そして今週の本誌のハンターハンター最新話にて、あの2人が久しぶりの登場を果たして感無量であります!
「ふゎ〜あぁ……昼まで寝ちまった」
青年の口から漏れ出る不機嫌な寝惚け声。その姿に若者らしい活力や覇気といったものはこれっぽっちも感じられない。
「何せ
彼の名は佐藤和真。
『地球』という星の『日本』と呼ばれる国に住んでいたごく普通の高校生だった
ところが学校を長期間サボり引きこもっていたある日、予期せぬ事故により突然その生涯を終えることになってしまう。十六歳という若さでのことであった。
──なお死亡経緯については、本人の名誉のため伏せさせて頂く。
そして死後、青年は女神の導きにより外見も記憶もそのままに異世界への転生を果たした。ライトノベルやアニメなどでよくあるシチュエーションに己が身で遭遇したのだ。
仲間達と共に旅に出て、世界を救う英雄になる。……そんな異世界ファンタジーを夢見る彼を待ち受けていたのは、地獄のような極貧生活だった。
幸運値と知力以外は貧弱なステータスであることが判明した彼は、朝から晩まで肉体労働に励むか雑魚モンスターを命懸けで討伐するか、そのいずれかで生計を立てることを強いられる。
低収入な上に稼ぎは不安定。結果として、マイホームを手に入れるどころか宿代さえ払えず、この世界に来てからずっと馬小屋での生活を送っていた。
馬の糞が当たり前に散らばっている藁の上で寝る…そんな囚人も真っ青の生活を送る青年は、毎晩のように生前の我が家を思い出し涙を呑む日々を過ごす。これが彼の冒険者ライフだった。冒険者とは何ぞや…?
「はぁ〜とりあえずギルド行こっと……」
せめて冒険者らしく。
ところで冒険者といえば、仲間と助け合って困難を乗り越える姿をイメージする人も多いことだろう。
もちろんこの青年も例外ではなかった。異世界に降り立った当初は【友情・努力・勝利】という某誌三原則の元に仲間との絆を深めつつ、第二の家族とも言えるような相手と巡り会えるかもしれないと思っていたものだ。
もっとも実際に仲間になったのは、口八丁で天界から連れてきたものの全然役に立たないどころか金遣いの荒い駄女神、そして一発撃てば何時間もまともに動けなくなる爆裂魔法を所構わず撃ちたがる爆裂娘。これらキワモノ達なのだが…。
しかも昨晩には新たに一人の女性が仲間になりたいと申し出てきたが、これがまた頭のネジの外れた女騎士だった。彼女曰く、偶然街でヌルヌル粘液まみれの女性二人と少年を連れた青年を見て、三人が受けた仕打ちを自分もされてみたいと思ったとのことらしい。
──あ、この女間違いなくド変態だ。
更に不器用過ぎて攻撃が全く当たらないという地雷要素を聞かされたことで心は決まった。「飲み過ぎた」と嘘を吐き一旦ギルドを出て、彼女が帰ったのを遠目に確認した後、再びギルドで用を済ませたのだった。
今後またどこかでバッタリ出くわすようなことが無ければ良いが…。
「(これ以上俺のパーティにキワモノはいらねえ!誰か…誰か…まともな奴はいねぇのか!?)」
憂鬱な気持ちでギルドの戸に手をかけたその時、
「おーい、カズマ! ちょうど良かった…」
まとも枠が、数少ないまとも枠と思える少年が、自分の名を呼んでいるのが聞こえた。
きっとこの世界の神様(※決してアクアのことではない)は不幸で憐れなカズマさんを見捨てていなかったに違いない。
***
早速昨日のジャイアントトードに関連する追加報酬を得たキルアは他の面々に分配した。12万エリスなので、四人で分ければ一人当たり3万エリスとなる。
「ありがとなキルア!アクアにも後で渡しとくから」
貧相な財布に金を入れるカズマをめぐみんは薄目で睨む。
「まさかそのお金、アクアに渡さずカズマ一人でせしめるなんてことは…」
「いや、あの馬鹿も流石に金のことになると誤魔化されないだろうからちゃんと渡すつもりだ」
「(誤魔化せる算段があったら渡さないのかよ…)」
怪しい宗教団体の主神を名乗る女とはいえ、それは可哀想だとキルアは思う。
「それより聞きたいんだが、スキルの習得ってどうやるんだ?」
カズマの疑問はキルアとしても気になっていたことだった。一緒に冒険者カードを取り出し、めぐみんの説明に耳を傾ける。
