いえいえ20代の女優さんによる女子高生姿、映像でも見るでしょう(笑)
結果的にりりかの学業継続は認められ、智花、翠、二人の親友たちと共に昭華学園にこれまで通り通うことになる。
が、その後一週間くらいは突然死ということになった陽菜の葬儀に参列するなど、慌ただしい日々が続いていた。
それが、ようやく落ち着いたある日の事である。
りりかは自分の席でスマホをいじりながら、智花や翠たちと他愛ないおしゃべりをしていた。
三人には陽菜がいなくなったことに対する喪失感があり、それは未だに癒えてはいないのだが…
今日を、毎日を、前を向いて生きていくしかない
その気持ちは三人にとって無言の合意でもあった。
そこへ
「皆さん、静かに。今日から一緒に勉強する転入生を紹介します」
そう言って扉を開いて入ってきたクラスの担任教師が、連れてきた転入生を教室へ招き入れた。
クラスの中が一瞬静まり返る。
そして担任教師に続いて教室に入ってきたのは、黒髪を肩口で軽くまとめ、穏やかな微笑みを浮かべた美しい、清楚な雰囲気の転入生だった。
昭華学園のブレザー制服を着ているが、袖やスカートの丈など少し大人びた着こなし。背筋はピンと伸び、真面目そうな、そして上品で凛とした雰囲気の女の子の姿。
「紹介する。今度、当学園に事情で転入してきた百地 桃(ももち もも)君だ」
担任教師は彼女の名前を紹介する。
それに続いて、彼女は恭しくクラスの皆に向かってお辞儀をすると自己紹介を始める。
「皆さん、初めまして。百地 桃と申します。以前は山深い場所で学んでおりましたが、この度、こちらの学園へお世話になることになりました」
丁寧すぎるほど丁寧な挨拶。だが、その瞳は教室内を見渡し、非常口の位置や、怪しい気配などがないかなどを一瞬にして確認していた。
一方、自分の席で、りりかは頭を抱え、脱力感で机に突っ伏してしまう。
なんだか、どっと疲れが…
無論、りりかは、この『転入生』が何者であるかを理解していた。
だが彼女は、念のために智花や翠の方にも視線を向けてみる。
残念ながら二人の親友たちは、りりかが一瞬で見抜いた『転入生の正体』に気づいている様子もなかった。
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さて放課後である。
「ええとっ!、も、も、ね、え!!、これって、一体どういう事なの?」
下校する際に、転入生である百地桃に対して道案内と称して彼女に同行を申し出たりりかだったが、一緒に連れてきた智花、翠の二人以外に周囲に人がいなくなったのを慎重に確認すると
早速、『謎の転校生』に突っ込みをいれたのだ。
「あら、風祭さんでしたよね?、私が何か?」
気にした様子もなく、白々しく、百地桃を名乗る『少女』はりりかに対して、そう答える。
一方、りりかの
「も、も、ね、え」
という言葉の意味を直ぐに理解した智花と翠の二人は一瞬、ポカンとした表情になり、そして驚きの声をあげる。
「ええっ?、それって、まさか!!」
と翠がまず叫ぶ。
それに対して百地桃と名乗る『少女』は
「翠さん、声が大きすぎますよ」
そう言って彼女に向かって微笑んで見せる。
「あ、あのう…、もしかして、鳳さん、なんですか?」
智花も愕然となる。
「智花さん、ここでは桃さんと呼んでくださいな」
百地桃を名乗る『少女』は、今度は智花に向かってニッコリと笑みを浮かべた。
「だ、か、ら、桃姉(ももねえ)っ!!」
りりかは苛立ちで声を震わせる。
「これって、私が信用出来ないから、いい歳して女子高生に化けて、転入生という名目で学園を見張りに来たということなの?」
「あら、風祭さん」
百地桃を名乗る『少女』は悪戯っぽく
「いい歳って、私、まだ22歳ですよ。知っているでしょ」
そう言ってクスクス笑いをする。
「私の変装術なら女子高生に化けるくらいはなんでもないこと。それにしても、やっぱり見抜かれたわね。さすがよ」
