「オマエなにができる?」
「殴る蹴る」
「そういうの間に合ってんだよなあ……」
はい、今回も面接。
俺受ける面接多すぎじゃない? このあと東堂の面接もあるし。
まあ俺もともと巨女と安産型の骨盤とハイウエストから伸びる長い脚が好きなんで問題ないとは思いますが。
パンダ先輩の厳しいお言葉はスルーして適当にお茶を濁します。フィジカル激強の真希さんが同期かつパワータイプ切り替え可能のパンダ(パンダじゃない)にはそりゃそう返される。当たり前だよなぁ!?
「あはは、わかります。あとは毒が効きませんけど、京都校に毒使いはいませんよね? これも対人集団戦だと役に立たないから意味ないです」
「毒効かないってどれくらい?」
真希さんが興味持ってくれたのでサッと回答。
「致死量青酸カリが平気だったので、それ以上は試してません」
「なにやってんの……?」
「やだなあ引かないでくださいよ。ちょっと利き毒を。ちゃんと家入先生提供・監督のもとでやりましたよ。五条先生は『リアルゾルディック家!』って爆笑してました」
あそこでハンターハンター出すところが世代。デジモン好きっぽいし五条家はサブカルオッケーだったのか?
いやクソガキ(真)時代の先生はチャンネル争いやジャンプ買うために実家のお屋敷の一棟くらい破壊しそう。偏見!
五条家がバカデカお屋敷っていうのも偏見。でも禪院家は懲罰部屋あるからなあ……。古くから続く京都の家ってデフォルト装備で座敷牢ありそうじゃん。
ゾルディック家の例出したけど先輩たちピンと来てないな。順当。
「一年スリーマンセルだったら肉盾運用とタンク担当なんですけどね~」
「肉盾言うな。殴るぞ」
「はぇ?」
え? なんで伏黒そんなピキってんの? 俺のこと好きすぎ?
ちょっと本気の困惑が出ました。まあ俺のこと好きすぎでも特に面倒はないですが。親友状態の特殊イベント以外は。
だからそれくらいにしといて♡好感度上げるより下げる方がかったるいんだよ。
えーと、あと自己申告しておかなきゃいけなかったことは……あ、あったあった。
「先生からは東堂さんと遊んでくるようにって言われましたね。東堂さんがどの人か教えてもらえませんでしたけど」
走者の俺は当然理解しています。カマトトです。無知ムーブしとけばかわいがってもらえる確率上がるからよ。教えて♡と俺全部わかってますからの組み合わせで調整かけます。
うん、やはり「え……? 東堂と……?」ってリアクション。
パンダ先輩声に出てますよ。かわいい~。
モフりたいしヒップアタック見たいしお日様の匂い確かめさせてほしい。俺結構パンダ先輩好き。
でも今回のプレイではそこまで仲良くなれません。仕方ないね。目的から逸れることはやらない。二兎を追う者は一兎をも得ず。伏黒? それは必要なパーツだから……。
「こんななよっちいチビをあの筋肉ダルマにぶつけて大丈夫かよ。叩き潰されるぞ」
「じゃあ、適当な囮役が増えたってことで」
肩をすくめると真希さんの眉が寄った。
こういうの嫌いですもんねー!! うはは!
