五機の小型戦闘機が秘密基地フェニックス・ネスト(不死鳥の巣)を目指して飛ぶ。
ブルー・ファイターを先頭に、グリーン・ファイター、シルバー・ファイター、イエロー・ファイターと続き、[[rb:殿 > しんがり]]はピンク・ファイターが務める。
そして五機の到着を確認したフェニックス・ネストの巨大な格納庫ハッチが開き、到着を待っていた。
爆炎をまとった五機のファイターたちが次々と着陸し、殿を務めていたピンク・ファイターが最後の一機として格納庫ハッチをくぐるのを確認すると、フェニックス・カタパルトは、すぐに重厚な防壁が唸りを上げて閉じていく。
そして、外部からこの山に隠されたカタパルトを見ることが出来ぬよう遮断したのだ。
五機全部が基地内の滑走路に着陸し、そして動かなくなった各ファイター機が静かにエンジンを止めると、キャノピーが開く。
不死鳥忍者部隊ザ・フェニックスの五人はバトル・スーツを身に付けてはいたが、マスクオフ、つまりマスクを外して素顔を見せた状態でそれぞれの機体から降りてくると、そのままゆっくりと基地内の無機質な通路を歩き、司令室まで向かってくる。
その様子を智花と翠は司令室のモニターで確認していた。
烈さんって茶髪で銀縁眼鏡かけていたんだ…
智花は緑色のバトル・スーツを身にまとったまま、この司令室に向かって歩いてくる烈から視線を外せずにいた。
さっきはマスクをしたままだったから気づかなかった…
一方で翠も
凱さんってイケメンじゃないの…
自分より明らかに歳上の、茶色とオレンジが混ざったような色をした短髪の青年の方へ視線を向けていた。
期せずして、二人とも
自分たちをこの[[rb:基地 > フェニックス・ネスト]]まで送り届けてくれた二人の戦士それぞれに惹かれていたのだ。
そんな二人の様子を総司令たる風祭隼人は注意深く見ている。
が、やがて
司令室の自動扉が開き、五人は司令室に入ってくると、風祭隼人総司令のデスクの前に立ち、そのまま順に並んだ。
左から
銀水凱、緑川烈、鳳桃香、葵竜也、そして風祭りりかの順に並ぶと、総司令の前で直立不動の姿勢を取り
そして風祭総司令と対峙する。
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五人を代表して鳳桃香が
「報告します。チグルマンの戦闘部隊を撃退。民間人への被害は最小限に食い止めたことを確認しました。が、残念ながら当方で犠牲一名が出ています」
と感情を見せずに淡々と報告する。
犠牲一名……
それを横で聞いていた智花と翠は思わず顔を伏せ、うつ向く。
その犠牲一名というのが伊賀工作員009と呼ばれていた佐原陽菜のことを指すのは間違いない。
少なくとも智花と翠はそう思った、いや、思いたかった。
なんといっても彼女たちは、今、目の前にいる風祭隼人総司令と共に、モニターで、ほぼ、一部始終を、音声は聞こえないながらも確認しているのだ。
当然、陽菜が、りりか、いやイエロー・フェニックスとの戦いに当たって、毒蛾の怪人の姿に変身したというショッキングな映像、いや、もっと言うと
元の佐原陽菜の姿に戻った彼女が焼き殺されるという、まだ未成年の女子高生には耐えられないような場面すらも見てしまっている。
それでも彼女たち二人は、その辛さを耐えた。
自分たちの親友が、それと同じく、いや、それ以上の苦しい気持ちの中で、必死に闘ったことも、また見てしまったから。
一部始終を報告する桃香の声は努めて冷静だが、その拳は微かに震えているのが見える。
そして報告を受けた風祭隼人総司令も、鋭い眼光で不死鳥忍者部隊の五人を正面から見渡し、そして
「鳳くん、御苦労様!」
とだけ告げた。
その風祭総司令の横には不安げな表情の智花と翠が立っている。
中央に立ち、今、りりかのパパに向かって、事態の報告をしているこの女性(ひと)が隊長??
二人は正直、驚いていたのだ。
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「続けて、伊賀工作員009の造反行為についてだが…」
おもむろに風祭隼人総司令が不死鳥忍者部隊五人の前で切り出す。
だが、それまで何とか緊張感を維持し、戦士の一人として凛々しく振る舞っていたりりかだったが、親友である智花と翠の二人の、既に『知ってしまっている』ことが伝わってくる表情を直視し、そして自分の父から陽菜のことを『造反行為』と言われたことで、とうとう張り詰めていた糸がプツリと切れてしまった。
なんで、パパ、陽菜のこと、そんな言い方するの???