「…スキルの習得ですか?冒険者の場合、まずは誰かがスキルを発動したのを目で見てスキルの使用方法を教えてもらうのです。するとカードに習得可能スキルという項目が現れるので、ポイントを使ってそれを選べば習得完了なのです」
「なるほどな。変なスキルにポイントを使わないよう気を付けないと」
めぐみんは昼食のステーキを半分たいらげながら一息に喋り切る。
その口の周りは肉汁でかなり汚れていた。そのせいで彼女がより一層幼く見えてしまう。
「(テーブルマナーにうるさいおふくろが見たらギャーギャー喚きそうだぜ…まあオレの家族がどういう連中かなんて絶対知られたくねぇけど)」
ゾルディック家の家業を隠し通すことを改めて誓ったキルアをよそに話は続く。
「ってことは、めぐみんに教えてもらえば、俺もいつか爆裂魔法を使えるようになるのか」
「その通りです!!!」
めぐみんはグイッとカズマに顔を近付ける。近過ぎる…。
「その通りですよカズマ!爆裂魔法を覚えたいのであれば、いくらでも教えてあげましょう!というか、爆裂魔法以外に覚える価値のあるスキルなんてありますか?いいえ、ありませんとも!さあ!私と一緒に爆裂道を歩もうではありませんか!!」
「(うわぁ…)」
愚直とも言えるほど真っ直ぐな紅目の中に狂気を光らせるめぐみん。今の彼女は、数多くの狂人を見てきたキルアの目から見ても危険人物だった。
アクアをアクシズ教の女神とするなら、こちらは爆裂教の教祖といった所だろうか。後者も前者に負けず劣らず、悪名を轟かせそうだ。おそらく集団で各地でボカンボカンやるんだろうし。
「ところでキルアの冒険者カードも見せてくれませんか?ハンターという職業がどんなスキルを覚えるのか凄く気になります」
「……嫌だ」
キルアは応じなかった。カードを彼女から遠ざける。
「何故ですか?あなたは我々のパーティメンバーではありませんか!」
「いつオレがお前らのパーティに入るって言ったよ?成り行きでここまで付き合ってきただけなんだけど」
そう、キルアとしては元々誰かとパーティを組むつもりは無かった。
冒険者登録の費用をどう工面するか考えていた時に空腹で倒れかけているめぐみんを助けたことで彼女達と何やかんや関わるようになってしまったに過ぎない。
──もっとも実を言えば、冒険者カードを見せたくないのは他に理由があったからなのだが…。
「おいおい嘘だろ…?せめて一人でいいからこのパーティにちゃんと常識的な感覚を持ち合わせてる奴が欲しいんだ。頼むよ!」
「……非常識な感覚を持つメンバーとは誰なのか聞こうじゃないか!」
「んなことオレに言われてもな…(自分が常識的な感覚の持ち主だなんて思っちゃいねーし)」
そうして「じゃあな、今まで世話になった」とキルアが言いかけたその時だった。
「………探したぞ」
後ろから女性の声がした。
そこに立っていたのは、金髪のポニーテールに碧眼、白と黄色を基軸とした色合いの鎧に身を包んだ長身の女性だった。剣も携えており、まさに騎士といった出で立ちだ。
「カズマ、この人は誰ですか?」
「…え?あ〜これはその…」
……何かを言い淀んでいるようだ。カズマの顔は誰の目にもわかるほど青ざめていた。
「昨日は飲み過ぎたと言ってすぐに帰ってしまったが、大丈夫か?」
「お、お気遣いなく…」
この女騎士とカズマの関係が気になったキルアは、それとなく彼女を観察する。
そして、どこか育ちの良さを感じさせる立ち居振る舞いからキルアは経験的に見抜いた。この女はいわゆる上流階級の人間だと。
「ならば、昨日の話の続きをさせて貰おう」
この世界の上流階級、おそらく貴族か何かと思われる人間がカズマに何を話すのか。
「私を貴方のパーティに入れ──」
「お断りします!」
「(カズマが断るだと…?これは何か裏があるな)」
キルアは訝しむ。分析力に長けた彼の頭脳は、これまでの情報から一瞬の間に仮説を導き出してゆく。
まず前提として、この女騎士はキルアの目から見て、元の世界でもこちらの世界でもそうそうお目にかかれないレベルの美女だ。その申し出を女好きのカズマが断るということは間違いなく裏がある。
となると、おそらく彼女の身分が何か関係しているのではないか?先程カズマが彼女に声をかけられて狼狽えていたのも、例えば昨夜に何らかの無茶な要求を受けていたとか?
