ウマ娘ONE PIECEダービー~黄金の浮沈船は大海原を駆ける~ 作:武藤 桜
第一話 偉大なる航路の次なる島
ウイスキーピークを出航したゴーイングメリー号は、偉大なる航路の海を進んでいた。
船上では、いつものように騒がしい声が飛び交っている。
「よーし! 次の島でも大冒険だあああ!」
船首に立ったルフィが、麦わら帽子を押さえながら叫ぶ。
「冒険はええけど、今度は宴の後に賞金稼ぎが襲ってくるような町やないとええなぁ……」
タマモクロスは二本の刀を腰に差し直し、ため息をついた。
「そうそう。歓迎されるのは嬉しいけど、あんな大人数に襲われるのはもう勘弁だよ」
テイオーも、背中に背負った槍を確かめながら頷いた。
ウイスキーピークで賞金稼ぎたちから奪った武器のうち、テイオーは長槍を、オグリキャップは大斧を、ナカヤマフェスタはライフル銃をそれぞれ使うことにしていた。いずれも元の持ち主が気絶している間に回収したものである。
「でも、武器が増えたのは心強いよね!」
テイオーは槍をくるりと回した。
「これなら、遠くから来る敵にも対応できるし!」
「扱いには慣れたのか?」
ゾロが尋ねる。
「もちろん! トレーニングで槍術もやったことあるからね!」
「ウマ娘のトレーニングは本当に幅広いんだな……」
ウソップが呆れたように呟いた。
その隣では、オグリが大斧を両手で持ち上げている。
「この武器は重いが、使いこなせれば頼りになりそうだ」
「オグリ、その斧で料理を切ろうとしないでよ?」
ナミが釘を刺す。
「……料理には包丁を使う」
「今、少し考えたわね!?」
一方、フェスタはライフル銃を手入れしながら、海の向こうを眺めていた。
「遠距離から狙える武器は便利だ。近づかずに勝負を決められるなら、それに越したことはない」
「でも、撃つ時は周りをよく見てね。船に穴なんか開けたら許さないわよ」
ナミが念を押す。
「分かってるさ。あたしは無謀な賭けと、勝ち目のない賭けを区別するんでね」
「その区別ができるなら、あんたはもう少し安全な人生を送ってると思うけど……」
ナカヤマは笑って肩をすくめた。
そんな会話の最中、ナミの手元にあるログポースが反応を示した。
「……次の島の記録が終わったわ」
「おっ! じゃあ次の島に行けるのか!?」
ルフィが飛びつく。
「ええ。ログポースが指しているのは……リトルガーデン」
ナミは海図を広げた。
「直訳すると、小さな庭。でも、名前に惑わされない方がいいみたいね」
「小さな庭なら、花がいっぱい咲いてるのかな?」
テイオーが首を傾げる。
「いや、偉大なる航路の島だぞ。普通の庭なわけがねえだろ」
ゾロが答える。
ゴールドシップはニヤリと笑い、棍棒を肩に担いだ。
「なるほど。つまり、リトルガーデンって名前の巨大な罠か、恐竜が暮らす庭か、あるいはゴルシちゃんのために用意された特設アトラクションだな!」
「最後のは絶対に違うわよ!」
ナミのツッコミが響いた。
そして数日後――。
「見えたぞ! 島だ!」
見張り台からウソップの声が飛んだ。
メリー号の前方に、緑に覆われた巨大な島が姿を現した。
鬱蒼とした森林。立ち並ぶ巨大な木々。遠くからでも分かるほど、島全体が異様な生命力に満ちている。
「……なんだか、普通じゃない島だね」
テイオーが目を輝かせる。
「うむ。植物の大きさも尋常ではないな」
オグリも興味深そうに眺めた。
「よし! 上陸だ!」
ルフィが叫ぶ。
「待ちなさい! まずは周囲の安全確認!」
ナミが止めようとした時には、ルフィはすでに船首へ走り出していた。
「冒険だああああ!」
「聞きなさいってばあああ!」
こうして一行は、太古の世界がそのまま残された島――リトルガーデンへと足を踏み入れた。
第二話 太古の島の洗礼
島に上陸して最初に感じたのは、湿気と熱気だった。
「うわぁ……蒸し暑い!」
テイオーが額の汗を拭う。
「熱帯の島というだけじゃないな。植物の密度がすごい」
ナミは周囲を見回した。
巨大な葉。見上げるほどの幹。見慣れない花々。
まるで、数千万年前の世界に迷い込んだかのようだった。
「おい、ルフィ! 勝手にどっか行くんじゃねえぞ!」
ウソップが叫ぶ。
「大丈夫だ! おれは迷わねえ!」
「その自信が一番信用できないのよ!」
ナミが怒鳴る。
ゴールドシップは森の奥を見つめ、妙に嬉しそうに笑った。
「いいねえ……。この森、絶対に何かいるぜ」
「何かって?」
フェスタがライフルを肩に掛け直す。
「恐竜とか!」
「……冗談だろ?」
ウソップが笑った、その瞬間。
森の奥から、地響きが聞こえてきた。
ドドドドドド……!