「翠……っ、智花……、ごめんっ…、私、陽菜のこと守れなかった!!、ううん、陽菜は私のこと庇って死んだのよ…」
りりかは遂にその場に崩れ落ちるように泣き出した。
「ごめん……ごめんね。私、約束守れなかったの……!」
目の前で陽菜を、大切な親友を、あのチグルマン女司令官シノアヤメによって焼き殺されてしまった衝撃!!
そして智花、翠、二人の親友をも、大切な日常を戦火に巻き込んでしまった罪悪感。
総司令の娘ではなく、不死鳥忍者部隊の隊員として精一杯の努力をしてきた彼女の『十代の少女』としての本音が、涙となって止まらずに溢れ出てきたのだ。
泣きじゃくり、言葉にならない声を出そうとするりりかの肩を、しかし、隣にいた竜也が優しく、しかし毅然とした手つきで抱き寄せる。
「お嬢、落ち着け。任務は、まだ完了していないんだぞ。それに」
泣き崩れていたりりかはハッとしたように竜也を仰ぎ見る。
「お前がそんな気持ちで居続けていても、陽菜ちゃんは喜ばない!」
竜也のその言葉を聞いて、りりかはどうやら落ち着きを取り戻そうとし始めた。
その一方で
桃香が翠と智花に視線を向けると、深く、丁寧な礼をする。
その瞳に、部隊のリーダーとしての覚悟が宿っているのは、まだ社会人経験のない智花、翠にもハッキリ伝わってくる。
そして桃香は居住まいを正し、社会人としての、そして管理職としての落ち着いたトーンで口を開いた。
「川口智花さん、西野翠さん。驚かせてしまい、申し訳ありませんでした。事実を知ってしまったお二人のお気持ちは痛いほど分かります。ですが、今はどうか冷静に聞いていただきたい」
その桃香の落ち着いた話し方に、智花、翠の二人も、ただ、頷きながら
「あっ、はい…」
「は、はいっ…」
取りあえずの返事しか出来ない。
「私(わたくし)、当フェニックス・プロジェクトの現場統括責任者、鳳と申します。この場は風祭隊員に代わり、私の方から状況を説明させていただきます」
桃香の落ち着いた声が、殺伐とした司令室の空気を鎮めていく。
そして、智花、翠の日常がこれまでとは完全に変貌したことについての改めての説明が始まる。
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桃香は智花と翠の二人に対して、陽菜がチグルマンによって改造手術を受けて毒蛾の怪人とされた上で、どのように扱われ、そしてどのような最期を遂げたのかも、感情を排して的確に伝えた。
慎重に言葉を選びながらも、淀むことのないその説明は、智花と翠に、モニターで見ていたのとは、また違った事実の重さを突きつける。
「陽菜さんの件は、私たちにとっても痛恨の極みです。彼女の尊厳を蹂躙した悪の組織チグルマンを、私は決して許すことはありません」
一通りのことを話し終えた桃香は、バトル・スーツの隠しポケットから、いわば『表の顔』というべき肩書きが記された名刺を取り出し、その上で恭しくに二人に手渡す。
「今回の件は、我々フェニックス実戦部隊が組織の総力を挙げて対応いたします。それを示すためにもお二人に、この一枚を託させてください。これは我々が引き受けるべき『責任』の証です」
渡された名刺を見て、智花も、翠も驚かないわけにはいかなかった。
そこには
内閣府直轄・広域災害対策室 参事官
鳳桃香
という肩書きが書かれていたのだ。
この方、鳳さんって、どう見たって若いわよね…
大学生くらいにしか見えない…
言葉にこそ出さなくとも、智花、翠の二人とも同じようなことを思っていたのだ。
それにしては、この肩書き…
名刺を受け取った二人の指は震えていた。
「今回の件の戦後処理、そして陽菜さんのご遺族への対応などを含め、すべて我々が責任を持って行います。勿論、お二人の今後の安全まで含めてのことです。どうか本件は私に任せていただきたい」
そこまで言うと桃香はあらためて、智花、翠の二人に視線を向け、そして
「これは、鳳桃香という一人の人間としての誓約です」
キッパリと言いきった。
二人は桃香の瞳の奥に、冷徹な説明の裏に隠された強い怒り、そして哀しみを感じて、思わず言うべき言葉を失う。
が、同時に
この鳳さんという方は信頼できる…
という安心感も持つことが出来たのだ。
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桃香による状況説明が終わり、智花、翠、二人もひとまずは落ち着いた様子であると見てとった風祭隼人総司令は、今度は娘であるりりかの方を見据える。
隣にいた竜也の支えで何とか立ち直ったものの
イエローとしてのバトル・スーツは着用したままながら、マスクオフで素顔を見せているりりかの表情は緊張に満ちていた。
彼女は父、いや風祭総司令が次に何を言うのか予想がついていたのだ。
