ウマ娘ONE PIECEダービー~黄金の浮沈船は大海原を駆ける~   作:武藤 桜

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第二十三話「ジャヤ編――嘲笑の町と夢を追う者たち」

ジャヤ島、モックタウン。

 

グランドラインに存在するこの町は、海賊たちが集まる無法地帯だった。酒場には荒くれ者たちがたむろし、町の至る所で喧嘩や騒ぎが起きている。

 

そんな町に上陸したルフィたちは、空島へ行く方法を探すため、まずは情報収集を始めることにした。

 

「よーし! 空島のことを知ってる奴を探すぞ!」

 

「お前の場合、情報収集より先に食い物を探しそうだけどな」

 

ゴルシが呆れたように言う。

 

「だって腹減ったし!」

 

「……否定しねぇのかよ」

 

「まあまあ。まずは酒場で話を聞いてみましょう」

 

ナミがそう言うと、隣にいたフェスタも頷いた。

 

「こういう町なら、何かしら情報が転がっているだろう。もっとも、まともな情報かどうかは別だがな」

 

「せやな。期待しすぎん方がええかもしれんで」

 

タマモも周囲を警戒しながら歩き出す。

 

こうしてルフィ、ゴールドシップ、ゾロ、タマモ、ナミ、ナカヤマフェスタの六人は、町の酒場へと入っていった。

 

店内は荒くれ者の海賊たちで溢れ返っていた。酒瓶を片手に騒ぐ者、テーブルに足を乗せて談笑する者、喧嘩の真っ最中の者までいる。

 

「うわー! すげぇところだな!」

 

「おいルフィ、あんまりキョロキョロするなよ」

 

ゾロが注意するが、ルフィは聞いているのかいないのか、空いている席を探していた。

 

そのとき、ルフィの目に隣の席に座る一人の男が映った。

 

黒い髭を蓄えた大柄な男。豪快に食事をしているその男は、ルフィたちが近くに座っても特に気にする様子はなかった。

 

「なあ、お前!」

 

ルフィが突然声を掛ける。

 

「ん?」

 

男が顔を上げた。

 

「空島って知ってるか?」

 

「空島?」

 

男は少し考えるようにしてから、ルフィに尋ね返した。

 

「お前、空島を目指してるのか?」

 

「ああ!」

 

ルフィは迷いなく答えた。

 

「へぇ……」

 

男は何か言いたげに笑った。

 

その直後だった。

 

「ギャハハハハハハハ!!」

 

酒場の奥から大きな笑い声が響いた。

 

「空島だと!? まだそんな夢みてぇなこと言ってる奴がいるのかよ!」

 

大勢の荒くれ者たちを引き連れた男が、こちらへ歩いてくる。

 

その男こそ、ベラミー海賊団船長――ベラミーだった。

 

「おいおい、今どき空島なんて信じてる奴がいるとはな!」

 

ベラミーはルフィたちを見下すように笑う。

 

「空島なんてものは存在しねぇ。そんなもんを探す奴はただの馬鹿だ!」

 

「何だと?」

 

ゴルシが眉をひそめる。

 

「お前ら、夢を追うのがそんなにおかしいか?」

 

「夢だぁ? 笑わせるなよ!」

 

ベラミーの仲間たちも一斉に笑い出した。

 

「海賊なら現実を見ろよ! 大海賊時代は終わったんだ! 今は実力の時代だぜ!」

 

「そうそう! 空島だの黄金郷だの、そんな夢物語を信じてる奴は時代遅れなんだよ!」

 

その言葉に、タマモは不快そうに眉を寄せた。

 

「なんやこいつら……。人の夢を笑うて、何が楽しいんや」

 

「相手にするだけ無駄だ。酔っ払いの戯言だろう」

 

ゾロは興味なさそうに酒場の壁にもたれかかる。

 

ナミとフェスタも、ベラミーたちを相手にする気はないようだった。

 

「それで、空島の情報は?」

 

フェスタが店主に尋ねる。

 

しかし、周囲の海賊たちは質問を聞いてさらに笑い声を上げた。

 

「まだ聞くのかよ!」

 

「いい加減にしろ!」

 

そして、ベラミーの仲間の一人が手にしていた酒瓶を投げつけた。

 

ガシャンッ!!

