ウマ娘ONE PIECEダービー~黄金の浮沈船は大海原を駆ける~   作:武藤 桜

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第十話「ウイスキーピーク編――歓迎の町と、砂に隠された陰謀」

1.偉大なる航路、最初の航海

双子岬を出航したゴーイングメリー号は、偉大なる航路の海を進んでいた。

 

……といっても、船上は平穏とは程遠かった。

 

「右だ! いや、左だ! いやいや、やっぱり真ん中だあああ!」

 

「ウソップ! あんた、さっきから何を叫んでるのよ!」

 

「海が変なんだよ! さっきまで追い風だったのに、急に横から風が吹いてきたんだぞ!」

 

「だから偉大なる航路は普通の海じゃないって、クロッカスさんも言ってたでしょうが!」

 

ナミは海図とログポースを交互に確認しながら、必死に舵の指示を飛ばしていた。

 

双子岬でクロッカスから教わったとおり、偉大なる航路では島々の磁気を記録したログポースが航海の道標となる。普通のコンパスはあてにならず、天候も海流も予測が難しい。

 

つまり、ナミの航海士としての腕が試される海なのだ。

 

「ふむ……なるほど。つまり、この海は常に我々に挑戦状を叩きつけてくるということだな!」

 

ゴールドシップが船首に立ち、なぜか腕を組んでいた。

 

「違うわよ。自然現象よ」

 

「自然が挑戦状を叩きつけてくる! 受けて立とうじゃねえか!」

 

「だから、あんたは自然と戦わなくていいの!」

 

「ゴルシちゃん、海に勝つ!」

 

「海に勝つとか負けるとかいう話じゃないのよ!」

 

その隣では、ルフィが船縁から身を乗り出して海を眺めていた。

 

「なあ、ナミ! 次の島はまだか?」

 

「ログポースが指す方向に進んでるわよ。少し黙ってて!」

 

「腹減った!」

 

「それは今の話と関係ない!」

 

「ナミ、ルフィに何か食べさせた方がいいんじゃないか?」

 

オグリが真剣に提案した。

 

「オグリまで何を言ってるのよ!」

 

「空腹では集中力が落ちる。私も少し食べたい」

 

「あなたは集中力が落ちる前に食料を食べ尽くすでしょうが!」

 

「……否定はできない」

 

オグリが素直に頷いた。

 

「おい、オグリ! おれにもくれ!」

 

「分かった。食料庫から――」

 

「二人とも待ちなさい! 食料は計画的に使うの!」

 

ナミの怒号が海に響く。

 

一方、船尾ではゾロとタマモクロスが、それぞれ刀の手入れをしていた。

 

ミホークとの戦いから、二人の胸には共通する思いが刻まれている。

 

圧倒的な実力差。

 

自分たちの未熟さ。

 

そして、いつか必ず追いつくという誓い。

 

「……妙な海やな」

 

タマモが海面を眺めた。

 

「さっきまであっちにあった雲が、もう反対側に流れとる」

 

「気にするな。進むしかねえ」

 

ゾロは刀を鞘に納めた。

 

「それに、どんな海だろうと、俺が目指す場所は変わらねえ」

 

「世界一の大剣豪、か」

 

「ああ」

 

タマモは自分の刀を見下ろした。

 

「ウチも、ミホークに負けたままでは終われへん。あの男に、次は一太刀でも届かせたる」

 

「その前に傷を治せ。無茶をすれば、また同じことになる」

 

「それ、あんたにも言えることやろ!」

 

「俺は無茶なんかしてねえ」

 

「どの口が言うとんねん!」

 

二人の言い合いに、テイオーが笑った。

 

「ゾロとタマモって、なんだかんだ息ぴったりだよね!」

 

「「どこがや!」」

 

見事に声が重なる。

 

「ほら!」

 

「「だから、どこがや!」」

 

「アハハハハ!」

 

ゴールドシップが腹を抱えて笑う。

 

「いいねえ! 偉大なる航路でも、ツッコミの切れ味は絶好調だ!」

 

そんな騒がしい航海の最中、ナミのログポースが示す先に、島影が見えてきた。

 

「……あれね!」

 

ナミが望遠鏡を覗き込む。

 

「島よ! ようやく最初の島に着くわ!」

 

「おおおおお!」

 

ルフィが飛び上がる。

 

「島だ! 飯だ! 冒険だ!」

 

「最初に出てくる言葉が飯なのか……」

 

サンジが呆れた。

 

だが、彼自身も島影を見つめていた。

 

偉大なる航路に入ってから初めての島。

 

何が待っているのか、まだ誰にも分からない。

 

「よし! みんな、上陸準備だ!」

 

ルフィが叫ぶ。

 

「ゴルシちゃん、先行するぜ!」

 

「待ちなさい! まだ港の場所も確認してないでしょうが!」

 

ナミの声を背に、メリー号は島へと近づいていった。

 

2.ウイスキーピーク――海賊を歓迎する町

島に近づくにつれ、町の全景が見えてきた。

 

白い建物が並び、町のあちこちにサボテンのような奇妙な岩山がそびえている。

 

港には大勢の人々が集まっていた。

 

