「…今更なんだが」
「ん、なに?」
「お前らから俺に質問はないのか?ずっとこっちが話聞いてるが」
「聞きたいことはいっぱいあるけど…剣に返しみたいなのがついてることとか。本を帽子みたいに被ってる事とか」
「俺が元居たところの質問はないのかよ…」
「まぁ、聞いてもしょうがないしね~」
「急務だったカタカタヘルメット団の事案も片付きましたし、そういう距離を縮めるための時間を取るのも
いいかもしれませんね。恐らく結構な期間いることになるとのことでしたので。」
「ま、そうかもな。少なくともなんもしないで一緒にいるよりはいいだろう。」
「そうそう!忙しいことも無くなったんだから、ちょっとは肩の力を抜いたほうがいいわよね!」
「…まあ、そうもいかないんですけどね…」
「そう、ですね…」
なんだ?学校にはまだ何か問題があるっていうのか?
「どうしたんだ?まだ問題があるって素振りだが。」
「あ、あぁ~…えぇっとですね…」
「ま、待って!!アヤネちゃん、ストップ!」
「ぅ…」
「いいんじゃない、セリカちゃん。隠すようなことじゃないんだし。」
「か、かといってわざわざ話すようなことでもないでしょ!」
「別に罪を犯したわけでもないでしょ~?それにカタミちゃんは私たちを助けてくれた大人だし~。」
「ホシノ先輩の言うとおりだよ。セリカ、カタミさんは頼もしいし、信頼していいと思う。」
「そ、そりゃそうだけど、カタミさんは急に入ってきただけの部外者じゃん!」
ぐうの音も出ない正論で殴られてしまった。
「そうかもしれないけどさー、今この問題を真剣に聞いてくれる大人は、カタミちゃんぐらいしかいないよ~?
悩みを打ち明けてみたら、何か解決法が見つかるかもよー?それともほかにいい方法があるのかな~、
セリカちゃん?」
「う、うう……」
口論、というよりホシノが一方的に説教をしているように聞こえるな…
「で、でもさっき来たばっかりの大人でしょ!
今まで大人たちがこの学校がどうなるかを気に留めたことなんてあった!?
この学校の問題はずっと私たちだけでどうにかしてきたじゃん!
なのに今更、大人が首を突っ込んでくるなんて……」
「私は認めない!!!」
とまで言うと、セリカは部室から出て行ってしまった。
「セリカちゃん!?」
「思ったより頑固なやつなんだな…」
「私、様子を見てきますね。」
「…もう独断で話しちゃうけどさ、この学校、借金があるんだ。」
「はぁ、なるほど…まあ聞こえはかなり悪いよな。」
「そこはまだいいんだけど、問題はその金額で、大体9億円ぐらいあるんだよねー。」
「9億6235万円…私たちアビドス…いえ、私たち「対策委員会」が返済しなくてはならない金額です。
これが返済できないと、学校は銀行の手に渡り、廃校手続きを取らざるを得なくなります。」
「9億?学校規模でそんな借金をするとは思えんが、何があったんだ?」
「えっと、それは……」
と、アヤネはおもむろに資料を取って開くと…
「この地域では、頻繁に砂嵐が起きていたのですが、ある時、想像を絶するほどの砂嵐が発生し、
静まった後も校舎や住宅に砂が溜まり続けたことがあるんです。
そのような自然現象を対策するために、我が校は多額の資金を投入せざるを得なかったのですが…
このような片田舎の学校に、巨額の融資をしてくれる銀行はなかなか見つからず…」
「結局、悪徳金融業者に頼るしかなかった。」
「はい。最初の内は、すぐに返済できる算段だったと思いますが、
砂嵐はその後も、毎年さらに巨大な規模で発生し…
学校の努力も虚しく、学区の状況は手が付けられないほど悪化しました。」
「んで、今のアビドスになったってことか…」
正直、ここまでの話を聞いて悪徳金融を潰せば借金が消えるんじゃないかと思ってしまったが、
流石にこの手段だと何を言われるかわからないからやめておこう。
「私たちの力だけでは、毎月の利息を返済するので精一杯で…弾薬や補給品も、底をついてしまっています。」
「セリカがあそこまで神経質になってたのは、誰もこの問題とまともに向き合わなかったから。
ちゃんと話を聞いてくれたのは、カタミさん、あなたが初めて。」
「はは、どういたしまして。」
「…まあ、そういう感じだよ。
カタミちゃんのおかげでヘルメット団って言う問題が解決したから、これからは自由かと思いきや、
こんなのがあるなんて、ほんと辛いね~。
まあ、あくまで戻れるようになるまでいるだけだし、借金のことは気にしなくていいからね~。
話を聞いてくれただけでありがたいよ。」
「そうだね、もう十分力になってくれた。これ以上は迷惑を掛けられない。」
「…流石に、俺だって大人だ。こんな状態を見て何もしないわけはない。
それに、俺は元からやりやいようにやると心に決めている。
だから、俺はお前らを見捨てて戻ったりはしないぞ。」
「そ、それって…!」
「へぇ、カタミちゃんって変わり者だね~。こんな面倒事に自分から首を突っ込むなんて。」
「…まあ、よく言われるぞ。」
「良かった…カタミさんが力になってくれるなんて、これで私たちにも希望が見えてきました。」
「そうだね、気合を入れないと」
「は、はぁ…なんでみんなあんな変な恰好の人を信じるわけ?」
「…あれ?めっちゃ見たことあるやつがいる?もしかして転移したやつって俺だけじゃないのか?
……
ロマンがあるな!」