鬼滅の刃〜残花異聞〜   作:みしゃぬこ

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7話

朝早く、まだ日も登りきっていないうちに3人は山に入っていた。

 

山は静かで耳をすますとそこらかしこから色々な音が聞こえてくる。

 

虫の声、鳥の声、木々の囁き、遠くから微かに聞こえる水の音。

 

(懐かしい)

 

そんな感覚が咲夜に中で生まれつつあった。

 

宵の訓練もこんな山の中で行われた。

 

自分の体重より重い岩を担がされ、山の頂上まで運ぶ。そして頂上で組手や木刀を腕が上がらなくなるほど振らされたあとその岩を担いでまた下山するといったものだ。

 

・・・今思い出してもあれは本当に地獄のような日々だった。

 

宵の訓練の目的は“肉体の限界突破”。

 

肉体を酷使させ続けることで限界以上の力を身につけるといったもので自分と同じような者たちがその過酷さゆえに耐えきれず、死んでいった。

 

ここにきてから咲夜は随分と昔のことを思い出しているような気がした。

 

「さぁついたよ」

 

咲夜たちはきたのは、山の頂上ではなくその少し下あたり。

そこは随分と霧が立ち込めていた。

 

流水はそこで流れを説明していく。

 

「ここから私の家まで帰ってくること。それを目標としてもらいます」

 

(・・・?随分簡単な内容だ)

 

咲夜がそう思い、首を傾げると流水はにこりと笑った。

 

「もちろんただ帰ってくるだけでは修行にならない。だからまずはここで私と鬼ごっこをしましょうか」

 

「鬼ごっこ?」

 

(鬼ごっこ?なんだそれは?鬼を真似て人間を襲えば良いのか?それとも鬼の動きを真似ろとかそういうことか?鬼を殺すには鬼になりきれとかそういうことだろうか)

 

咲夜が首を捻っていると流水はにこりと笑う。

 

「別に難しく考えなくていいです。夜になる前に私を捕まえたらいいだけですから」

 

流水はそういうと霧に紛れ姿を隠す。

 

(捕まえればいいだけなのか?それも簡単そうだが)

 

そんなことを考え淀水の方に目を向けるとどこか緊張した面持ちで身構える彼の姿が目に入った。

 

(そうか。そう言えばこの人だけはこの修行がどんなものかわかっている。そして彼が流水を捕まえにいかず、ここで身構えているということは今から何か仕掛けてくる。そう考えて間違いなさそうだ)

 

そう考えた咲夜は気づかれないくらい小さく呼吸を整えると、自然体のままその場に立つことにした。

 

淀水はというと常にあたりに目を配り警戒し続ける。

 

この『鬼ごっこ』という修行は単純に流水を捕まえれば良いわけではなく流水の攻撃をかわしながら隙を見つけ、流水の服に触れれば終了といったものだが淀水はこの修行が苦手だった。

 

そもそも霧のせいもあり流水の姿も気配もうまく掴めず、この修行で淀水は毎回ボコボコに殴られていた。それもいつの間にか持っている木刀で。

 

「ほら隙だらけですよ」

 

バキ!

 

「痛っ!」

 

そういって背中を思いっきり叩かれた。昔は拳骨程度だったのが最近は木刀で殴ってくるから本当に骨が折れたかと思うほど痛いがそれも最初に比べたら慣れたものだった。

 

流水は淀水を打ち据えたあと、咲夜の方に少しだけ目線を向けるが咲夜はただ動かず流水の方にすら目を向けず本当にただ立っているだけのように見えた。

 

流水はそれを確認するとまた霧の中に姿を消していく。

 

「く〜〜〜〜・・・よし!次!」

 

淀水は思いっきり自分の頬を叩くとゆっくりと息を吐き出し思いっきり息を吸い込んだ。

 

(・・・?何をしてるのかしら)

 

咲夜がそう思って淀水を見つめていた。その時、咲夜の背後に現れた流水がその無防備の腰に向け木刀を横薙ぎに繰り出していく。

 

バシッ

 

という短い打撃音。その木刀は咲夜の腰に入らず、咲夜はその攻撃を見もせずに掴んでいた。完全な隙をついたにも関わらず攻撃を防がれた流水はその防ぎ方に驚いた。

 

「・・・?・・・あ、掴まないと」

 

咲夜は自分が攻撃をされていたことにまるで気づいていない様子で少し驚いたあと、流水に向けて手を伸ばすがその手より先に流水の姿は霧に消えてしまう。

 

「・・・ムゥ」

 

咲夜は少しだけ不愉快そうにしながら木刀を受け止めた手をひらひらと振り、また何もせず立っていた。

 

(今の攻撃すら防ぐのか)

 

流水は咲夜の戦闘能力の高さに心底驚いていた。

 

ひと目見て彼女が普通の子ではないことはわかっていたが、こうして対峙してみてその異質さがわかる。この山での修行は“呼吸の伝授“と“基礎体力と基礎能力の向上“を目的をしており、まずはこの“基礎体力と基礎能力の向上“を図るつもりだったが、彼女の身体能力はすでに常人の域を超えている。

 

それどころかもしかしたら彼女の身体機能はすでに呼吸を使った隊士達より少し上の可能性すらあった。

 

逆に甲凱くんは相変わらず素直すぎる。

彼が私に弟子入りしてから早5年。才能がないのはわかっていたが彼が最愛の妹を鬼に食われ、その鬼に復讐したいという気持ちより先に自分のような悲しい思いをさせたくない、人を守りたいと泣きながら語った姿をみて私は彼を引き取った。

 

そして他の弟子達が私の元を離れていく中、彼はその状況すらめげずひたすら修行に打ち込んでいた姿を知っている。だからこそ彼が呼吸を会得できたことも他の隊士と同じ水準に育ってきていることも流水にとって嬉しいことだった。

 

そんなことを思いながら、流水は淀水の体をボコボコにしていった。

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