「おーい! 海賊さんたち!」

 

「ようこそ、ウイスキーピークへ!」

 

「偉大なる航路の航海、お疲れさま!」

 

住民たちは笑顔で手を振っている。

 

「……なんや、えらい歓迎ぶりやな」

 

タマモが目を丸くした。

 

「普通、海賊って嫌われるもんじゃないのか?」

 

ウソップが首を傾げる。

 

「ま、まあ、あたしたちの魅力が伝わったんじゃない?」

 

テイオーが胸を張る。

 

「違うと思うけどなあ」

 

フェスタは、町の様子を注意深く眺めていた。

 

「歓迎がずいぶん派手だ。まるで、最初からあたしたちが来ると分かっていたみたいだね」

 

「気のせいじゃない?」

 

ナミはそう言ったものの、どこか引っかかるものを感じていた。

 

その時、ひときわ目立つ大柄な男が港へ歩み出てきた。

 

「ようこそ、ウイスキーピークへ! わしは町長のイガラッポイ……いや、イガラムではないぞ。わしはこの町の者じゃ!」

 

言葉に少し妙な引っかかりがあったが、男はすぐに豪快に笑った。

 

「さあさあ、旅の疲れを癒やしていってくれ! 食事も酒も、すべてこちらで用意しよう!」

 

「食事!?」

 

ルフィの目が輝いた。

 

「酒と料理!?」

 

ゴールドシップも反応する。

 

「宴だあああああ!」

 

「まだ宴をするとは言ってないわよ!」

 

ナミの制止もむなしく、ルフィとゴールドシップは町の人々に引っ張られるようにして進んでいく。

 

「歓迎されるって、いいもんだな!」

 

ゴールドシップは満面の笑みだった。

 

「よーし! ゴルシちゃん、今日は町の人々に感謝を込めて、盛大に盛り上げてやるぜ!」

 

「盛り上げるって、何をする気なのよ……」

 

ナミは頭を抱えた。

 

しかし、町の人々の歓迎は本物のように見えた。

 

広場には料理が並べられ、酒樽が開かれ、音楽が鳴り始める。

 

サンジとオグリは料理を見た途端、自然と厨房の方へ視線を向けた。

 

「ほう……。この町、食材の扱いは悪くないな」

 

サンジが料理を眺める。

 

「肉も魚もたっぷりある……!」

 

オグリの目が輝いた。

 

「オグリ、食べる前に少し味見を手伝ってくれないか?」

 

「もちろんだ!」

 

「味見だからね! 食べ尽くすんじゃないわよ!」

 

ナミの忠告が飛ぶ。

 

一方、ゾロは酒樽を見つけて、口元を緩めた。

 

「酒があるなら、少しは休めそうだな」

 

タマモも杯を受け取る。

 

「たまにはええやろ。ミホークとの傷も、まだ痛むしな」

 

「お前は飲みすぎるなよ」

 

「誰に言うとんねん!」

 

「お前だ」

 

「喧嘩売っとんのか!」

 

「お前が先に言ったんだろうが!」

 

そんな二人の横では、テイオーがウソップと一緒に踊っていた。

 

「見て見て! ウソップ、こうやって足を動かすんだよ!」

 

「お、おう! おれの華麗なダンスを見せてやる!」

 

「うわっ、転んだ!」

 

「転んでねえ! これは高度な演出だ!」

 

フェスタはナミの隣で、出された酒を一口飲んだ。

 

「どう思う?」

 

「何が?」

 

「この歓迎さ」

 

ナミは住民たちの笑顔を眺めた。

 

「……まだ分からない。でも、海賊にここまで親切にする理由は気になるわね」

 

「なら、目を離さないことだ」

 

フェスタは杯を置いた。

 

「賭けの匂いがする」

 

「フェスタ。あんたのその勘、当たる時は当たるけど、面倒を呼ぶ時もあるのよね」

 

「それも賭けの醍醐味さ」

 

「はいはい……」

 

やがて宴はさらに盛り上がり、ルフィとゴールドシップは町の住民たちに囲まれて大騒ぎを始めた。

 

「もっと持ってこーい!」

 

「ゴルシちゃんの伝説はまだまだ終わらねえぞ!」

 

「ルフィ、ゴールドシップ! 明日の食料を残しなさい!」

 

ナミの声が聞こえたかどうかは、二人にしか分からない。

 

その夜、町の人々は次々と酒を飲み、騒ぎ、笑い合った。

 

やがて、ルフィはテーブルに突っ伏して眠り始めた。

 

ゴールドシップも、椅子を二つ並べた上で大の字になっている。

 

「……本当に、こいつらは」

 

ナミは呆れた顔をしながら、眠っている仲間たちを見渡した。

 

だが、その表情には少しだけ安堵があった。

 

偉大なる航路に入ってから、ずっと緊張が続いていた。

 

今夜くらいは、休んでもいいのかもしれない。

 

――その判断が、思わぬ事態を招くことになる。

 

3.宴の裏側――賞金稼ぎの町

夜も更け、町の明かりが少しずつ消えていく。

 

広場には、酔いつぶれた海賊たちが転がっていた。

 

