「フゥ〜!た〜のしいっ!」
「あまり離れんなよ、迷子になるぞ」
俺と少女の2人は今、あのパンケーキもどきを食い終えて適当に街中を歩き回っていた
まだ太陽が見えている時間帯で日差しがかなり眩しい。そして平日だというのに周りにも歩いている人はけっこういる
そんな中で少女は目を輝かせながら、あちらこちらへ目を向けている。手を繋いでいないと飛んでいきそうな勢いだ
「いちごアイス美味え!」
「はしゃぎすぎて落とすなよ」
服屋やゲーセンへ行きひと通り遊び終えて、アイスクリームを食いながら帰路についていた
俺が食っているのはチョコだ
「最近暑くなってきたから冷てえのは助かるな。ってお前もう食ったのか」
「ジ〜…」
「あー、そういうことか。ほらよ、食っていいぞ」
「わ〜い!ありがと〜!」
元気良く感謝の言葉を口にして、俺のチョコアイスを食い始める
うーむ、まさに純粋無垢。できればこのまま育ってほしいもんだな
「美味しかった!次何食べよっかな〜」
「いや食うの早えよ。今日はそれで終わりにしとけ、夕飯食えなくなるぞ」
「あーそっか…」
まだまだ遊び足りないのか、かぐやは残念そうに返事をする
「じゃあ今日はこのまま帰るの?」
「そうだな、もう学校も終わってる頃だろうし彩葉も帰ってくる時間だ」
「料理喜んでくれるかな〜。めっちゃ頑張ったから信承も楽しみにしててね!」
「フッ…楽しみにしておく」
「ってちょうど彩葉いんじゃん!」
「そうか。…………ん?」
少女の方を見てみれば隣からいなくなっていた。既に走ってどこかへ向かっており、その先にはカフェで彩葉達が座っていた
「……………やべぇ」
──────────────
「彩葉ノートで赤点回避記念〜」
「こちらがお礼の品で〜す。ご査収くださ〜い」
「あっ、ありがとう!」
友人である
そしてテーブルの上には三段重ねのふわふわなパンケーキが置かれている
うわぁ美味しそう…!しかもこれが奢りらしいからありがたい…!
え?信承からの奢りはどうなのかって?
いや、この2人からは勉強のお礼だから納得できるけど………あいつに関しては何もしてないのに金出そうとしてくるから恐ろしい…
変に思考が傾いてきたのを隅に寄せて、今は目の前にあるパンケーキを食べ始める
「いただきまー…」
「シャッ!」
「……え?」
「うんま〜〜!!!」
パンケーキにフォークを刺そうとした瞬間、なぜか一瞬で一段が消え去った。驚いて前方を見れば、家にいるはずの少女がいた
それは私のパンケーキなんだが??
「よっ!彩葉!」
「──"よっ"じゃあねえよ。俺から離れるなと言っただろうが」
呆然としていると、信承もやってきて少女の頭を掴んだ
「あっ信承!これめっちゃ美味しいんだけどなんて名前!?」
「おいおい…見事に反省の色が見えねえな。…まあいいか、それは昼のやつと同じパンケーキだ」
「え"っこれが!?彩葉のと全然違えじゃん!」
2人は驚く私に対してお構いなしに話し込んでいる
いや私のパンケーキと比べないでよ恥ずかしいんだから!
「えー可愛い!彩葉と信承君の友達?」
「ズル休みの信承くんもいんじゃ〜ん!」
「…待て、何でバレてやがる」
「先生が"あいつが体調不良?ないない"だってさ」
「なんだその妙な信頼は…」
「あ、彩葉の服着てるじゃん可愛い〜」
「もしかして信承くんが選んだの?」
「俺は知らん、勝手に着てるだけだ」
「やっぱり信承君が選んだわけじゃないんだね」
「まあ微妙にセンスダサいからね〜」
「……」
2人が信承と談笑している間に、私はなんとかこの場を乗り切る言い訳を考える。あっコラ、私の食わないでよ
「もー、こんなに可愛い子いるなら紹介してよ彩葉」
「ねーねー、どこから来た子なの?」
「ん?えっとねえ月──」
「じ!!築地から来た私のいとこなの!!」
あっぶな!?ナイス私ファインプレー!!
考える暇もなく少女が早速やらかしだした。なんとかなったものの危ないところだった
「へ〜築地か〜!美味しいお鮨屋教えて〜?」
「いとこだったんだ。お名前は?」
「な、名前は……かぐやって名前!」
「可愛いしピッタリ〜!」
「かぐや?……かぐやかぁ〜!」
すぐに2度目のピンチになったが、変なことを言うより先に名前を考えて口にする。さっきから凄いな私、これがゾーンか?
