もし、本投稿に問題があるとご判断がある場合は直接ご連絡ください。
連載小説をR18にするなど対応の変更は可能な限り早急に行う用意はあります。
現時点では判断がつきかねますので、いったん現状のままとします。
話は、烈と智花が海浜公園で会ったホワイトデー当日のちょうど一週間前に遡る。
国政与党重鎮の政治家である板垣鉄雄は、今、東京都港区・高級医療施設である聖桜会総合病院に急性心不全ということで入院していた。
一応、その孫娘である大学生の千佳が介護という名目で、ここ三日間にわたって、ずっとこの病院に通って板垣大臣の介護を続けている。
なお板垣大臣は、国政与党穏健派の防衛・治安担当大臣であり、実際にその職務を行っている傍ら、実は不死鳥忍者部隊にかかわるフェニックス・プロジェクトの事実上の責任者てあり、政治的バックボーンにあたる存在でもあった。
そして、その政治家としての国内、国外における人脈や、政治についての様々なノウハウにより、政界では無視できない影響力を持つ人物でもある。
その板垣大臣の入院ということで、当然ながら聖桜会総合病院の方でも対応には気を遣っていたのだが、今日になって、突然専属担当だった看護師の松岡優香里が無断欠勤し、連絡もとれなくなってしまったというのだ。
「えっ?、優香里さんが欠勤?」
見舞い兼身の回りの世話ということで、今、ここに到着したばかりの千佳も驚かずにはいられなかった。
その板垣大臣の内蔵疾患による入院ということで、病院側も専属看護師の人選には配慮し、松岡優香里という、まだ若いものの、それなりに経験を積んだ女性が担当をしていた。
優香里の献身的な看護は板垣大臣も大きく信頼するところであり、孫娘である千佳もそれを知っていただけに、急な欠勤という話には合点がいなかったのである。
病床にある板垣も納得がいかず、挨拶に来た高島看護師長に聞き返した。
真面目そうな娘(こ)だったのに…
その傍らに孫娘であり、大学生の千佳が看病という形で付き添いをしている。
「ええ、今朝から連絡がとれないんですよ。無断欠勤なんかするような子じゃないし、こちらも心配はしているんですけど‥」
高島看護師長も困ったように答える。
そして
「とりあえず今日は、松岡さんの代役として、板垣さんのお世話をする看護師を彼女につとめてもらうことにします」
その高島看護師長の紹介のもと
「失礼します」
の声と共に
上着はVネックの半袖スクラブトップで、胸の左側には『白河』と記された名札をつけ、下は同色のライトブルーのスクラブパンツ。
頭にはライトブルーのナースキャップを被り、後ろで髪をポニーテールにまとめた、清潔そうな服装の一人の女性看護師が部屋に入ってきた。
年の頃は二十歳くらいだろうか?
昨日までの菊池看護師に比べると五歳以上は若そうだ。
その彼女は板垣に向かって
「白河結衣と申します。本日は菊池さんに代わりまして、私が板垣さんの担当を勤めさせていただきます。どうか、よろしくお願いします」
ペコリと丁寧に頭を下げる彼女は、清楚な雰囲気で信頼はおけそうだった。
だが、その彼女の様子を板垣大臣の孫娘であるはずの千佳は注意深く観察している。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
夜の聖桜会総合病院は、静まり返っていた。
VIPフロアの最奥、特別個室のドアには『板垣鉄雄』とだけ記されたプレートが掛かっている。
午前2時17分。ライトブルーの制服を着た若い看護師が、静かに個室のドアを開けた。
彼女の名札には『白河結衣』とある。
だがその瞳は、冷たく濡れた爬虫類のそれだった。
彼女の本性は秘密結社チグルマンの女戦闘員。
彼女はすでにこのフロアの当直だった三人の本物の看護師を催眠状態にすることで無力化し、そして、その記憶を操作してこのフロアに潜入していた。
目的はただ一つ。
板垣鉄雄を消し、不死鳥忍者部隊をバックアップする政治的背景を弱体化させ、その情報網を断ち切ること。
個室の中は薄暗く、心電図のピッピッピッという電子音だけが響いている。
ベッドに横たわる点滴の管を何本も繋がれ、眠っているのか、目を閉じている板垣鉄雄の姿が見えた。
看護師の白河結衣、いやチグルマン女戦闘員は、その唇の端を歪めると、袖の中から細い注射器を取り出した。
その中身はチグルマン特製の即効性神経毒、心臓の機能停止を『自然死』として偽装できる特製の薬品である。
「では、板垣大臣、永遠におやすみなさい」
彼女が呟きながらベッドに近づいたその瞬間
注射器を構えていた、その腕を背後から何者かとられた。
「動かないで!」
背後から、若い女性の声が聞こえる。