ルフィは大きな鼾をかいて眠り、ゴールドシップは寝言を叫んでいる。

 

「……黄金の……浮沈船……発進……」

 

「寝ながら何をしてるんだ、あいつは……」

 

ゾロは酒を飲み終え、壁にもたれて目を閉じていた。

 

タマモも隣で眠っている。

 

だが、町の人々は眠っていなかった。

 

宴の後片付けをしていた住民たちが、互いに目配せをする。

 

「……寝たか?」

 

「全員、ぐっすりだ」

 

「よし。今夜の獲物は大物だぞ」

 

彼らの笑顔は消え、冷たい表情へと変わった。

 

「懸賞金三千万の麦わらのルフィ。二千万のゴールドシップ。それに、他の連中もいる」

 

「新入りの海賊とはいえ、これだけの人数を一度に仕留められれば大儲けだ」

 

「さあ、始めようぜ」

 

彼らは武器を手に、眠る海賊たちへと近づいていく。

 

町の正体は、海賊を歓迎する町ではなかった。

 

海賊を酒で酔わせ、油断させ、賞金首を捕らえる賞金稼ぎたちの町――ウイスキーピーク。

 

その夜、麦わらの一味は、町の本当の顔を知ることになる。

 

最初に目を覚ましたのは、ゾロだった。

 

足音。

 

複数の人間が近づいてくる気配。

 

ゾロはゆっくりと目を開けた。

 

「……騒がしい夜だな」

 

薄暗い広場に、武器を持った男たちが並んでいた。

 

「起きたか、海賊」

 

一人が笑う。

 

「悪いが、お前らにはここで眠っていてもらうぜ」

 

ゾロは立ち上がり、刀の柄に手をかけた。

 

「……なるほど。歓迎ってのは、そういう意味だったか」

 

男たちが一斉に襲いかかる。

 

だが、ゾロは動じない。

 

「悪いが、今は機嫌が悪い」

 

一閃。

 

迫ってきた武器が弾かれ、男たちが次々と地面に倒れていく。

 

その騒ぎで、タマモも目を覚ました。

 

「……なんや、騒がしいな」

 

目の前に倒れている賞金稼ぎたちを見て、状況を理解する。

 

「なるほど。宴の続きは、これかいな」

 

タマモは二本の刀を抜いた。

 

「ええ度胸しとるやないか。ウチらを酔い潰して襲うとはな!」

 

「起きたぞ! 女剣士もいる!」

 

「構うな! 数で押せ!」

 

賞金稼ぎたちが押し寄せる。

 

「双閃・白狐乱舞!」

 

二本の刀が、夜の広場に白い軌跡を描いた。

 

タマモは敵の武器を弾き、足を払って次々と倒していく。

 

「酒の礼に、ちょっとばかし稽古をつけたるわ!」

 

一方、ゴールドシップは大きな鼾をかいていた。

 

「……あと五分……」

 

賞金稼ぎの一人が、恐る恐る近づく。

 

「お、おい。こいつ、本当に懸賞金二千万なのか?」

 

「寝てるだけじゃねえか……」

 

「今のうちに縛っちまえ!」

 

男がロープを伸ばした瞬間。

 

ゴールドシップの目が、カッと開いた。

 

「……ゴルシちゃんの睡眠を邪魔したな?」

 

「ひっ!?」

 

「それは、万死に値する!」

 

「そんな大げさな――」

 

ドゴォン!

 

棍棒が振るわれ、男たちはまとめて吹き飛んだ。

 

「ゴルシちゃん流、寝起きの一撃!」

 

「寝起きでそんな威力を出すな!」

 

遠くでタマモが叫ぶ。

 

「おーい、ゾロ! 宴の片付けが始まったぞ!」

 

「片付けって言うな!」

 

ゾロが刀を振るう。

 

「俺たちはゴミじゃねえ!」

 

こうして、夜のウイスキーピークは一気に騒乱へと変わった。

 

4.ゾロの奮闘――百人を相手にする剣士

賞金稼ぎたちは次々と倒れていった。

 

だが、町にはまだ大勢の敵が残っている。

 

「くそっ! 何なんだ、あいつら!」

 

「酒で酔ってるはずだろ!?」

 

「特にあの剣士、化け物か!」

 

ゾロは二本の刀を構え、冷静に敵を見渡していた。

 

「……数だけはいるな」

 

「ゾロ! あんた、無茶しすぎや!」

 

タマモが近くへ駆け寄る。

 

「まだ傷が治りきってへんやろ!」

 

「この程度で止まってられるか」

 

ゾロは口元を吊り上げた。

 

「俺がどれだけ強くなれるか、試すにはちょうどいい」

 

「そういう問題やないやろ!」

 

タマモは歯を食いしばった。

 

だが、ゾロの目には迷いがない。

 

彼は、ミホークに敗れた自分を乗り越えようとしていた。

 

数の多さに怯まず、一人ずつ確実に倒す。

 

「来い!」

 

ゾロが踏み込む。

 

三本目の刀は使わず、二刀を中心に敵の攻撃を受け流し、反撃を叩き込む。

 

タマモもその横で、敵の包囲を切り崩していく。

 

「双閃・稲妻駆け!」

 