そして風祭隼人総司令は
「……りりか君……」
実の娘である彼女のことを、そう呼んだ。
「はいっ!」
りりかの顔は蒼白になっていた。
「君が任務と学業の両立のために大変な努力をしていたことは私もよく知っている。だが、残念ながら本日、チグルマンが、君と、学校の友人たちを狙った。そして、それについては伊賀工作員009号の関与も明らかになっている。少なくとも君の素性がチグルマンに割れている、あるいは監視されているということは、もう事実として考えないわけにはいかない」
「・・・・・・・・」
りりかは俯いたまま、拳を強く握りしめる。
せめて陽菜のことは…
だが、父の言うことも理解は出来るのだ。
「そして君の友人たち、つまり民間人をこれ以上巻き込むわけにはいかない。残念ながら、これ以上の任務と学業の両立は認めるわけにいかない。以降、君は不死鳥忍者部隊の専属隊員として、このネストで任務に専念してもらおうと思う」
りりかは泣き出したい気持ちを堪える。
父である隼人が自分を大学まで行かせたいと思っていたことは、他ならない自分がよく知っている。
でも、仕方な…
りりかが絶望と共にその決定を受け入れようとした、その時である。
それまで黙って聞いていた翠が、一歩前に踏み出すと、少しだけ悩んだ様子を見せ、そして口を開いた。
「待ってください、風祭さん。そんなの、あんまりです。りりかから、学校まで奪わないでください!」
翠は、それまでは『りりかのパパ』と呼んでいたその人を、あえて『風祭さん』と呼んだ。
その言葉の端々に強い決意が漲っている。
続けて智花も
「そうです 、りりかが学校からいなくなるなんて、そんなの寂しすぎます!」
と、翠に続いて発言する。
唐突な翠、智花二人の発言を受けて、風祭隼人総司令と、イエロー・スーツを着たままのりりかは、思わず、そちらを振り向く。
だが、翠は風祭隼人総司令の鋭い視線を真っ向から受け止め、そしてさらに発言を続ける。
「私たちの日常は、もう、どちらにしても元に戻りません。そしてリスクがあるというなら、今まで通り、りりかに学校にいてもらって、私たちを守ってもらうのが合理的です。りりかには、その力があるのだから!」
そして翠は、今度はりりかの方を振り向いて、そして微笑む。
「りりか、これからは責任をもって私たちを守ってね。その代わり、私たちはあなたの日常を、学校という居場所を全力で守るから」
「翠…」
りりかは思わず涙を流していた。
だが、それは感動による嬉し泣きであった。
まさか、総司令として威厳を見せるパパに向かって、翠がそこまで言ってくれるなんて…
非力な友が、自分を庇うために、繋ぎ止めるために、威厳を見せる総司令に向かって、堂々の発言をしてくれているのだ。
どれだけの勇気と決心が必要だっただろう…
そして
この展開には不死鳥忍者部隊の他のメンバーも驚きを隠せずにいる。
だが、風祭隼人総司令はそんな甘い考えを一蹴した。
「責任のない立場の、無力な外部の民間人が安易なことを言うものじゃない。部隊の運用に口を出すというのか!、だいいち他ならない君たちの安全がかかっているんだぞ!」
取り合う様子も見せず
「りりか君の昭華学園の退学手続きは早急に行おうと思う。こちらとしても断腸の思いではある。が、事態はそんな軽いもんじゃない!」
と、翠、そして智花に向かって、キッパリと言いきった。
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だが
「風祭さん、あえてそう呼ばせてください。この件、私には異議があります!」
智花の決意を秘めた凛とした声が響く。
それにより風祭隼人総司令の鋭い視線が、今度は智花へと向けられた。
だが、智花は怯まない。
お父さん、私に力を貸して…
智花は顔を真っ赤にしながらも、弁護士である父のことを思う。
その背中を見て育ち、法学部を目指す彼女にしかできない『戦い』を、彼女は今、この場で始める決意だった。
「風祭さん、あなたの、この宣告は、法的に、そして憲法に照らし合わせて、明らかに不当です!」
思いもよらなかった反論に風祭隼人は動揺した。
「君は一体何を言うんだ? 、ここは外部の民間人が無責任な発言をすべき場ではない。」
「いいえ!」
智花は一歩も引かない。
「民間人だからこそ、あえて言わせてください。 日本国憲法第26条により、すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、等しく教育を受ける権利を有します!」
法学部合格を目指して、自宅の勉強机でボロボロになるまで六法全書はもとより、様々な専門書だって読み込んで自分の血肉となった法の知識
それを今、親友を守るための武器として使う!
