ウマ娘ONE PIECEダービー~黄金の浮沈船は大海原を駆ける~ 作:武藤 桜
地下遺跡に轟音が響き渡る。
ルフィとゴールドシップ、そしてクロコダイル。三人の激闘によって、古代の石柱は砕け、壁には幾筋もの亀裂が走っていた。天井からは砂と石片が降り注ぎ、遺跡そのものが崩壊の時を迎えようとしている。
「しぶとい奴らだ……!」
クロコダイルが苛立ちを露わにする。右腕を巨大な砂の刃へと変え、ルフィとゴルシへ振り下ろした。
「毒も砂も、もう効かねェぞ!」
ルフィは腕を伸ばして攻撃をかわす。ゴルシも身をひねって砂刃を避け、拳を握り込んだ。
「こっちは砂漠で散々鍛えられたんだ! 砂の扱いなら、もうお腹いっぱいだぜ!」
クロコダイルの身体が砂へと崩れ、二人の攻撃をすり抜ける。
だが、ルフィはすでにその弱点を掴んでいた。
水分――そして、自らの血。
ルフィの拳がクロコダイルの頬を捉える。砂になって逃げることができず、クロコダイルの身体が大きく吹き飛んだ。
「ぐっ……!」
「当たったぞ!」
ルフィが叫ぶ。
ゴルシは拳を鳴らし、ルフィの隣に並んだ。
「よーし、砂の王様! 今度はこっちの番だ!」
二人は一気に間合いを詰める。クロコダイルも砂を操り、鋭い刃と拳を繰り出して応戦した。打撃が交差するたび、遺跡の床が砕け、柱が倒れていく。
「この国も……お前らも……俺の野望の邪魔をするな!」
クロコダイルは両腕を広げ、巨大な砂嵐を巻き起こした。
砂が渦を巻き、遺跡の壁を削り取る。石柱が次々と倒れ、天井が大きく軋んだ。
「うわっ、遺跡ごと吹っ飛ばす気かよ!」
ゴルシが叫ぶ。
「だったら、先にぶっ飛ばす!」
ルフィは拳を引き絞った。
ゴルシも隣で拳を構える。二人の視線が一瞬交わった。
「行くぞ、ゴルシ!」
「おうよ、船長!」
ルフィとゴルシは、残された力をすべて拳へ込めた。
「ゴムゴムのォ――! 暴風雨(ストーム)!!!!!!!!!」
「ゴルシ式・黄金バットォ――!」
二人の全力のラッシュが、クロコダイルを真正面から捉える。
「なにィ――!」
衝撃が砂嵐を突き破り、クロコダイルの身体を遺跡の天井ごと空へと叩き上げた。
轟音とともに石造りの天井が崩壊する。砂煙の向こうへ、クロコダイルの姿が消えていった。
静寂が訪れる。
ルフィとゴルシは、崩れた遺跡の中で肩を上下させていた。
「……勝ったな」
ルフィが呟く。
「おう。いやー、最後は派手にぶっ飛んだな。遺跡の解体費用、誰が払うんだ?」
「知らねェ!」
二人は顔を見合わせ、笑った。
その時、奥から一人の男が姿を現した。
ビビの父、アラバスタ国王ネフェルタリ・コブラ。クロコダイルに囚われていた彼は、二人の戦いを見届けていた。
コブラは疲れた表情の中に、確かな感謝を込めて言った。
「この国を救ってくれて……ありがとう」
ルフィとゴルシは、いつもの調子で笑う。
「いいって!」
「ま、船長の仕事ってやつだな!」
コブラは深く頭を下げた。
一方、王都アルバーナでは、長く続いた戦いがようやく終わりを迎えようとしていた。
スモーカー大佐は、バロックワークスから押収した降雨船を使い、街に大雨を降らせていた。雨は砂埃を洗い流し、兵士たちの熱を冷ましていく。
「全員、武器を下ろせ! これ以上戦う必要はねェ!」
スモーカーの声が戦場に響く。
王国軍と反乱軍は、互いに戸惑いながら動きを止め始めた。