キルアのいた世界でも特権階級の人間は傲慢な振る舞いをする輩も珍しく無かった。庶民のことは命令すればいいとしか思っていない、気に食わなければ殺す、人間としてすら見ていない、そういう輩が。ゾルディック家に大枚をはたいて依頼される暗殺のターゲットも、そのような法で裁けない悪漢が少なくなかったりする。
果たしてこの女の何がカズマをここまで苦悶させているのか、ちょいと自分が探りを入れて、
「あんんっ!………くうぅっ……即断…だと…?」
──あ、この女間違いなくド変態だ。
分析力に長けたキルアの頭脳は、探りを入れるまでもなく彼女の
***
「なあ少年、正直な気持ちを教えてくれ。今結構ワクワクしているのではないか?」
「今の正直な気持ち…?まぁあんたに話しかけられたくないと思ってるのは確かかな」
「ぐっ…その冷たい目、いいッ!!」
ギルドから少し離れた路地裏では、キルアと女騎士──ダクネスの目の前で二人の人間が向かい合っていた。
片方はカズマ。彼と相対しているのは銀髪ショートヘアーのボーイッシュな美少女。
ちなみにめぐみんはまだ食事中なのでここにはいない。
「盗賊系スキルには気配察知とか潜伏とかいろいろあるけど、特に私のイチオシはこれ。よく見といてね…」
「うすっ!クリスさん、よろしくお願いします!」
「いくよ〜、スティール!」
彼女がスキルを発動すると、突き出した拳が光輝く。その光が止むと、空っぽだったはずの手中には何かが握られていた。
「え…?あっ、それ俺の財布!」
「これが窃盗スキルの『スティール』。成功すれば相手の持ち物を奪うことが出来るってわけ」
「へぇ、すごいなぁ!」
「(G.Iのカードにも《
この美少女はダクネスの友人らしく、クリスと名乗っている。
ダクネスがカズマを困惑させているのを見かねた彼女は仲裁に入ると共に、冒険者であるカズマが有用なスキルを習得出来るよう己のスキルを見せてくれることになったのである。
「(良かったなカズマ、ぱっと見まともそうな
そしてカズマは財布を返してもらおうと手を出す。だが、クリスはその手に財布を渡さないどころか彼に見せつけるように離してしまった。
「ねぇ、勝負しようよ。君も盗賊スキルを習得して、アタシから財布を取り返してみせて?」
「……うーん」
「おいクリス、それはあんまりではないか?」
意地悪な提案を口にした友人を諌めるダクネス。紛うことなき変態ではあれど、根は良識のある人物のようだ。
「君も冒険者なんでしょ?だったら、危ない橋も渡らなきゃ!」
「……よし、いいぜ!その勝負受けた!」
「じゃあ冒険者カードを使って、スキルを習得してみて!アタシから習ったスキルが表示されているはずだよ?」
「え〜と……」
カズマは言われた通り、習得可能スキル一覧の中にあったスティールを習得。……なお一覧の中にはアクアが酒場で披露していた宴会芸スキルもあったものの、こちらは華麗にスルー。
「じゃあ始めよっか!当たりはこのマジックダガー、40万エリスは下らない逸品だよ!」
「おお!」
クリスの腰元には上等そうな短剣が提げられている。
「そして残念賞は……この石だ!」
「ああっ…!汚ねぇ!」
彼女の握り拳の中に大量の石が隠されていた。
どうやらスティールというスキルは相手から何を盗み出すのかまでは指定できず、相手の所有物が増えれば増えるほどお目当ての物を盗める確率が下がるらしい。
とはいえ仕方がない。勝負の前に仕込みをするのはどこの世界でも普通にあることだ。
カズマも「ここは弱肉強食の世界。騙される甘っちょろい奴が悪い」と受け入れる。ちなみにキルアも彼と同じ考えであるため、ダクネスのように異を唱えることはしない。
しかしながら、キルアの心は冷め切っていた。
「(ハッ、くだらねぇ。オレなら直接あのマジックダガーってのを掠め取ってやるのに)」
運に左右されるスキルなんぞに頼るより自分自身の実力で欲しい物を奪い取る。類稀なる才能と血の滲むような鍛錬により築かれた自負心を持つキルアにとっては、至極当然の方法論だった。
「やってやる!……スティール!!!」
カズマが早速スティールを使うと、先程と同じく手から光が溢れ出す。どうやらマジックダガーは盗れなかったようだが…?
「よし!とりあえず成功!」
「なっ!?……あ、ああ…!!」
「ってかなんだ?妙に温かいんだが……」
「カズマ…?」
「……おぉ…!おおおおお!!!!」
その手には何やら白い布切れが握りしめられていた。これは何と…!?
