ウマ娘ONE PIECEダービー~黄金の浮沈船は大海原を駆ける~ 作:武藤 桜
「で、空島ってどうやって行くんだ?」
船の甲板でルフィが首を傾げた。
「それが分かれば苦労しないわよ!」
ナミは記録指針を睨みつける。針は空を指すでもなく、海面を指すでもなく、ただ奇妙な方向を示していた。
「空島なんて、雲の上にあるんだろ? どうやって船で行くんだよ……」
ウソップが頭を抱える。
「空に道があるのかしらね」
ロビンは落下してきたガレオン船の残骸から回収された人骨を前に、静かに考え込んでいた。
「まずは、この船がどこから来たのか調べてみましょう」
人骨の状態を確かめながら、ロビンは骨の損傷や付着物を細かく観察する。ステイゴールドも隣で手伝っていた。
「骨の表面に、海水じゃない成分が付いてるな。土地によって埋葬や保存の文化も違う。こういうのは、いろんな地域の習俗を見てきた経験が役に立つかもしれない」
「助かるわ、ステイゴールド」
二人は人骨の状態と船の残骸を照らし合わせ、少しずつ手掛かりを絞っていく。
やがてロビンが、ある結論にたどり着いた。
「この船は、かなり昔に空から落ちてきたもののようね。船体の損傷と人骨の状態から考えると……ジャヤという島に関係している可能性があるわ」
「ジャヤ?」
ルフィが反応する。
「島の名前か?」
「ええ。ただ、まだ確証はないわ」
その時、船の残骸を調べていたルフィとウソップが、海面に浮かぶ木片の中から一枚の紙を見つけた。
「おい! なんか地図っぽいのがあるぞ!」
ウソップが声を上げる。
ルフィは紙を広げた。
「これ、空島の地図じゃねェか?」
「まだ分からないってば!」
ナミが紙を受け取って確認する。
それは古びた地図のようなものだった。海図の一部なのか、島の見取り図なのか、判然としない。
「船の残骸をもっと調べれば、何か分かるかもしれないわね」
「海底調査なら、俺が作った潜水服の出番だな!」
ウソップは得意げに胸を張った。
彼が用意した潜水服と吸気ホースを使い、海底に沈んだガレオン船の残骸を調べることになった。
潜るのは、ルフィとゴルシ、ゾロとタマモ、サンジとオグリの六人。
「よし、行くぞ!」
ルフィが海へ飛び込む。
「おい、船長! ちゃんとホースを確認しろよ!」
ウソップが叫ぶ。
「大丈夫だ!」
ゴルシも続いて潜り、ゾロとタマモ、サンジとオグリも海底へ向かった。
海底に沈んだガレオン船は、長い年月を経て大きく崩れていた。船内は荒れ果て、積荷らしきものはほとんど残っていない。
「まるで内乱でもあった後みたいやな……」
タマモが船内を見回す。
「争いがあったのかもしれないな」
ゾロが答えた。
ルフィは床に散らばる木片を拾い上げる。
「使えそうなもん、全然ねェな」
「こりゃあ、空島の手掛かりどころじゃねェぞ」
ゴルシが残骸を調べていると、海底の向こうから別の船影が近づいてきた。
サルベージを得意とするマシラ海賊団だった。
「おい、あのガレオン船を引き上げるぞ!」
マシラの部下たちが残骸に取り付き、引き上げ作業を始める。
「おいおい、俺たちが調べてるんだぞ!」
ゴルシが抗議するが、マシラたちは聞く耳を持たない。
ところが――。
海底から、巨大な影がゆっくりと現れた。
「……亀?」
オグリが呟く。
巨大な亀は、ガレオン船の残骸へ近づくと、そのまま船体をかじり始めた。
「ええええええっ!?」
海底の残骸が、巨大な亀の口の中へ次々と消えていく。
海上では、ウソップが大騒ぎしていた。
「残骸が食われてるゥゥゥ!! 俺たちの調査が! 地図が! 全部台無しだァァァ!!」
ナミは状況を見つめ、しばらく黙っていた。
そして一言。
「……ごめん!」
言い終えると、妙にすっきりした顔になった。
「なんで謝ってスッキリしてんだよォォォ!」
ウソップが叫ぶ。