だが俺はまだ煽るぞ。伏黒が玉犬けしかけたことへの対応はパフォーマンスとして弱い。伏黒が手加減したと解釈されれば容易く事実は捻じ曲がる。
しかし俺が万年四級である以上戦績として出せるものはない。どうやっても、現時点で二年にとって俺は「使える駒」ではないのだ。
にこっとはにかんで、あざとく首をかしげる。
「呪霊を祓った数の競い合い、団体戦でしょう? 実力未知数の駒は雑に使っても問題ありませんよ。今ので東堂さんが誰かわかりましたし、余った近接で俺を当てるのは妥当です。勝てるとは思われてないでしょうしね」
はい封殺。これで真希さんの好感度下げ十分です。
狗巻先輩の語彙縛りのことは高専の書類で読んだのでスキップ可。このミーティングで話し合う必要があったのは俺の動かし方くらいなので終わりです。
だってみんな虎杖抜きで対策立ててきてたじゃん。マジの浮き駒。
「まあ、虎杖なら大丈夫だと思いますけど」
「あ? マジかよ恵」
伏黒がこくんとうなずく。
おっと? 助け船出ちゃった。いいのに……やや遅延。
「オマエ、どうせ五条先生との修行の一環で組手地獄やってただろ」
「先生が時間空けてくれたときだけですよ」
「それがなくても、コイツもともと真希さん並みの膂力あるんで……」
わー、三人全員「ウッソだろオイ」って顔してる!! 俺もそう思う。今、オドオドしてないだけで文系好青年的な見た目だから。実父の髪伸ばして眼鏡外しただけ。俺は穏健派ですから♡
内面の穏やかさが顔に出ていますね(すっとぼけ)
真希さんが「おもしれーじゃん」の顔したところで終了。人に面白がられるの久しぶり。
会場への移動中、パンダは歩幅を調整して虎杖の隣に並んだ。そのまま声を潜めて話しかける。
目線の先にいるのは跳ねっ返りの後輩。作戦会議中、ずっと機嫌悪く黙っていた少女だ。
「オマエ野薔薇と仲悪いのか? 大丈夫か? いじめられてないか?」
「え? そんなことはありませんよ。仲良くもないですけど……初顔合わせから二週間くらいの頃に死んだので……遊びに行ったりもしてませんし」
何の気なく、彼は「あ、でも第一印象でもう嫌われてるかも」と軽やかに笑う。あー……と、パンダは曖昧な肯定を返した。
確かに、虎杖のような比較的穏やかで人当たりのいい術師は、釘崎や真希など気の強い女術師から毛嫌いされるだろう。「弱そう」と「ヘラヘラしてる」のダブルパンチでアウトだ。お手上げ。優等生気質も乗って倍率ドン。
真希は憂太にも当たり強かったからなあ、と、パンダは腕を組んだ。
虎杖には去年の乙骨のように周囲に怯える様子はないが、釘崎もかつての真希と同じように決めつけで人間を判断するところがある。悪いやつじゃないんだ、とパンダが手を合わせ、狗巻が合いの手を打ったところで、虎杖は苦笑しながら首を横に振る。
「俺は釘崎さんも真希さんも嫌いじゃないですよ。黙ってたことは俺と先生が悪いし……タメの同期が死んで、少なからずショックを受けていただろう釘崎さんたちをケアしてくれたのは先輩方ですし……」
その節は本当にありがとうございます、と深く頭を下げてくるものだから、パンダも狗巻も虚をつかれた。
呪術師の世界においてここまで「いい子」なのはもはや天然記念物指定レベルだろう。ポカンとしながら、パンダは一種の感動を覚えていた。
そして、これはどうしようもなく真希たちに嫌われるだろうとも。
当の虎杖はそれを理解した上で飄々としているようだ。先頭を行く女子たちの背中を眺めながら、言葉を選ぶかのように唇を数度開け閉め。そして肩をすくめる。
「知り合いが死んでも三日くらいで折り合いはつきます。いや、呪術師だったらもっと早いかな。だって生きてかなきゃならないんですもの。タスクは常に山積みだし。二ヶ月経って、ひょっこり帰ってきた俺に激怒する伏黒が、俺のことをわりと……いやかなり……? 好きなだけ。それだけの期間音信不通だと顔も忘れますって普通、あ、これは生きてる場合ですね」
口元を押さえて考え込む姿だけは間違いなく年相応。
しかしながらその口から飛び出してくる言葉はすべて悟り世代そのものである。「わかったフリ」と言うには現実に則しすぎていて、可愛げがないととられることだろう。
小さな背中に彼は慈しみをもった目を向ける。
「釘崎さんの反応は正常です。後ろめたく思う必要はない。……まあ、簡単に割り切れたら苦労しないでしょう。釘崎さんは情に篤い方ですから。短い付き合いでも、それくらいわかりますよ」
「俺が言ったって知られたらまた怒らせちゃうので、ナイショにしていてくださいね」と、茶目っ気を含めながら唇の前に指を立てる。簡単に予想できたので、パンダも狗巻もうなずいた。
コイツ、苦労するだろうなあ。
パンダは虎杖のつむじを見下ろしながら、フウッとため息を吐いた。