「ぐあっ!」

 

「双閃・白狐乱舞!」

 

「うわああっ!」

 

二人の剣士が並んで戦う姿は、賞金稼ぎたちにとって悪夢そのものだった。

 

一方、ウソップとテイオーも目を覚まし、襲ってきた賞金稼ぎたちを相手にしていた。

 

「ちょっと待て! おれたちは宴に招かれただけだぞ!」

 

「ウソップ、文句言ってる場合じゃないよ!」

 

テイオーが敵の攻撃をかわし、ウソップの前に立つ。

 

「今は反撃だよ!」

 

「お、おう! このウソップ様に喧嘩を売ったことを後悔させてやる!」

 

ウソップがパチンコを構え、敵の武器を弾き飛ばす。

 

「やった!」

 

「ウソップ、次!」

 

「おう!」

 

二人は連携しながら、迫ってくる賞金稼ぎを押し返した。

 

しかし、町の賞金稼ぎは多い。

 

広場のあちこちで戦闘が続き、倒れた男たちが積み重なっていく。

 

「……これ、何人いるのよ!」

 

ナミも目を覚まし、状況を見て叫んだ。

 

「海賊を歓迎する町じゃなかったの!?」

 

フェスタは冷静に周囲を観察していた。

 

「歓迎は本物だったんだろうね。獲物を油断させるための」

 

「最低ね……!」

 

ナミは武器を構える。

 

「せっかく休めると思ったのに!」

 

「お金を取られるよりはマシだろ?」

 

フェスタが笑う。

 

「今は目の前の敵に集中しよう」

 

「分かってるわよ!」

 

ナミも反撃に加わった。

 

戦いは、麦わらの一味の優勢に傾いていく。

 

だが、町の奥では、別の二人組がこの騒ぎを見つめていた。

 

「……何やってるのよ、あいつら」

 

青い髪の女性――ミス・ウェンズデーが、呆れたように呟く。

 

隣に立つMr.9は、歯を食いしばっていた。

 

「まさか、ここまで強いとは……!」

 

「今さら驚いても遅いわよ」

 

ミス・ウェンズデーは、戦場の中央で棍棒を振り回すゴールドシップを見た。

 

「……あの女、何なの?」

 

「懸賞金二千万の賞金首だ。まともに相手をするな」

 

「まともに相手をするなって、もう相手にしてるじゃない!」

 

二人が言い合っている間に、ゾロが最後の敵を倒した。

 

広場に、ようやく静寂が戻る。

 

「……終わったか」

 

ゾロが刀を納める。

 

タマモも息を整え、二本の刀を鞘へ戻した。

 

「まったく。宴の後にこんな仕事をさせられるとは思わんかったわ」

 

ゴールドシップは倒れた賞金稼ぎたちを見回し、満足げに頷く。

 

「よし! これで町の大掃除は完了だな!」

 

「大掃除じゃない!」

 

ナミが叫んだ。

 

「なんであんたは、何でもイベントにしたがるのよ!」

 

5.新たな敵――Mr.5とミス・バレンタイン

騒ぎが落ち着いたかに見えた、その時。

 

町の入口から、二人の人影が現れた。

 

一人は、鼻に指を突っ込んだまま歩く男。

 

もう一人は、傘を手にした女性だった。

 

男は広場に散らばった賞金稼ぎたちを見て、眉をひそめた。

 

「……何だこりゃ。町中がやられてるじゃねえか」

 

女性は傘をくるりと回し、軽い口調で言った。

 

「やだぁ。せっかく来たのに、ずいぶん派手にやってくれたじゃない」

 

Mr.5とミス・バレンタイン。

 

二人は、秘密犯罪会社バロックワークスのエージェントだった。

 

Mr.5は鼻をほじり、指先に付いたものを弾く。

 

「まあいい。仕事を片付けりゃ済む話だ」

 

その指先から、何かが飛んだ。

 

「ん?」

 

ウソップが首を傾げた次の瞬間。

 

ドォン!

 

小さな爆発が起こり、ウソップの足元が吹き飛んだ。

 

「うわああああああっ!?」

 

「ウソップ!」

 

テイオーが叫ぶ。

 

ウソップは転がりながら、何とか体勢を立て直した。

 

「な、何だ今の!?」

 

Mr.5は鼻を鳴らした。

 

「おれの能力だ。おれは爆弾人間。鼻くそだろうが息だろうが、爆発させられる」

 

「鼻くそ!?」

 

ゴールドシップが目を輝かせた。

 

「すげえ! 鼻くそが爆弾になるのか! それ、宴会芸に使えそうだな!」

 

「感心するところじゃないでしょ!」

 

ナミが叫ぶ。

 

Mr.5は不機嫌そうにゴールドシップを睨んだ。

 

「ふざけてんじゃねえぞ、女」

 

「おう、鼻くそ爆弾マン! お前もなかなか面白いじゃねえか!」

 

「誰が鼻くそ爆弾マンだ!」

 

ミス・バレンタインが傘を開き、ふわりと浮かぶように跳ねた。

 

「私はミス・バレンタイン。体重を自由に変えられるの」

 

彼女は軽く空へ浮かび、次の瞬間、急激に体重を増やして地面へ落下した。

 

ドゴォン!