 

瓶がテーブルの近くで砕け、破片がルフィたちの方へ飛び散る。

 

「っ……!」

 

ルフィの頬に小さな傷ができ、ゴルシの腕にも破片が当たった。

 

「おい……!」

 

タマモが立ち上がりかける。

 

「待て、タマ」

 

ゾロが片手を上げて制止した。

 

「こんな奴らに構っても仕方ねぇ」

 

「けど、ゾロ!」

 

「怪我は大したことねぇ。ここで暴れたところで、情報が手に入るわけでもねぇだろ」

 

ゴルシは頬を拭い、飛び散った酒瓶の破片を見下ろした。

 

「……ま、そうだな。こいつらの相手をしてやる義理もねぇ」

 

ルフィもベラミーたちを見つめていたが、拳を握ることはなかった。

 

「行こう」

 

その一言に、ナミたちは頷いた。

 

「そうね。こんなところにいても時間の無駄だわ」

 

「賢明な判断だな」

 

フェスタも立ち上がる。

 

ベラミーたちは、何も言い返さずに酒場を出ていくルフィたちを見て、ますます大きな笑い声を上げた。

 

「逃げるのかよ! 夢見る海賊さんたち!」

 

「ギャハハハハハハ!!」

 

しかし、ルフィたちは振り返らなかった。

 

酒場を出たルフィたちの前に、先ほど隣の席に座っていた黒髭の男がいた。

 

男はルフィたちの様子を見て、豪快に笑った。

 

「ゼハハハハハ! お前ら、なかなか面白ぇ奴らだな!」

 

「さっきの……」

 

ルフィが男を見る。

 

男はルフィたちに向かって言葉を続けた。

 

「人の夢は終わらねぇ!」

 

その言葉に、ルフィとゴルシは足を止めた。

 

「笑われて行こうじゃねぇか。夢を追えば、立つ拳の見つからねぇ喧嘩もあるさ」

 

男は酒場の方を振り返り、なおも笑い続けるベラミーたちを見やった。

 

「行けるといいな、空島へ」

 

「……!」

 

ルフィの顔に、再び笑顔が戻る。

 

「おう!」

 

ゴルシもニッと笑った。

 

「おっさん、いいこと言うじゃねぇか! その通りだぜ!」

 

「ゼハハハハ! そうかい!」

 

男は満足そうに笑うと、そのまま町の雑踏へと歩き去っていった。

 

「変わったおっさんだったな」

 

ゾロが呟く。

 

「でも、あいつの言葉は本物だったと思うぜ」

 

ゴルシは男の背中を見送りながら言った。

 

「夢を笑う奴もいれば、夢を応援してくれる奴もいるってことだな」

 

「うん! 絶対に空島へ行くぞ!」

 

ルフィの言葉に、仲間たちはそれぞれ頷いた。

 

その後、ルフィたちはゴーイングメリー号へと戻った。

 

船ではロビンが町で集めてきた情報を整理していた。

 

「お帰りなさい。何か収穫はあったかしら?」

 

「うーん、あんまり!」

 

ルフィが正直に答える。

 

「酒場では空島のことを笑われただけだったな」

 

ゴルシが肩をすくめる。

 

「ただ、町で少し情報を集めてきたわ。どうやら島の反対側に、黄金伝説を調べている人物がいるらしいの」

 

「黄金伝説?」

 

ナミが反応する。

 

「ええ。北の海では有名な絵本の主人公、モンブラン・ノーランド。その子孫にあたる人物だそうよ」

 

「ノーランドって、あの『うそつきノーランド』の?」

 

ウソップが尋ねる。

 

「そう。実話を元にした絵本らしいわね」

 

「実話ってことは、本当に黄金郷があったってことか!?」

 

ルフィが目を輝かせる。

 

「それはまだ分からないわ。本人に聞いてみるのが一番でしょう」

 

ロビンが微笑む。

 

「よし! じゃあ島の反対側に行こう!」

 

ルフィの号令で、メリー号は島の反対側へと向かうことになった。

 

ところが、その道中――。

 

「おーい! 待てぇーい!!」

 

海上から大きな声が響いた。

 

「ん?」

 

ルフィたちが振り返ると、そこには巨大な男が率いる海賊団の船が迫っていた。

 

「マシラの仲間……ショウジョウ海賊団だ!」

 

フェスタが相手の船を見て言った。

 

「ショウジョウだと?」

 

ゾロが刀に手を掛ける。

 