智花の決意は固かった。
「りりかに退学を強要し、教育の機会を奪うことは、明白な憲法違反です。たとえそれが『平和を守るための特殊任務』であっても、個人の基本的人権を根底から否定する権利は、総司令……あなたにも無いはずです!」
隼人は、だが、この少女の反論を真剣に聞き、その上で反論する。
「君自身の身に危険が及んでいるのだ。安全確保は最優先事項だ」
それに対して智花は
「安全を理由にした権利の剥奪は独裁への道です。りりかが自分から『学校を辞めたい』と言うのなら話は違います。でも、りりか本人の希望も聞かずに、一方的に結論を押し付けるのは、上司であれ、親であれ、問題はあると思います!」
と言った上で
「日本国憲法第99条。天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負う」
滔々と彼女は読み上げるように言う。
『日本国憲法』の条文は、すべて彼女の頭の中に入っているのだ。
「特殊部隊である『ザ・フェニックス』が、国家の治安維持を担う組織の一つである以上、その長である風祭総司令にも、公務員、あるいはそれに準ずる重い公的責任を負う者としての立場があるはずです。その風祭さんが総司令、父親としての立場から、一人の国民であるりりかの教育権を不当に奪おうとする…、これは『憲法遵守義務』の違反ではないでしょうか?。だとすれば」
司令室のモニターの光が、今、彼女の表情を冷徹なまでに際立たせていた。
「『安全』を盾にすれば、そのようなことをしても許されることになります。けれども、それは法治の否定です。そのようなことを、少なくとも私は認めるわけにはいきません。私は著名な弁護士である父の娘として、そして未来の法曹を志す一人の人間として、それに対して全力で抗議します!」
その言葉を聞いた風祭隼人総司令は、思わずフッと笑った。
彼女のことを、まだ社会の現実を知らない子供だと笑うことは容易い…
だが、そんなつもりには全くならなかった。
何よりも彼女の熱弁は理屈ではなく、人の心を動かすだけの何かを持っている…
そして風祭隼人は一瞬、父親としての顔に戻り、そして娘に向かって言う。
「りりか、お前はいい友達を持ったな…」
と呟いた。
その総司令、いや父の思わぬ言葉に、りりかもハッとなる。
そうだ、だからこそ自分がしっかりしなくてはいけない!
そして、そのりりかの内心の決意を確認した風祭隼人総司令は、再び智花の方へと向き直ると、こう続けた。
「智花さん、なるほど貴女の言うことにも理がある。だが我々が現実的な君たちの今後の安全対策を考えなければいけないのは勿論のこと、今後、別な人たちが巻き込まれることも防いでいかなくてはならないということを忘れてほしくない」
そこで翠が挙手し、そして横から発言する。
「風祭さん、だからこそ私たちには、りりかが必要なんです。じゃ、仮にりりかが学校からいなくなったとして、見知らぬ誰かが、監視するようにして、素性も明かすことなく、私たちを安全のために見張るとでも言うんですか?、だったら私たち安心して学校生活を送ることは出来ませんし、勉強にも差し支えが出ます!」
翠のバックアップに勇気づけられた智花も
「風祭さん、お願いします。私たちには身の安全という意味でも、りりかが必要なんです。それに任務と学業の両立が出来ないと決めつけるのも反対です。だいいち私たちが、もう、そのチグルマンという悪の組織に目をつけられてしまっていると先ほど仰ったのは、他ならない風祭さんじゃありませんか。今、あえて、りりかの権利ということについて、あえて目上の、社会人として地位ある方に失礼なことを言いましたけど」
言葉を震わせながらも
「お願いします。りりかに、これからも、学校生活を送れるようにしてください。私たちと共に学べるようにしてください。繰り返しますけど、どうかお願いします!!」
そう言って智花は風祭隼人総司令の前で深々とお辞儀をするのだった。
翠も続いて
「風祭さん、私からもお願いします。私は智花のように弁の立つことは言えないけれど、気持ちは同じです。私たちをこれからもりりかと一緒にいられるようにしてください!」
熱い気持ちを、目の前の社会人としても地位ある人に伝え、そして、深々とお辞儀をする。
「風祭さん、お願いします!!」
風祭隼人総司令は二人の女子高生の熱意を確かに受け取っていた。
が、少しの間の沈黙の後、口を開いたのは、先ほどこの二人に自分の名刺を渡したばかりの桃香であった。
その表情には、部隊の守護者としての冷徹さと、どこか茶目っ気のある光が同居している。