 

地面が砕ける。

 

「うわっ!」

 

タマモが飛び退いた。

 

「なんちゅう力や!」

 

「ふふっ。踏み潰されるのは嫌でしょう?」

 

ミス・バレンタインは笑った。

 

Mr.5はゾロとタマモを見据えた。

 

「お前らが、さっきから好き勝手やってる連中か」

 

「だったら何だ?」

 

ゾロが刀に手をかける。

 

「邪魔をするなら斬る」

 

タマモも二本の刀を抜いた。

 

「ウチらは、まだ傷が治りきってへん。せやけど、あんたらを止めるくらいはできるで」

 

ゴールドシップは棍棒を肩に担ぎ、ニヤリと笑った。

 

「よーし! 第二ラウンドだ! ゴルシちゃんの出番だぜ!」

 

「待って、ゴールドシップ」

 

フェスタが彼女を止めた。

 

「こいつら、さっきの賞金稼ぎとは違う。動きに無駄がない」

 

「ほう?」

 

「ただの町の用心棒じゃないってことさ」

 

ナミも表情を引き締める。

 

「……この町には、まだ裏があるのね」

 

ミス・バレンタインは、そんな一同を見て笑った。

 

「察しがいいじゃない。でも、知りすぎた人間は長生きできないのよ」

 

Mr.5が指を鳴らす。

 

「さあ、仕事の続きだ」

 

戦いが再び始まった。

 

6.爆弾人間との戦い――ウソップの意地

Mr.5が鼻を鳴らし、指先を弾いた。

 

「吹っ飛べ!」

 

爆発が起こる。

 

「うわっ!」

 

ウソップは地面に伏せて爆発を避けた。

 

「何なんだよ、こいつ! 爆弾を投げてくるなんて反則だろ!」

 

「反則も何も、これが能力だ」

 

Mr.5は平然と答えた。

 

「お前みたいな弱そうな奴から片付けるか」

 

「弱そうって言うな!」

 

ウソップはパチンコを構える。

 

「このウソップ様を誰だと思ってる! 勇敢なる海の戦士だぞ!」

 

「知らねえよ」

 

Mr.5は鼻をほじる。

 

「じゃあ、これで終わりだ」

 

爆発が飛んでくる。

 

ウソップは必死に走り、建物の陰へ飛び込んだ。

 

「くそっ……! 近づけない!」

 

テイオーが援護に入ろうとしたが、ミス・バレンタインがその前に立ちはだかった。

 

「あなたの相手は私よ」

 

「邪魔しないで!」

 

テイオーが飛び込む。

 

しかし、ミス・バレンタインは体重を軽くして攻撃をかわし、次の瞬間には重くなって地面を踏みつけた。

 

「きゃっ!」

 

テイオーが衝撃でよろめく。

 

「テイオー!」

 

ウソップが叫ぶ。

 

「自分の心配をしなさい!」

 

ミス・バレンタインは笑った。

 

「あなたたち、仲間思いなのね。でも、それじゃあ戦いに勝てないわ」

 

ウソップは歯を食いしばった。

 

逃げるだけでは勝てない。

 

真正面から戦えば、爆発に巻き込まれる。

 

ならば――。

 

ウソップは地面に転がっていた酒瓶を拾い、Mr.5の視線を誘導するように投げつけた。

 

「おらっ!」

 

Mr.5は鼻で笑い、瓶を爆発させる。

 

その瞬間、ウソップは横からパチンコを放った。

 

「今だ!」

 

弾がMr.5の顔面に当たる。

 

「ぐっ!」

 

Mr.5が一瞬ひるんだ。

 

「へへっ! どうだ!」

 

ウソップは胸を張った。

 

「おれは逃げるだけの男じゃないんだよ!」

 

「……調子に乗るなよ」

 

Mr.5の顔が険しくなる。

 

「爆発の威力を上げてやる」

 

彼が息を吸い込んだ。

 

「ウソップ、避けて!」

 

テイオーの声が響く。

 

Mr.5が吐き出した息が爆発する。

 

ドォォォン!

 

ウソップは衝撃で吹き飛ばされ、地面を転がった。

 

「ウソップ!」

 

テイオーが駆け寄る。

 

「だ、大丈夫だ……」

 

ウソップはふらつきながら立ち上がった。

 

「こんなところで……負けてたまるかよ……!」

 

その時、オグリが前に出た。

 

「もういい。ここからは私が相手をしよう」

 

「オグリ!」

 

サンジが声を上げる。

 

オグリは拳を握り、Mr.5を見据えた。

 

「食べ物を粗末にする者には、少し厳しくする」

 

「はあ?」

 

「爆発で料理を台無しにした。許せない」

 

「そっちかよ!」

 

ゴールドシップが思わずツッコむ。

 

しかし、オグリの表情は真剣だった。

 

Mr.5が鼻を鳴らし、爆弾を放つ。

 

オグリは正面から突っ込まず、爆発の範囲を見極めながら距離を詰める。

 

そして、Mr.5が次の攻撃を放つ瞬間――。

 

