鬼を倒した咲夜は、倉庫らしき場所に乱雑に積まれた荷の中から鉄扇を見つけるとその場を後にした。
次の日の朝、咲夜はあの茶屋へ向かった。
店の中に招かれた咲夜は、店主と向かい合って座ると鉄扇を渡した。
「おーさすがですねぇ。ご当主に依頼したかいがありましたわ」
そう言って鉄扇を布で包むと傍に置いた。
「どうやらそれを狙った犯行じゃなさそうだけど」
「まぁそうでしょうな。この鉄扇はただの贈り物の品らしいですから」
「ふーん」
「犠牲になった運び手と取り戻そうとした護衛連中には申し訳ないですが、そもそも帝自身、奪還をそこまで強く希望してませんし」
「そうなの?」
「はい。奪還ではなく新しい物でも用意したらいいと言ったそうですからなぁ」
そう言いながら傍に置いてある鉄扇が入った布をそっと撫でる。
「そもそも何でこんなものをご所望なのかも不明ですしね。まっそれはそうと助かりましたわ。鬼殺隊に御当主のことちゃんと伝えて色付けといたんで、期待しといてください」
「はぁ・・・余計な気遣いは無用よ」
そう言って咲夜は、少し困ったように微笑むと、店を後にした。
咲夜が鬼殺隊の詰所に戻り、帳場に行くと隠の人が少し慌てた様子で奥から近寄ってくる。
「あ・・・咲夜さんよね?少しこっちへ来てくれる?」
隠の人に言われ、付いていくと隠の方達が書類整理をしている畳部屋に通される。
咲夜はその部屋の奥に座る年配の隠の前に通された。
「おぉ、よく来てくれたね。ささっそこに座り」
そう言って咲夜を座らせると、ごほんと咳払いをした。
「いきなりこんなとこに通して驚かせちゃったよね。ごめんねぇ。早速本題に入るんだけど・・・まずは依頼達成ありがとうねぇ。今回の依頼に関して君が単独で達成したことも、先方から頼まれたことも完璧にこなしてくれたって聞いてるよ」
そこまで言って年配の隠は、少し頬をぽりぽりとかく。
「ただ・・・そのねぇ。あの言いづらいんだけど・・・みんな殺しちゃった感じだよね?」
「え、えぇ。討伐と聞いたので・・・」
討伐依頼なので、1人も逃してはいけないと思っていた咲夜は、不思議そうに頷いた。
「あぁ〜そうだったのね〜。いやこちらがもう少しちゃんと伝えておけばよかったね。えっと討伐依頼はね。必ず全員を始末する必要はないんだよ。鬼だったら話が変わってくるけど」
「・・・えっと・・・ではどうしたら?」
「そうだね〜。生け捕りが1番かなぁ。悪いことをしてる人たちだし、絶対に殺しちゃダメとは言わないけど、なるべく捕まえてくれるとありがたいねぇ」
「生け捕り・・・」
「うん。また討伐依頼を受けてくれるなら、そこもよろしくねぇ。それで次なんだけど・・・」
そう言って年配の隠は、姿勢を正す。
「今回の依頼を単独で達成し、しかも血鬼術を使う鬼まで討伐したことを踏まえると、君の階級はかなり上がっちゃうと思う」
咲夜が黙って聞いていると年配の隠は咲夜の方を見て伝えてきた。
「君の階級・・・今出して見せてくれる?」
咲夜が左手に階級を浮かび上がらせて見せると、そこには「戊」の文字が記されていた。
「うーんやっぱりかぁ」
そう言って年配の隠は頭を抱えるが、近くで見ていた隠たちは驚いたように咲夜を見つめていた。
「え・・・?1回依頼達成しただけでそこまで?」
そうざわつく隠を年配の隠が手で制しながら、説明し始める。
「今回の依頼と鬼の危険度だけを考えれば、階級は庚あたりが妥当だと思うから少し過剰なんだけどね。君の階級は鬼殺隊に入る前の鬼討伐も含めてのものらしいから、この階級みたいね」
「鬼殺隊に入る前の?」
「うん。本部からはそう聞いてるけど、違う?」
「あぁ、いえ。確かに私はここに来る前、何体か鬼は倒しましたが・・・」
これが店主が言ってた“色を付けた“ことだと咲夜は察した。
「どうやらそのことが本部に伝わったみたいだね。こんなこと滅多にないからとっても運がいいよ。じゃあはいこれ報酬ね。これからも頑張ってね」
そう告げられ、咲夜は報酬を受け取って座敷を後にした。
「まぁ階級が上がって悪いことはないですしね」
納得したように頷き、少し上機嫌に食事処に向かうのだった。