「……え?」
地面が揺れる。
木々が左右に大きく揺れ、巨大な影が姿を現した。
「グオオオオオオオッ!」
巨大な肉食恐竜が、咆哮を上げながら突進してきたのだ。
「うわあああああああっ!?」
ウソップとテイオーの叫び声が重なる。
「恐竜だあああああ!」
ルフィは大喜びだった。
「すげえ! 本当にいたぞ!」
「喜んでる場合かああああ!」
ナミが叫ぶ。
恐竜が大きな口を開き、ルフィへ襲いかかった。
「ルフィ、危ない!」
テイオーが槍を構え、横から飛び込む。
「スピア・ライトニング!」
槍の穂先が恐竜の鼻先をかすめ、進路をわずかに逸らした。
「よし、今だ!」
ルフィはゴムの腕を伸ばし、恐竜の顔面を殴りつける。
「ゴムゴムの――ピストル!」
恐竜が大きくよろめいた。
「おおっ! テイオー、いい援護だったぞ!」
「へへっ、どういたしまして!」
だが、恐竜はすぐに体勢を立て直し、再び咆哮した。
「まだ来るのかよ!」
ウソップが叫ぶ。
「任せろ!」
オグリが大斧を構え、恐竜の進路へ立つ。
「グレート・アックス・スマッシュ!」
大斧が地面すれすれを薙ぎ払い、恐竜の足元を強く打つ。
体勢を崩した恐竜が横倒しになり、地面を揺らした。
「す、すげえ……」
ウソップが口を開ける。
「オグリ、あんな大きな恐竜を止めるなんて……!」
「まだ倒れてはいない。油断は禁物だ」
オグリが大斧を構え直した。
その時、ゴールドシップが恐竜の背後へ回り込んだ。
「はいはい、恐竜さん! ゴルシちゃんからの特別サービスだ!」
「おい、待て! 何をする気だ!」
ゾロが叫ぶ。
「決まってんだろ!」
ゴールドシップは棍棒を高く掲げた。
「ゴルシ式・恐竜ホームラン!」
ドゴォォォン!
棍棒が恐竜の横腹を打ち、巨体が大きく吹き飛んだ。
森の木々が揺れ、鳥たちが一斉に飛び立つ。
「……恐竜をホームランにするな」
ゾロが呆れた声で呟いた。
「いやあ、いいスイングだったな!」
ルフィは腹を抱えて笑っている。
「笑ってる場合じゃないわよ!」
ナミは額を押さえた。
フェスタはライフルを構えたまま、周囲の森を見回していた。
「……まだいるかもしれない。油断しない方がいい」
「その通りだ」
ゾロも刀を構える。
だが、しばらく待っても、次の襲撃はなかった。
倒れた恐竜は、唸り声を上げながら森の奥へと去っていく。
「ふう……。いきなり大冒険だったな」
ウソップが胸を撫で下ろす。
「いや、まだ島に来て少ししか経ってないんだけど……」
ナミが呟いた。
その時、森の向こうから、何かが爆発するような轟音が響いた。
ドォォォン!
一同が顔を上げる。
続いて、地鳴りのような声が島中に響き渡った。
「――決闘だああああああああっ!!」
「……今の声、何?」
テイオーが目を丸くする。
ルフィの目が、キラリと輝いた。
「決闘!? 面白そうだ! 行こうぜ!」
「待ちなさい! 今度は何がいるか分からないでしょうが!」
しかし、ルフィはすでに走り出していた。
ゴールドシップも笑いながらその後を追う。
「よっしゃ! ゴルシちゃんも参戦だ!」
「参戦するなあああ!」
ナミたちは、またしても二人を追いかけることになった。
第三話 百年の決闘――巨人ドリーとブロギー
森を抜けた先には、信じられない光景が広がっていた。
巨大な斧を持つ巨人と、巨大な剣を持つ巨人。
二人は向かい合い、互いの武器を構えていた。
その身長は、普通の人間とは比べものにならない。
まるで山そのものが動いているかのようだった。
「うおおおおおおおっ!」
「ぬおおおおおおおっ!」
二人が同時に武器を振り下ろす。
ドゴォォォォン!
