ウマ娘ONE PIECEダービー~黄金の浮沈船は大海原を駆ける~ 作:武藤 桜
ビビとコブラ王の演説を見届けたルフィたちは、王宮で治療を受けながら休息の日々を送っていた。
クロコダイルとの激闘から三日。
ルフィだけは、いまだ目を覚まさずにいた。
「……船長、まだ起きねェな」
王宮の一室。ベッドに横たわるルフィを見て、ゴルシが腕を組む。
「三日間も寝てるなんて、よっぽど疲れたんだね」
テイオーが心配そうに顔を覗き込む。
「いや、単に腹が減って起きられないだけじゃないか?」
ゾロが言うと、タマモクロスが呆れたように返した。
「そんなんで三日も寝るかいな!」
その間、仲間たちはそれぞれ思い思いに過ごしていた。
ゾロとタマモは王宮の庭で相変わらず修行に励み、ナミは図書室で航海に役立つ情報を集めている。チョッパーとタキオンは王宮の医師たちと治療法や薬学について意見交換を続けていた。
「この薬草の組み合わせは興味深いねぇ。こちらの世界の医療体系、実に研究しがいがある」
「患者の治療が先だぞ、タキオン!」
チョッパーが釘を刺す。
一方、ウソップとテイオー、サンジとオグリは町へ物資の買い出しに出ていた。
「食料は多めに買っておくぞ」
オグリが真剣な顔で言う。
「お前の場合、多めじゃなくて山ほどだろ!」
サンジが苦笑した。
そして――。
「ゴルシとナカヤマは?」
ナミが図書室から戻り、仲間たちを見回した。
「……いねェな」
ゾロが答える。
「まさか、また何かやらかしたんじゃ……」
ナミの額に青筋が浮かんだ。
その頃、レインベース。
ゴルシとナカヤマフェスタは、町の裏通りにある秘密の賭場を訪れていた。
「いやぁ、アラバスタの裏カジノってのは景気がいいねぇ」
ゴルシが楽しそうに笑う。
「騒ぐなよ。ここは勝負を楽しむ場所だ」
フェスタはカードを手に、鋭い目で卓を見つめていた。
大金を賭けたポーカー。相手は裏カジノの常連たち。フェスタは相手の表情と手札の流れを読み切り、最後の勝負で見事に勝利を収めた。
「……これで決まりだ」
フェスタがカードを伏せる。
卓を囲んでいた男たちが息を呑んだ。
「な、なんだと……!」
「大勝ちじゃねェか!」
ゴルシが歓声を上げる。
「フェスタ、やるじゃねェか!」
「賭けに勝っただけだ」
フェスタは涼しい顔で答えた。
だが、勝利の景品として差し出されたものを見て、二人は目を丸くした。
奇妙な渦巻き模様の果実。
「……悪魔の実か?」
ゴルシが覗き込む。
「自然系――カゼカゼの実、だそうだ」
フェスタは説明書きに目を通す。
「風を操る能力らしいな」
「へえ! 面白そうじゃねェか!」
ゴルシが感心する一方、フェスタは果実を手に取って眺めた。
「……ま、勝負で手に入れたもんだ。どうするかは自分で決める」
そう言って、フェスタは迷わず悪魔の実を口にした。
「うっ……なんだこの味……!」
「悪魔の実ってのは、どれもそんな味らしいぜ!」
ゴルシも笑いながら、果実を受け取った。
「よーし、俺もいっとくか!」
そして、ゴルシも躊躇なくかじりついた。
「……うげぇ! なんだこれ、腐った何かを煮詰めた味か!?」
「だから言っただろ」
フェスタは肩をすくめる。
二人はそのままレインベースを後にした。
さらにその頃。
ゴルシはバロックワークスの本部跡を探索していた。
「いやー、悪党のアジトってのはお宝が眠ってそうだよな!」
崩れた施設の奥。資金調達の交渉材料として保管されていたらしい箱の中に、もう一つ悪魔の実があった。
黄金色の渦巻き模様をした果実。
「……おっ?」
ゴルシは目を輝かせた。
「なんだこりゃ。金色で、いかにも俺向けじゃねェか!」
