ウマ娘ONE PIECEダービー~黄金の浮沈船は大海原を駆ける~ 作:武藤 桜
クロコダイルとバロックワークスの幹部たちは、スモーカー率いる海軍によって次々と拘束された。
アラバスタを揺るがした陰謀は終わり、王国にはようやく平穏が戻り始めていた。
その一方で、海軍本部には新たな報告が届いていた。
麦わらのルフィ、そして黄金の浮沈船ゴールドシップ。二人の活躍と危険性を考慮し、懸賞金が引き上げられたのだ。さらに、剣士ロロノア・ゾロとタマモクロスにも新たな賞金首手配書が発行されることになった。
王宮で手配書を見せられたルフィは、目を輝かせた。
「おおっ! 俺の顔が載ってる!」
「喜ぶな! 賞金首になったんだぞ!」
ナミが怒鳴る。
ゴルシは自分の手配書を眺め、満足げに頷いた。
「よしよし、俺の勇姿が世界に広まるってわけだな!」
「お前も喜ぶな!」
ゾロは手配書を一瞥する。
「……ふん。ようやく俺にも値段がついたか」
「値段て言い方、なんやねん!」
タマモが突っ込む。
麦わらの一味・懸賞金
名前 懸賞金
モンキー・D・ルフィ 1億ベリー
ゴールドシップ 8,000万ベリー
ロロノア・ゾロ 6,000万ベリー
タマモクロス 5,500万ベリー
※アラバスタ事件後の懸賞金。ナミ、ウソップ、サンジ、チョッパー、ナカヤマフェスタ、トウカイテイオー、オグリキャップ、アグネスタキオンは、この時点では新たな懸賞金が設定されていない。
出航の日。
ルフィたちは王宮を後にし、港へ向かった。
ビビとコブラ王、王宮の人々に見送られながら、仲間たちは船へと歩いていく。
「よーし! 次の島へ出発だ!」
ルフィが叫ぶ。
「その前に、食料の積み込みを確認するぞ」
ナミが帳簿を手に言った。
「もちろんだ。オグリがいるから、いつもより多めに必要だな」
サンジが苦笑する。
「必要な分を食べるだけだ」
オグリは真面目に答えた。
その時、港の向こうから聞き覚えのある声が響いた。
「待て待て待てーい! お前らだけで行く気か!」
現れたのは、Mr.2ボン・クレーとその部下たちだった。
「ボンちゃん!?」
ルフィが驚く。
「海軍に捕まるのは御免だ! お前らと一緒に逃げさせてもらうぜ!」
ボン・クレーは大げさな身振りで言った。
「いや、船に乗せるかどうかは――」
ナミが言いかけたところで、ルフィが即答した。
「いいぞ!」
「ルフィ!」
「だって、こいつ面白ェし!」
ゴルシも笑う。
「いいじゃねェか! 宴の続きだ!」
ナミは頭を抱えた。
「もう、どうにでもなれ……!」
ボン・クレーたちが海軍の注意を引きつける中、麦わらの一味は船へ乗り込んだ。
海軍の包囲網
一方、海岸線には海軍の艦隊が待ち構えていた。
指揮を執るのは、大佐ヒナ。そして、ゴールドシップたちウマ娘の存在を把握した海軍大佐、エアグルーヴ。
「ヒナ、対象の船を確認したわ」
エアグルーヴは双眼鏡を下ろす。
「麦わらの一味。加えて、ウマ娘の海賊たち……。報告にあった悪魔の実の能力者もいるようね」
ヒナは腕を組み、静かに答えた。
「ヒナ、逃がすつもりはないわ」
エアグルーヴは部下たちへ指示を飛ばす。
「各艦、包囲を維持! ボン・クレーたちが時間を稼いでいる間に、麦わらの一味を確保する!」
海軍の艦船が、海岸線を塞ぐように動き始めた。
朝の海。
ルフィたちの船は、海軍の包囲網を抜けようと進んでいた。
背後ではボン・クレーたちが派手に海軍を引きつけている。
「お前ら、先に行けーっ!」
ボン・クレーの声が海風に乗って届いた。
「ボンちゃん……!」
ビビは海岸線に立ち、遠くからその姿を見つめていた。
国民への演説を続けながら、彼女はルフィたちへ最後の言葉を送る。
「みんな……! ありがとう! あなたたちと出会えて、本当によかった!」
ルフィたちは船の上からビビを見つめた。
ナミは唇を噛み、ゾロは黙って腕を組む。タマモも涙をこらえながら、ビビの声を聞いていた。
「ビビ……」
ウソップが小さく呟く。
「……本当は、一緒に来てほしいけどな」
テイオーも頷いた。
ビビは王女だ。この国を守るために、ここに残らなければならない。
海軍にルフィたちとの繋がりを知られれば、アラバスタは海賊に手を貸した国として立場を危うくする。クロコダイルから国を救ったとはいえ、その事実は王国にとって大きな問題になりかねなかった。
だからこそ、ビビは別れを選んだ。
ビビは、海岸線に集まった国民たちへ向き直った。
「アラバスタの皆さん! 私はこの国に残ります! 皆さんと一緒に、これからのアラバスタを作っていきたいから!」
歓声と拍手が広がる。
けれど、ビビの視線は何度も海へ向いていた。
船上のルフィが、仲間たちを見回す。
「……おい、みんな」
「何よ?」
ナミが振り返る。
ルフィは左腕を高く掲げた。
そこには、仲間たちがアラバスタへ来る前に交わした、仲間の証――左腕に描かれた「×」印がある。
「これから先も一生仲間だ!!」
ゴルシも左腕を掲げた。
「どこにいたって、俺たちは仲間だぜ!」
ゾロ、タマモ、ナミ、フェスタ、サンジ、オグリ、ウソップ、テイオー、チョッパー、タキオンも、次々と左腕を掲げる。
それぞれの腕に描かれた「×」が、朝日に照らされた。
ビビはその意味を理解し、涙を流しながら笑った。
「……うん!」
カルーも大きく翼を広げ、ビビと並んで左腕の印を掲げる。
「クワァァァ!」
ビビは涙を拭い、声を張り上げた。
「みんなーーー!! また会いましょうーーー!!」
「おう!!」
ルフィたちも声を返す。
船はゆっくりと岸を離れ、アラバスタの海岸線が少しずつ遠ざかっていく。
ナミは涙を拭きながら、いつもの調子を取り戻そうとする。
「……さあ、出航よ! 次の島へ向かうわ!」
「おう!」
ルフィが笑顔で答えた。
ゴルシは船首に立ち、遠ざかるアラバスタを見つめる。
「いやー、いい別れだったな。涙あり、友情あり、そして懸賞金アップあり!」
「最後のは余計や!」
タマモが突っ込む。
フェスタは海を眺めながら、静かに笑った。
「また会う時まで、賭けは続いてるってことだな」
「そうだな!」
ルフィは大きく頷いた。
船は海軍の包囲網を抜け、青い海へと進んでいく。
アラバスタの海岸では、ビビとカルーがいつまでもその姿を見送っていた。
やがて船影が水平線の向こうへ消える。
王女と海賊たち。別々の道を歩むことになっても、左腕に刻まれた仲間の印は消えない。
こうして麦わらの一味とウマ娘たちは、アラバスタを後にした。
次なる目的地――空島へ向かうために。