前回のあらすじ
シャペウは湯治へ
ゴルシは皐月賞を獲り
ジャスタウェイはコナンを見ていた。
ドガァン! と栗東の厩舎の一角で激しい音が響く。
『なにやってんだジャスたん!』
『だって出番ないんだもん!』
『うるせえ! 皐月賞馬を舐めるな! 564の必殺技ゴルシバスター!!!』
『ぎゃあ!!(※ちなみに僕もNHKマイルCに向けて一応調整中だよ!)』
相変わらずゴールドシップとジャスタウェイが、スタッフの胃を痛めつけるようなバカをやっているその裏で。
須海厩舎の奥にある調教師室では、シャペウのこれからについてのシリアスな話し合いが行われていた。
「和多、福島の『馬の温泉』から連絡が来た。シャペウの患部、綺麗に骨が引っ付いたそうだ。すぐに軽いキャンターから調教を再開できる」
須海調教師の言葉に、主戦の和多騎手はホッと胸をな下ろしながらも、鋭い目で手元のレース日程表を見つめた。
「良かった……。でも先生、馬のことを思うなら、いっその事このまま夏までじっくり放牧するって手もあるんじゃないですか?」
「いや、あまり休み過ぎると実戦の勘を無くす。それに、出来るだけ早く復帰させてやりたいんだ。……いや、走らせなければならん」
「怪我の再発が怖いですが……馬のことを考えると、ですか」
和多の言う「馬のことを考える」とは、単に身体の健康だけを指すのではない。
中央競馬における競走馬の年間維持費は、最初の購入代金を除いても数百万円に上る。
年間平均収入を考えれば、大半の馬が赤字のまま現役を終えるのが冷酷な現実だ。純粋な投資やビジネスとして黒字化を達成できるのは、ほんの一握りの活躍馬のみ。
走って賞金を稼げない馬は、維持費を払えず引退という道を進むしかない。そして、結果を出せなかった馬の行く末は――。
「今の競馬は、大手が世界中から優秀な血統を湯水のように集めてくる時代だ。引退したからといって、牝馬がみんな繁殖に上がって大事に扱われるとは限らない」
須海は苦渋に満ちた表情で、窓の外の厩舎を見つめた。
「シャペウの故郷である水戸牧場は、小さな生産牧場だ。近年、日高の個人牧場が受けている経済的打撃は相当なものがある。次々と閉鎖に追い込まれる中、水戸牧場も例外じゃない」
「……実際、去年には、あの歴史ある名門・メジロ牧場すら経営難で解散してしまいましたからね」
和多の言葉に、部屋の空気がいっそう重くなる。
「そうだ。このまま実績のないまま引退すれば、シャペウの引き取り手はなくなる。故郷の牧場を救い、この子の命を未来へ繋ぐためにも、ここで立ち止まるわけにはいかんのだ」
「で?どこから走らせるべきなんだ?」
「話が堂々巡りしてきたな」
「オークスは?」
「少なくとも五月までは様子を見たい。フローラステークス、スイートピーステークスともに四月だ」
「だったらダービーを狙ってみないか」
須海陣営が復帰戦に選んだのは五月五日プリンシパルステークスだった。
1996年の番組改編に伴い、それまで日本ダービーへのトライアル競走の役割を担っていたNHK杯が廃止され、GI競走NHKマイルカップが新設された。
これに伴い、新たなダービートライアルとして東京競馬場・芝2200mのオープン特別競走プリンシパルステークスが新設された(現2000m)。
2010年にはローテーションの多様化を理由として優先出走権の付与が1着のみに変更された。
「ダービーに参加するには勝つしかないぞ」
「……出来んで」
その後すぐに、シャペウは福島の温泉から住み慣れた栗東トレセンへと戻ってきた。
金色のたてがみを持った美しきサラブレッドの帰還に、寂しがっていた(?)ゴールドシップは大興奮のあまり、馬房の前で逆立ちをして出迎えた。
『りえかお(おかえり)!』
シャペウはそんな白い変人を完全に無視し、一目散に大好きな和多騎手の姿を見つけて駆け寄っていった。
『リュージ、ただいま! バナナちょうだい!』
「おかえり、シャペウ」
愛馬との感動の再会――となるはずだった。
しかしシャペウは、和多が自分ではなく、うっすらとダートの砂を馬体にまとった別の渋い黒鹿毛の馬に跨っていることに気づいた瞬間、一転して激怒した。耳を極限まで後ろに寝かせ、怒りの形相で威嚇を始める。
『ちょっと! なんでリュージが私以外の馬に乗ってるわけ!』
和多が5月頭の地方交流GⅠ・かしわ記念に向けて調教中だったその馬――栗東の頼れる重鎮ワンダーアキュートは、若い女の子の凄まじい剣幕に、困ったようにパチパチと瞬きをした。
『まあまあ、お嬢ちゃん。リュージ君は今、僕の最終追い切りの真っ最中なんじゃよ。そんなに怒らんといてな』
ベテランらしい落ち着きでシャペウを優しく嗜めるアキュートおじいちゃんだったが、独占欲の塊である快速娘の嫉妬の炎に油を注ぐ結果にしかならなかった。
和多は手綱を握りながら「あちゃあ、シャペウの奴、完全にへそ曲げてもうた……後でバナナ何本貢げば許してくれるやろか」と、嬉しい悲鳴を上げながら冷や汗をかくのだった。
『シャペウよ、ダービーに勝つには魂の開放が必要だ』
皐月賞馬ゴルシ。イキっている。
『聖ゴルシ領域』
栗東に展開された謎の領域。
『納豆ー!!納豆ー!!』
2010年ダービー馬エイシンフラッシュ
『早く納豆をかけなきゃダメなんだー!!』
馬も納豆を食べる。
マチカネフクキタルが蹄割れ対策に食べていた。
『よくある よくある』
『うおー!!燕麦の仇ー!!』
『葦毛スキーの呼吸 壱の型』
なぜか始まるジャスタウェイVSエイシンフラッシュ
『さぁみんな!お祭りが始まるよ ゴルシ音頭』
『夏ですねー』
『YES』
ゴルシ音頭
ゴルゴルゴルゴルシュシュ
夏を丸かじり もうすぐ有馬だ
『夏なのに!』
立ち上がれ 立ち上がれ
ゲートの中で立ち上がれ
るーるるる るーるるる
ドバイだよ ドバイワールドカップ
『今度は国境超えた!』
ちゅるちゅる
ダービー超えたら有馬記念
『なんで』
来いよ 一緒に来いよ
ダービーと有馬ダービーと有馬
ダービーと有馬ダービーと有馬
『ってやってられっか!! だってダービーと有馬が一緒に来ないんだもん』
『こっちをみろ』
貴婦人 ジェンティルドンナ
『焼きそば屋よ』
『わーい焼きそばだ!』
『お前が肉じゃー!!』
『ギャー!!』
石田騎手 オークス前に騎乗停止
『こっちをみろ 池丸落としだ』
『来いや!!来いや!!』
『分かった!!必殺のオルフェパンチ!!』
三冠馬オルフェーヴル
『あーれー!!』
『警部殿 警部殿』
『なんだ』
『ピロッチ』
『ピロッチ』
『ピロッチ』
『ピロピロピロピロピロピロピロピロ……』
『ガタポン』
「誰が馬達を止めろ!!」
その後、シャペウはプリンシパルステークスを勝ちダービーの切符を手に入れた。
後半に意味はない