看護師の姿をしたままの彼女が後ろを振り返ると、そこに立っていたのは可愛らしいピンクのナイトガウンを着た若い女性だった。
長い黒髪を緩く結び、大きな瞳が看護師をまっすぐ見据えている若い女性。
板垣千佳、大臣の孫娘、そう聞いていた。
だが……
「夜遅くにごめんなさい。ちょっと、おじいちゃんの様子を見に来たの。あなた、こんな時間に、この注射器は、一体どういう意味なの?」
板垣大臣の孫娘千佳、いや、そう名乗っていた若い女性は、目の前の看護師の姿をした怪しげな女に対して、詰問するかのように言う。
「あ、あなたこそ、こんな時間に…、面会謝絶の時間帯ですよ…」
看護師の姿をした怪しげな女は、そのように千佳、いや、そう名乗る若い女性に向かって反論する。
だが、『千佳』はニヤリと笑うと侵入者である看護師の姿をした怪しげな女を取り押さえ、そして部屋の照明をつけた。
千佳に取り押さえられていたのは担当看護師のはずだった白河結衣の名札をつけた女性である。
そして病床で点滴をつけたまま眠っていたはずの板垣鉄雄の姿は、そこにはなかった。
「くそっ、なぜ‥‥」
白河結衣の名札をつけた看護師姿の女は、自分を取り押さえている千佳、いや、そう名乗る若い女性を睨み付ける。
「ふふ、看護師の姿をした暗殺者さん、生憎だけど」
千佳、いや、そう名乗る若い女性はそんな侵入者を笑った。
「私、本当は板垣大臣の孫娘じゃないの。本当の名前は凰桃香!!」
その名を聞いた暗殺者は
「ピンク・フェニックス!!」
と、思わず叫んだ。
「やっぱりね、そして、私のコードネームを知っているあなたが何者であるかは言うまでもなさそうね」
千佳、いや、桃香は、取り押さえていた看護師の姿をした怪しげな女、白河結衣と名乗っていた暗殺者を引き起こすと、その細い喉に腕を巻き付け、一気に締め上げた。
「うっ、くぅっ!!」
暗殺者の女は手足をバタつかせながら抵抗する。
「大人しく、私の質問に答えてもらうわ!」
桃香の声は、あくまでも沈着、冷静である。
「あなたは何者?、何のために板垣大臣を狙ったの?、そして」
桃香はいったん言葉を切ると
「優香里さんはどこにいるの?」
と、言葉は穏やかだが、その首を締め上げる力をこめ、彼女を詰問する。
看護師姿のままの彼女は苦しみだし、顔も真っ赤になる。
「まあ、私のコードネームを知っている時点で、組織の正体と目的は想像がつくけどね。チグルマンの女戦闘員さん」
言いながら桃香は看護師姿のままの彼女、いや、女戦闘員の首を締める力を強めたり、弱めたりする。
締め上げる力を入れる一方では首の骨など容易く折れてしまうし、秘密を手早く吐かせるためには精神的に揺さぶりをかけることが効果的と経験上知っているからだ。
「さあ、白状してもらいましょうか。優香里さんはどこ?、そして今回の計画の全貌や、あなたたちのこれからの動きなども」
そう言うと桃香は、あらためて看護師姿のままの女戦闘員をグッと締め上げる。
ついに耐えきれなくなった女戦闘員が口を割ろうとする。
「サ、サソリーナ様が……すべて……」
その時である。
病室の窓ガラスが、甲高い音を立てて砕け散った。
ガァァーン!!
外から放たれた高精度のサイレンサー付きライフル弾が、桃香によって締め上げられていた女戦闘員の胸を正確に貫いた。
撃ち抜かれた左胸からライトブルーのスクラブトップに鮮血が広がる。
「がっ……!」
看護師姿のままの女戦闘員は目を大きく見開き、そして桃香の腕の中にぐったりと崩れ落ちた。
口から黒い血を吐きながら、彼女は最後に
「サ、サソリーナ様…」
一言だけ残し、そして絶命する。
そのまま、チグルマン戦闘員特有の『自己消滅処理』が発動し、彼女の体は急速に溶けるように崩れ始めていった。
言うまでもなく証拠を残さないための処置だ。
桃香は舌打ちした。
「くっ……!」
彼女はすぐに窓際に駆け寄り、外の暗闇を見下ろした。
チグルマンが組織の戦闘員の命など何とも思っていないのは知っているが‥‥
そして、それはそれとして
「板垣さん、もう大丈夫ですよ」
と本当は別室に移動していた板垣大臣に声をかけに行った。
ここには板垣大臣がいるように見せかけていたのに過ぎない。
そして
病院の敷地内、植え込みの影から人影が動くのが窓からも見えた。
一方、病院の屋上では葵竜也が監視を怠ってはおらず、素早く下に飛び降り、影に紛れて逃走する刺客を追おうとした。
だが相手はチグルマンの精鋭らしく、巧みに気配を消すと、そのまま、その場から消えていく。
追いかけようにも、どの方角に逃げたのかが分からないし、迂闊に深追いすれば、板垣大臣には桃香がついているとしても
病院に対して奴らが何を仕掛けてくるか分からない。
