虎杖憑依RTAグリッチレス   作:鈴近

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Part18

 ナナミンが死んだ。

 

 まあ、これに関しては当人が残してくれた呪いが着火材になるから、リカバリは不要です。

 本題は、ここからどれだけ真人のHPを削れるか。このあとに釘崎が死んだ場合、後回しにされていたナナミンのデスペナルティが釘崎のペナルティと同時に降りかかってくるんですね。そうなるとちょっとプレミが増えそうなので、今のうちに削れるだけ削りたいです。

「俺」にはその他大勢の生きてる人間をわざわざ優先する理由もありませんからね。確実に、手足をもぐように調理していきましょう。

 

 うーん、ボコってもボコってもキリがないです。

 共鳴りのエフェクトが出たので、釘崎も分身と戦っちゃっているのでしょう。やれやれ。

 

 丑の刻参りの概念って平安時代の貴船神社で発生しているんですよね。呪術の取り回しは古ければ古いほど活用法の発明がされています。五条相伝の無下限呪術の概要をパパ黒が把握していたように。

 教師の指導だって術式が同じでなければ具体的な教育は望めません。

 

 だから、彼女は地元に留まっていた方が、呪術師として大成していたはずです。ただ、そうはならなかったので────この話はおしまい。

 

 他人に語られた正解なんて気にしなくていいんだよ、「釘崎野薔薇」は。

 

 

 

「…………ふう」

 

 思わずため息。眩暈と吐き気がやばいですね。三半規管を内側からぐちゃぐちゃにされているみたい。

 真人がニヤニヤしてるなあ。ムカつくなあ。

 視線を落とす。ついさっきまで生きていた人間が死骸になっている。

 もうひとつ、ため息。

 

 あーあ、釘崎死んじゃったよ。

 

 最大のデバフ二連チャンはきついな。肉の器が勝手に乱れる。

 遺言がああなることは俺にとっては正常なんですけどね~。まともに関係築かずに来たんだし、俺だって俺の前で死にたくない。

 

 なんでこいつを追ってきちゃったんだろうね、きみは。

 

 目、問題なし。神経伝達、ちょっと遅れてる。右腕が筋痙攣、拳固められない。ギリギリ足は無事。

 宿儺のお陰でお兄ちゃん戦の傷は全部回復しているが、正直なところ焼け石に水。これはしばらく回避に徹しなきゃダメだ。

 

 ここまで来て死ぬのはさすがに、あまりに、癇に障る。

 

「はー……うっざ……」

 

 イラつきが俺の呪力を乱している。それに余計苛立つ。

 殺意だけが加速する。脳の認識に虎杖の体が着いていかない。

 

 邪魔すんじゃねーーーーよ、■■。今動かしているのは俺だろうが。従えよ。なあ。

 

 真人が鼻を鳴らして首をさすっている。一応、まだ、俺の脳にはそれが像を結んで見えている。

 

「……なに、オマエ。あの女を目の前で殺したらもうちょっとこう、さあ。期待してたのと違うんだけど」

「あ゛? ちゃんと動揺してるだろ。目ン玉腐ってるのか」

「それはわかるよ? 呪力の乱れやべーもん。感情の制御ができてない、雑魚もいいとこ。俺が不思議なのは~」

 

 なんでまったく心が折れないのかってことだよ。前から思ってたけど、オマエさ、人の心とかないの? 

 

 そう言い捨てた真人の表情が、期待はずれのB級ホラーを映画館で見ていたこどもそっくりだったから。

 俺は思わず笑った。

「なに笑ってんだよ、キモ」って思っただろ。お互い様だよ。

 

 不自然に途切れた喧騒を、パンッと柏手が切り裂いていく。

 目の前に現れた広い背中。それを認識してようやく、煮えたぎってきた頭が通常運転になったように思えた。

 

 

 

 >いやぁー……はは。

 >恥ずかしいなあ。情けないところ見られちゃった。

 >七海さんは死んだよ。あんなに強いのに。

 >俺は俺で取り返しのつかないことしたし、釘崎さんもああなったし。

 >あんなこと言わせたかったわけじゃないのに。

 >どいつもこいつも。

 

 >ごめん。

 >頭はすごくクリアなんだけど、体が着いていかなくて。 

 >本当は、無意識で怒ってるのかな。

 

 >……。

 >背中、押してもらってもいいか。そうしたら、準備が整う。

 

 >東堂。

 >俺は、あなたがブラザーと呼んでくれる俺と、あなたを、常に誇らしく思うよ。

 

 

「おかえり」

「うん。ありがとう、待っててくれて」

「気にするな。俺たちの仲だろう」

 

 信頼に微笑みを返す。

 体の調子は万全だ。痛みはもともとどうってことない。心が完全に落ち着いたのだ。手のひらをぐっぱっと曲げ伸ばしして、俺は緩やかに構える。

 

「前ほどぶっトぶことはなさそうだなあ。すごくリラックスしてる」

 

 

 ずっと真人がしゃべっている。内容は頭に入ってこないし、音として聞こえているかも正直微妙だ。俺も同じように、ぽろぽろと、他愛のない思考が口からこぼれ落ちている。

 

「あー……これは確かにうざいな。今までごめんねみんな、俺がおしゃべりなせいで。嫌われて当然だった」

 

 嫌われたくて嫌われてきたから、問題はなかったのだけれど。仲間たちのパフォーマンスを下げるのは、あからさまに悪いことだ。

 

「本当によくしゃべるねぇ」

 

 ざわざわと、耳元の四方八方で声がする。真人の口は開いていないから……俺はなにを聞いているんだろう。いいか、別に。どうでもいい。

 ころないで、みたいな。風の鳴くような音だけ、聞こえた。

 

「関係ないよ。今殺したいから祓う(ころす)

 

 オマエだって、そうやって今までたくさん遊んできただろう。

 

 

 殴る。殴る。潰す。斬る。刻む。バラす。

 屠殺した生き物を肉にしていくように。丁寧に丁寧に、解体していく。

 

「そんなもの、オマエを祓ったあとに考えればいいだろ? 適当に処刑人でも待つさ」

 

 蹴って。砕いて。飛んで。削いで。剥いで。

 頭の中身が殺意で埋まる。終わらせることだけ考える。あと少し。あと少しだ。

 

「ヒトが今のままなにも変わらず、この星に蠢き続ける限り、何度でもオマエは生まれてくるんだろうなあ。そのたびに俺たちは殺し合うんだ。運命は永遠に流転する。ロマンチックな話だね。……なに怯えてんだよ。んー? ぁはは」

 

 

 平等に愛する。平等に呪う。平等に祓う。平等に殺す。

 滅びと共に歓喜の産声を上げる。

 

「うん。たのしかった」

 

 俺は、まさしく怪物だ。

 

 

 




※不快にさせてることに謝ってるだけで嫌われることはどうでもいい模様
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