「当たりも当たり!大当たりだああああああ!!!」
「いやああああ!パンツ返してええぇぇぇ!!」
「ヒーャッハッハッハッハー!!ウワッハッハー!!」
この世の終わりのような光景だった。
狂喜乱舞して盗んだパンツを振り回す
「な、なんという鬼畜の所業…!やはり私の目に狂いはなかった!!!!」
そして、その光景を目の当たりにして興奮する
正史であれば、この三者で完結する
「ありゃ盗めねーわ」
奇しくも己の世界のとある盗賊と同じ台詞を口にする
「おいキルア、どうした?お前もクリスのパンツ欲しいのか?」
クズマもといカズマはパンツの匂いをスーハーと嗅いでいる。
「いらねーよ、そんなちゃんと毎日洗ってるかも怪しい汚い
「洗ってるって!!!!」
クリスに更なるメンタルダメージ。
「オレが言いたいのは、オレの実力ならあのマジックダガーを簡単に盗めてもカズマみたいにパンツを盗むのは無理ってこと。………見直したぜ、スティール」
これは心からの賛辞だった。
キルアからすれば敵対者の身に付けている下着
鬼のように強いキルアの褒め言葉にカズマは更に気を良くする。
だが有頂天になっていたカズマもといクズマは、やめておけば良いものを調子に乗るあまり更なる暴挙に出ようとしていた。
「ん?」
こちらに拳を向けるカズマの姿にキルアは首を傾げる。
「悪いなキルア、今の俺はショタもいけそうな気分なのさ…」
念のため断っておくが、別にカズマは同性相手の小児性愛に目覚めたわけではない。ただふざけてキルアをおちょくっているだけである。
キルアの隣でダクネスが「昨日、少年も粘液まみれにしていたのはそういうことだったのか!」と一人納得する様子を見せているが、カズマはこれを無視した。
「キルア!お前にもスティール!!」
再びカズマの手が光り出す。クリスの下着を握り締めた手だ。
するとここで予想外のことが起きる。カズマの履いているジャージのズボン側のサイドポケットが光り始めたのだ。もしかしたらスティールを発動した手が既に他の物で埋まっているので、ポケットの方に転移するのかもしれない。
「さてキルアからは何を──」
「「「え…!?」」」
一名を除いて、一体何が起きたのか全く理解が及ばなかった。
突如カズマの履いているズボンが目にも止まらぬ早さでずり落ちたかと思いきや、両横のポケット部分が轟音と共に地面に沈み込んだのだ。
カズマの足は紙一重の所で謎の沈下に巻き込まれずに済んだ様子。
「……………あっ…あっ…何だよ、これ…?」
クリスはもう泣き止み、ダクネスも油断無く現状を観察している。
へたり込んだカズマも、持ち前の頭の回転の早さで、ポケットに何かとてつもなく重い物が入ってきたのだということを何とか理解する。
「あーあ、オレが持ってる物の中で唯一金になりそうな奴を盗っちゃったのか」
そう言ってキルアが落ちているズボンのポケットから取り出してみせた物、それは……
「「「ヨーヨー…!?」」」
「うん、正解」
まさかの玩具だった。
「…いや待てよ!何だよヨーヨーって!!こんな重いヨーヨーが存在するかよ!!!」
最初に声を発せるようになったカズマが全力で突っ込む。……ヨーヨーって何だったっけ?
「兄貴特注の合金で作られた戦闘用のヨーヨーだよ。重さは50kgくらいかな」
「「「50kg…!?」」」
またしても三人でハモってしまった。
「………これを扱うお前も相当だけど、お前の兄貴も何者なの?(もしやこいつのズボンが、こんなヨーヨーに耐えられるのもその兄貴のおかげだったりすんのか…?)」
キルアは本人だけでなく家族もとんでもない化け物。そう三人は認識を改める。
「……スティール!」
と、ここでどさくさに紛れてカズマにスティールをかけるクリスがいた。憎々しいほどに可憐なウインクのおまけ付きで。
「今度はアタシが君のパンツをもらう番だね!」
その手に握られていたのは男物のパンツ。しかも、カズマはジャージのズボンがずり落ちている状態、ということは……
「いやあ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!!俺のパンツ返してエ゙エ゙エ゙エ゙エ゙!!!!」
「野外で下半身をスッポンポンに剥いてしまうとはクリスも中々ではないか!さすがは我が友…」
イレギュラーが舞い降りてもアクセルの街は平和です。
ヨーヨーがカズマのズボンに入るシーンではポケットが破れるだけというオチも考えましたが、それだと絵面的に地味なのでこうなりました。