衝撃波が周囲の木々を揺らし、地面を震わせた。
ルフィは、目を輝かせた。
「すっげえええええ!」
ゴールドシップも大興奮だ。
「おいおいおい! なんだあのサイズ! ゴルシちゃんよりでけえじゃねえか!」
「当たり前でしょ!」
ナミが叫ぶ。
巨人たちは一度距離を取り、互いに豪快な笑い声を上げた。
「ガハハハハハハ!」
「グハハハハハハ!」
その声だけで、森の鳥たちが飛び立つ。
やがて、斧を持つ巨人が一行に気づいた。
「む? 何だ、お前たちは!」
「おれはルフィ! 海賊王になる男だ!」
ルフィが胸を張る。
「そして、こっちはゴールドシップ! 黄金の浮沈船だ!」
「誰が紹介しろって言ったんだ!」
ナミがツッコむ。
ゴールドシップは気にせず、巨人たちを見上げた。
「いやあ、でけえな! あんたら、何メートルあるんだ?」
「ガハハハハ! 小さき者よ、我らは巨人族!」
斧を持つ巨人が胸を張った。
「わしの名はドリー!」
剣を持つ巨人も続ける。
「そして、わしはブロギー!」
二人は豪快に名乗った。
「巨人族……!」
ウソップが目を見開いた。
「本当にいたのか……!」
「おう! もちろんだ!」
ドリーが笑う。
「このリトルガーデンは、我らにとっても馴染み深い島よ!」
「リトルガーデンって……この島のことか?」
ゾロが尋ねる。
「そうだ!」
ブロギーが頷いた。
「小さな庭という名は、我らにとっては実に愉快な名だ! 何しろ、この島には巨大な生き物があふれている!」
「確かに……」
タマモが周囲を見渡す。
「恐竜までおるんやからな」
ルフィは巨人たちを見上げ、興味津々で尋ねた。
「なあ、お前ら! なんで戦ってるんだ?」
ドリーとブロギーは、顔を見合わせた。
そして、同時に笑った。
「ガハハハハハハ!」
「グハハハハハハ!」
「笑って誤魔化すなよ!」
ルフィが叫ぶ。
ドリーは、斧を肩に担いだ。
「わしらは、百年もの間、決闘を続けているのだ!」
「ひゃ、百年!?」
ウソップが仰天した。
「ちょっと待て! 百年って、何歳なんだよ!?」
「細かいことを気にするな!」
ブロギーが豪快に笑った。
「戦士の誇りに、年齢など関係ない!」
その言葉に、ゾロは目を細めた。
「……百年も、互いに戦い続けているのか」
タマモも、二人の姿を見上げた。
「何か、そこまで続ける理由があるんやろな」
「あるとも!」
ドリーが力強く頷く。
「わしらの決闘は、誇りを懸けたもの! どちらが強いか、それを決めるための戦いなのだ!」
「……すごいな」
テイオーは、思わず呟いた。
勝つためだけではない。
誰かに命令されたわけでもない。
自分自身の誇りを懸けて、百年もの間、戦い続けている。
その姿は、テイオーにも強く響くものがあった。
「ねえ、ドリーさん、ブロギーさん!」
テイオーが声を上げる。
「その決闘、どちらかが勝ったら終わるの?」
「もちろんだ!」
ブロギーが笑った。
「だが、まだ決着はついておらん!」
「ガハハハハ! そういうことだ!」
ドリーも笑う。
「だからこそ、我らは今日も戦う!」
ゴールドシップは感心したように頷いた。
「なるほどな……。つまり、百年続く世紀の決闘ってわけか!」
そして、急に拳を握った。
「よし! ゴルシちゃんも混ぜてくれ!」
「「断る!」」
巨人たちの即答が重なった。
「なんでだよ!」
「お前は小さい!」
ドリーが笑う。
「わしらの決闘に割り込むな!」
「それに、武器が軽すぎる!」
ブロギーが棍棒を見て笑った。
ゴールドシップは、しばらく固まった。
「……おい、聞いたか?」
ルフィが笑いを堪えている。
「ゴルシ、お前、小さいって!」
「言うなあああああ!」
ゴールドシップの叫びが森に響き渡った。
第四話 巨人たちの宴と、誇りの話
ドリーとブロギーは、一行を歓迎してくれた。
巨人たちは豪快で、細かいことを気にしない。
二人の住処には巨大な酒樽や食料が置かれ、彼らの生活の痕跡があった。
「さあ、客人よ! 飲め! 食え!」
ドリーが巨大な杯を掲げる。
「ガハハハハ! 人間の小さな杯では、飲んだ気にならんだろう!」
ブロギーが大笑いした。
「いや、あの……俺たちにその大きさの杯を渡されても……」
ウソップは、目の前に置かれた巨大な杯を見上げていた。
「持てないだろ、普通……」
ゾロが呆れた。
「お前ら、飲める分だけ飲めばいい!」
ブロギーが笑う。
ルフィは、巨大な肉の塊を見て目を輝かせた。
「うおおおお! 肉だああああ!」
ゴールドシップも、すかさず隣へ座る。
「よっしゃ! ゴルシちゃん、巨人族の食事に挑戦!」
「挑戦って何だよ!」
ルフィが笑う。
その隣では、オグリが真剣な顔で肉を観察していた。
「この肉は……かなり大きいな」
「おう! 好きなだけ食え!」
ドリーが笑う。
オグリは一度頷き、肉にかぶりついた。
「……うまい!」
「ほう! 分かるか!」
ブロギーが嬉しそうに笑った。
サンジは、料理を味わいながら巨人たちに尋ねた。
「二人とも、ここで何年暮らしているんだ?」
「百年だ!」
ドリーが即答する。
「わしらはこの島で決闘を続けている!」
「それはさっき聞いたよ」
サンジは苦笑した。
「……しかし、百年か。人間なら一生を何度も終える時間だな」
「それでも、決着がつくまでは終われん!」
ブロギーは杯を掲げた。
「誇りを懸けた戦いとは、そういうものだ!」
その言葉に、ゾロは静かに頷いた。
「……分かる気がする」
タマモも、刀の柄に触れた。
「ウチらにも、負けられへん相手がおるからな」
二人の脳裏に浮かぶのは、世界最強の剣士ミホークの姿。
その圧倒的な強さ。
そして、いつか必ず追いつくという誓い。
「……あの二人は、すごいな」
テイオーが呟いた。
「百年も戦い続けるなんて、普通ならできないよ」
フェスタはライフルを傍らに置き、静かに答えた。
「普通なら、途中で勝負を降りる。勝ち目がないと思えば諦める。けれど、あの二人は違う」
「……どうして?」
「勝つことだけが目的じゃないんだろうさ。自分が信じるものを、最後まで貫く。それ自体が、あの二人にとっての勝負なんだ」
フェスタは杯を傾けた。
「賭けも同じだよ。結果だけがすべてなら、勝てそうなものに賭ければいい。だけど、本当に大事なのは、自分が何を信じて賭けるかだ」
「……フェスタって、たまに格好いいこと言うよね」
テイオーが笑った。
「たまに、は余計だ」
その時、ドリーが立ち上がった。
「さて! そろそろ決闘の時間だ!」
「おう!」
ブロギーも立ち上がる。
二人は巨大な武器を手にし、互いに向かい合った。
「客人たちよ、よく見ておくがいい!」
ドリーが笑う。
「これが巨人族の戦士の誇りだ!」
「ガハハハハハ! わしらの決闘、しかと見届けよ!」
二人が武器を振り下ろす。
ドゴォォォォン!
