ウマ娘ONE PIECEダービー~黄金の浮沈船は大海原を駆ける~ 作:武藤 桜
アラバスタの海岸線が遠ざかっていく。
ルフィたちはビビとの別れを胸に刻みながら、船を進めていた。背後では、時間稼ぎをしていたMr.2ボン・クレーとその部下たちが、次々と海軍に捕らえられていく。
「ボンちゃん……」
ナミが振り返り、悔しそうに唇を噛む。
「……あいつらが時間を稼いでくれたおかげで、俺たちは逃げられたんだ」
ウソップが呟いた。
海軍艦隊の指揮を執るエアグルーヴは、遠ざかる麦わらの一味の船を双眼鏡で見つめていた。
「……逃げ切ったか。あのゴールドシップたち、報告以上に厄介な存在ね」
彼女は通信機を手に取る。
「こちらエアグルーヴ。対象の海賊船を取り逃がしました。麦わらのルフィ、ゴールドシップ、ロロノア・ゾロ、タマモクロスを確認。加えて、複数のウマ娘が同船しています」
通信の向こうから、落ち着いた声が返ってきた。
『報告は受け取った。引き続き動向を監視してくれ』
海軍本部。現在、大将の席に着くシンボリルドルフは、報告書に目を通していた。
その傍らには、同じく海軍に入隊した生徒会の面々――エアグルーヴ、そしてグラスワンダーやナリタブライアンらがいた。
「ゴールドシップたちが海賊として活動している、か」
ルドルフは静かに呟く。
「彼女たちの行動は、今後の海軍にとっても無視できない。エアグルーヴ、引き続き監視を。必要ならば、こちらからも人員を動かそう」
「了解しました」
ルドルフは報告書を閉じ、窓の外を見つめた。
「……ゴルシ。君は一体、どこまで行くつもりなのだろうな」
一方、海の上。
船の甲板には、別れの余韻が残っていた。
「ビビ……元気でやってるかな」
チョッパーが海を見つめる。
「王女として、きっと頑張ってるよ」
テイオーが励ますように言った。
ルフィは船首に座り、遠くを見ていた。
「また会えるさ」
ゴルシが隣に腰を下ろす。
「そうそう。別れってのは、次の再会の前フリだからな!」
「……なんだそれ」
ゾロが呆れたように言う。
その時だった。
「……あなたたち、ずいぶん楽しそうね」
聞き覚えのない女の声が、甲板に響いた。
全員が振り向く。
そこに立っていたのは、黒髪の女性――ニコ・ロビンだった。
「ロビン!?」
ナミが驚く。
「どうしてここに……!」
ロビンは静かに微笑んだ。
「クロコダイルを裏切ろうとして、負傷したの。地下遺跡が崩れる時、私はそこで終わるつもりだった」
彼女は一度視線を落とす。
「でも、ルフィとゴールドシップが……コブラ王と一緒に、私を地上まで連れて行ってくれた」
ルフィは首を傾げる。
「そうだっけ?」
「お前、覚えてねェのかよ!」
ウソップが叫ぶ。
ロビンは小さく笑った。
「行く場所も、帰る場所もない。だから……あなたたちの船に乗せてもらえないかしら?」
甲板に沈黙が落ちる。
ナミは警戒した表情を浮かべたが、ルフィはあっさり答えた。
「いいぞ!」
「ルフィ!?」
「だって、面白そうじゃん!」
ゴルシも頷いた。
「歓迎するぜ。考古学者ってのは、冒険に必要な人材だろ!」
ロビンは少しだけ目を見開き、それから穏やかに微笑んだ。
「ありがとう」
その直後、船の後方から元気な声が飛んできた。
「ゴールシーーーッ!」
「ん?」
ゴルシが振り返る。
海面を跳ねるように近づいてくる影。小舟に乗っていたのは、ステイゴールドだった。
「お前、どうしてここに!?」
ゴルシが驚く。
ステイゴールドは小舟から船へと飛び移り、軽く着地した。
「お前らの冒険、楽しそうじゃん。だから、俺も乗せてくれよ」
「おおっ! ステゴ!」