本当に楽しそうに百地桃を…、いや、鳳桃香はりりかの方へ視線を向ける。
そして
「で、真面目な話をすると、問題が発生した以上、総司令にしても、私にしても、責任を預かるものとして何らかの対策を講じないわけにはいかないの。お偉方に対する今後の説明もあるし、何よりも智花さん、翠さんへの安全対策をしないわけにはいかないでしょう」
と桃香は、当然のようにりりかに向かって説明をする。
が、納得がいかないりりかは
「でも、ただでさえ忙しい桃姉が毎日ウチ(昭華学園)に通学できるの?」
と反論を試みる。
そのやり取りを、智花も、翠も、ただただ、目を白黒させながら見ている。
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「現実問題としては、私が毎日昭華学園に通うことは出来ないから、それについては008号、007号とローテーションを組んで、転入生百地桃という一人の名前で学校に来ることにはなる予定。勿論、二人の変装術に問題がないのは、あなたも知っているはず」
桃香は、りりかに向かって今後の説明をする。
「008号、007号については、あなたが出動する時にも代わってもらうように言い含めてあるから、今後はあなたも楽になると思うし」
そこまで言うと女子高生姿の桃香は、智花、翠の二人に向かってウインクする。
「智花さん、翠さん、言うまでもないけど、この事は内緒よ。まあ、学校側には、もう、話は通してあるけど、あんまり大っぴらにはしたくないのも確かだし」
それを聞いた智花は
「は、はい…」
と、取りあえず返事をする。
が、翠は納得がいかないようだ。
「で、でも、それって、学校としていいの?」
それを聞いた桃香は、今度は笑顔から一転、厳しい表情となる。
「翠さん、でないと、りりかどころか、あなたたち二人だって学校にいられなくなるわよ。学校にとって問題を起こしてほしくないのは当然の事だから」
「えっ?」
言われた翠は目を丸くする。
「一応、国家権力、つまりあたしたちが学校側の安全を保障しますと断言し、具体的対策も講じることを説明したからこそ、学校側も不承不承ながら今まで通りというのも了承してくれたわけ。だから、本当に何か問題があったら、今度はウチ(不死鳥忍者部隊)の責任問題にもなりかねないの」
「そ、そうなんですか?」
翠は驚きを隠せない。
「そうなのよ」
桃香はわざとらしくため息をついて見せる。
「勿論、りりかも安全対策をキチンとしないとダメよ。チグルマンに介入の隙を与えないようにしないと。私たちが学校側にこうして潜入しているからって、気を抜いちゃダメよ」
その言葉を聞いたりりかの表情は固くなる。
そうなんだ…
結局、まず、自分がしっかりしなくちゃいけないのは変わらない。
「まっ、というわけで、智花さん、翠さん、これからはクラスメートとしてよろしくね」
そう言って桃香は、まず智花と、続いて翠と、握手をする。
「は、はい…」
桃香と握手しながらも智花は、実は別なことを考えていたのだ。
もうすぐホワイトデー
烈さんに何をプレゼントしようかな…
一方で翠は翠で別なことを考えていた。
これから私たち、どうなっちゃうんだろう??
でも、なんだか面白そう…
一人、りりかのみは、これからの責任を思って緊張感を高めていた。
私がしっかりしなくちゃ……
そんな三人三様の思いを注意深く観察する、不死鳥忍者部隊のリーダー鳳桃香であった。
実際、彼女なりに今回の事態を楽しんでもいたのだ。
勿論、ただ漫然と女子高生を演じるだけではない。
常にこの学園内の死角を監視し、万一にも何かがあってはいけないのだから
緊張感はある。
いずれにしても、こうして
りりか、智花、翠、そして女子高生を演じる鳳桃香の新たな学園生活が始まったのだ。
(第一部 終了)
ここまでを一区切りで「りりか編」とします。
次回以降はグリーン・フェニックス烈を主人公とした「烈編」とする予定です。