鬼滅の刃〜残花異聞〜   作:みしゃぬこ

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咲夜の過去

 ──咲夜。

 

 それは先生が私にくれた名前。

 

 私が物心ついた時には私はすでに先生に育てられていた。

 

 先生は私がお腹がすいて泣くと地面に短刀を突き立て、黙ってどこかに立ち去ってしまうだけだった。だから私は仕方なく、小屋の近くに生えていた草やきのみ、後は木の皮を削って食べた。

 

 しばらくして先生が戻ってくるとその手には死んだ蛇を持っており、私の前で解体して見せてくれた。

 

 先生が私に何か教える時、先生はいつも私に“見て覚えろ“と背中で語っていた。

 

 だから私は先生の姿を見て多くのこと学んだ。

 

 火の付け方も獲物獲り方、短刀の使い方なんかまで先生の使い方を見て覚えた。

 

 それから少しして先生が私に着る服を渡し、目隠しをするとどこかに連れて行った。

 

 いつまで歩いたのかはわからない。

 

 休憩中も目隠しをとることを許されなかったから最後に外した時はひどく眩しかったのを覚えている。

 

 目が光に慣れてきて、はじめに見た光景は断崖絶壁の下に広がる広大な森の姿だった。

 

 少し息がしにくい感じがしたがその時の私は目の前に広がる森を照らす朝日の光景が綺麗でただ眺めていた。

 

「並べ」

 

 しばらくして先生の声が聞こえ、私が振り向くとそこには私より大きな子や小さな子たちが大勢立っていた。

 

 その数は100人くらいいて、先生と同じようなお面をつけた人が5人、並んだ私たちを見ていた。

 

 やがて先生たちは私たちに指示し、20人ずつに分けると簡単にこれからやることを教えてくれた。

 

 “ここにある岩を持って、山を登れ”

 

 岩は私たちと同じくらい大きく一目でそれがかなり重いものだってことはわかった。

 

 なぜそんなことをしなければわからなかったが、少しでも不服そうにした子や文句を言った子はその場で半殺しにされたのを見てほとんどの子が黙ってしまった。

 

 それから私たちは岩を持って山を登り、岩を持って山を下ることを繰り返し、それに慣れてくると先生たちは登り切った山頂でいろいろなことをさせた。

 

 木の棒をひたすら振らせたり、腕立て伏せや腹筋や足腰を鍛える運動を追加した。

 

 私たちは先生たちの言われたことをただ黙ってこなしたが、2年後にはほとんどの子供が死んでいた。

 

 私たちの先生が優秀だったのかそれとも私たちが優秀だったのか、それとも他の先生と違って手加減してくれたのかそれはわからないが、他の班の生き残りは1人か2人なのに私たちの班は5人も生き残っていた。

 

 その後、他の班と合流し生き残った私たち9人は“宵”という組織に正式に所属し、帝という人を守るための影であり壁であることを徹底的に叩き込まれた。

 

 それからはひたすら戦闘訓練を叩き込まれ、組み手をひたすらやらされた。

 私はたった1人の女だったが、誰も性別など気にしないように本気で殴りかかってきた。

 

 私がここにきた時は下の方の年齢だったけどこの9人の中では年上の方だったのでお姉ちゃんと呼ばれることが多かった。

 

 私たちは毎日、戦闘訓練に勉学に加え、気配探知、5感強化などの訓練を毎日こなした。

 

 その日々は本当に地獄で毎日泣いてる子がいた。

 

 その度に怒る子がいたから私は優しく締め落として寝かしつけることが多かった。

 

 そして泣いてる子にはいつまでも泣かれては困るから先生に内緒で森に入り、食べ物を採ってきてはその子たちに配ってあげる。そうするとみんな泣くのを止めるから私も安心して眠ることができた。

 

 それから数年経つと今度は先生に連れられ、どこかの町に行き初めて実戦というのを経験した。先生が追い立てた奴らを私たちが処理する。

 

 はじめは怖くて誰も動けなかったけど、先生から「行け」と言われた時にはもう体が動いていた。

 

 人を殺すのは初めての経験だったから、しばらく体が震えていたのを覚えている。中には寝れなくなったり突然泣く子がいて大変だった。

 

 私も殺した人の顔を思い出して怖かったけどみんなをあやしたり慰めているうちに眠ってしまっていた。

 

 それからしばらく続けていると何も感じなくなり、殺す相手の前でも笑える演技ができるようになった。死ぬ前に怖い顔を見せてたら可哀想だと思い、笑顔を見せてあげるとみんな私の方を見つめながら逝く。

 

 きっと最後は綺麗なものを見ながら逝きたいんだろう。

 

 他の子たちが私の笑顔を見て綺麗と言ってくれたから練習をしておいてよかった。

 

 それから少しして私と私の幼馴染だった鉄心は単独で任務をこなすように命じられ、今の刀を餞別に渡された。

 

 鉄心は私と同じ班にいた同い年の男の子で何かと私と他の子たちにかまってくれたいい人だ。

 

 でも私を育ててくれた先生は鉄心が嫌いみたいで鉄心をよく殴っていた。

 

 でも口答えや文句を言ったら私も叩かれるから先生を止める時は先生の服を掴んでジッと少し泣きそうな顔で見つめるとしばらく私を見た後それ以上は殴らないでやめてくれる。

 

 先生はどうやら鉄心と私が2人で話してるのが気に入らないみたいだからこっそり「私と話さなかったらなぐられないかも」って伝えたら鉄心はむしろ前より私によく話しかけるようになってしまい、先生にさらに殴られるようになってしまった。

 

 それから私と鉄心が先生たちに言われ単独任務をやるようになってから4年が経った。

 

 その日は私と新しく入ってきた他の子達で訓練を行なっていた。

 

 子供達は真剣で私は木刀。

 

 子供達は真剣を持って尻込みしてるみたいだったけど、彼らが脅威に見えなかった私はいつまでも来ないから欠伸が出てしまった。

 

先生もイラついたのか子供達に怒鳴ると彼らはやっと私を囲み一斉に襲いかかってくる。

 

だけどやっぱり未熟。

 

 わたしはヒョイと軽くかわすとその隙だらけの体に重い一撃を加える。それで1人が膝をついてあまりの痛みに転げ回ってるのを見て動揺したのか、隙だらけになった残りの子たちの頭に私は容赦なく木刀を叩きつけた。

 

はじめはかわいそうだと思い、軽くしたがそれをしたら先生に怒られたから今回は死なない程度に加減してお腹や頭を叩いてあげた。

 

「それまで」

 

 それを見届けていた先生は低い声でそういうと岩から立ち上がり私の頭をポンとだけ叩いた。

 

「ここで寝ている者は今から素振り1000回。始めぃ!」

 

 痛みでうずくまっていた子供達だったがその言葉を聞くと痛みに耐えつつ、よろよろと立ち上がると文句1つ言わず、すぐに素振りを開始した。

 

 私がその光景をただ眺めていると、その横から手拭いを差し出される。

 

「どうぞ」

 

 それは吉郎だった。

 彼は私と時期に入ってきた中では1番若い子で力も技術も未熟だったけど、それでもなんだかほっとけない子の1人だった。

 

「ん・・・」

 

 咲夜は吉郎から手拭いを受け取り、その礼かわりに先生がさっきやったようにポンっと頭を軽く叩いてやる。

 

「へへ・・・」

 

 それだけのことなのに彼はよく笑ってくれた。

 

 その笑顔を見ると私の心はどこかぽかぽかした気持ちになった。

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