添えられた資料には、能力名が記されていた。
ゴルゴルの実。
「ゴルゴル……ゴルシ……。これはもう運命だろ!」
ゴルシは一切ためらわず、果実にかじりついた。
「うっっっっまくねェ!!」
当然のように、味は最悪だった。
それでもゴルシは満足げに頷く。
「よし! これで俺もパワーアップだ!」
王宮に戻った二人を待っていたのは、ナミの怒号だった。
「ちょっとあんたたちィィィ!!」
食堂に響き渡る声。
「何よ、その悪魔の実は! 相談もなしに食べたですって!?」
「いやー、勝負で手に入れたんだよ」
フェスタが平然と答える。
「そうそう! しかも俺のは名前がゴルシに似てた!」
ゴルシも胸を張る。
「名前で食べるなァ!」
ナミの拳が二人の頭に落ちた。
「悪魔の実は一つ食べたら泳げなくなるのよ! 能力もまだ分からないのに、なんでそんな簡単に!」
「賭けに勝ったからな」
「運命だったからな!」
「理由になってない!」
ゾロとタマモは呆れた顔で見守り、ウソップとテイオーは苦笑い。
「まあ、二人らしいと言えば二人らしいけど……」
「これ、船に乗ってからも大丈夫かなぁ……」
チョッパーとタキオンは、二つの悪魔の実の能力に興味津々だった。
「自然系の風の能力か……。これは実験、いや観察が必要だねぇ!」
「タキオン、本人の許可を取れよ!」
その騒ぎの最中。
「……ん?」
ベッドの方から声がした。
全員が振り向く。
ルフィが、ゆっくりと目を開けていた。
「ルフィ!」
ナミが駆け寄る。
「船長、起きたか!」
ゴルシも笑顔で近づいた。
ルフィはぼんやりと仲間たちを見回す。
「……腹減った」
次の瞬間。
王宮の医師たちが用意していた果物の山が、ルフィの前に置かれた。
「まずは軽く食べて――」
医師の言葉が終わる前に、ルフィは果物を一瞬で平らげた。
「……え?」
医師たちが固まる。
「三日間寝てたからな!」
ゴルシが豪快に笑う。
「よし! 宴だ! 飯だ!」
ルフィが勢いよく立ち上がる。
「待て、まだ治療中だ!」
チョッパーが叫ぶが、ルフィはすでに食堂へ走り出していた。
王宮の食堂には、コブラ王の計らいで豪勢な料理が並べられた。
王宮のコックたちが総出で腕を振るい、肉料理、魚料理、スープ、焼きたてのパンに山盛りの米まで、次々と運び込まれていく。
「うおおおお! 肉だァ!」
ルフィが歓声を上げる。
「いただきます!」
オグリも目を輝かせ、サンジが料理を取り分ける。
「ほら、オグリ。熱いから気をつけろよ」
「ありがとう、サンジ」
「おかわりもあるぞ!」
「本当か!」
テイオーはウソップと乾杯し、タマモはゾロと料理を取り合い、フェスタはゴルシの隣で酒ではなく果汁の杯を掲げた。
「勝利の後の飯は格別だな」
「だろ? 俺たち、悪魔の実も食ったしな!」
「その話はもういい!」
ナミが即座に突っ込む。
チョッパーは王宮の医師たちに囲まれながら料理を味わい、タキオンは食材の組み合わせについて熱弁を振るっていた。
ビビとコブラ王、王宮の人々も宴に加わる。
「皆さん、本当にありがとう!」
ビビが笑顔で言う。
「この国を救ってくれたこと、決して忘れません!」
ルフィは口いっぱいに肉を頬張ったまま、笑って答えた。
「いいって! 飯がうまけりゃ、それでいい!」
ゴルシも杯を掲げる。
「アラバスタの未来に乾杯だ!」
「乾杯!」
王宮の食堂は、笑い声と歓声に包まれた。
こうして、アラバスタでの戦いを終えた麦わらの一味とウマ娘たちは、王宮の人々と共に盛大な宴を楽しんだ。
そして、その宴の最中にも――新たな悪魔の実の能力者が二人、ひっそりと誕生していたのだった。