そこへ、傷を負いながらも生き延びたチャカが姿を現した。
「反乱軍の者たちよ! この戦いは、クロコダイルによって仕組まれたものだ!」
そして、もう一人。
ウィスキーピークでビビの囮となり、命を落としたと思われていたイガラムが、満身創痍の姿で現れた。
「私も証言する! 王国と反乱軍を争わせたのは、バロックワークスだ!」
イガラムの言葉と証言が、双方の誤解を解いていく。
戦場に残っていた怒りと疑念は、雨に打たれながら少しずつ薄れていった。
傷だらけのナミたちは、ルフィとゴルシを探して街を歩いていた。
「まったく……あいつら、どこまで行ったのよ!」
ナミが疲れた声を上げる。
「ルフィなら、またどこかで腹を空かせて倒れてるんじゃないか?」
ゾロが肩をすくめる。
「いや、今度はクロコダイルを倒してるかもしれないよ!」
テイオーが前向きに言う。
「どっちにしても、見つけたら説教だね……」
タキオンは白衣の袖を直しながら、チョッパーの肩を借りて歩いていた。
やがて一行は、ルフィを背負ったコブラ王と、隣を歩くゴルシに出会った。
「ルフィ!」
ナミが駆け寄る。
「おい、無事だったのか!」
ゾロも安堵の声を上げた。
ルフィは気を失ったまま、コブラの背中で眠っている。
ゴルシは親指を立てた。
「クロコダイルはぶっ飛ばしたぜ。あとは国の後始末ってところだな!」
ビビがコブラのもとへ駆け寄る。
「お父様!」
「ビビ……」
コブラは娘を優しく見つめた。
ナミはビビの肩に手を置く。
「行ってきなさい。あなたが、この国に必要なんだから」
「うん……!」
ビビは涙を拭い、父と共に終戦の演説へ向かった。
ゴルシは仲間たちを見回す。
「俺たちは後から追いかける。今は、あの二人に任せようぜ」
王宮前。
雨に濡れた国民たちが、コブラとビビを見つめていた。
コブラは一歩前へ出る。疲労と傷を抱えながらも、その声は力強く広がった。
「アラバスタの民よ! 我々は、互いを疑い、争い、傷つけ合ってしまった!」
人々は静かに耳を傾ける。
「だが、我々は同じ国に生きる者だ! この悲劇を乗り越え、もう一度、共に歩んでいこう!」
ビビも父の隣に立ち、国民へと呼びかける。
「もう、戦いを終わりにしましょう! みんなで、この国を取り戻すの!」
その声に、王国軍と反乱軍の兵士たちは、ゆっくりと武器を下ろした。
長い戦いが、ようやく終わった。
少し離れた場所で、ナミたちはその光景を見守っていた。
「……よかった」
ナミが小さく呟く。
「これで、ビビの国は大丈夫だな」
サンジが煙草をくわえながら言う。
オグリは空を見上げた。
「雨が降っている。これなら、作物も育つだろう」
「うん。アラバスタに、また緑が戻るといいね」
チョッパーが頷く。
タキオンは雨粒を手のひらに受け、興味深そうに眺めていた。
「ふむ……自然降雨と人工降雨の相互作用は実に興味深い。後で降雨船の構造を調べ――」
「今はやめとけ!」
ウソップとテイオーが同時に突っ込む。
ゴルシはルフィを覗き込み、にやりと笑った。
「おい船長。起きたら宴だぞ。アラバスタの飯、食い尽くしてやろうぜ」
「……肉……」
眠ったままのルフィが呟く。
一同は思わず笑った。
こうして、アラバスタを救った戦いは幕を閉じた。
その戦いの真実も、名もなき英雄たちの働きも、後世に詳しく語り継がれることはない。
だが、国を救った者たちの笑い声は、確かに雨上がりのアラバスタに響いていた。