私の怖いもの語   作:アポロ09

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人の顔が意図しないところにあったらギョッとします


木目

皆さんの家の天井というのはどうなっているのでしょうか?

 

今回私がお話しする怖い話は天井についてなのですが、最近の家の天井は白いらしく皆さんには馴染みのない話かもしれません。ですが、それなりに有名な話なので何卒お付き合いください。

 

「天井」の「怖い話」といえばコレ、という代名詞といえば木目が顔に見えるという話かと思います。この木目が顔に見えるという現象は名前がついております。皆さんも聞いたことがあるかもしれません。「パレイドリア現象」というやつです。起こる理由も解明されていまして、要約しますと、人間の脳は人の顔を見つけることを優先するように進化したので顔っぽいものを見つけたら自分の記憶で不足した情報を補完して顔に見立てるということです。

 

しかし、こうも謎が解明されていては怖いものも怖く無くなってしまいますね。人は理解できないものに恐れを抱く。でも、知ってしまったら刺激が足らない。そう思いませんか?そこで今回はこう考えてみるのです。「木目が顔に見える」のではなく「顔が木目に見える」のならと。今回の話はそんなお話です。

 

東野家は、東野明美(あけみ)と東野(わたる)の夫婦と今年で六歳になる東野真治(まさはる)の三人家族だ。彼らは築八十年の二階建て木造住宅で、真っ白な壁に温かみのある木目調の天井のある家に住んでいる。

 

ある日、真治は今年から小学校に入るということで子供部屋を使わせてもらえるようになった。部屋には彼の大好きなぬいぐるみたちと勉強机、そして一人で寝る用のベッドがある。

 

「真治、小学校に入ったら一人で寝るんだぞ」

 

とお父さんに言われたのだ。真治は一人で寝られるようにとその日の夜から一人で寝る練習を始めた。真治がベットの上に仰向けで寝ようとすると天井のある部分が目に止まった。木目が顔のように見えるのだ。しわくちゃな老人の顔だ。真治は思わずギョッとして布団の中に潜り込んだ。すぐに我に帰り、そんなものあるはずないと恐る恐る布団の中から顔を出してみると今度はただの木目にしか見えなかった。真治はホッとしてそのまま眠った。

 

その日、真治は変な夢を見た。しかし、あまりに変な夢で起きた時には忘れていた。

 

次の日、朝起きて顔を洗って真治はお母さんといっしょにお隣のおばあちゃんの家へ行った。お父さんもお母さんも今日は仕事があるのでおばあちゃんの家に居させてもらうのだ。真治はおばあちゃんの怖い話が大好きだ。今日もおばあちゃんは真治に怖い話を聞かせてくれた。

 

「いいかい、真治。私たちの家の後ろには大きな森があるだろう。そこの木は何があっても切ってはいけないよ。あそこの木にはこの町のご先祖様たちの魂が宿ってるんだ。まあ、家みたいなものさ。真治だって家が勝手に壊されたら怒るだろう?」

「もちろん! 家がなくなったら静かに眠る場所がなくなっちゃうよ」

「そうだろう? それと同じさ。木を切られたご先祖様は怒り狂って何をしでかすかわからん。祟りをしたり呪ったり、少なくともいいことが怒るはずはないね。もし間違って切ってしまって、それを何かに使ってしまったらね、おまじないを唱えるんだよ。『イナシトコナンコウモ』ってね」

「おばあちゃん、それ逆から呼んだら『もうこんなことしない』になるよ」

「そうだよ。もうしませんからって許してもらうのが一番さ。そして何か別の家を渡してあげるんだよ。岩でも人形でもいい。何か入れるものならなんでもいいんだ。」

「へえ〜」

 

夕方になり、お母さんが仕事から帰ってきたので、真治は家に帰った。お父さんが帰ってきて夕食を食べている時、真治はおばあちゃんの話を二人に話した。

 

