鬼滅の刃〜残花異聞〜   作:みしゃぬこ

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第13話

  私たちが家族になってから1年が過ぎた日。

 

 その日はいつもよりなんだか胸がざわつくようなそんな日だった。

 

 鉄心は任務のため里を離れていて、私は他の子の鍛錬を見ていた。

 

 いつの間にか子供達の中で鉄心と私が1番上の子供になり、下の子たちも新しい子を含めて10人ちょっとになった。

 

 いつもの鍛錬が終わると私と吉郎でご飯や洗濯などをこなす。

 

 私だけでも洗濯などはできるのに吉郎はいつも笑って私を手伝ってくれるいい子だった。

 

 私と吉郎が川から戻ってくると珍しく先生たちが集まって何か話しているのが見えた。

 

 いつもは私たちに聞かれないように夜にこっそり話してるくらいなのに。

 

「先生?どうかしましたか?」

 

 私が話しかけると先生たちは一斉にこちらに振り返る。

 

 私を育ててくれた先生がつけてる猿のお面だけでも威圧感があるのに、今は他の先生方が被ってる動物のお面もこちらを見ているのですごい絵面だった。

 

「・・・いい機会だ。お前だけついてこい」

 

 先生はそういって私の方に指を指すとお堂の方に歩いていった。

 

 あのお堂は子供が入ってはいけないと言われている場所だ。

 

 一度入れば二度と帰ってこれない。

 

 私たちはそう教えられていた。

 

 そんな場所に私だけが呼ばれたのを心配してるのか、吉郎は心配そうな顔で私の裾を掴んでいた。

 

「大丈夫だから。先に帰ってて」

 

 私がそう言って洗濯物を渡すと少し考えたあと吉郎は何も言わず帰って行った。

 

 お堂の中に足を踏み入れると先生方が私が座るために用意した座敷を囲うように座って待っていた。

 

「そこに座れ」

 

 先生に促され、そこに座ると少しの間の重苦しい沈黙の後、真ん中に座る先生が言葉を発した。

 

「貴様の実績、練度を考慮し、これより貴様を宵の正式な担い手とする。伝えたと思うが我らの組織は誰にも知られてはならない組織。故にその構成員もここにいる者と帝の護衛をしている2人のみとなっている」

 

「その1人が先日死んだからその代わりの補充としてあなたが行くことになった」

 

 死んだ?確か今任務についていたのは

 

「どちらが死んだのですか?」

 

「・・・何?」

 

「潜ですか?それとも燕?」

 

「・・・死んだのは潜だ。複数人と真っ向からの斬り合いで相打ちとなった」

 

「そうですか・・・潜が」

 

 潜は私たちの中で1番隠れるのがうまかったですが1人の敵に集中しすぎてしまう欠点がありました。だから大人数との戦いは得意じゃなかった。

 

 家族の1人が死ぬのはいつも本当に悲しくて自然と目から涙が出てしまいます。

 

 その姿を見た雉の面をつけた先生が大きくため息を吐くと猿面の先生に話しかけました。

 

「はぁ〜〜〜・・・だから家族意識を持たせるなって言ったでしょ?たかが欠員が出たくらいで感情を揺さぶられるなんて・・・そんな弱さでお護りできるの?」

 

「・・・問題ない。だからこそこいつには他の奴らより多く殺しの任務を与えた。任務内容を見て同意したのは貴様もだったはずだ」

 

「そうね。内容どころか・・・精神面を除けば本来この子以上に役目をこなせる子はいないのは事実。隠密は並くらいだけど壁としての素質なら文句なしに私たちを含めた中でも1番といって過言じゃないわ」

 

 そういうとしばらくだまっていた後、先生は私に話しかけた。

 

「貴様に名を与える」

 

「名前・・・」

 

 名前はこの里を出て行く証として付けられる。名前をつけられた子は2度とこの里に戻ってこない。

 

「それは・・・」

 

「目的を忘れるな」

 

 そう言われ、びくりと体を震わす。

 

「お前たちの本来の目的は帝の安全を守ること。それ以外は何もいらん」

 

 そう言われても私にとってみんなは家族だから・・・2度と会えないのはすごく寂しい。

 

「お前たちの家族ごっこを許したのはお前がより一層励むために必要なことだと感じたからだ」

 

 そう言われ、私は目を先生に向ける。

 