オグリの拳が、男の腹部に叩き込まれた。

 

「ぐふっ!」

 

Mr.5は大きく吹き飛び、地面を転がった。

 

「食べ物を大切にしろ」

 

オグリは静かに言った。

 

「……今のは、かなり痛いわね」

 

サンジが煙草をくわえ直した。

 

「オグリ、君は怒ると怖いな」

 

「そうか?」

 

「そうだよ」

 

7.ミス・バレンタインの重量攻撃――ゴールドシップの反撃

一方、ミス・バレンタインは、テイオーを追い詰めていた。

 

「ほらほら、逃げてばかりじゃ勝てないわよ!」

 

彼女は体重を軽くし、空中へ浮かび上がる。

 

そして、傘を閉じると同時に、体重を一気に増加させた。

 

「一万キロプレス!」

 

その巨体が、テイオーめがけて落下する。

 

「テイオー!」

 

ウソップが叫ぶ。

 

だが、その前にゴールドシップが飛び込んだ。

 

「おっと! その着地、ちょっと待った!」

 

ゴールドシップは棍棒を横に構え、落下してくるミス・バレンタインを受け止めようとする。

 

「ちょっと、あんた! 正面から受ける気!?」

 

ナミが叫んだ。

 

ドゴォォォン!

 

衝撃で地面が砕け、土煙が舞い上がる。

 

「ゴールドシップ!」

 

テイオーが叫ぶ。

 

煙が晴れる。

 

そこには、片膝をつきながらも、棍棒で攻撃を受け止めているゴールドシップの姿があった。

 

「……おお。なかなか重いじゃねえか」

 

彼女はニヤリと笑った。

 

「だがな、ゴルシちゃんは重さには強いんだ!」

 

「そんなわけあるか!」

 

ナミのツッコミが飛ぶ。

 

ゴールドシップは力任せに棍棒を振り、ミス・バレンタインを横へ弾き飛ばした。

 

「きゃあっ!」

 

ミス・バレンタインが地面を転がる。

 

「な、何なのよ、あなた!」

 

「ゴールドシップ! 黄金の浮沈船! 覚えときな!」

 

「そんな肩書き、初めて聞いたわよ!」

 

ミス・バレンタインは立ち上がり、再び体重を軽くした。

 

「調子に乗らないで!」

 

彼女が上空へ舞い上がる。

 

しかし、その動きを見ていたフェスタが、すぐさまナミに声をかけた。

 

「ナミ! あの女は体重を変えるたびに動きが変わる。軽くなった時は速いが、攻撃に移る時には重くなるはずだ」

 

「つまり、着地の瞬間を狙えばいいのね!」

 

「そういうこと」

 

ナミは棒を構え、ミス・バレンタインの落下地点を見定めた。

 

「ゴールドシップ! 次の着地を誘導して!」

 

「了解だ!」

 

ゴールドシップが大きく棍棒を振り回す。

 

「おーい! 傘女! こっちだこっち!」

 

「誰が傘女よ!」

 

ミス・バレンタインが怒り、ゴールドシップに向かって落下する。

 

その瞬間、ナミが横から攻撃を仕掛けた。

 

ミス・バレンタインの体勢が崩れる。

 

「きゃっ!」

 

「今だ!」

 

ゴールドシップが棍棒を振り抜いた。

 

ドゴォン!

 

ミス・バレンタインは大きく吹き飛び、地面に倒れた。

 

「よっしゃあ! 連携プレー成功!」

 

ゴールドシップが拳を突き上げる。

 

「……まったく。あなた、戦闘中くらい真面目にやりなさいよ」

 

ナミはため息をついた。

 

「今のは真面目だったぜ?」

 

「どこがよ!」

 

8.決着――麦わらの一味を侮った代償

Mr.5とミス・バレンタインは、地面に倒れていた。

 

それでも、Mr.5は立ち上がろうとしていた。

 

「くそ……。こんな奴らに……!」

 

ゾロが刀を肩に担ぐ。

 

「まだやるか?」

 

「……!」

 

Mr.5は歯を食いしばったが、すぐに自分の実力差を悟った。

 

正面から戦っても勝ち目は薄い。

 

だが、彼らには仕事があった。

 

「……お前ら、ただの海賊じゃねえな」

 

Mr.5は低く呟いた。

 

「何かを探っているのか?」

 

「何の話だ?」

 

サンジが尋ねる。

 

Mr.5は答えない。

 

ミス・バレンタインも、悔しそうに唇を噛んでいた。

 

その時、ミス・ウェンズデーが二人の前に立った。

 

「……もうやめて」

 

「ミス・ウェンズデー!?」

 

Mr.5が目を見開く。

 

「あなたたちの仕事は分かってる。でも、この人たちをこれ以上巻き込む必要はないわ」

 

「何を言っている!」

 

「……私は、もうこの町で誰かを傷つけたくないの」

 

その言葉に、Mr.5は怒りを露わにした。

 

「裏切るつもりか!」

 

「そうじゃない!」

 

ミス・ウェンズデーは声を張り上げた。

 

「私は……!」

 

彼女は言葉を詰まらせた。

 

本当の名前も、目的も、まだ明かすわけにはいかない。

 

