星として輝きたい   作:コーカサスオオカブト

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1話 誰の子?

 

 

 

 

 

「スゥー……これは…どうしたら良いんだ…?」

 

 俺は目の前の状況に困惑して天を仰ぐ

 

「私にも訳分かんないわよ…」 

 

 つい出てしまった独り言に、友人である酒寄彩葉(さかよりいろは)赤ん坊を抱えながら返答する。…言っておくが、こいつは成人すらしていない現役高校生だ

 だからこそ俺は今困惑している

 

 

「ハァ…ひとまず冷静になって話し合おうか」

 

「さ、流石信承(しんじょう)!こんな状況でも落ち着いて───」

 

「さて、ご祝儀はいくらがいい?」

 

「全ッ然落ち着いてないじゃないッ!!」

 

 

 

 

 ──何故こんなカオスな状況になったのか、それは数分ほど前まで遡る

 

 

 

 

 

 

 

 ──────────────

 

 

 

 

 

ドンッ!

 

 

「ひえっ……初めて壁ドンされた…」

 

「ふええええええん!!」

 

「あっ…えっと、だっ大丈夫だよ〜…」

 

 私は泣き続ける赤ちゃんを抱えながら、近所迷惑にならないようにどうにかあやそうとしている

 

 

 何でこうなったの……確かバイトから帰宅したら、家の前の電柱が虹色に光ってて…そして何故かその中に赤ちゃんが入ってて、周りに見られるかもしれないからやむを得ず赤ちゃんを抱えたまま自分の部屋に…

 

 ダメだ思い返しても訳分からん

 

「ひとまず赤ちゃんを泣き止ませないと

 どうすれば…あ、子守唄!…でも私、子守唄なんて分からないわよ…」

 

 

 四苦八苦していると、ふとヤチヨのアクリルスタンドが目に入る。もうこれしか無いと思いながら「remember」を歌うと赤ちゃんが泣き止んでくれた

 ヤチヨの歌が赤ちゃんにも通用するとは…

 

「ふぅ…とりあえずこれで一安心──」

 

 

 ピンポーン

 

 

「……へ?」

 

 シンとした家の中で急に呼び鈴の音が響いた。もっ、もしかしてクレーム来ちゃった!?と思いながら慌てていると、玄関の方で聞き慣れた声が聞こえてきた

 

 

「おい彩葉、いるんだろ出てこいや」

 

(え?なんで信承がここに…この状況見られたらやばい!?)

 

 聞こえてきたのはクレームではなく友人だった。安堵しかけた次の瞬間、腕の中の赤ちゃんが目に入り再び慌ててしまう

 

 滅多に私の家なんて来ないはずなのに何で今日に限って…!

 

 

「お前俺のカバンにヤチヨのグッズ入れやがったな。俺にヤチヨを布教するなと何度も言ってんだろうが」

 

 

 私 の せ い だ っ た

 

 

 そっそうだった!?ヤチヨの話をあまりにも雑にあしらってくるから、ついやっちゃったんだ!?

 

 流石に勝手に入れるのはやり過ぎたかな…?いやでもヤチヨを推すなんて当たり前だし……そうだあいつが異端なだけだ私は悪くない…!

 

 

 ってそんなことしてる場合じゃない!

 今はとにかく赤ちゃんが居るのバレないように居留守をするしか…

 

 

「電気ついてるから居るのは分かってんだよ。居留守なんかしてねえで返事くらいしろよ」

 

 で す よ ね

そりゃ流石にバレますよね

 

「……返事がねえな

……まさか、普段から女の尊厳を捨てるような生活をしてたせいでくたばっちまったか…?」

 

 

(は?やんのかコラ…!)

 

 

 あまりの発言についブチギレそうになったが今はそれどころではないと自分を落ち着かせる

 

 こうなったら赤ちゃんを隠して家に入れないように玄関で何とかやり過ご───

 

 

「──スタープラチナ…確認しろ───は?

 

 

…?今なんか言ってた?

 

 ガチャ

 

……え?待ってなんで鍵開いたの!?ヤバい早く赤ちゃん隠さないと!

 

 

 だが私の抵抗も虚しく勢いよくドアが開かれ、この狭い部屋にはデカすぎるガタイが見えてくる

 

「おい…どういうことだ説明しやがれ…!」

 

「アッ」

 

 

 

 こうして話は冒頭へ戻る

 

 

 

 

 

 

 

 ──────────────

 

 

 

「あー…つまり、光る電柱から赤ん坊が出てきてそれを放っておけなかったと?」

 

「うん…」

 

 

 少しして落ち着いた後、俺と赤ん坊を抱えた彩葉は部屋の中で対面する形で話をしていた

 

「話を要約しても訳分かんねえな…」

 

「だよね…」

 

「それなら警察に届け出るのは無理だな…流石に荒唐無稽すぎる。ひとまず俺らでこいつの面倒を──」

 