そもそも、本当にこの場から逃げたのかどうかさえ分からないのだ。
隠れているだけなのかもしれない。
少なくとも竜也は
引き続き警戒を続けるしかない…
そう判断し、その場からはあえて動かなかった。
そして
病室内では、桃香が倒れて消滅する女戦闘員の残骸を睨みつけながらも
「板垣大臣、お騒がせして申し訳ありません。ですが、暗殺は阻止することは出来ました…」
車椅子に乗り、点滴をつけたままの板垣鉄雄に向かって謝罪する。
だが板垣はゆっくりと、自分の孫娘に変装していた桃香の顔を見て小さく頷いた。
「すまないな、鳳さん。貴女こそ、また危険な目に……」
だが桃香は、そんな板垣大臣の言葉に首を振ると、優しく微笑んだ。
「私たちの役目です、大臣。でも…今度は奴らも、かなり本気で来ていますね」
その桃香の言葉に、車椅子上の板垣鉄雄大臣も無言で頷く。
一方で、外では葵竜也が警戒を怠ることなく見張りを続けている。
目を離せば、奴らがどのように動くのか分からない…
聖桜会総合病院の夜は、まだ終わっていなかった。
そんな竜也の様子を窓から確認した桃香は、あらためて板垣大臣の方へと振り替える。
「では、板垣大臣、これからの警備についてですが、既にチグルマンの動きがあった以上、警戒体制もあらためて整える必要があります…」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
翌日には不死鳥忍者部隊ザ・フェニックスのメンバー五人は全員、聖桜会総合病院の前に集合していた。
板垣大臣は形式上は引き続き聖桜会総合病院に入院中という形をとっているが、実際には別の警戒体制の整った病院へと転院することになり、五人はそれを警護しながら安全を確認、見届けた後で、行方不明、恐らくはチグルマンにより拉致されたであろう松岡優香里看護師の捜索に乗り出すことになる。
松岡看護師の安否については板垣大臣も心配しており
「たまたま自分の専属担当だったというだけで本当に申し訳ない。彼女の安全が心配だ…」
と言っていたのだが、転院は慎重に行わなくてはならず、まだ、今は絶対安静の状態
転院の準備が整い次第、桃香は移送直後までの間は孫娘として付き添い、移送完了と安全体制の確認を終えた後、『孫娘は大学に戻った』という名目で通常任務に復帰することになる。
転院先では風祭隼人総司令が別なスタッフを連れて安全体制の引き継ぎをすることになっていた。
が、今は病院側は急な転院の準備に追われており、その間の待ち時間を使ってフェニックス・メンバーの中で打ち合わせをしていたのだ。
「とりあえず智花と翠の安全は008号さんが見てくれているけど、私たちが不在の間に奴らが行動を起こしてくる可能性もあるわけで」
と、りりかが懸念を示す。
「まあ、それについては烈君に考えがあると聞いたんだけど、進行状況はどう?」
と桃香。
「うん、ただ、今回は事態が急に変化したんで、ちょっと今すぐには完成品までは難しいと思う」
烈は正直に答えた。
彼は、智花、翠、二人の安全対策をスムーズに行うため、専用受信機に『緊急・位置情報送信』のアラートを送信するためのポケットベル状の装置開発を行っていたのだ。
あと少しで試作品なら…
「まあ、烈、焦るなよ。今、俺たちに出来ることを確実に済ませていくしかない」
竜也が烈に声をかける。
「で、恐らくはチグルマンに拉致されたであろう松岡優香里さんの捜索は俺と竜也さんで進めるということで」
と、これは凱。
「ああ、だが、そのためには手がかりが必要だな」
竜也は悩ましげに腕を組む。
「女戦闘員が消されてしまった以上、別な手がかりが必要になる」
実は竜也は、内心では
智花さんか、翠さん
二人のどちらかがチグルマンに狙われてくれた方が突破口になるかもしれないと考えていた。
少なくとも奴らの動きを掴める
だが、そんなことは軽はずみには口に出せないしな…
フェニックス・メンバーがそれぞれの思いを抱えながら待っているうちに
「板垣千佳さんですね。板垣先生の極秘転院準備が整いました」
病院内で極秘転院の手続きを行っていたスタッフが、板垣千佳、つまり桃香にそれを伝えに来た。
「はい、分かりました。ありがとうございます!」
板垣千佳を演じる桃香はそのように返事をした。
本作品はpixivサイトに投稿していたもので、当時はR18指定無しでしたが問題の指摘はありませんでした。
ハーメルンさんに参加して日も浅く、分からないことだらけですのでご教示いただけると幸いです。
なお70年代特撮のイメージで書きましたけど、少なくとも同時代には問題とされたなかったのでは、というのが今のところの認識です。