再び、凄まじい衝撃が島を揺らした。
ルフィは歓声を上げ、ゴールドシップは興奮しながら跳ね回る。
「すげえええええ!」
「これだよ、これ! ゴルシちゃんも、あんな風に大暴れしてえ!」
「お前はもう十分暴れてるだろ!」
ゾロが呆れた声で言った。
しかし、宴の盛り上がりの陰で、森の奥には不穏な影が潜んでいた。
巨人たちを観察する者。
一行の行動を見張る者。
そして、バロックワークスの計画を進める者たちが――。
第五話 見えない罠――Mr.3の計画
その頃、リトルガーデンの別の場所では、一人の男が奇妙な笑みを浮かべていた。
シルクハットを被り、頭部の髪が数字の「3」の形をした男。
Mr.3。
その隣には、派手な衣装をまとった女性、ミス・ゴールデンウィークがいた。
Mr.3は、遠くに見える巨人たちを望遠鏡で眺めていた。
「ククク……。まったく、馬鹿げた連中ガネ」
「そうかしら?」
ミス・ゴールデンウィークが、絵の具を手にしたまま首を傾げる。
「百年も決闘なんて、面白いじゃない」
「面白い? 理解できんガネ。あんな大きな連中が、いつまでも勝負を続けているなど、実に非効率ガネ」
Mr.3は肩をすくめた。
「だが、利用価値はあるガネ」
彼は、手のひらから蝋を生み出した。
「巨人族の戦士二人。どちらかを始末できれば、バロックワークスの評価も上がる。そして、あの麦わらの一味も一網打尽にできるガネ」
「でも、あの子たち、結構強そうだったわよ?」
ミス・ゴールデンウィークは、絵筆を動かしながら言った。
「特に、あの金髪の女の子。なんだか楽しそうだった」
「強さなど関係ないガネ。重要なのは、相手をどう罠にはめるかだ」
Mr.3は、蝋を使って小さな仕掛けを作り始めた。
彼の能力は、ドルドルの実。
体から蝋を生み出し、自在に操ることができる。
蝋は固まれば非常に硬くなる。
そして、Mr.3はそれを利用して、相手を閉じ込めるための罠を作るつもりだった。
「ククク……。巨人も海賊も、全員まとめて蝋人形にしてやるガネ」
ミス・ゴールデンウィークは、楽しそうに笑った。
「じゃあ、私は色を塗ってあげる」
「……お前の趣味は、時々理解できんガネ」
「あなたの髪型も理解できないわ」
「これは髪型ではないガネ!」
二人のやり取りは、どこか緊張感に欠けていた。
だが、その計画は確実に動き始めていた。
第六話 巨人たちの誇りを利用する罠
翌日。
ドリーとブロギーは、いつものように決闘を始めていた。
「今日こそ決着をつけるぞ、ブロギー!」
「望むところだ、ドリー!」
二人が武器を構えた、その時。
ドリーが、ふと腹を押さえた。
「……む?」
ブロギーも首を傾げる。
「どうした、ドリー?」
「いや……少し腹の調子が悪い」
「……わしもだ」
二人は顔を見合わせた。
その様子を、遠くからMr.3が見ていた。
「ククク……。計画通りガネ」
彼らが口にした酒や食料には、Mr.3の計画に沿った仕掛けが施されていた。
巨人たちの体調を崩し、決闘の隙を生み出す。
その隙に、蝋の罠へ誘い込む。
「巨人族の戦士も、腹を壊せばただの大男ガネ」
しかし、Mr.3の計画は、巨人たちだけを狙ったものではなかった。
彼は、ルフィたちが巨人を助けようと動くことまで計算に入れていたのだ。
その頃、一行は島の探索を続けていた。
「……何か、妙だな」
ゾロが呟く。
「昨日から、巨人たちの様子がおかしい」
タマモも頷く。
「確かに。ドリーもブロギーも、何か調子が悪そうやった」
「食べ物に何か入っていたのかな?」
オグリが真剣な顔で考え込む。
「それなら、料理を作った者として見過ごせない」
「オグリ、あんたは作ってないでしょうが」
ナミが呆れる。
その時、遠くから轟音が響いた。
ドゴォォォン!
