪の胸の中では、猛烈な焦燥と殺意が渦巻いていた。

 

明日の朝になれば、女戦闘員05号は風祭総司令の聴取に応じ、チグルマンの内部情報や自分の正体をすべて明かしてしまう。そうなる前に、何としてでも今夜中に、あの女戦闘員の口を封じなければならないのだ。

 

(今ここで、このスープに毒を仕込めば……!)

 

澪は袖口の暗殺針に仕込んだチグルマン特製の即効性神経毒へ意識を集中させる。

 

だが——。

 

「澪ちゃん、そっちのお盆取ってくれる?」

 

すぐ目と鼻の先で、楓がまったく悪びれずに笑顔で話しかけてくる。

 

(ダメよ! 楓がずっと隣で見張るように張り付いている。こんな状況で毒を入れれば、真っ先に私が疑われてしまう……!)

 

どれほど隙を窺おうとも、真面目で手際の良い楓が常に隣におり、二人で一緒に準備をしている以上、調理段階で毒を混入させることは不可能な状況だった。

 

(……フフ、いいわ。毒殺が無理なら……全員が出払った後、客室へ直接忍び込んでその首を刺し貫くだけよ……)

 

自らの正体を隠しつつ完璧に始末するため、澪はその瞳の奥に冷酷な毒蛇の光を宿しながら、同僚であるはずの楓に向けて偽りの優しい笑顔を浮かべ返すのだった。

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