「おそらく、マシラの一件で俺たちを追ってきたんだろうな」

 

「うわっ! また面倒なのが来たぞ!」

 

ウソップが慌てる。

 

ショウジョウ海賊団は大声を上げながらメリー号へと接近してきた。

 

「逃がすかぁー!!」

 

「とにかく逃げるぞ!」

 

ナミの指示に従い、メリー号は急いで進路を変えた。

 

「おおおっ! 追ってきたぞ!」

 

「もっと速く! もっと速く進めぇー!」

 

「お前ら、騒ぎすぎだろ!」

 

ゴルシは笑いながら帆を確認する。

 

こうしてルフィたちはショウジョウ海賊団から逃げながら、ようやく島の反対側へと辿り着いた。

 

島の反対側。

 

そこには、海岸沿いに建てられた一軒の家があった。

 

周囲には大きな木が生い茂り、少し離れた場所には船が停泊している。

 

「ここにノーランドの子孫がいるのね」

 

ロビンが周囲を見回す。

 

「おーい! 誰かいねぇかー!」

 

ルフィが大声で呼びかけた。

 

すると、家の中から一人の男が現れた。

 

頭にバンダナを巻き、無精髭を生やした大柄な男。

 

「何だ、お前らは?」

 

「お前がモンブラン・クリケットか?」

 

ゴルシが尋ねる。

 

「そうだが……何の用だ?」

 

「俺たちは空島を探しているんだ!」

 

ルフィが堂々と答えた。

 

その言葉を聞いたクリケットは、少しだけ表情を変えた。

 

「空島だと?」

 

「そう! 空に島があるんだろ? そこへ行きたいんだ!」

 

「……なるほどな」

 

クリケットはルフィたちを見渡すと、家の中へ招き入れた。

 

「話を聞かせてやる。だが、空島を目指すなら覚悟しておけ」

 

「おう!」

 

クリケットは自分がモンブラン・ノーランドの子孫であること、そして先祖の伝説を調べ続けていることを語った。

 

北の海で語り継がれる絵本『うそつきノーランド』。

 

その主人公であるノーランドは、かつてジャヤを訪れ、黄金郷を発見したと報告した。しかし、帰国した後に再びジャヤを訪れた際には黄金郷が消えていたため、嘘つきとして処刑されてしまったという。

 

「ノーランドは嘘つきなんかじゃなかった」

 

クリケットは静かに言った。

 

「俺はそう信じている。だからこそ、先祖が見たという黄金郷の真実を確かめるために、この島で調査を続けているんだ」

 

「じゃあ、本当に黄金郷があったんだな!」

 

ルフィが身を乗り出す。

 

「それを確かめるために調べているんだ。簡単に答えが出る話じゃねぇ」

 

クリケットはそう言って、一冊の古びた航海日誌を取り出した。

 

「これがノーランドの航海日誌だ」

 

「おおっ!」

 

ルフィたちは興味津々で覗き込む。

 

「この日誌によれば、空島が存在する可能性は十分にある。ジャヤ周辺には、時折、積帝雲と呼ばれる特殊な雲が現れるんだ」

 

「積帝雲……?」

 

ロビンが日誌を覗き込む。

 

「積帝雲は通常の雲とは違う。長期間にわたって同じ場所に留まり、まるで空に浮かぶ大陸のようになることもあるらしい」

 

クリケットは地図を広げた。

 

「そして、空島へ向かう手段は一つ。近海の海底火山が発生させる巨大な海流――ノックアップストリームだ」

 

「海流で空まで飛ぶのか!?」

 

ウソップが目を見開く。

 

「そうだ。海底火山の噴火によって海水が空高く突き上げられる。その流れに乗れば、空島へ行ける可能性がある」

 

「すっげぇ!!」

 

ルフィが大喜びする。

 

「ただし、いつどこで発生するかは分からねぇ。周囲の天候を読み、積帝雲が発生している場所を見極める必要がある」

 

「なるほどね……。つまり、適当に海へ出ても駄目ってことね」

 

ナミが腕を組む。

 

「そういうことだ。だから俺たちは、まずジャヤ周辺の海域を調べる必要がある」

 

「なら、必要なのは方角を正確に知ることだな」

 

フェスタが地図を確認する。

 

「でも、普通の方位磁針じゃ積帝雲の位置までは分からないんじゃない?」

 

ナミの疑問に、クリケットは頷いた。

 

