「ごめんなさい。少し取り乱したわ」
そう言って顔を赤らめる真波をユラは(・・・少し?)という顔で見つめていた。
「それで?あなたたちはこれからどうするの?」
そう聞かれ、ユラは気合いたっぷりに答える。
「鬼退治の指令がないなら依頼をこなそうと思います!」
「それがいいと思うわ。依頼をこなすだけでも階級は上がるし」
「・・・そういえば昇級の仕方も聞いていませんでしたね」
「あっそうなの?じゃあ教えてあげる」
そう言って真波が咳払いを1つして説明を始めた。
「昇級の仕方は大きく分けて2つだけ。1つは鬼を一定数討伐すること。これは鬼殺隊の元々の目的だからわかるわよね。でも鬼もそこらじゅうにいるわけじゃないし、鬼退治は基本、鴉を通して指令が来る場合が多いわ。そしてもう1つのがこれ」
そこまで言って、真波は懐から自身の依頼書を取り出した。
「鬼退治の指令がない時にこなせる町からの依頼も、昇級の対象に入ってるの。難易度と危険度が高い依頼をこなせば、それだけ早く上がっていくわ」
ユラがふんふんと頷く。
「鬼を討伐するのが1番手っ取り早い昇級方法だけど、鴉からの指令以外だと自力で捜索しなきゃいけないから。大体の隊員は依頼をこなして鬼討伐もやる感じね」
真波はそう言いながら懐に依頼書をしまった。
そこでユラがはい!と手をあげる。
「昇級したってどうやってわかるんですか!?」
「昇級していたらさっき紹介した帳場の隠の人が手の甲の文字を書き換えてくれるわ。依頼を終わらせたら報告を兼ねて寄ってみなさい。あっあとあなたたちは、そんなことしないと思うけど、鬼の討伐や依頼の達成状況とかは鴉が見て報告してるから、不正はできないわよ」
不正?という感じに頭をこてんと倒す2人を見て、真波はそれ以上は言わなかった。
「とにかく、新人の頃は依頼をこなすこと。あとはそうね依頼を受けた時の人数なんかに制限はないけど、1人でこなす方が評価は高くなるわ。だからと言って無茶なことはしないこと。いいわね?」
「わかりました!」
「了解です」
そう言って返事をしたユラと咲夜を見て、真波はよしっと頷く。
「じゃあ私は行くから、せいぜい頑張ってね」
そう言って中庭から出ていく真波を見送り、咲夜とユラも依頼棚に向かった。
「どれがいいかなぁ〜」
ユラが悩んでるのを横目に咲夜も目を通していく。
今のところ、最も多く残っているのは青の雑務依頼だった。ただし、残っている札は青、赤、赤など、長期間かつ高難度のものが多い。
次に多い赤の討伐依頼も、赤、青、赤や赤、黄、赤など、期間こそ短いものの難易度の高い札ばかりだった。
逆に依頼種目が黄のものは、先ほど真波が例として取った、黄、青、青のものしかなく、依頼そのものが少ないのか、それとも人気が高いのか、護衛依頼はほとんど残っていなかった。
2人が悩んでいると帳場の隠の1人が笑顔で話しかけてくる。
「どれにするか悩んでる?」
「う〜ん・・・初めてだから難易度が低いのがいいんだけど全然なくて・・・」
ユラがしょんぼりしていると、隠の人が笑顔でユラの近くまでやってくる。
「そうね。護衛依頼なんかは期間が長いと、鬼と遭遇する可能性も高いから人気があるの。その他の依頼は、お店の手伝いみたいな雑務が多いから、あまり受けてもらえないのよね。討伐系は鬼と遭遇する可能性もあるけど、人を相手にする依頼だから、みんな敬遠しちゃうのよ」
そう言って青、青、黄の札とその中の依頼書をユラに見せてくる。
「これなんかは新人さんにいいかも。内容は4日ほど夜の見回りだし、難易度が黄ってことは警備する範囲が広いってことだから、町の様子を知るいい機会だと思うわ」
「・・・じゃあこれにします!」
「うん。じゃあこれで受理しておくね。今、判を押してくるからそれを持って行ってね」
「はい!」
隠は帳場で依頼書に判を押すと、ユラへ手渡した。
そのとき、依頼棚の前に立つ咲夜の様子が目に入る。
咲夜は一枚の依頼書を手に、しばらく考え込んでいた。
気になった隠が手元を覗き込むと、木札には赤、青、赤の線が引かれている。
依頼棚に残された中でも、かなり難易度の高いものだった。
それを見てぎょっとした隠は、なんとか思いとどまらせようと咲夜に話しかける。
「えっと・・・それは新人さんには早いと思うから別のものにしたほうが・・・」
「いえ・・・これを受けます」
その言葉を聞いた隠はすこし悩んだあと、諭すように咲夜に声をかける。
「あんまり言いたくないけど・・・それはもっと実戦経験を積んだ人が受けるような依頼ですよ?ほらこれ・・・盗賊団の討伐で、私たちが集めた情報でも難易度が高いと判断されてるし、何より期限まで時間がないから、受けたらすぐにでも取り掛からないと駄目な依頼よ・・・?達成できたら大きく加点はされると思うけど」
「では、これで問題ありません」
そう言って咲夜は依頼書を丁寧に畳むと隠に差し出す。
「・・・これに判を押したら、依頼を承諾したことになっちゃうからあとでやめるってなった場合、安くない違約金が発生しちゃうけどほんとにいいのね?」
「はい。問題ありません」
「・・・わかったわ。じゃあ判を押してくるからそれを持って依頼人に会ってきてね」
隠が判を押しに離れると、咲夜は依頼書に記されていた一文を思い返した。
「──依頼を受けてから、明けの鳥が鳴く頃までに達成されたし」