「また決闘か?」
ルフィが顔を上げる。
だが、次の瞬間。
森の向こうから、ドリーの苦しげな声が響いた。
「ぐ……ぬううっ!」
「ドリー!」
ブロギーの叫び声。
一行は、すぐに声の方向へ走り出した。
第七話 巨人を蝋に閉じ込める男
森の開けた場所へたどり着いた一行が目にしたのは、信じられない光景だった。
ドリーが、全身を蝋で固められ、地面に倒れていた。
その周囲には、蝋で作られた巨大な仕掛けが並んでいる。
「なっ……!」
ルフィが目を見開く。
「ドリー!」
ブロギーが怒りに満ちた声を上げた。
「何者だ! わしの友に何をした!」
木の陰から、Mr.3が姿を現した。
「ククク……。ようやく来たガネ」
彼は帽子を直し、得意げに胸を張った。
「わしはMr.3。バロックワークスのエージェントガネ」
「バロックワークス……!」
ビビが顔を強張らせた。
「やっぱり、あなたたちも……!」
「おやおや、王女様。まだ生きていたガネか」
Mr.3は、ビビを見て薄く笑った。
「ここで会ったが百年目……と言いたいところだが、まずは巨人どもを片付けるのが先ガネ」
ルフィが拳を握る。
「ドリーを放せ!」
「嫌だと言ったらどうするガネ?」
「ぶっ飛ばす!」
「単純な答えガネ!」
Mr.3が指を鳴らした。
蝋が動き、地面から無数の腕のような形が伸びる。
「さあ、君たちも蝋人形にしてやるガネ!」
「来るぞ!」
ゾロが刀を抜いた。
タマモも二本の刀を構える。
「ウチらが相手や!」
Mr.3の蝋が地面を這い、足元へ迫る。
「うわっ!」
ウソップが飛び退く。
「何だこれ! ベタベタして動きにくい!」
「触らないで! 固まったら厄介よ!」
ビビが叫ぶ。
その時、Mr.3の蝋が巨大な柱となって立ち上がった。
「ドルドルの実の能力を見せてやるガネ!」
蝋の柱が、ゾロたちを押し潰そうと迫る。
「させるか!」
ゾロが二刀を振るい、蝋の柱を斬り裂いた。
「だが、切ってもすぐに形を変える!」
タマモが叫ぶ。
「なら、固まる前に崩す!」
彼女は一気に踏み込み、二本の刀を交差させた。
「双閃奥義――疾風・白狐返し!」
白い軌跡が走り、蝋の柱が細かく切り刻まれる。
「ほう……。なかなかやるガネ」
Mr.3は感心したように呟いた。
「だが、わしの能力は斬るだけでは止められんガネ!」
蝋が再び集まり、巨大な腕となってタマモへ迫る。
「しまっ……!」
ゴールドシップが横から飛び込んだ。
「タマモ、しゃがめ!」
「おう!」
ゴールドシップの棍棒が蝋の腕を横殴りに打つ。
ドゴォン!
蝋の腕が大きく弾き飛ばされた。
「ゴルシちゃん流・蝋細工粉砕!」
「名前がその場で適当すぎるやろ!」
タマモがツッコむ。
「技名は勢いが大事だぜ!」
「そういう問題ちゃう!」
戦場の緊張感が、一瞬だけ妙な方向へ流れた。
だが、Mr.3は余裕を崩さない。
「ふん……。ならば、こちらも本気を出すガネ」
彼が両手を広げる。
周囲の蝋が集まり、巨大な構造物を形成し始めた。
「君たちをまとめて閉じ込めてやるガネ!」
第八話 ウマ娘たちの反撃――槍、斧、そしてライフル
Mr.3の蝋が地面を覆い、ルフィたちの足元を狙って伸びてくる。
「くそっ! これじゃ動けねえ!」
ウソップが叫ぶ。
「なら、動けるうちに仕掛ける!」
テイオーが槍を構えた。
「みんな、道を開けて!」
彼女は地面を蹴り、一気に前へ飛び出す。
「スピア・ライトニング!」
槍の穂先が蝋の壁を突き、固まりかけた部分を砕く。
「よし! 通れる!」
「ナイスだ、テイオー!」
ルフィが笑う。
「へへっ! 次はもっと派手にいくよ!」
テイオーは槍を回し、Mr.3の手元へ狙いを定める。
「スピア・トライデントラッシュ!」
三連続の突きが、蝋を操るMr.3の動きを牽制した。
「ぬっ……!」
Mr.3は後退し、蝋の盾を作り出す。
「小娘が、調子に乗るなガネ!」
その隙に、オグリが大斧を構えて突進した。
「テイオー、下がってくれ!」
「了解!」
オグリは大斧を両手で振りかぶる。
「グレート・アックス・スマッシュ!」
ドゴォォォン!