いや、まずはこれ以上ボロを出す前に早く帰らねば
「ごめん先に帰るね!埋め合わせはまた今度するから!ほらあんたらぼーっとしてないで行くわよ!」
名前がそんなに嬉しかったのかまだ照れているかぐやと、なんか立ち尽くしている信承の手を引いて速攻で店を出る
「正気!?なんで外に出てるのよ!?家にいてって言ったでしょ!!」
「だってつまんないじゃん、信承も出ていいって言ってたも〜ん」
店を出てある程度走った後、かぐやに詰め寄って追及するも軽く流される
「信承!何で許可なんか出して……どうしたの?」
「……なあ、俺のセンスってダサかったのか?」
「え、うん」
「……そう…か」
あ、めっちゃショック受けちゃってる……まあいいや勝手なことしたやつはほっとこう
そう思ってもう一度かぐやに視線を向けると、何故かよく見覚えのある物を持っていた
「何でスマコン持ってるのよ」
「これ?持ってきたんだけど、遊びに夢中で忘れてたんだよね〜」
「そうじゃなくて、それ信承の?」
「違うよ?信承が買ってくれたの!」
「………はあ!?」
何を言っているんだこいつは…6桁もする物を買ってもらった…?
真相を問いただすべく項垂れている信承に掴みかかった
「知らねえよ最近の流行りなんてよォ……どうせ俺は昔を生きてる男だ…」
「おーい戻ってこーい!!あんたこいつにスマコン買ったの!?」
「ハッ…!……………スマコン?それなら頼まれたから買っておいたが」
「何でよ!?」
「いやだから頼まれたからだと」
信承に詰め寄っても全然話が進まなかった。そんな軽い感覚で買わないでほしい
「はあ…信じられない…!なんでそんな大金をポンポンと…!」
「怒らないで彩葉ぁ……お、お金なら数字書き換えたら増えるけど…や、やりゅ…?」
ため息をついているとかぐやがとんでもないことを言い出した
「───絶対にやっちゃダメッ!!」
「そういやお前ら家に帰るんだったか」
家に着いてそうそうに信承が話を切り出してきた
「まあそうね。荷物はもうまとめてあるし」
「え〜!?やだよ3人で一緒にいたいよ〜!」
「すまんなかぐや。俺だってそう思っているが………あいつに逆らったら後が怖いんだ…」
「おい」
「ほらそうだろう?」
ほらじゃねえよあんたが煽ってきたんでしょうが
そう思って信承を睨んでいると、何かを思い出したのかポケットから何かを取り出した
「寂しいのも分かるしこれやるよ」
信承はそう言って、キーホルダーが多く付いた鍵をかぐやに手渡した。危機感がないのかこいつは…なんてものを渡してるんだ
「ん〜?なんこれ?」
「合鍵だ。暇になったら俺の家に遊びに来い」
「えっ良いの!?わ〜いやった〜〜!!」
「流石に不用心なんじゃない?今朝だってかぐや1人じゃ心配だって言ってたじゃん」
「それについては問題ねえ。家出る前に何がダメかちゃんと教えておいたからな」
「…まあそもそも、その合鍵はお前に渡す予定だった物だが」
「いや要らんわ」
そんなことを話していると、鍵で遊んでいたかぐやが大声を出して構って欲しそうにしてきた
「ねーねー!そんなとこで話してないで早くリビング行こうよ〜!」
「そういや飯だったな。ほら早く手を洗うぞー」
「飯?今日はあんたが作ったの?」
かぐやを連れて洗面所へ向かう信承に声をかける。当分買ってきた物だけだったのに気分でも変わったのだろうか
「いや、今日はかぐやが作った」
「え、1人で?大丈夫だったの?」
「ああ俺もそう思って手伝おうとしたんだが…」
「信承ね〜量も切り方も雑で邪魔だったんだよ〜」
「……こういうわけだ」
「あー…ドンマイ」
そんなこんなありつつ、かぐやが料理を持ってきてテーブルに並べられる
「ほんとは出来立てが良かったんだけどね〜でも温め直したやつもちゃんと美味しいからね!」
「わあ…美味しそう」
並べられた料理はどれも手が込んでいて私が普段食べているものとだいぶ差があった
「よ〜しさっそく食べよっ!」
「まあ待て、食う前にすることがあるだろ?」
「あっ、そっか!」
信承の言葉でかぐやがフォークを置いて手を合わせ出した。…あぁそういうこと
私と信承もかぐやと同じように手を合わせる
「それじゃあ皆んなで、いただきま〜す!」
「いただきます」
「……いただき、ます」
かぐやの元気な声の後、私たちも食べ始める
いただきますと言うなんて久しぶりでぎこちなくなったが、同時に懐かしくも思った
To Be Continued