「そこで必要になるのが、サウスバードだ」

 

「サウスバード?」

 

「ジャヤに生息する鳥だ。常に南を向いている。あいつを捕まえれば、少なくとも方角を見失うことはない」

 

「よし! そいつを捕まえよう!」

 

ルフィが勢いよく立ち上がる。

 

「待ちなさい。生け捕りにするのよ。傷つけたり逃がしたりしたら意味がないんだからね」

 

ナミが釘を刺す。

 

「分かってるって!」

 

「本当かしら……」

 

ゴルシはそんなルフィを見て、ニヤリと笑った。

 

「ま、鳥捕まえなら任せとけ。ゴルシ様の捕獲テクニックを見せてやるぜ!」

 

「お前の捕獲テクニックって何だよ……」

 

ゾロが呆れたように呟いた。

 

こうしてルフィたちは、サウスバードを生け捕りにするためジャングルへと向かった。

 

ルフィたちがサウスバードを探しに出かけている頃。

 

クリケットの家には、別の海賊たちが現れていた。

 

「おいおい、これはまた随分と立派な家じゃねぇか」

 

ベラミー海賊団。

 

先ほど酒場でルフィたちを嘲笑した海賊団だった。

 

彼らはクリケットの家へと押し入り、家の中を荒らし始める。

 

「おい! 何をする!」

 

クリケットが止めようとするが、ベラミーたちは聞く耳を持たなかった。

 

「ここに黄金があるんだろ? ノーランドの黄金伝説ってやつだ!」

 

「そんなものを探してどうする?」

 

「決まってんだろ。金になるからだ!」

 

ベラミーたちは、クリケットが長年の調査で集めてきた黄金を奪い去ってしまった。

 

「待て! それは俺の……!」

 

クリケットは追いかけようとするが、ベラミーたちに押さえつけられてしまう。

 

そして、彼らが去った後。

 

サウスバードを捕まえたルフィたちが帰ってきた。

 

「ただいまー!」

 

「捕まえたぞ!」

 

ゴルシが得意げにサウスバードを掲げる。

 

「おお! よくやった!」

 

クリケットが喜ぶ。

 

しかし、家の中の惨状を見たルフィたちはすぐに異変に気づいた。

 

「……何だこれ?」

 

「おい、クリケット! 何があったんだ?」

 

ゴルシが尋ねると、クリケットは悔しそうに拳を握った。

 

「ベラミーの野郎どもだ……。俺が集めていた黄金を奪っていきやがった」

 

「ベラミー……」

 

ルフィの表情から笑顔が消える。

 

酒場での出来事が脳裏をよぎった。

 

「黄金を取り返してくる」

 

ルフィは短く言った。

 

「待て。あいつらはかなりの数がいる。お前たちがわざわざ危険を冒す必要はねぇ」

 

「いいんだ」

 

ルフィはクリケットを見た。

 

「お前の大事なものなんだろ?」

 

「……!」

 

ゴルシも頷く。

 

「夢を追いかけるために集めた黄金を、夢を笑う奴らに奪われたままなんて気に入らねぇ。ここはひとつ、ゴルシ様たちに任せとけ!」

 

「ゴルシ、行くぞ!」

 

「あいよ!」

 

二人はクリケットの制止を振り切るようにして、ベラミー海賊団のもとへ向かった。

 

ベラミー海賊団の根城。

 

奪い取った黄金を前に、ベラミーたちは大笑いしていた。

 

「これだけあれば十分だな!」

 

「ノーランドの黄金伝説なんて、結局は金儲けのネタってわけだ!」

 

そこへ、二人の影が現れる。

 

「おい」

 

ベラミーが振り返る。

 

「誰だ、お前ら?」

 

「奪ったもんを返してもらいに来た」

 

ルフィが言う。

 

「何だと?」

 

「クリケットの黄金だ。返せ」

 

ゴルシも続ける。

 

ベラミーは二人の顔を見ると、酒場での出来事を思い出したように笑った。

 

「何だ、お前らか。まだ空島なんて夢見てやがるのか?」

 

「うるせぇ。黄金を返せ」

 

「返せだと? これは俺たちが奪ったもんだ。返す理由なんかねぇ!」

 

ベラミーが笑いながら一歩前へ出る。

 

「それに、俺たちは今の時代に合った海賊をやってるんだ。夢だのロマンだの、そんなもんに価値はねぇ!」

 

「……そうか」

 

ルフィが静かに呟く。

 

「じゃあ、返してもらうぞ」

 

次の瞬間。

 

ルフィの拳がベラミーへと飛んだ。

 

「ゴムゴムの――!」

 

しかし、技の名を言い終えるより早く、ゴルシも同時に踏み込んでいた。

 

「ゴルシ式――黄金バット!!」

 

ドゴォン!!