「真治、そんな怖い話聞いて一人で寝れるのか〜?」

「寝れるに決まってるじゃん。もう小学生になるんだからバカにしないでよ」

「そうだな。悪い悪い」

「二人とも、喋ってないでさっさと食べちゃって。もうすぐ寝る時間よ」

「「は〜い」」

 

夕食を食べ終わって、真治は自分の部屋に戻った。ベッドの上に仰向けになると、またあの顔が現れた。昨日のように布団に潜ろうとすると、

 

「かわいいぼうやや、こっちを見なさい」

 

とその木目は優しい声をかけてきた。直後、真治は金縛りに遭った。全く身動きがとれない状況で、木目は話を続ける。

 

「我の安眠を阻害したこと万死に値する。この恨みはらさでおくべきか」

 

さっきとは打って変わって強い憎悪を持った声で呼びかけてきた。真治は怖くてちょっとチビってしまった。金縛りに遭っているからか、声がダブって聞こえるのがまた、真治の恐怖を仰いだ。真治は今日のおばあちゃんの話を思い出した。きっとこの家の天井にはその木が使われていて、それをご先祖様たちは怒っているのだと直感した。真治はおまじないを唱えようとしたが、口が動かない。

 

「ふん、謝りも無しか。ならばやはり、この恨みお前にはらしてしまおうか!」

 

すると突然、金縛りがふっと解けた。そして真治は開口一番に、

 

「イナシトコナンコウモ!」

 

と唱えた。すると、天井から顔が消えていた。真治は緊張の糸が途切れたか、バタッと倒れるようにして眠ってしまった。

 

その日もまた夢を見た。森の中に半透明になっている老人が二人座っているのだ。そして、その老人二人が真治の方に振り向くと、般若の如き形相で見ているのであった。

 

次の日、朝起きてすぐにお父さんとお母さんに昨日の夜あったことを話した。そして隣のおばあちゃんにも協力してもらってご先祖様の新しい家として大きな岩を家に持ち帰った。その岩を真治の部屋に持っていき、

 

「これが新しいお家です。どうぞごゆっくりお眠りください」

 

と言った。すると、今度は優しい声で、

 

「よくやった。それでこそ我らの子孫だ。今回は許そう」

 

と言った。午後はその岩を神社に運んで、これからはそこに置いておいてもらうことになった。これで安心だとその夜はご馳走を食べ、真治はベッドに仰向けになった。もう目の前には顔は出なかった。しかし、どこからか声がする。恨みがギュッと詰まった言葉がどこかからするのだ。よ〜く耳を凝らしてみると、今度は大きな声で、

 

「なぜ儂には用意せんかった! もう我慢できん! 謝って新しい家を用意するならまだしも、謝るだけとは! おい小僧、体を新たな家として貰い受けるぞ。よいな?」

 

と言っていた。声はダブっていたのではなく、二人分聞こえていたのだ。照明に隠れていたのだろう。もう一つの木目には気づけなかったのだ。よくよく思い出してみれば確かに口調からして別人のようにも聞こえた。真治は声のする方に向かって手を伸ばした。決して真治の意思ではない。その老人が操っているのだ。

 

「小僧よ、まずはお前の意識から食ってやる。儂の代わりに何十年とこの木に宿るのだ」

 

そう言って老人は真治の意識を食べ始めた。真治は意識の遠のく中、何を思ったのだろうか。それは誰にもわからないだろう。

 

どうでしたか?真治くんは運悪くそのご先祖様の木を使った家に住んでしまい、たまたまその怒りを買ってしまったのでしょう。普段の天井では木目だったところに、夜はその木に宿るご先祖様の顔が浮き出ていたようですね。

 

この話は皆さんの身の回りでも起きるのではないでしょうか。今回は木目でしたが、パレイドリア現象は必ずしも木目だけで起こるわけではありません。シミでも起きるし、物が並んでいるだけでも起こりうる現象です。顔に見えるだけならいいですが、本物の顔かもしれませんので充分ご注意ください。

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