一方、マシラ船長は残骸の中に取り残されていた。
「船長を助けろ!」
マシラ海賊団の仲間たちが必死に救出しようとする。
その姿を見て、ウソップたちも動こうとした。
「おい、助けに行かないと!」
だが、ナミが即座に制止する。
「今すぐ吸気ホースを切離して安全確保!」
「えっ!?」
「巨大な亀が近くにいるのよ! まずは自分たちの安全を確保しなさい!」
その直後、海面が大きく揺れた。
「うわっ、何だ!?」
巨大な亀が海面近くまで浮上する。
そして、その甲羅の上から――
「ぷはっ!」
ルフィたち六人が飛び出してきた。
「なんだこの亀ェェェ!?」
ルフィが驚く。
「俺たち、船の中にいたはずだぞ!?」
ゴルシも目を丸くした。
「まさか……残骸ごと食われてたのか!?」
ゾロとタマモも、ようやく事態を理解する。
「どおりで、船が揺れたわけや……!」
「まったく、とんでもねェ海だな」
マシラ船長も、なんとか脱出して船へ戻ってきた。
「お前ら……俺の船をどうしてくれる!」
「いや、俺たちのせいじゃねェだろ!」
ゴルシが言い返す。
マシラが怒鳴り返そうとした、その時だった。
突然、空が暗くなった。
昼間だったはずの海が、瞬く間に夜のような闇に包まれる。
「……え?」
ナミが空を見上げる。
霧の向こうに、巨大な人影がいくつも浮かび上がった。
その大きさは、巨人族の何十倍にも見える。
「な、なんだあれ……!」
ウソップが震える。
「巨人……いや、でかすぎるだろ!」
テイオーが声を上げる。
ロビンも表情を引き締めた。
「この現象……自然のものとは思えないわ」
ステイゴールドは霧の向こうを見つめ、低く呟いた。
「……冗談みたいな光景だな」
ルフィたちも、さすがに笑ってはいられなかった。
「逃げるぞォォォ!!」
ナミの叫びと同時に、全員がオールを手に取った。
マシラ海賊団も含め、船に乗っていた者たちは必死にその場から離れようとする。
「漕げ! 漕げェェェ!」
ゴルシが叫び、ルフィも全力でオールを動かす。
「うおおおおお!」
ゾロとタマモ、サンジとオグリも力を合わせて漕ぎ続けた。
やがて、空の闇は消え、霧も薄れていく。
再び昼間の青空が戻ってきた。
船上には、疲れ切った一同が座り込んでいた。
「……今日一日で、何回死ぬかと思ったんだよ」
ウソップがぐったりと呟く。
「空から船が降ってきて、海底で亀に食われて、空が夜になって巨人みたいなのが出てきて……」
「改めて考えると、めちゃくちゃだな」
ゾロもため息をついた。
マシラ船長も、船の上で肩を落としていた。
「俺のサルベージ船が……」
ナミは腕を組む。
「とにかく、今日はもう調査は終わり。これ以上何か起きたら、船がもたないわ」
「賛成だ……」
ウソップが力なく頷いた。
その時、ロビンが手にしたものを見せた。
「実は、少し手掛かりを持ち帰れたの」
「何だ?」
ゾロが尋ねる。
「マシラの船にあった、ジャヤへの永久指針よ」
「いつの間に!?」
マシラが叫ぶ。
ロビンは微笑むだけだった。
「どさくさに紛れて、少し借りたの」
「借りたってレベルじゃねェだろ!」
ウソップが突っ込む。
ルフィは永久指針を覗き込み、目を輝かせた。
「ジャヤ! そこに行けば空島のことが分かるんだな!」
「まだ確定じゃないけど、今のところ一番有力な手掛かりね」
ナミが指針を確認する。
「……よし。ジャヤへ向かうわ!」
「おう!」
ルフィとゴルシが声を揃えた。
マシラ船長は船から蹴り飛ばされ、海へ落ちていく。
「お前らァァァ! 覚えてろォォォ!」
「またなー!」
ルフィが手を振った。
こうして一同は、ロビンが手に入れたジャヤへの永久指針を頼りに船を進める。
空島への道はまだ見えない。
だが、次なる目的地は決まった。
ジャヤ。
そして、その先に待つ冒険もまた、常識では測れないものになりそうだった。