「──ちょ、ちょっと待って!?」

 

「あ?なんだよ」

 

 

 今後の方針を話そうとすると驚いた様子の彩葉に止められた。なんだぁ?まさか1人で面倒見るとか無茶言うつもりじゃあねえだろうな

 

「その…信じてくれるの…?」

 

「……」

 

 その言葉で、確かに俺は何故こんな話をすんなり受け入れているのだろうと思った

 

 俺自身がスタンド使い(非現実的な存在)だからかと考えたが中々しっくりこない

 

「お前はこんな嘘をつくような奴じゃねえだろ」

 

 だがその答えは、思っていたよりも簡単に自分の口から出ていた

 

 

「───そっか………ありがと」

 

 

 

 

 

 

 

「それより、まずはその赤ん坊をどうするかだろ?さっきも言ったが警察は無理だしな」

 

 赤ん坊を布団に寝かせ、改めてその姿を見る。俺らの悩みも知らねえで随分と穏やかに寝てるな

 

「私がこの子の面倒を見るよ。拾ったのは私だから、アンタにまで迷惑をかけられない」

 

「あー…懸念点は当たってたかぁ…」

 

 

 嫌な方向に想定内で俺はまた頭を抱える。それを見た彩葉は首を傾げている

 

「懸念点って何よ?」

 

「お前が予想通りに頑固だったってことだよ……良いか、困った時は俺とか周りを頼れ」

 

「でもこれは私の責任だから」

 

「俺が言ってるのが伝わらんのかボケがよぉ。せめて俺ら2人でどうにかするんだよ」

 

「だからっ!アンタに迷惑かけられないの!」

 

「迷惑だと思ってねえよ!人間は集団行動だといつも言ってんだろうが!」

 

「私にも譲れないもんがあるのよ!!」

 

 ・

 

 ・

 

 ・

 

 そのまま話に進展はなく平行線が続いていた

 

 

「ハァ…分かったよ俺が諦めれば良いんだろ」

 

「はあ…はぁ…分かれば良いのよ…」

 

 ただでさえ弱っているのに騒いだせいで彩葉は少し息切れをしていた

 

「…てか、アンタにしては妙に素直ね」

 

「ああ、ここまで頑固だと俺だって諦めちまうさ───話し合いをな

 

「───んえ?」

 

 

 俺は実力行使に移るために立ち上がって近づいていく。彩葉はそれに抵抗して取っ組み合いの形になってしまう

 

「ちょおっ!?何すんのよ!?」

 

「もうお前相手に言葉で説得しても無駄だからな。こうなったら赤ん坊もお前も家に連れてく」

 

「何でそうなるのよ!?」

 

「抵抗するのも無駄だぜ。今の限界彩葉(げんかいろは)の状態で熊を倒した俺に勝てると思わないことだな」

 

「待って熊に勝ったって何!?──って誰が限界彩葉だよっ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──────────────

 

 

 

 勝てなかったよ…190超えの筋肉には……筋肉に覆い被されかけたせいで、体格も相まって喰われるかと思いました…

 

 

 結局この筋肉に負けてしまった私は、赤ちゃんを抱えて信承の家へ向かうことになった

 

 

「はぁ…なんでこんなことに…」

 

「そう言う割には素直についてくるじゃねえか」

 

「断るとアンタが私を街中で抱えていくつもりだったから、ついてくしかないじゃない…」

 

「ふっ、やっぱりなぁ話し合いよりも脅したほうが手っ取り早いんだよ」

 

「発想がヤンキーすぎる…!」

 

「タメになったろ?」

 

「ならないわよっ!?」 

 

「おっ、着いたぞ」

 

 ぐぬぬ…無視しおって──────え?

 

 

 それを目にした途端、言葉を失った

 

 こいつが金持ちなのは知っていたからでかい家に住んでいるんだろうなとは予想していた

 

 だがまさか、こんな豪邸だとは思わなかった

 

 

「門開けるからちょっと待ってろよー」

 

 唖然としている私を置いて、平然とした様子で私の倍以上はありそうな門に向かっていく

 

 

「よし、ほら入っていいぞ」

 

「アッハイ」

 

 

 

 

 

 

 

「ほっ本日はお招きいただきありがとうございますっ!?」

 

「いや別にパーティー開いてねえからな。どんな緊張の仕方だよ……なんか、借りてきた猫みてえだな」

 

 うっさいわい!!

 

 

 私は今、家にお邪魔させてもらってリビングの高そうなソファに恐る恐る座っている。わぁ…ぁ…!周りに高そうなものがいっぱいある…!