蝋の盾が砕け散り、Mr.3が大きく後退する。
「な、何だと!?」
「この斧は、なかなか使いやすい」
オグリは大斧を肩に担ぎ直した。
「硬いものを砕くには、力を集中させるのがいいようだ」
「そんな冷静に解説してる場合か!」
ウソップが叫ぶ。
「Mr.3が逃げるぞ!」
Mr.3は、蝋の壁を作って距離を取ろうとしていた。
しかし、フェスタはすでにライフルを構えていた。
「逃がさないよ」
彼女の目は、獲物を狙う賭場の勝負師のように鋭かった。
「フェスタ・ロングショット!」
銃声が森に響く。
弾丸はMr.3のすぐ横を通り、蝋を操るために伸ばしていた道具を弾き飛ばした。
「なっ!?」
Mr.3の手元が乱れる。
「命中……とはいかなかったか」
フェスタは冷静にライフルを構え直す。
「でも、狙いは悪くない」
「いや、今のは十分すごいって!」
テイオーが目を輝かせた。
フェスタは小さく笑う。
「勝負は一発で決めるものとは限らない。相手の手を止めれば、それだけで流れは変わる」
その隙を、ルフィは見逃さなかった。
「よし! 今だ!」
ゴムの腕が伸び、Mr.3の蝋の壁を突破する。
「ゴムゴムの――ピストル!」
拳がMr.3に直撃した。
「ガネエエエエッ!」
Mr.3は吹き飛び、地面を転がった。
「やった!」
テイオーが歓声を上げる。
「まだだ!」
ゾロが叫んだ。
Mr.3の蝋は、まだ周囲で動いている。
「本体を倒しただけでは終わらん!」
その言葉どおり、蝋は再び集まり始めた。
「くそっ……。しぶといガネ……!」
Mr.3は立ち上がろうとしていた。
しかし、その時。
ゴールドシップが、棍棒を肩に担いで近づいてきた。
「おい、ロウソク頭」
「誰がロウソク頭ガネ!」
「お前だよ!」
ゴールドシップは笑った。
「蝋ってのは、熱に弱いんだろ?」
Mr.3の顔色が変わる。
「……まさか!」
ゴールドシップは、近くにあった焚き火を見た。
そして、棍棒を地面に突き立てる。
「サンジ! 火を貸してくれ!」
「お前、何をする気だ!」
「蝋細工の展示会を終わらせるんだよ!」
サンジが呆れながらも、焚き火の火を利用できるように準備する。
ゴールドシップは、火の熱が蝋へ伝わる位置へ誘導するように、棍棒で地面を叩いた。
蝋が熱で軟らかくなり、形が崩れ始める。
「しまったガネ!」
Mr.3が慌てて蝋を集め直そうとする。
だが、ルフィがその前に立った。
「もう終わりだ!」
「くっ……!」
ルフィの拳が、再びMr.3を捉えた。
Mr.3は地面に倒れ、蝋の仕掛けも崩れ落ちていく。
「……やったのか?」
ウソップが恐る恐る尋ねる。
「どうやら、これで終わりのようだな」
ゾロが刀を納めた。
タマモも、息を整えながら頷く。
「まったく、面倒な能力やったわ」
ゴールドシップは棍棒を肩に担ぎ、得意げに笑った。
「これぞ、ゴルシちゃんの知恵と勇気と筋肉の勝利!」
「最後の筋肉だけは認めるわ……」
ナミがため息をついた。
第九話 Mr.5コンビ再襲来――ビビを狙う刺客たち
しかし、戦いはまだ終わっていなかった。
森の奥から、聞き覚えのある声が響く。
「……まったく、手間をかけさせてくれるわね」
「今度こそ、仕事を終わらせるぞ」
Mr.5とミス・バレンタインだった。
ウイスキーピークで戦った二人が、再び姿を現したのだ。
ビビの顔が強張る。
「Mr.5……! ミス・バレンタイン……!」
Mr.5は、倒れているMr.3を一瞥した。
「……Mr.3までやられたのか。役立たずめ」
「仲間をそんな風に言うのか?」
ルフィが睨む。
Mr.5は鼻を鳴らした。
「おれたちはバロックワークスのエージェントだ。失敗した奴に用はねえ」
ミス・バレンタインは傘を開き、ビビへ視線を向けた。
「さあ、ビビ王女。今度こそ一緒に来てもらうわ」
「断るわ!」
ビビは毅然と言い放った。
「私はアラバスタに帰る! 国を救うために!」
「なら、ここで消えてもらうしかないわね」
ミス・バレンタインが笑う。
その瞬間、Mr.5が息を吸い込んだ。
「吹き飛べ!」
爆発が飛ぶ。
「危ない!」
テイオーが槍を構え、ビビの前へ飛び出した。
「スピア・ガードスラスト!」
槍の柄で爆発の軌道を逸らし、爆風を避ける。
「ビビ、下がって!」
「ありがとう、テイオー!」
「お礼はあとで!」
テイオーは槍を構え直した。
「今は、目の前の敵を止める!」