ゴルシが笑顔で迎える。
ステイゴールドはルフィたちを見回した。
「海賊の船で世界を回るなんて、退屈しなさそうだ。俺も仲間にしてくれ」
ルフィは迷わず頷いた。
「いいぞ!」
「即決かよ!」
ナミが頭を抱える。
こうして、ニコ・ロビンとステイゴールドが新たな仲間として加わった。
ロビンは静かに船内を見渡し、ステイゴールドはゴルシの隣で笑っている。
新しい仲間を迎え、麦わらの一味とウマ娘たちの航海は、再び動き出そうとしていた。
「よーし! 新しい仲間も増えたことだし、改めて出航だ!」
ルフィが拳を突き上げる。
「おう!」
ゴルシも応じ、ステイゴールドは船首に腰掛けて海を眺めた。
「さて、次はどんな島に行くんだ?」
「それは航海士のナミに聞け!」
ウソップが言う。
ナミは記録指針を確認しながら答えた。
「次の目的地は……」
その時だった。
「ん? なんか影が……」
チョッパーが空を見上げる。
雲の上から、巨大な影が近づいてくる。
「……船?」
ナミが目を凝らした。
次の瞬間――
轟音とともに、巨大なガレオン船が空から落ちてきた。
「うわああああああああっ!!」
「船が降ってきたァァァ!!」
ウソップとテイオーが叫ぶ。
「全員、避けろ!」
ゾロが声を張り上げ、タマモが仲間たちを引っ張る。
ルフィとゴルシは目を輝かせた。
「空から船が降ってきたぞ!」
「すげェ! どうなってんだこれ!」
二人が喜んでいる間にも、落下したガレオン船は海面へ激突し、大きな水柱を上げた。
衝撃で船が大きく揺れる。
「喜んでる場合かァ!」
ナミが怒鳴った。
甲板には、落下した船から飛び散った木片や荷物が散乱していた。さらに、空から降ってきたものは船だけではなかった。
「……あれ?」
チョッパーが甲板の隅を見つめる。
そこには、人骨が転がっていた。
「ぎゃあああああああ!! 骨が降ってきたァァァ!!」
ウソップが飛び上がる。
「人骨……? 船に乗っていた人のものかしら」
ロビンが興味深そうに近づく。
「おい、触るな! 動いたらどうすんだ!」
ウソップが慌てて止めた。
「骨が動くわけないだろ」
ゾロが呆れる。
その時、ルフィが骨を指差した。
「おい、こいつ、なんか面白そうだぞ!」
「面白がるな!」
騒ぎが落ち着いたところで、ナミは記録指針を確認した。
「……え?」
針が、いつもとは違う方向を指している。
「ちょっと待って。記録指針のログが……」
ナミは何度も確認する。
「おかしいわ。次の島を指してない……!」
「どういうことだ?」
ゾロが尋ねる。
ナミは空を見上げた。
「……空島に、ログを奪われたみたい」
「空島?」
ルフィが目を輝かせる。
「空に島があるのか!?」
ゴルシも船首から身を乗り出した。
「マジかよ! 空の島って、雲の上にあるのか? 金銀財宝も空から降ってくるのか!?」
「そんな都合のいい話があるか!」
ナミが突っ込む。
ロビンは落下したガレオン船を見つめ、静かに呟いた。
「空から落ちてきた船……。そして、空島に向かうような記録指針。偶然とは思えないわね」
ステイゴールドは楽しそうに笑った。
「いいじゃん。普通の航海じゃ味わえない冒険になりそうだ」
「そうだな!」
ルフィが大きく頷く。
「空島へ行こう!」
「待ちなさい! まだ行き方も分かってないでしょうが!」
ナミの叫びが、青い海に響き渡った。
こうして、アラバスタを後にした麦わらの一味とウマ娘たちは、新たな仲間を迎えた直後に、空からの落下船と謎の人骨、そして空島への手掛かりに遭遇する。
新たな冒険は、早くも前途多難――いや、前途多段の大騒ぎとなるのだった。