「やっぱり、夜は冷えるな。思ったよりも厳しめだが。」
こっちに来てから初めての夜だ。砂漠だからか、あっちよりも冷え込む。
自分はそれほど寒暖に敏感ではないが、ずっと外にいると流石に苦しくなる。
……とはいえ、俺にはやらなければならない習慣がある。それをしてから眠るとしよう。
「……ふぅ、朝か。またどっかに飛ばされるんじゃないかと思ったぞ。」
とはいいつつ、なんとなく不穏な空気を感じる。
「なんとなく、今日は面倒な日になりそうだ……とりあえず、外を散歩してみるか。」
という感じで歩いていると、セリカが歩いているのが見えた。
そういや、あいつとは喧嘩別れみたいな感じだったな。けどずっとそんな感じで接するのはな……
ま、普通に話すか。
「よう、セリカ。」
「へっ……ちょっ、何!?」
「いや、いたから挨拶しただけだ。」
「なんで『よう』なのよ!なれなれしすぎでしょ!あなたのこと認めてないからね!?」
よう じゃダメか……
「はっ、そうだろうな。んで、
「なんでそこを変えるのよ!?ちゃんって何よ!
……あと、今日は自由登校日だから、学校に行かなくてもいいのよ。」
「じゃあ、俺はすることがねえからお前についていくぞ。」
「……いや何言ってるのよ、そんなことさせるわけないでしょ!ついてこないでよ!?」
と言って、セリカは走り去っていった。もちろん、追う以外にやることがないので追いかける。
「ちょっ、なんでついてくるのよ!?来ないでって言ったでしょ!」
「これ以外にやることが無いって言ってるだろ?そういうことだ。」
「何がよ!こっちはあんたみたいに暇じゃないのよ!」
「じゃあ、せめて何しに行くかは教えてくれよ。」
「バイトよ。教えたんだから今度こそついてこないでよ!」
案の定、セリカは走り去っていった。まあ、教えてもらってまたついていくのは流石にな……
「ということなんだが」
「ど、どういうことです……?」
「カタミちゃんも変な絡み方するねー」
「やっぱりちょっと面白い人ですね~」
「それで、戻ってきたはいいもののやっぱりやることがないのでセリカのバイト先を教えてくれ」
「やっぱりって、何が……?」
「あ、おじさんはバイト先に心当たりがあるよー」
「本当か?普段どういうことしてるのか知りたいから連れて行ってくれ。」
……自分から面倒なことに首を突っ込んでいる気がする。まあ楽しいから良い。
「えー……このラーメン屋でバイトしてるのか?」
「確証はないけど、多分合ってると思うよー」
「まあまあ、時間もちょうどいいですし、いるか確かめるついでにご飯も食べましょう!」
「うぅ……なんで私まで……」
「ん、仕方ないからとりあえず昼だけ食べよう」
恐らく……全員が合意したので扉を開く。
「いらっしゃいませ!紫関ラーメ……えっ!?」
「あの~☆5人なんですけど~!」
「おぉいた、セリカだ。」
「な、なんでここに……」
「やっぱりね~、ここだと思ったよ。」
「お、お疲れ……」
「お疲れ。」
「アビドスの生徒さんらか。セリカちゃん、おしゃべりはそれぐらいにして、注文受けてくれな。」
「あ、は、はい……大将。それでは、広い席にご案内します……こちらへどうぞ……。」
「あ~、どっち座ろうか……」
「私の隣、空いてますよ!」
「……ん、私の隣も空いてる。」
「いやぁ、高校生と流石にそんな距離詰めるのはな……」
「いや、空いてる席いっぱいあるでしょ!ちゃんと座って!」
「は、はい……」「わ、分かった……」
「よかったぞ、流石に狭かったからな。」
「それにしても、バイトのユニフォーム、とってもカワイイですよ、セリカちゃん!」
「いやぁ~、セリカちゃんってそっち系か。ユニフォームでバイト決めちゃうタイプ?」
「ち、違うって!関係ない!こ、ここは行きつけのお店だったし……」
「写真撮っとけば一儲けできそうだねー。一枚買っちゃう、カタミちゃん?」
「流石に今は買わねえよ?」
「変なこと言わないでください、先輩……カタミさんも、ちょっと買おうとする素振り見せないでください……」
「さ、流石にもういいでしょ!ご注文は!?」
「『ご注文はお決まりですか』でしょー?セリカちゃーん、お客様には笑顔で親切に接客しなくちゃねー?」
「うう……ご、ご注文はお決まりですか……」
「私は、チャーシュー麺をお願いします!」「私は塩。」「えっと……私は味噌で。」「俺は醤油だな。」
「私はね、特性味噌ラーメン!炙りチャーシュートッピングで!」
「……ところで、みんなはお金大丈夫なの?まさかまたノノミ先輩におごってもらうつもり?」
「いやいや、またご馳走になるわけにはいかないよー。きっとカタミちゃんが奢ってくれるはず。だよね~?」
「は?」
は?
「……え?もしかして初耳?まあ、今聞いたからいいでしょ!」
どうしよう。転移された持ち物の中に金は無かった、と素で頭を抱えていると、ノノミが近づいてきた。
(もしかして、お金とか何も持ってないんですか?)
(あ、あぁ……)
(……じゃあ、こっそりこれで支払ってください。)
(す、すまないな……)
「いやぁー、ゴチでした、カタミちゃんー!」
「ご馳走様でした!」
「二度と来ないでよ!!仕事の邪魔だから!」
「あ、あはは……セリカちゃん、また明日ね……」
「ホント嫌い!!あんたらなんか死んじゃえー!!」
「元気そうで何よりだねー。」
「じゃあ、帰るか……」
結局、面倒な予感の正体は分からなかった。勘は当てにならないのか?
そんな考えは、深夜も深夜に、間違いだと証明された。
(ブゥゥゥゥゥゥゥゥン!!!キキィィィィ!!)
「あ?バイクの音……?聞き覚えが無いが……」
騒音で瞼を開き、正体を確かめに外へ出る。
そこにいたのは……
「……なんでお前ここにいんの?」
「こっちのセリフだよ!!!勝手にハーレム作りやがってなあ!?」
気絶したセリカを担ぐ、見慣れた顔の三角コーンを被った