Mr.5が鼻を鳴らす。
「またお前か。さっきの小娘か」
「小娘じゃないよ! トウカイテイオーだ!」
テイオーが駆け出す。
「スピア・ライトニング!」
槍が鋭く突き出され、Mr.5の攻撃を牽制する。
しかし、Mr.5は爆発を起こして距離を取った。
「ちっ……!」
テイオーは爆風を避け、地面を蹴って後退する。
「直接攻撃を当てるのは難しいか……!」
一方、ミス・バレンタインは体重を軽くし、空中へ舞い上がった。
「あなたの相手は、私よ!」
彼女はオグリへ向かって落下する。
「一万キロプレス!」
オグリは大斧を構え、横へ飛び退いた。
「グレート・アックス・カウンター!」
落下地点の地面を大斧で叩き、衝撃でミス・バレンタインの着地を乱す。
「きゃっ!」
ミス・バレンタインの体勢が崩れた。
「重さを変える能力か……。着地の瞬間には、どうしても隙ができるようだな」
オグリは冷静に分析する。
「なら、その隙を狙う」
「そんな簡単にいくと思わないで!」
ミス・バレンタインは再び体重を軽くして跳び上がる。
その瞬間、フェスタがライフルを構えた。
「空中なら、逃げ場が少ないね」
「ちょっ……!」
「フェスタ・スナイプショット!」
銃声が響く。
弾丸はミス・バレンタインの傘の端を撃ち抜き、彼女の軌道を乱した。
「きゃあっ!」
ミス・バレンタインが落下する。
そこへゴールドシップが突っ込んだ。
「はい、いただき!」
「ちょっと待っ――」
「ゴルシ式・黄金バット!」
棍棒が横薙ぎに振るわれ、ミス・バレンタインが吹き飛ばされた。
「ぐわあああっ!」
彼女は地面を転がり、そのまま動かなくなった。
「よっしゃあ! ホームラン!」
ゴールドシップが拳を突き上げる。
「野球じゃない!」
ナミが叫んだ。
その頃、Mr.5はルフィとゾロ、タマモの攻撃を受けていた。
「くそっ! 何なんだ、こいつら!」
Mr.5は爆発を連発し、周囲を吹き飛ばそうとする。
しかし、ルフィはゴムの体を活かして攻撃をかわし、ゾロとタマモは爆発の合間を縫って距離を詰める。
「お前の爆発は厄介だが、攻撃の前には動きがある!」
ゾロが踏み込む。
「タマモ!」
「分かっとる!」
二人は左右から挟み込む。
「双閃・稲妻駆け!」
タマモの刀がMr.5の武器を弾き飛ばす。
「しまっ……!」
そこへゾロが一撃を叩き込み、Mr.5の体勢を崩した。
「これで終わりだ!」
ルフィが拳を握る。
「ゴムゴムの――バズーカ!」
両腕が伸び、Mr.5を真正面から吹き飛ばした。
「ぐわあああああっ!」
Mr.5は地面に叩きつけられ、ついに気絶した。
戦いは、完全に決着した。
第十話 ドリーとブロギーの送り出し
戦闘が終わり、森に静けさが戻った。
蝋の拘束から解放されたドリーは、ゆっくりと体を起こした。
「……ぬう。面目ない」
ブロギーが大きく笑う。
「ガハハハハ! 何を言う、ドリー! お前が無事ならそれでよい!」
「しかし、客人たちには世話になったな」
ドリーはルフィたちを見渡した。
「小さき者たちよ。お前たちの力、見事だった!」
「いやあ、当然だろ!」
ルフィは笑う。
「おれたちは海賊王になるんだからな!」
「ゴルシちゃんも忘れるなよ!」
ゴールドシップが割り込む。
「黄金の浮沈船の伝説は、これから始まるんだぜ!」
「お前の伝説は、もう十分に始まっている気がするが……」
ゾロが呆れた。
ドリーは豪快に笑った。
「ガハハハハ! 愉快な連中だ!」
ブロギーも笑う。
「お前たちなら、偉大なる航路を進む資格がある!」
その言葉に、ルフィは嬉しそうに頷いた。
「へへっ!」
一方、ビビは二人の巨人へ深く頭を下げた。
「助けてくれて、ありがとう。私たちはアラバスタへ向かわなければならないの」
「うむ。お前たちの航海に、幸運があらんことを!」
ドリーが力強く頷いた。
その時、二人の巨人は互いに顔を見合わせた。
そして、いつものように豪快な笑い声を上げた。
「さて、ブロギー!」
「何だ、ドリー!」
「今日の決闘は、まだ終わっておらん!」
「ガハハハハ! 望むところだ!」
二人は巨大な武器を構えた。
「客人たちよ、よく見ておけ!」
ドリーが叫ぶ。
「これが、巨人族の誇りだ!」
ブロギーも叫ぶ。
「そして、これが我らの別れの挨拶だ!」
二人が同時に武器を振り下ろす。
「覇国(はこく)――!!」
ドゴォォォォォォォン!!