だが、ルフィたちの姿を見ていると、どうしても心が揺らいでしまう。

 

ラブーンを守ろうとした彼ら。

 

仲間のために戦う彼ら。

 

そして、宴の最中でさえ、誰かを傷つけることを楽しんでいたわけではない彼ら。

 

彼女は、そんな彼らを裏切りたくなかった。

 

ルフィは、ミス・ウェンズデーをじっと見つめた。

 

「……お前、何か隠してるだろ」

 

「……!」

 

彼女の肩が震えた。

 

「でも、今は聞かねえ」

 

ルフィはあっさりと言った。

 

「言いたくないなら、言わなくていい。でも、ラブーンを傷つけようとしたことは許さねえぞ」

 

「……分かってるわ」

 

ミス・ウェンズデーは目を伏せた。

 

Mr.5は舌打ちし、ミス・バレンタインを助け起こした。

 

「……今回は引くぞ」

 

「ええ」

 

二人は後退する。

 

だが、その目には明らかな敵意が残っていた。

 

「覚えておけ、麦わらの一味。バロックワークスを敵に回したこと、後悔させてやる」

 

「バロックワークス……?」

 

ナミがその名前を口の中で繰り返す。

 

Mr.5たちは町の闇へと姿を消した。

 

戦いは終わった。

 

しかし、ウイスキーピークの謎は、まだ解けていなかった。

 

9.町を出る前に――ビビの正体

夜明けが近づいていた。

 

町の賞金稼ぎたちは、すでに戦意を失っている。

 

ルフィは大きく伸びをした。

 

「ふわああ……。腹減った!」

 

「結局それなのね……」

 

ナミは疲れた顔でため息をつく。

 

オグリが手を挙げた。

 

「私もだ」

 

「あなたもよ!」

 

サンジは厨房に残っていた食材を確認し、朝食の準備を始めた。

 

「まったく。朝から騒がしい連中だな」

 

「でも、みんな無事でよかったよね!」

 

テイオーが笑う。

 

ウソップは胸を張った。

 

「当然だ! おれがいたからな!」

 

「ウソップ、さっき吹き飛ばされてたじゃない」

 

ナミが冷静に指摘する。

 

「そこは言わなくていいだろ!」

 

タマモは刀を納め、ゾロに目を向けた。

 

「……それにしても、バロックワークスっちゅう連中。何者なんやろな」

 

「さあな。だが、また会うことになるかもしれねえ」

 

ゾロは空を見上げた。

 

「偉大なる航路に入ったばかりだ。面倒事はこれからだろ」

 

ゴールドシップは棍棒を肩に担ぎ、笑った。

 

「いいねえ! 強い奴がいるなら大歓迎だ!」

 

「戦闘狂みたいなこと言わないで!」

 

ナミの叫びが響く。

 

その時、ミス・ウェンズデーが一行の前に進み出た。

 

「……待って」

 

ルフィたちが振り返る。

 

「お願いがあるの」

 

彼女は一度、深く息を吸った。

 

「私を……連れて行ってほしい」

 

「……は?」

 

ナミが目を丸くする。

 

「ちょ、ちょっと待って。あなた、さっきまで私たちと戦ってた側でしょう?」

 

「分かってるわ。でも、あなたたちと一緒に行かなければならない理由があるの」

 

彼女は、しばらく迷っていた。

 

やがて、覚悟を決めたように顔を上げる。

 

「私は、ミス・ウェンズデー。バロックワークスに潜入していたの」

 

「潜入?」

 

ウソップが驚く。

 

「そう。あの組織は、何か大きな計画を進めている。私はその正体を探るために、組織の中に入っていた」

 

「それで、さっきのMr.5たちと一緒にいたわけね」

 

ナミが納得したように呟く。

 

「……でも、あなたは一体何者なの?」

 

ミス・ウェンズデーは唇を噛んだ。

 

そして、ついに告げた。

 

「私の本当の名前は……ネフェルタリ・ビビ」

 

「……ネフェルタリ?」

 

サンジが眉をひそめる。

 

「アラバスタ王国の王女よ」

 

一同が息を呑んだ。

 

「王女!?」

 

ウソップが叫ぶ。

 

「えええええええええっ!?」

 

テイオーも目を丸くする。

 

ゴールドシップは、ビビを上から下まで眺めた。

 

「……なるほど。どうりで、ただの賞金稼ぎにしては気品があると思ったぜ」

 

「あなた、さっきから何を見てたのよ……」

 

ナミが呆れる。

 

ビビは続けた。

 

「アラバスタ王国は、今、危機に瀕している。バロックワークスが国を乗っ取ろうとしているの。私はそれを止めるために潜入していた」

 

「……だから、さっきの連中もあんたを追っていたのね」

 

フェスタが静かに言う。

 

ビビは頷いた。

 

「お願い。私をアラバスタまで連れて行ってほしい。国を救うために、どうしても戻らなければならないの」

 

ルフィは、しばらくビビを見つめていた。

 

そして、あっさりと答えた。

 

「いいぞ!」

 

「……え?」

 

ビビが目を見開く。

 

「連れて行ってやる!」

 