 

二人の攻撃がほぼ同時にベラミーを捉えた。

 

「ぐああああっ!!」

 

ベラミーの巨体が吹き飛び、周囲の建物を巻き込むように倒れ込む。

 

一撃だった。

 

あまりにもあっけない決着に、ベラミーの仲間たちは呆然と立ち尽くした。

 

「な……何が起きた……?」

 

「ベラミーが……一撃で……!?」

 

ルフィとゴルシは、倒れたベラミーに目もくれず、奪われた黄金を確認する。

 

「これだな!」

 

「ああ。持って帰るぞ」

 

二人は黄金を担ぎ上げた。

 

そのとき、ベラミー海賊団の一人が声を上げた。

 

「お、お前ら……何処へ向かうつもりだ!?」

 

ルフィとゴルシは、まるで何でもないことのように答えた。

 

「空」

 

「空だぜ!」

 

二人は黄金を担いだまま、堂々とその場を後にした。

 

残されたベラミー海賊団の面々は、ただ呆然とその背中を見送ることしかできなかった。

 

クリケットの家。

 

「おーい! 持ってきたぞー!」

 

ルフィとゴルシが戻ってくる。

 

その手には、奪われた黄金がしっかりと抱えられていた。

 

「おお……!」

 

クリケットは目を見開く。

 

「本当に取り返してきたのか……!」

 

「当たり前だろ!」

 

ルフィは笑顔で答える。

 

「これで元通りだな!」

 

ゴルシも黄金を置きながら胸を張る。

 

「ゴルシ様と船長のコンビにかかれば、あんな連中なんて朝飯前よ!」

 

「お前も食い物の話をするのか……」

 

ゾロが呆れる。

 

「それより、これで準備は整ったんじゃないか?」

 

フェスタがサウスバードを確認しながら尋ねた。

 

「そうだな。あとは天候を見極め、ノックアップストリームの発生地点を探すだけだ」

 

クリケットは黄金を見つめた後、ルフィたちへ視線を向けた。

 

「お前たちは本当に空島へ行くつもりなんだな」

 

「もちろん!」

 

ルフィは即答する。

 

「空に島があるなんて、面白そうじゃねぇか!」

 

「黄金があるかどうかも気になるしな!」

 

ゴルシも笑う。

 

クリケットはそんな二人を見て、少しだけ口元を緩めた。

 

「空島は伝説だ。だが、それが空想だと証明した奴は誰もいねぇ」

 

彼はゆっくりと立ち上がり、ルフィたちの前に立った。

 

「これこそロマンだ!!」

 

その声には、長年先祖の伝説を追い続けてきた男の誇りが込められていた。

 

「お前たちなら、きっと辿り着けるかもしれねぇな」

 

「おう!」

 

ルフィは笑顔で拳を握る。

 

「絶対に行ってやる!」

 

「待ってろよ、空島! ゴルシ様がその全貌を暴いてやるぜ!」

 

「お前は何をするつもりなんだ……」

 

ゾロの呆れ声に、仲間たちから笑いが漏れた。

 

やがてルフィたちはメリー号へと戻り、出港の準備を始めた。

 

クリケットは海岸まで出て、彼らの船を見送る。

 

「気をつけろよ! ノックアップストリームは生半可なもんじゃねぇぞ!」

 

「分かってる!」

 

ルフィが船上から手を振る。

 

「じゃあな、クリケット!」

 

「また会おうぜ!」

 

ゴルシも大きく手を振った。

 

メリー号の帆が風を受け、ゆっくりと海岸から離れていく。

 

クリケットはその姿が小さくなるまで見送っていた。

 

空島は伝説の場所。

 

そこに辿り着いた者は、まだ誰もいない。

 

だが、誰も辿り着いていないからこそ、挑む価値がある。

 

夢を笑われても、嘲笑されても、諦めずに進む者たちがいる。

 

そして彼らは今、伝説のその先へ向かおうとしていた。

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