凄まじい衝撃が走った。
二人の武器から放たれた巨大な斬撃が、海へ向かって一直線に飛んでいく。
その威力は、島の木々を揺らし、海面を割るほどだった。
「う、うわあああああああっ!?」
ウソップが絶叫する。
「何だよ今の!? 人間の技じゃねえだろ!」
「巨人族の合体技……!」
ゾロは目を見開いていた。
タマモも、思わず刀の柄を握りしめる。
「……すごいな。あないな一撃、ウチもいつか……!」
ゴールドシップは、目を輝かせていた。
「覇国……! いいねえ! ゴルシちゃんも、いつかあんな大技を撃ってみてえ!」
「まずは船を壊さない技にして!」
ナミが叫ぶ。
ドリーとブロギーは、満足そうに笑った。
「さあ、行け! 小さき海賊たちよ!」
「お前たちの航海が、誇り高きものであることを願っている!」
ルフィは拳を突き上げた。
「おう! またな、ドリー! ブロギー!」
「また会おう!」
ゴールドシップも大きく手を振る。
「今度会う時までに、ゴルシちゃんももっと強くなっとくぜ!」
「ガハハハハ! 楽しみにしておるぞ!」
こうして一行は、巨人たちに見送られながら、ゴーイングメリー号へと戻った。
百年もの間、誇りを懸けて戦い続ける二人の巨人。
彼らとの出会いは、ルフィたちの胸に深く刻まれた。
第十一話 異変――ナミが倒れる
リトルガーデンを出航してしばらく。
メリー号は、次の島へ向かって航海を続けていた。
船上には、戦いを終えた安堵感が漂っていた。
「いやあ、リトルガーデンはすげえ島だったな!」
ルフィが船首で笑う。
「恐竜に巨人に、変な蝋の男! 面白い奴らがいっぱいいた!」
「変な蝋の男って……。あれは結構危なかったんだからね」
ナミは海図を広げながら答えた。
「でも、ドリーさんとブロギーさんはすごかったよね!」
テイオーが槍を手入れしながら言う。
「百年も決闘を続けるなんて、すごい精神力だよ!」
「確かに。二人の戦いは、学ぶところが多かった」
オグリも大斧を布で拭いていた。
フェスタはライフルを肩に掛け、遠くの海を眺めている。
「……偉大なる航路は、予想以上に奥が深いね」
「まったくだ。次はどんな奴が待ってるんだろうな!」
ゴールドシップが笑う。
しかし、その時だった。
「……うっ」
ナミが、小さく呻いた。
「……ナミ?」
近くにいたビビが振り返る。
ナミは額に手を当て、ふらついていた。
「どうしたの? 顔色が悪いわ!」
「……ちょっと、頭が痛いだけよ」
ナミは笑おうとした。
しかし、次の瞬間。
「……っ!」
彼女の体が大きく揺れた。
「ナミ!」
フェスタが反射的に駆け寄る。
ナミはそのまま膝をつき、甲板に倒れ込んだ。
「ナミ!?」
ルフィが駆け寄る。
「おい! どうしたんだよ!」
「ナミさん!」
サンジも慌てて駆け寄り、彼女の額に手を当てた。
「……熱がある!」
「えっ!?」
ビビの顔が青ざめる。
ナミは息を荒くし、苦しそうに目を閉じていた。
「……大丈夫……。ちょっと、疲れただけ……」
「無理するな!」
ゾロが声を上げる。
タマモも心配そうに膝をついた。
「ナミ、しっかりしぃ! どこが痛いんや?」
「……頭が……それに、体が……」
ナミは言葉を続けられなかった。
オグリが真剣な顔で彼女を見つめる。
「これは、ただの疲労ではないかもしれない」
「どういうことだ?」
ルフィが尋ねる。
「リトルガーデンで何かに感染した可能性もある。早く医者に診せた方がいい」
その言葉に、一同の表情が変わった。
偉大なる航路の航海は、まだ始まったばかり。
だが、ここでナミを失うわけにはいかない。
ナミは、苦しそうに目を開けた。
「……ごめん……。私……ちょっと……」
「謝るな!」
ルフィが叫んだ。
「すぐに医者を探す! 絶対に治してやるからな!」
ゴールドシップは、いつものふざけた笑顔を消していた。
「……ナミ。お前は、この船の航海士だろ」
彼女はナミの手を握った。
「まだまだ、あたしたちを世界の果てまで連れて行ってもらわなきゃ困るんだ。だから、こんなところで倒れてんじゃねえぞ」
ナミは、わずかに笑った。
「……ゴルシ……。あんた……たまには……いいこと……言うのね……」
「おう! ゴルシちゃんは、やる時はやる女だからな!」
しかし、その声はいつものような勢いを欠いていた。
ナミの容態は、急速に悪化していく。
「……ナミさん!」
サンジが彼女を抱き上げた。
「すぐに船室へ運ぶ!」
「ビビ、手伝って!」
「ええ!」
テイオーも槍を置き、駆け寄った。
「水と毛布を持ってくる!」
「私は薬になりそうなものを探す!」
オグリも動き出す。
フェスタは海図を広げ、ログポースを確認した。
「……次の島まで、どれくらいかかる?」
ナミのいない航海。
それは、一行にとって初めて直面する大きな危機だった。
ルフィは拳を握り、海を睨んだ。
「……絶対に助ける」
その声は、いつになく真剣だった。
偉大なる航路の海は、何事もなかったかのように広がっている。
しかし、メリー号の船上には、重い不安が漂い始めていた。
ナミの体を蝕む病。
そして、次に向かうべき島を示すログポース。
航海士を救うため、一行は決断を迫られることになる。