 

 ちなみに赤ちゃんは最初に泣きまくってた時と違い腕の中でスヤスヤと眠っている。私の気も知らずに気楽なものね……

 

 

「…そんなに落ち着かねえなら和室の方に移動するか?」

 

「えっ、あるの!?」

 

「母さんが家建てるって時に"和室も作りたーい"って言ったからな」

 

「和室でお願いしますっ!!」

 

「お、おお……今までで1番気が入った返事来たな…」

 

 

 さっさとソファから立ち上がって和室に案内する信承の背を追う。そこでふと、あるものが目に入る

 

「おお…お金持ちの定番、高そうな壺だ…!」

 

「ふっ、まさしくその通りに父さんが"お金持ちといえばこれだ"と言って買ったものだな」

 

「…ち、ちなみにおいくらで…?」

 

「あー確か、1680万と言ってたな」

 

「ヒェッ…」

 

 お金持ちって恐ろしい…!これだけで食費どころか何年分の生活費になるんだろう…

 

 

 こんなことがあって、改めて住んでる世界が違うなと実感した。ちょっとしたおふざけで、さん付けをしてみたけど速攻でやめた

 だってすごい悲しい顔してたんだもん…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──────────────

 

 

 和室に着いて赤ん坊を布団に寝かせて、彩葉は畳の上で溶けていた。だから猫かよ……

 

 

「おいこら、畳で寝るようとするな。どんだけあそこ落ち着かなかったんだよ」

 

「…それはほら、私って家賃3万に住んでるから……なんて言うか高いものが肌に合わない…」

 

「装飾品はあまり多くないはずなんだがな…」

 

「…あれで?」

 

「ああ」

 

「怖ぁ…」

 

 何か怖がられたんだが

…てか改めて考えると年頃の女があんなアパートに住むってどうなんだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それぞれ自分たちの布団を敷きその上でだらけていると、彩葉がこちらに顔を向け口を開いた

 

 

「そういえば、アンタの親って今どこにいるの?許可とった方が良いと思うんだけど」

 

「…いや、既に2人とも亡くなっている」

 

「あっ……ごめん……私が考えなしだった…」

 

「気にするな。もう踏ん切りはついている」

 

 俺がそう言っても彩葉は俯いたままだ

 …言わない方が良かったか?いやでもなぁ、こういう系の話は絶対後が面倒になるしな…

 

 

 少しの間静寂が続いた。だが、このまま無言で何もしないわけにもいかず無理やり話題を切り替える

 

 

「今日はもう疲れただろ。風呂入ってこい、場所は部屋から出て左の方にある。着替えは持ってきただろ?」

 

「…うん。あっ、でも赤ちゃんが」

 

「俺が見とくから気にすんな。ゆっくり休め」

 

「……ありがと」

 

 

 部屋を出る彩葉の背を見送り少しスマホを操作する

 

「とりあえず、しばらく配信を中止するとだけ通知しておくか」

 

「……あう〜」

 

「ん?起きちまったか。いや、逆によく今までおとなしかったな」

 

 赤ん坊へ近づいて服を脱がし、準備を始める

 

「さっき調べたが、おしめはレジ袋とタオルで代用できるらしい。応急処置だが今日はこれで…いや、先に風呂入らせるか」

 

 家に風呂が二つあるのは助かった。備えあれば憂いなしってのは本当だな

 

 さっさと風呂に入るために着替えなどをスタープラチナに準備させる。そしてその様子を、赤ん坊は興味深そうに目で追っている

 

 

………()()()()()()()だと?

 

「…まさか」

 

 スタープラチナを右へ移動させる。赤ん坊の目も右へ動く

 

 左へ移動させる。赤ん坊の目も左へ動く

 

 

 間違いなく赤ん坊はスタープラチナが見えている

 

 

「あいつから話を聞いた時はもしかしたらと思ったが…やはり予想は的中していたか」

 

 寝転んだままでいる赤ん坊を静かに見つめる

 

「今まで俺以外のスタンド使いは確認できなかった。だが、最初の邂逅がこんな赤ん坊になるとはな」

 

 

 

 

「お前がそれをどう扱うか──俺が見定めてやるよ

 

 

 

 

 

To Be Continued




・居柱 信承(いばしら しんじょう)
絶賛勘違い中
この世界にはスタンド使いはいないので引かれ合うことはない
「お金に怯える彩葉が見たい」という作者の要望でなんかお金持ち設定になった

ちなみにヤチヨを布教されるようになった原因は

「いやぁやっぱりヤチヨは神だわぁ…アンタもライブ見れば良いのに」

「いや俺は(ライブ自体には)興味ねえや」

「は?」

「……まずったかもしれん」

↑これ
残念ながら信承くん言葉足らずだったね


・酒寄 彩葉
みなさんご存知超かぐや姫の超担当
作者により怯えた姿を見せることになった可愛いね

なお、ある程度時間が経てば慣れる模様


・電柱から出てきた赤ちゃん
空飛ぶ一張羅のマッチョに遊んでもらっている
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