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「総司令、このお二人の発言についてですが、問題提起された安全対策について、現実問題として、既にチグルマンにその素性が割れている以上、りりか隊員を無策のまま登校させるわけには参りません。ですが、この件、私に任せていただけないでしょうか?」
その桃香の様子に、風祭隼人総司令は何事かを感じ取った。
「鳳くん、何か考えがあるのだな」
桃香はそれに対して、すぐに返答する。
「はい。要は『安全』と『学業』、その両立を担保すれば良いのです。その方法は、今、この場ではお話出来ませんが…」
その言葉から、桃香が、自身の考えているその策の内容を、今 ここにいる川口智花、西野翠、そして恐らくはりりかにも聞かれたくないのだろうと考えていることは、風祭隼人総司令にはすぐに見当がついた。
「分かった。その件については、後で別途、君と話し合いを持つことにしよう」
風祭総司令はすぐに決断すると、いきなり話を変える。
「ところで智花さん、翠さんのお二人には、これから機密保持の誓約書など、いくつも書類を書いてもらわなくてはならない。またお二人のご両親には、こちらからご連絡を入れる。その上で、これについての承諾を含む今後のご協力を要請しなければならない」
風祭隼人総司令のその言葉を聞いた智花、翠、二人の表情は緊張に満ちる。
が、隼人は二人に向かって言いきった。
「だが、それは、りりかが今後も今まで通り学業を続けるためにも必要なことなんだ。二人とも協力してくれるね?」
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隼人のその一言が、緊張しきっていた総司令室の張り詰めていた空気を、一気に緩ませる。
そして、その言葉に
智花、翠の二人、そして、りりかはもとより、不死鳥忍者部隊のメンバー全員にも歓喜の表情が浮かんだのだ。
誰もが、この決断を喜んでいた。
そして緊張感が緩んだ智花は全身の力が抜けてしまい、その場にへたり込みそうになった。
「智花!」
親友の翠がすかさず駆け寄って、彼女を支えようとする。
だが、その彼女より素早く動いた者がいた。
「智花さん、しっかりするんだ!」
倒れそうになる智花を、力強く、しっかり支えた者
それは緑色のバトル・スーツを身に付けたまま、だが、マスクオフにより巣顔をみせていた緑川烈だった。
「はい…、あ、あのっ……、烈さん…、ありがとうございます」
結果的に抱き止められた形の智花の顔が真っ赤になる。
が、烈はそれを気にすることもなく、智花の肩をがっしりと支えた。
「大丈夫か?」
智花は顔を真っ赤にしながらも、烈に対して
「はい、大丈夫です。本当にありがとうございます」
そう答える。
そして、その様子を見ながらも翠は
「本当に凄かったよ、智花! 流石は未来の敏腕弁護士ね。惚れ直したわ!」
屈託のない称賛を親友に向かって送る。
「…こ、これでも…、本気で…、弁護士目指しているんだから…、とにかく…、りりかが学校、辞めさせられるなんて、そんなの絶対におかしいって思ったら、もう、黙っていられなくて……」
烈に支えられたままの智花は動揺しながらも、翠に向かってそう答える。
そして、そのりりかは、溢れんばかりの感謝のこもった瞳で、智花を、親友を、見つめる。
「智花、本当にありがとう!、私、もう学校のことは諦めるしかないと思ってた…」
そしてりりかは、烈によって肩で支えられたままの智花の手を強く握りしめた。
あったかい…
智花の手の温もりこそが、先ほど彼女が決して曲げようとしなかった『基本的人権』という言葉の意味、りりかには、そのように感じられた。
が、ふと視線を感じてりりか、智花、翠の三人が顔を上げると、コンソールの前で、隼人が腕を組んで、その様子を注視しているのに気がついた。
元々顔が真っ赤になっていた智花だけではなく、りりか、翠、二人の顔も赤くなる。
そして、それを確認した隼人はフッと笑うと
「では、智花さん、翠さん、それにりりか君もだが、これから書類を何枚も書いてもらう。そして、以降、智花さんと翠さんのお二人には、我々のことに関する守秘義務を負ってもらうことになる。確認するが、それはいいね?」
風祭隼人総司令のその言葉に智花と翠は
「はいっ!」
「はいっ!」
それぞれ決意を込めた返事をする。
そう、親友と共にこれからも学校で学ぶという決意のために。
そして、二人の決意を聞いた風祭隼人総司令は笑顔で頷く。