「ちょっとルフィ! そんな簡単に決めないでよ!」

 

ナミが叫ぶ。

 

「でも、困ってるんだろ?」

 

ルフィは不思議そうに首を傾げた。

 

「だったら助ける。それだけだ」

 

その言葉に、ビビは唇を噛んだ。

 

目に涙が浮かぶ。

 

「……ありがとう」

 

彼女は深く頭を下げた。

 

「本当に……ありがとう」

 

ゴールドシップは、彼女の肩を軽く叩いた。

 

「よし、ビビ! アラバスタまでの長距離レース、出走決定だ!」

 

「レースじゃないわよ!」

 

ナミが即座に叫ぶ。

 

「だが、面白い旅になりそうだな」

 

フェスタは笑った。

 

「国を救う王女と、海賊王を目指す船長。それに黄金の浮沈船。賭けの題材としては最高だ」

 

「だから、賭けにするなってば!」

 

タマモはビビに向き直った。

 

「事情は全部分かったわけやないけど、あんたが本気なんは分かった。ウチらも手伝うで」

 

ゾロも短く頷く。

 

「行き先が決まったなら、それでいい」

 

サンジは煙草をくわえ直した。

 

「王女様の護衛とは、なかなか格好のいい仕事じゃないか」

 

「サンジ、鼻の下伸ばさない!」

 

ナミが睨む。

 

オグリは真剣な顔でビビに尋ねた。

 

「アラバスタには、おいしい料理があるだろうか?」

 

「……え?」

 

ビビは一瞬、きょとんとした。

 

「え、ええ。砂漠の国だけど、いろいろな料理があるわ」

 

「そうか!」

 

オグリの表情が明るくなる。

 

「なら、ぜひ食べてみたい!」

 

「オグリ! 今は国の危機の話をしてるのよ!」

 

「もちろん分かっている。国を救った後に食べよう」

 

「順番が違うのよ!」

 

その場に笑いが起こった。

 

ビビは、少しだけ緊張を解いた。

 

この人たちなら――。

 

もしかしたら、本当にアラバスタを救う手助けをしてくれるかもしれない。

 

10.出航――砂の王国を目指して

朝日が昇り始めた。

 

メリー号は、ウイスキーピークの港を離れる準備を整えていた。

 

ビビは船上から町を見つめていた。

 

ここでの潜入は、失敗に終わった。

 

Mr.5たちに正体を知られ、バロックワークスの計画を追うための道も大きく変わってしまった。

 

それでも、彼女には新しい仲間ができた。

 

「……本当に、いいの?」

 

ビビがナミに尋ねる。

 

「私を連れて行ったら、あなたたちもバロックワークスに狙われるかもしれない」

 

ナミは海図を片手に答えた。

 

「もう狙われてるみたいなものじゃない。今さらよ」

 

「でも……」

 

「それに、行き先が決まっているなら航海士としては助かるわ。ログポースの記録を進めながら、アラバスタを目指せばいいんだから」

 

「ナミ……」

 

ビビは、ほっとしたように笑った。

 

その時、船首でルフィが叫んだ。

 

「よーし! アラバスタへ出発だ!」

 

「その前に、全員、荷物の確認!」

 

ナミが指示を飛ばす。

 

「食料は? 水は? 航海用具は? ウソップ、工具箱を積んだ?」

 

「積んだ! おれに任せろ!」

 

「テイオー、ロープの確認!」

 

「了解!」

 

「サンジ、食料の管理!」

 

「任せてくれ、ナミさん!」

 

「オグリ、食料を食べない!」

 

「……努力する」

 

「努力じゃなくて、食べないの!」

 

ゴールドシップは帆のそばで、堂々と胸を張った。

 

「よし! 新たなる仲間を迎え、我ら麦わらの一味と黄金の浮沈船は、砂漠の王国へ向けて出航する!」

 

「その言い方、毎回長いのよ!」

 

タマモが笑いながら叫ぶ。

 

ゾロは刀の柄に手を置き、遠ざかる町を見つめた。

 

「……次は、どんな奴が待ってるんだろうな」

 

「強い奴がおったら、ウチも負けへんで」

 

「まずは傷を治せ」

 

「分かっとるわ!」

 

フェスタは舷側にもたれ、ビビを横目で見た。

 

「さて、王女様。あんたの賭けは、ここからが本番だ」

 

ビビは海を見つめ、力強く頷いた。

 

「ええ。私は必ず、アラバスタを救う」

 

ルフィは麦わら帽子を押さえ、笑った。

 

「よし! 行こうぜ、みんな!」

 

ゴーイングメリー号は帆を膨らませ、偉大なる航路の海へと進んでいった。

 

その先に待つのは、砂漠の王国アラバスタ。

 

そして、国を揺るがす巨大な陰謀。

 

麦わらの一味と黄金の浮沈船は、知らず知らずのうちに、その中心へと向かい始めていた。

 

――次回、リトルガーデン編。

 

巨大な恐竜が闊歩する太古の島。

 

百年ものあいだ決闘を続ける二人の巨人。

 

そして、ビビを追うバロックワークスの刺客たち。

 

偉大なる航路の冒険は、さらに激しさを増していく。

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