「貴様は幼い頃から世話を焼きたがる。本来であればそんな優しさを持つ者は、すぐに消えたがお前はここで最も優れた力を持った。束縛がその成長の妨げになるくらいならと家族などの戯言も許した」

 

 他の先生方もそれに頷いた。

 

「それにここに帰ってこれないなどという決まりはない」

 

「・・・!お前それは──」

 

 それを聞いた私は驚いて顔を上げる。文句を言おうとした先生を手で制すると猿面をつけた先生は話し始めた。

 

「我らのように勤めを十分に果たして生きながらえたものは、隠者としてここでお前たちのような子供を育成することになる。お前が望むなら勤めを果たした後に帰ってこればいい」

 

 そう言われた私は、帰ってこれる望みがあることを知って驚いた。そして少しだけ希望を持った。

 

「今日からお前は“咲夜“と名乗れ」

 

「咲夜・・・」

 

「この名前は・・・いや余計なことだな。女の身でこの大役を引き受けたのはそこにいる雉とお前くらいだ。誇るがいい」

 

 そう言ってそちらを見ると雉の面をつけた先生はどうでもいいと言った感じでただ前を見つめていた。

 

 その夜、私は子供たちみんなを集めて名前を与えられたこと、そしてしばらく会えなくなることも伝えた。

 

 みんなは嬉しそうに私の名前を呼んでくれる。

 

 けれどその後、堪えきれなくなったように泣きながら私へ縋りついてきた。

 

 私たちは潜と燕がここから旅立つ時と同じように、みんなで円を作ると目の前に1つの白団子を用意した。そして水が入った瓢箪を手に取る。

 

 瓢箪を持った私は白団子を口に放り込み何回か頬張ると瓢箪の中に入った水を少し飲む。その後その瓢箪を横にいた吉郎に手渡すと吉郎も同じようにして横の子に手渡して行った。

 

 これは門出を祝う儀式というものらしく鉄心が教えてくれたものだった。

 

 その鉄心がこの場にいないことは少し寂しいが任務なのだから仕方がない。

 

 明日か明後日かにはかえってくるだろうとそう考えていた私だったが結局彼は3日経っても帰ってこなかった。

 

 そして咲夜という名前を与えられてから4日目の夕暮れの夜。

 

 明日ここを発つことになった私は吉郎と共にみんなのための保存食を集めて里に帰ってきた。

 

 本当はもっと早く帰ってくるつもりだったが、たくさん採っていたらいつの間にか夜になってしまっていた。

 

「これだけあれば、1ヶ月は大丈夫よね」

 

「はい、咲夜姉さん」

 

 吉郎は私に名前を与えられてから、そう呼んでくれる。

 

 短い期間しかそう呼ばれていないはずだけど、すごくしっくりくる呼び方だった。

 

「・・・それにしても」

 

「ん?」

 

「鉄心さんは随分遅いですね・・・こんなに長く任務に出てるのは初めてじゃないですか?」

 

「確かに・・・」

 

 鉄心が任務で外に出たのは今からもう1ヶ月と少しくらい前だった。

 

 移動で時間がかかることなどもあり期間が長くなることはあったが、その時は大体の期間を私たちにも伝えられるのだが今回はそれすらなくいつも以上に時間がかかっていた。

 

「心配ですね」

 

 吉郎がそう呟き少し曇った顔をする。だからそれを慰めるように頭をポンッと撫でてあげた。

 

「えへへ・・・」

 

 相変わらず無邪気に笑う吉郎に、これで大丈夫なのか不安がよぎったがまぁいいかとにこりと笑いかけてやった。

 

 それから里に戻り、荷物を下ろそうと糧食庫に向かおうとした時だった。

 

 ──ゾクリ!

 

 背筋が凍るような感覚。

 

 殺気とも違う。

 

 何かもわからない異様な気配に全身から冷や汗が吹き出した。

 

 身体中が危険を訴えている。

 

 訓練中に死にかけた時とも違う。確実な死が私の肩に手を置き、囁きかけてきた。

 

 そんな感覚だった。

 

 私はその場に持っていた食べ物をすぐに投げ捨て、腰に差した刀に手をかけ、勢いよく頭を振り向かせた。

 

「?姉さん?」

 

 無防備にそんな言葉をかけてくる吉郎の後ろには、異様な雰囲気を纏った男が立っていた。

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